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アルコール性肝疾患

執筆者:

Nicholas T. Orfanidis

, MD, Thomas Jefferson University Hospital

最終査読/改訂年月 2019年 7月
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本ページのリソース

欧米諸国の大半ではアルコール摂取量が高くなっている。精神疾患の診断・統計マニュアル DSM-5(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition)によると,米国では任意の12カ月という期間で8.5%の成人がアルコール使用障害を有していると推定されている(アルコール使用障害とリハビリテーション アルコール使用障害とリハビリテーション アルコール使用障害では,飲酒のパターンが生じ,典型的には渇望と耐性(tolerance)の症状および/または心理社会的な悪影響のある離脱症状が伴う。アルコール依存症およびアルコール乱用は一般的であるが,あまり厳密に定義されていない用語であり,アルコール関連の問題を有する人に適用される。... さらに読む を参照)。男女比はおよそ2:1である。アルコール乱用者でみられる疾患には次のものがあり,下記の順に進行する場合が多い:

(2018 年のAmerican College of Gastroenterologyのアルコール性肝疾患の診療ガイドラインも参照のこと。)

危険因子

アルコール性肝疾患の主な危険因子を以下に示す:

  • 飲酒量と飲酒期間(通常は8年以上)

  • 性別

  • 遺伝形質および代謝特性

  • 肥満

アルコール摂取量

感受性の高い人では,一般にアルコール摂取量および摂取期間と肝疾患の発生との間に直線的な相関が認められる。

アルコール摂取量は,摂取した飲料の体積(mL)とアルコール度数の積によって推定できる。例えば,80プルーフ(アルコール度数40%)の飲料約45mLには,体積で18mLのアルコールが含まれている。1mL当たりに含まれるアルコールは約0.79gである。値は様々であるが,アルコール度数はほとんどのビールで約2~7%,ほとんどのワインで10~15%である。したがって,グラス1杯(約360mL)のビールには約5~20g,グラス1杯(約150mL)のワインには12~18g,1ショット(約45mL)の蒸留酒には約14gのアルコールが含まれていることになる。

男性における肝疾患のリスクは,1日のアルコール摂取量が10年以上にわたり40gを超えると著明に増大し,特に80g(例,ビール2~8缶,蒸留酒3~6ショット,またはワイン3~6グラス)を超えると大幅に増大する。 肝硬変 肝硬変 肝硬変は,正常な肝構築が広範に失われた 肝線維化の後期の病像である。肝硬変は,密な線維化組織に囲まれた再生結節を特徴とする。症状は何年も現れないことがあり,しばしば非特異的である(例,食欲不振,疲労,体重減少)。後期の臨床像には, 門脈圧亢進症,腹水,代償不全に至った場合の 肝不全などがある。診断にはしばしば肝生検が必要となる。肝硬変は通... さらに読む の発生に至るには,通常,10年以上にわたって1日当たり 80gを超えるアルコールを摂取しなければならない。20年間にわたり1日230gを超えるアルコール摂取を続けた場合,肝硬変のリスクは約50%となる。しかし,慢性的なアルコール乱用者でも,肝疾患を発症するのは一部のみである。したがって,飲酒量の違いのみで肝疾患に対する感受性の差を説明することはできず,その他の因子も関与している可能性が示唆される。

性別

女性では,体格を考慮した場合でも,男性よりもアルコール性肝疾患に対する感受性が高い。女性の場合,20~40gのアルコール(すなわち男性の半量)でもリスクが高まる。女性のリスクが高いのは,胃粘膜に存在するアルコール脱水素酵素が少ないために,より多くのアルコールが分解されないまま肝臓に到達するためと考えられる。

遺伝因子

アルコール性肝疾患は,しばしば家族内で集積することから,遺伝因子(例,アルコールを除去する細胞質酵素の欠乏)の存在が示唆される。

栄養状態

不飽和脂肪を多く含む食事は,肥満と同様に感受性を高める。

その他の因子

病態生理

アルコールの吸収および代謝

アルコール(エタノール)は,胃からも容易に吸収されるが,大部分は小腸から吸収される。アルコールが蓄積することはない。吸収されたアルコールの少量は,胃粘膜を通過する間に分解されるが,大部分は肝臓で代謝され,主にアルコール脱水素酵素(ADH)によるが,チトクロムP450 2E1(CYP2E1)およびミクロソームエタノール酸化系(MEOS)によっても分解される。

