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急性ウイルス性肝炎の概要

執筆者:

Anna E. Rutherford

, MD, MPH, Harvard Medical School

最終査読/改訂年月 2019年 1月
本ページのリソース

急性ウイルス性肝炎は,多様な伝播様式と疫学的性質を有する一群の肝親和性ウイルスによって引き起こされる,肝臓のびまん性炎症である。ウイルス感染による非特異的な前駆症状に続いて,食欲不振,悪心,しばしば発熱または右上腹部痛がみられる。黄疸がしばしばがみられ,典型的には他の症状が消失し始める頃に発生する。ほとんどの症例で自然消失するが,慢性肝炎に進行する場合もある。ときに,急性ウイルス性肝炎から急性肝不全に進行する(劇症肝炎を示唆する)。診断は,肝機能検査とウイルスを同定するための血清学的検査による。良好な衛生状態の維持と普遍的予防策(ユニバーサルプリコーション)によって急性ウイルス性肝炎は予防できる。ウイルスの種類によっては,ワクチンや血清グロブリンを使用することで,曝露前および曝露後予防が可能である。治療は通常,支持療法である。

肝炎の原因および新生児B型肝炎ウイルス感染症も参照のこと。)

急性ウイルス性肝炎は,様々な原因で発生する全世界に分布する一般的な疾患であり,病型ごとに臨床的,生化学的,形態学的特徴を共有する。急性ウイルス性肝炎という用語は,いずれかの肝炎ウイルスによる肝臓の感染症を指す場合が多い。それ以外のウイルス(例,エプスタイン-バーウイルス黄熱ウイルスサイトメガロウイルス)も急性ウイルス性肝炎を引き起こす可能性があるが,あまり一般的ではない。

病因

少なくとも以下の5つの特異的なウイルスが急性ウイルス性肝炎の原因とみられている(肝炎ウイルスの特徴の表を参照):

おそらくは,まだ同定されていない他のウイルスも急性ウイルス性肝炎を引き起こすと考えられる。

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肝炎ウイルスの特徴

特徴

A型肝炎ウイルス

B型肝炎ウイルス

C型肝炎ウイルス

D型肝炎ウイルス

E型肝炎ウイルス

核酸

RNA

DNA

RNA

*

RNA

血清学的診断

IgM-HAV抗体

HBs抗原

HCV抗体

HDV抗体

HEV抗体

主な感染経路

糞口

血液

血液

潜伏期間(日)

15~45

40~180

20~120

30~180

14~60

流行性

あり

なし

なし

なし

あり

慢性化

なし

あり

あり

あり

なし

肝癌

なし

あり

あり

あり

なし

*不完全なRNAであり,B型肝炎ウイルスの存在下でしか複製できない。

HCV抗体 = C型肝炎ウイルスに対する抗体;HDV抗体 = D型肝炎ウイルスに対する抗体;HEV抗体 = E型肝炎ウイルスに対する抗体;HBs抗原 = B型肝炎表面抗原;IgM-HAV抗体 = A型肝炎ウイルスに対するIgM抗体。

症状と徴候

急性肝炎の臨床像にはウイルスに特異的なものもあるが(個々の肝炎ウイルスに関する考察を参照),一般に急性感染は,以下に示す予測可能な段階を経て発生する傾向がある:

  • 潜伏期:症状を引き起こすことなく,ウイルスが複製および拡散する(肝炎ウイルスの特徴の表を参照)。

  • 前駆期(黄疸前期):非特異的な症状がみられ,具体的には著明な食欲不振,倦怠感,悪心および嘔吐などがあり,タバコをまずく感じるようになり(喫煙者),しばしば発熱や右上腹部痛もみられる。蕁麻疹と関節痛がときにみられ,特にHBV感染症で多い。

  • 黄疸期:3~10日後に尿が暗色になり,続いて黄疸が起こる。全身症状はしばしば消退し,黄疸が悪化するにもかかわらず,患者は気分がよくなる。肝臓は通常,腫大して圧痛がみられるが,辺縁は軟らかく滑らかなままである。15~20%の患者で軽度の脾腫が生じる。黄疸は通常1~2週間以内に最も顕著となる。

  • 回復期:この2~4週間の期間で黄疸は消失する。

通常,食欲は発症から1週間後には元に戻る。急性ウイルス性肝炎は通常,発症から4~8週間後に自然に消失する。

無黄疸性肝炎(anicteric hepatitis)は,HCV感染症の患者やHAV感染症の小児では黄疸を伴う肝炎よりも多くみられる。典型的には軽微なインフルエンザ様疾患として発症する。