ADHを介した代謝の流れを以下に示す:

  • 細胞質酵素であるADHにより,アルコールがアセトアルデヒドに酸化される。ADHの遺伝子多型により,同量の飲酒後の血中アルコール濃度にみられる個人差を一部説明できるが,アルコール性肝疾患の感受性の差を説明することはできない。

  • 次に,ミトコンドリア酵素であるアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)により,アセトアルデヒドが酢酸に酸化される。慢性の飲酒は酢酸の生成を促進する。アジア人はALDHの発現量が低く,アセトアルデヒドの毒性作用(例,紅潮)により高い感受性を示すが,このような影響は,ALDHを阻害するジスルフィラムの作用と同様である。

  • この酸化反応では水素が産生されるが,これがニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)を還元型(NADH)に変換し,肝臓における酸化還元電位(NADH/NAD)を上昇させる。

  • 酸化還元電位の上昇は,脂肪酸酸化と糖新生を阻害し,肝臓への脂肪の蓄積を促進する。

慢性アルコール中毒は,MEOS(主に小胞体内)を誘導し,その活性を増強させる。関係する主な酵素はCYP2E1である。誘導された場合,MEOS経路はアルコール代謝全体の20%を占めることもある。この経路は有害な活性酸素種の産生につながり,酸化ストレスや酸素フリーラジカルの形成を増加させる。

肝臓への脂肪の蓄積

以下に示す理由のために脂肪(トリグリセリド)が肝細胞全体に蓄積する:

肝臓に脂肪が蓄積すると,酸化損傷に対する感受性が高まる可能性がある。

腸管内の内毒素

アルコールは腸壁の透過性を変化させることで,腸内細菌が放出する内毒素の吸収を促進する。内毒素(障害された肝臓ではもはや解毒できない)に対する反応として,肝マクロファージ(クッパー細胞)がフリーラジカルを放出し,酸化傷害を増強する。

酸化傷害

酸化ストレスは以下によって増強される:

  • アルコール摂取により引き起こされる肝臓での代謝亢進

  • フリーラジカルにより誘導される脂質過酸化反応

  • アルコールに関連する低栄養により引き起こされる防御的な抗酸化物質(例,グルタチオン,ビタミンAおよびE)の減少

  • 肝臓の細胞タンパク質へのアルコール酸化産物(アセトアルデヒドなど)の結合による新抗原(neoantigen)の形成と,それに続発する炎症

  • 脂質過酸化傷害および新抗原に引き寄せられる好中球および他の白血球の蓄積

  • 白血球より分泌されるサイトカイン

結果として起こる炎症,細胞死,および線維化

炎症を悪化させる悪循環が成立する:すなわち,細胞の壊死およびアポトーシスから肝細胞の喪失を来し,それに続く再生反応の結果として 線維化 肝線維化 肝線維化は,損傷部が過度の組織増生を伴って治癒することで,肝臓内に過剰な結合組織が蓄積した状態である。細胞外基質の過剰産生,分解不良,またはその両者が同時にみられる。誘因は慢性傷害であり,特に炎症がみられる場合である。線維化自体は症状を引き起こさないが, 門脈圧亢進症(瘢痕によって肝臓内の血流に異常が生じる)や... さらに読む が起こる。肝臓の血行路(類洞)を裏打ちする星状(伊東)細胞が増殖して筋線維芽細胞となり,I型コラーゲンや細胞外基質を過剰に産生する。その結果,類洞が狭小化し,血流が制限される。線維化により中心静脈が狭小化し,肝灌流が障害され, 門脈圧亢進 門脈圧亢進症 門脈圧亢進症とは,門脈内の圧力が上昇した状態である。原因として最も頻度が高いものは,肝硬変(先進国),住血吸虫症(流行地域),および肝血管異常である。続発症として,食道静脈瘤や門脈大循環性脳症などが生じる。診断は臨床基準に基づいて行い,しばしば画像検査や内視鏡検査を併用する。治療としては,内視鏡検査,薬剤,またはその両方による消化管出血の... さらに読む につながる。広範な線維化は再生反応を伴い,結果として肝結節が形成される。このプロセスにより肝硬変に至る。

病理

脂肪肝,アルコール性肝炎,および肝硬変は,アルコール性肝疾患の異なる進行性の病像として考えられることが多い。しかしながら,その特徴にはしばしば重複がみられる。

脂肪肝(肝脂肪変性)は,過度の飲酒で最初にみられる最も頻度が高い病態である。脂肪肝は可逆的な場合もある。大滴性脂肪がトリグリセリドの大きな液滴として蓄積し,肝細胞の核を圧排するが,これは細静脈周辺の肝細胞で最も顕著にみられる。肝臓は腫大する。

アルコール性肝炎(脂肪肝炎)は,脂肪肝,びまん性の肝炎症,および肝壊死(しばしば巣状)が複合的に発生する病態で,いずれも様々な重症度を呈する。傷害された肝細胞は,顆粒性細胞質を伴って腫大するか(バルーン変性),細胞質に線維性タンパク質(マロリー小体またはアルコール性のヒアリン小体)がみられる。重度に傷害された肝細胞は壊死に至る。類洞および中心静脈は狭小化する。 肝硬変 肝硬変 肝硬変は,正常な肝構築が広範に失われた 肝線維化の後期の病像である。肝硬変は,密な線維化組織に囲まれた再生結節を特徴とする。症状は何年も現れないことがあり,しばしば非特異的である(例,食欲不振,疲労,体重減少)。後期の臨床像には, 門脈圧亢進症,腹水,代償不全に至った場合の 肝不全などがある。診断にはしばしば肝生検が必要となる。肝硬変は通... さらに読む が併存することもある。

アルコール性肝硬変は,正常な肝構築を崩壊させる広範な線維化を特徴とする,進行した肝疾患である。脂肪の存在量は様々である。アルコール性肝炎が併存することもある。肝再生時に弱い代償反応が生じることで,比較的小さな結節が生じる(小結節性肝硬変)。その結果,通常は肝臓が萎縮する。やがては,たとえ禁酒したとしても,線維化が幅の広い帯状になり,肝組織を複数の大きな結節に分割する(大結節性肝硬変— 肝硬変:病態生理 病態生理 肝硬変は,正常な肝構築が広範に失われた 肝線維化の後期の病像である。肝硬変は,密な線維化組織に囲まれた再生結節を特徴とする。症状は何年も現れないことがあり,しばしば非特異的である(例,食欲不振,疲労,体重減少)。後期の臨床像には, 門脈圧亢進症,腹水,代償不全に至った場合の 肝不全などがある。診断にはしばしば肝生検が必要となる。肝硬変は通... さらに読む を参照)。

症状と徴候

通常は30代または40代から症状がみられるようになり,重度の症状はそれから約10年後に出現する。

脂肪肝は無症状のことが多い。3分の1の患者では,肝臓が腫大し,表面が滑らかになるが,圧痛は通常みられない。

アルコール性肝炎は,軽度で可逆的なものから,生命を脅かすものまで幅がある。中等症では,大半の患者が低栄養で,疲労,発熱,黄疸,右上腹部痛,圧痛を伴う肝腫大を呈し,ときに肝臓の血管雑音(hepatic bruit)が聴取される。約40%では入院後すぐに悪化し,軽度(例,黄疸の増強)から重度(例,腹水, 門脈大循環性脳症 門脈大循環性脳症 門脈大循環性脳症は精神神経症状を生じる症候群である。ほとんどの場合,門脈大循環シャントが形成された患者において,腸管内タンパク質の増加または急性の代謝ストレス(例,消化管出血,感染,電解質異常)の結果として発生する。主に精神神経症状がみられる(例,錯乱,羽ばたき振戦,昏睡)。診断は臨床所見に基づく。治療は通常,原因となっている急性の病態の... さらに読む ,静脈瘤出血,低血糖を伴う肝不全,凝固障害)の病態を続発する。 肝硬変 肝硬変 肝硬変は,正常な肝構築が広範に失われた 肝線維化の後期の病像である。肝硬変は,密な線維化組織に囲まれた再生結節を特徴とする。症状は何年も現れないことがあり,しばしば非特異的である(例,食欲不振,疲労,体重減少)。後期の臨床像には, 門脈圧亢進症,腹水,代償不全に至った場合の 肝不全などがある。診断にはしばしば肝生検が必要となる。肝硬変は通... さらに読む のその他の病像を呈することもある。