再発性の肝炎は少数の患者にみられ,回復期の症状再発が特徴である。

黄疸期には胆汁うっ滞の症状が生じることがあるが(胆汁うっ滞性肝炎と呼ばれる),通常は消失する。それらが持続すると,全身的に炎症が治まっているにもかかわらず,黄疸の長期化,アルカリホスファターゼ値の上昇,およびそう痒が引き起こされる。

診断

  • 肝機能検査(ASTおよびALTがアルカリホスファターゼ値と不釣り合いに上昇し,通常は高ビリルビン血症を伴う)

  • ウイルスの血清学的検査

  • PT/INRの測定

急性ウイルス性肝炎の初期診断

急性肝炎は,第一に,同様の症状を引き起こす他の疾患と鑑別する必要がある。前駆期には,肝炎が様々な非特異的ウイルス性疾患と類似するため,診断は困難である。危険因子から肝炎が疑われる黄疸のない患者には,まずアミノトランスフェラーゼ,ビリルビン,およびアルカリホスファターゼを含めた非特異的な肝機能検査を行う。通常は,黄疸期になって初めて急性肝炎が疑われる。そのため,急性肝炎は黄疸を引き起こす他の疾患と鑑別する必要がある(急性ウイルス性肝炎に対する診断アプローチの簡略図の図を参照)。

急性肝炎は通常,黄疸を引き起こす他の原因と以下の所見により鑑別できる:

  • ASTおよびALTの著明な上昇(典型的には400IU/L以上)

典型的にはALTがASTより高くなるが,絶対値と臨床的な重症度との相関は弱い。測定値は前駆期の早い段階で上昇し,黄疸が最も強くなる前に最高値を示し,回復期にはゆっくりと低下していく。通常は尿中ビリルビンが黄疸に先行する。急性ウイルス性肝炎における高ビリルビン血症の重症度は様々で,分画に臨床的な価値はない。アルカリホスファターゼ値は,通常は中等度に上昇するのみであり,著明な上昇は肝外胆汁うっ滞を示唆し,速やかに画像検査(例,超音波検査)を施行するべきである。

通常,肝生検は診断が不確かな場合を除いて必要ない。

臨床検査結果から急性肝炎が示唆される場合,特にALTおよびASTが1000IU/Lを超える場合には,PT/INRを測定する。

門脈大循環性脳症,出血性素因,またはINR延長の発生は急性肝不全を示唆し,劇症肝炎の可能性がある。

急性肝炎が疑われる場合は,続いて原因の同定に注力する。薬剤性または中毒性肝炎では曝露歴が唯一の手がかりとなりうる。病歴聴取により,ウイルス性肝炎の危険因子も明らかにすべきである。

前駆期にみられる咽頭痛とびまん性のリンパ節腫脹は,ウイルス性肝炎よりも,むしろ伝染性単核球症を示唆する。

以下の所見はアルコール性肝炎を示唆する:

  • 飲酒歴

  • 緩徐な発症

  • くも状血管腫の存在または慢性飲酒もしくは慢性肝疾患の徴候

  • アミノトランスフェラーゼ値が300IU/Lを超えることは,たとえ重症例でも,まれである

また,ウイルス性肝炎と異なり,典型的にはAST値がALT値より高くなるが,この差のみによって両者を鑑別することはできない。不確かな症例では,通常は肝生検によりアルコール性肝炎をウイルス性肝炎と鑑別することができる。

急性ウイルス性肝炎に対する診断アプローチの簡略図

急性ウイルス性肝炎に対する診断アプローチの簡略図

*A型肝炎(A型肝炎の血清学的検査の表を参照),B型肝炎(B型肝炎の血清学的検査の表を参照),およびC型肝炎(C型肝炎の血清学的検査の表を参照)について追加の臨床検査を行う。

HCV抗体 = C型肝炎ウイルスに対する抗体;HBs抗原 = B型肝炎表面抗原;IgM-HAV抗体 = A型肝炎ウイルスに対するIgM抗体。

血清学的検査

急性ウイルス性肝炎を示唆する所見がみられた患者では,次の検査によってA型,B型,およびC型肝炎ウイルスのスクリーニングを行う:

  • HAVに対するIgM抗体(IgM-HAV抗体)

  • B型肝炎表面抗原(HBs抗原)

  • B型肝炎ウイルスコアに対するIgM抗体(IgM-HBc抗体)

  • C型肝炎ウイルスに対する抗体(HCV抗体)

  • HCV-RNA(C型肝炎ウイルスRNA)PCR

いずれかが陽性の場合は,急性感染を過去の感染または慢性感染と鑑別するために,さらなる血清学的検査が必要になることがある(A型肝炎の血清学的検査B型肝炎の血清学的検査,およびC型肝炎の血清学的検査の各表を参照)。