肝硬変でも,代償性であれば,無症状のことがある。肝臓は通常小さく,腫大している場合は脂肪肝または 肝細胞癌 肝細胞癌 肝細胞癌は通常,肝硬変患者に発生し,B型およびC型肝炎ウイルス感染症の有病率が高い地域ではよくみられる。症状と徴候は通常,非特異的である。診断はα-フェトプロテイン(AFP)値と画像検査のほか,ときに肝生検に基づく。高リスク患者には,定期的なAFPの測定および超音波検査によるスクリーニングがときに推奨される。癌が進行した場合の予後は不良で... さらに読む を疑うべきである。症状は,アルコール性肝炎のものから, 門脈圧亢進症 門脈圧亢進症 門脈圧亢進症とは,門脈内の圧力が上昇した状態である。原因として最も頻度が高いものは,肝硬変(先進国),住血吸虫症(流行地域),および肝血管異常である。続発症として,食道静脈瘤や門脈大循環性脳症などが生じる。診断は臨床基準に基づいて行い,しばしば画像検査や内視鏡検査を併用する。治療としては,内視鏡検査,薬剤,またはその両方による消化管出血の... さらに読む (しばしば 食道静脈瘤 静脈瘤 静脈瘤は,門脈圧亢進症に起因する下部食道または近位胃の静脈拡張で,門脈圧亢進症の原因は典型的には肝硬変である。大出血することがあるが,他には何も症状を引き起こさない。診断は上部消化管内視鏡検査による。治療は主に内視鏡的結紮術およびオクトレオチド静脈内投与による。ときに経頸静脈的肝内門脈大循環短絡術を行う必要がある。... さらに読む 静脈瘤 ,上部消化管出血,脾腫,腹水,門脈大循環性脳症などを伴う)などの肝疾患末期の合併症まで様々である。門脈圧亢進は低酸素血症(肝肺症候群)を伴う肺内動静脈シャントにつながることがあり,その場合はチアノーゼや時計皿爪(nail clubbing)がみられる。進行性の腎血流量の減少に続発して,急性腎不全(肝腎症候群)が発生することもある。アルコール性肝硬変患者の10~15%に 肝細胞癌 肝細胞癌 肝細胞癌は通常,肝硬変患者に発生し,B型およびC型肝炎ウイルス感染症の有病率が高い地域ではよくみられる。症状と徴候は通常,非特異的である。診断はα-フェトプロテイン(AFP)値と画像検査のほか,ときに肝生検に基づく。高リスク患者には,定期的なAFPの測定および超音波検査によるスクリーニングがときに推奨される。癌が進行した場合の予後は不良で... さらに読む が発生する。

慢性アルコール中毒は,肝疾患よりもむしろ,手掌筋膜のデュピュイトラン拘縮,くも状血管腫,ミオパチー,末梢神経障害などを引き起こす。男性の慢性アルコール中毒では, 性腺機能低下症 男性性腺機能低下症 性腺機能低下症は,関連する症候,精子産生の欠乏,またはそれらの両方を伴うテストステロンの欠乏と定義される。精巣の疾患に起因する場合(原発性性腺機能低下症)と,視床下部-下垂体系の疾患に起因する場合(続発性性腺機能低下症)がある。どちらも先天性の場合と,加齢,疾患,薬剤,その他の因子による後天性の場合がある。さらに,いくつかの先天的な酵素欠... さらに読む および女性化の徴候(例,滑らかな肌,男性型脱毛症の欠如,女性化乳房,精巣萎縮,陰毛の変化)がみられる。低栄養から,ビタミン欠乏症(例,葉酸やチアミンの欠乏),耳下腺腫大,および白色爪を起こすこともある。アルコール依存車では,主に チアミン欠乏症 チアミン欠乏症 チアミン欠乏症(脚気を引き起こす)は,白米または高度に精製された炭水化物を常食としている発展途上国の人,およびアルコール依存症患者で最もよくみられる。症状としては,びまん性の多発神経障害,高拍出性心不全,ウェルニッケ-コルサコフ症候群などがある。欠乏症の診断および治療を補助するために,チアミンが投与される。... さらに読む からウェルニッケ脳症やコルサコフ精神病が生じる。 膵炎 膵炎の概要 膵炎は急性または慢性のいずれかに分類される。 急性膵炎では,炎症が臨床的および組織学的のいずれにおいても消失する。 慢性膵炎は,不可逆的かつ進行性の組織学的変化を特徴とし,膵内外分泌機能に大幅な低下を来す。慢性膵炎患者は,急性疾患の急性増悪(flare-up)を起こすことがある。... さらに読む がよくみられる。 C型肝炎 C型肝炎,急性 C型肝炎は,しばしば血液感染するRNAウイルスによって引き起こされる。ときに食欲不振や倦怠感,黄疸などのウイルス性肝炎の典型症状を引き起こすが,無症状のこともある。まれに劇症肝炎や死に至る。約75%で慢性肝炎となり,肝硬変やまれに肝細胞癌に至ることもある。診断は血清学的検査による。治療は支持療法である。利用可能なワクチンはない。... さらに読む はアルコール依存症患者の25%以上に発生し,これらの併発は肝疾患の進行を著しく悪化させる。