血清学的検査でB型肝炎が示唆された場合は,予後を判定するとともに抗ウイルス療法の指針を得るため,通常はB型肝炎e抗原(HBe抗原)およびB型肝炎e抗原に対する抗体(HBe抗体)の検査を行う。血清学的検査でHBV感染症が重症であることが確認された場合は,HDV抗体を測定する。

患者が最近流行地域に旅行していた場合は,検査が可能なら,HEVに対するIgM抗体(IgM-HEV抗体)を測定すべきである。

生検

生検は通常必要ないが,施行した場合には,ウイルスの種類にかかわらず,以下に示す類似した病理組織学的所見を認めるのが通常である:

  • 斑状の細胞脱落

  • 好酸性肝細胞壊死

  • 炎症性単核細胞浸潤

  • 再生の組織学的所見

  • 細網線維構造の温存

HBV感染は,ときにすりガラス様肝細胞(HBs抗原で充満された細胞質による)の存在に基づき,ウイルス要素に対する特殊免疫染色を用いて診断できる。しかしながら,これらの所見は急性HBV感染ではまれであり,慢性HBV感染でより多くみられる。

肝生検は急性肝炎の予後予測に参考となるが,そのためだけに生検を施行することはまれである。小葉全体にわたる広範な壊死(架橋壊死)が起こらない限り,完全な組織学的回復が得られる。架橋壊死が起きた患者も大半が完全に回復する。しかしながら,慢性肝炎に進行する症例もある。

治療

  • 支持療法

急性ウイルス性肝炎を軽減する治療法はない。アルコールは肝傷害を悪化させることから,飲酒は控えるべきである。一般的に指示される床上安静を含めた食事や活動の制限には,科学的根拠がない。

胆汁うっ滞性肝炎では,コレスチラミン8gを1日1回または1日2回経口投与することでそう痒を軽減できる。

ウイルス性肝炎は,地域または州の保健局に報告すべきである。

予防

治療の効果が限られているため,ウイルス性肝炎の予防は非常に重要である。

一般的な対策

個人の衛生状態を良好にすることで,HAVやHEVなどで起こりうる伝播,特に糞口感染を防ぐことができる。

HBVおよびHCVの急性感染症患者の血液やその他の体液(例,唾液,精液),およびHAV感染患者の便は感染性があると考える。バリアによる感染防御が推奨されるが,患者の隔離はHAVの伝播予防にほとんど効果がなく,HBVまたはHCVの感染に対して完全に無効である。

輸血後感染は,不要な輸血を避けることや,全てのドナーについてHBs抗原とHCV抗体のスクリーニングを行うことによって,最小限に抑えることができる。スクリーニングの実施により輸血後肝炎の発生率は低下しており,現在ではおそらく,輸血される血液成分100,000単位当たり1例ほどと推定されている。

免疫学的予防

免疫学的な予防法としては,ワクチン接種による能動免疫と受動免疫が可能である。

米国では,A型肝炎およびB型肝炎に対するワクチンが入手可能である。

米国では,全ての小児と高リスクの成人を対象とするA型およびB型肝炎の定期予防接種が推奨されている(Adult Immunization Scheduleを参照)。

E型肝炎に対するワクチンは,米国では使用できないが,中国では使用可能である。

標準的な免疫グロブリンの投与でHAV感染症を予防または軽減できる,これを患者の家族および濃厚接触者に使用すべきである。B型肝炎免疫グロブリン(HBIG)は,おそらく感染を予防することはできないが,臨床的な発症を予防または軽減することができる。

HCVまたはHDVの免疫学的予防に使用できる製品は存在しない。しかしながら,HBV感染を予防すれば,HDV感染を予防できる。HCVでは,ゲノムが変化しやすい性質がワクチン開発の妨げになっている。

要点

  • 感染経路は,A型肝炎では糞口感染,B型およびC型肝炎では消化管以外すなわち血液を介した感染である。

  • B型およびC型肝炎では,A型肝炎とは異なり,慢性肝炎および肝癌の発生リスクが高くなる。

  • 急性ウイルス性肝炎の患者は,黄疸を伴わなかったり,さらには全く症状がみられない場合もある。

  • 臨床所見が急性ウイルス性肝炎と一致し,AST値とALT値がアルカリホスファターゼ値と不釣り合いに高い場合は,ウイルス血清学的検査(IgM-HAV抗体,HBs抗原,HCV抗体)を施行する。

  • 支持療法を行う。

  • 米国では,全ての小児と高リスクの成人を対象とするA型およびB型肝炎の定期予防接種が推奨されている。

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