脂肪肝または肝硬変の患者は,まれにZieve症候群(高脂血症,溶血性貧血,および黄疸)を発症することがある。

診断

  • 飲酒歴の確認

  • 肝機能検査および血算

  • ときに肝生検

慢性的に過度の飲酒を続けている患者,特に1日当たりのアルコール摂取量が80gを超える患者では,肝疾患の原因としてアルコールが疑われる。患者が報告する飲酒量が疑わしい場合は,家族から飲酒歴を確認すべきである。アルコール依存症のスクリーニングとして,CAGE質問票(need to Cut down[飲酒量を減らす必要がある],Annoyed by criticism[飲酒を非難されることにイライラする],Guilty about drinking[飲酒することに罪悪感を覚える],need for a morningEye-opener[迎え酒を必要とする])を用いることができる。アルコール性肝疾患に特異的な検査はないが,この病態が疑われる場合は,肝障害や貧血の徴候を検出するために,肝機能検査(PT,血清ビリルビン,アミノトランスフェラーゼ,およびアルブミン)と血算を施行する。

アミノトランスフェラーゼ値が中等度に上昇(300IU/L未満)するが,肝傷害の程度を反映するわけではない。アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)に対するアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の比は2以上である。ALT値が低下する理由は,ALTが機能するために必要なピリドキサルリン酸(ビタミンB6)の摂取不足である。ASTへの影響はさほど顕著ではない。血清γ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)値の上昇については,胆汁うっ滞,肝障害,または他の薬剤の使用よりも,むしろエタノールによる酵素誘導が大きな要因となる。血清アルブミンは低値を示すことがあり,これは通常低栄養を反映したものであるが,それ以外に,アルブミン合成障害を伴う明らかな肝不全を反映している場合もある。平均赤血球容積が100fLを超える大赤血球症は,低栄養状態のアルコール依存症患者で一般にみられる葉酸欠乏症による大球性貧血のほか,骨髄に対するアルコールの直接的影響を反映している場合もある。肝疾患の重症度の指標を以下に示す:

  • 血清ビリルビン値(分泌機能を反映する)

  • プロトロンビン時間または国際標準化比(合成能を反映する)

診断のために 肝臓の画像検査 肝臓および胆嚢の画像検査 胆道疾患の正確な診断には画像検査が不可欠であり,巣状の肝病変(例,膿瘍,腫瘍)の検出にも重要である。肝細胞障害によるびまん性疾患(例, 肝炎, 肝硬変)の検出および診断には限界がある。 従来からの超音波検査は,経腹的に施行され,一定時間の絶食を必要とし,構造的な情報は得られるものの,機能的な情報は得られない。一方で胆道系(特に胆嚢)を画像... さらに読む 肝臓および胆嚢の画像検査 をルーチンに施行する必要性はない。他の理由で腹部超音波検査またはCTが施行された場合には,脂肪肝が示唆されたり,脾腫,門脈圧亢進所見,または 腹水 腹水 腹水とは,腹腔内に液体が貯留した状態のことである。最も一般的な原因は門脈圧亢進症である。症状は通常,腹部膨隆により生じる。診断は身体診察のほか,しばしば超音波検査またはCTに基づく。治療法としては,食塩制限,利尿薬,腹水穿刺などがある。腹水に感染が起こることもあり( 特発性細菌性腹膜炎),しばしば疼痛と発熱を伴う。感染の診断には腹水の分析... さらに読む が検出されたりすることがある。超音波エラストグラフィーでは,肝硬度を測定でき,進行した 線維化 肝線維化 肝線維化は,損傷部が過度の組織増生を伴って治癒することで,肝臓内に過剰な結合組織が蓄積した状態である。細胞外基質の過剰産生,分解不良,またはその両者が同時にみられる。誘因は慢性傷害であり,特に炎症がみられる場合である。線維化自体は症状を引き起こさないが, 門脈圧亢進症(瘢痕によって肝臓内の血流に異常が生じる)や... さらに読む を検出できる。この有益な補助検査により, 肝硬変 肝硬変 肝硬変は,正常な肝構築が広範に失われた 肝線維化の後期の病像である。肝硬変は,密な線維化組織に囲まれた再生結節を特徴とする。症状は何年も現れないことがあり,しばしば非特異的である(例,食欲不振,疲労,体重減少)。後期の臨床像には, 門脈圧亢進症,腹水,代償不全に至った場合の 肝不全などがある。診断にはしばしば肝生検が必要となる。肝硬変は通... さらに読む の確認や予後予測のための肝生検を回避することができる。厳密な有用性については,まだ研究段階にある。

アルコール性肝疾患を示唆する異常を認めた場合は,治療可能な他の肝疾患(特にウイルス性肝炎)のスクリーニング検査を行うべきである。

肝生検の適応については,全ての専門医の間で合意が形成されているわけではない。提唱されている適応としては以下のものがある:

  • 臨床診断が不明確な場合(例,判断の難しい臨床所見および臨床検査所見,原因不明かつ持続性のアミノトランスフェラーゼ高値)

  • 臨床的に疑われる肝疾患の原因が複数ある場合(例,アルコール性肝炎とウイルス性肝炎が疑われる場合)

  • 正確な予後予測が望まれる場合

診断に関する参考文献

予後

予後は肝臓の線維化および炎症の程度によって決まる。線維化を来していない脂肪肝およびアルコール性肝炎は,患者が禁酒すれば可逆的である。禁酒した場合,脂肪肝は6週間以内に完全に消失する可能性がある。線維化と肝硬変は通常は不可逆的である。

特定の生検所見(例,好中球,細静脈周囲の線維化)は予後不良の指標である。肝障害の重症度および死亡率を予測する定量的指標として,主にプロトロンビン時間,クレアチニン(肝腎症候群),ビリルビンなどの肝不全に特徴的な臨床検査値を用いる方法が提唱されている。具体的にはMaddreyの判別関数があり,以下の式で算出できる:

equation

この式では,ビリルビン値の単位としてmg/dLを用いる(µmol/L単位のビリルビン値は17で割って変換する)。値が32を超えると,短期死亡率が高くなる(例,1カ月後の時点で,脳症を伴わない場合は35%,脳症を伴う場合は45%)。他の指標としてModel for End-Stage Liver Disease(MELD)スコア,Glasgowアルコール性肝炎スコア,Lilleモデルなどがある。12歳以上の患者では,次の式を用いてMELDスコアを算出することができる:

equation

鉄蓄積またはC型慢性肝炎を伴う場合には,肝細胞癌のリスクが高くなる。

治療

  • 禁酒

  • 支持療法

  • 重度のアルコール性肝炎にはコルチコステロイドおよび経腸栄養

  • ときに移植

飲酒制限

禁酒が治療の中心であり,これによりアルコール性肝疾患によるさらなる障害を予防することで,延命につながる。コンプライアンスに問題があるため,思いやりのあるチームアプローチが必須となる。動機づけされた患者には行動面への介入と心理社会的介入が役立つ可能性があり,具体的にはリハビリテーションプログラムと支援段階(アルコール使用障害とリハビリテーション:維持療法期 維持療法期 アルコール使用障害では,飲酒のパターンが生じ,典型的には渇望と耐性(tolerance)の症状および/または心理社会的な悪影響のある離脱症状が伴う。アルコール依存症およびアルコール乱用は一般的であるが,あまり厳密に定義されていない用語であり,アルコール関連の問題を有する人に適用される。... さらに読む を参照),プライマリケア医による短期間の介入,禁酒に対する動機を探索して明確化する治療法(動機づけ強化療法)などがある。

薬剤については,使用するとしても,他の介入の補助と考えるべきである。オピオイド拮抗薬(ナルトレキソンまたはナルメフェン)とγ-アミノ酪酸受容体を調節する薬剤(バクロフェンまたはアカンプロサート)は,アルコールに対する渇望と離脱症状を軽減する効果により,短期的に有益となるようである。ジスルフィラムは,アルデヒド脱水素酵素を阻害して,アセトアルデヒドを蓄積させるが,これにより,ジスルフィラムの服用後12時間以内に飲酒すると,紅潮およびその他の不快な症状が引き起こされる。しかしながら,ジスルフィラムに禁酒を促進させる効果は示されておらず,そのため,特定の患者のみに推奨される。

支持療法

全般的な管理では支持療法に重点を置く。禁酒を始めてから数日間は,栄養価の高い食事とビタミン補給(特にビタミンB)が重要である。アルコール離脱症状には,ベンゾジアゼピン系薬剤(例,ジアゼパム)の使用が必要である。進行したアルコール性肝疾患の患者では,門脈大循環性脳症を引き起こす恐れがあるため,過鎮静は回避しなければならない。

重度の急性アルコール性肝炎では,経腸栄養(栄養欠乏症の管理の補助となりうる)を促すとともに,個々の合併症(例,感染症,食道静脈瘤出血,具体的な栄養欠乏症, ウェルニッケ脳症 ウェルニッケ脳症 ウェルニッケ脳症は, チアミン欠乏による錯乱,眼振,部分的眼筋麻痺,および運動失調の急性発症を特徴とする。診断は主として臨床的に行う。本障害は治療により寛解することもあれば,持続することもあり,また悪化して コルサコフ精神病を呈することもある。治療はチアミン療法と支持療法から成る。... さらに読む コルサコフ精神病 コルサコフ精神病 コルサコフ精神病は,持続的なウェルニッケ脳症の晩期合併症であり,記憶障害,錯乱,および行動変化を引き起こす。 コルサコフ精神病は, ウェルニッケ脳症の未治療患者の80%に発生し,重度の アルコール依存症が基礎にあるのが一般的である。コルサコフ精神病が一部のウェルニッケ脳症患者にのみ発現する理由は不明である。最初に典型的なウェルニッケ脳症の... さらに読む ,電解質異常, 門脈圧亢進症 門脈圧亢進症 門脈圧亢進症とは,門脈内の圧力が上昇した状態である。原因として最も頻度が高いものは,肝硬変(先進国),住血吸虫症(流行地域),および肝血管異常である。続発症として,食道静脈瘤や門脈大循環性脳症などが生じる。診断は臨床基準に基づいて行い,しばしば画像検査や内視鏡検査を併用する。治療としては,内視鏡検査,薬剤,またはその両方による消化管出血の... さらに読む 腹水 腹水 腹水とは,腹腔内に液体が貯留した状態のことである。最も一般的な原因は門脈圧亢進症である。症状は通常,腹部膨隆により生じる。診断は身体診察のほか,しばしば超音波検査またはCTに基づく。治療法としては,食塩制限,利尿薬,腹水穿刺などがある。腹水に感染が起こることもあり( 特発性細菌性腹膜炎),しばしば疼痛と発熱を伴う。感染の診断には腹水の分析... さらに読む 門脈大循環性脳症 門脈大循環性脳症 門脈大循環性脳症は精神神経症状を生じる症候群である。ほとんどの場合,門脈大循環シャントが形成された患者において,腸管内タンパク質の増加または急性の代謝ストレス(例,消化管出血,感染,電解質異常)の結果として発生する。主に精神神経症状がみられる(例,錯乱,羽ばたき振戦,昏睡)。診断は臨床所見に基づく。治療は通常,原因となっている急性の病態の... さらに読む ―本マニュアルの他の節を参照)を管理するために,一般的に入院(しばしば集中治療室での管理)が必要となる。

特異的治療

コルチコステロイド(例,プレドニゾロン40mg/日を4週間経口投与後,漸減する)は,重度の急性アルコール性肝炎(Maddreyの判別関数の値が32以上)で感染症,消化管出血,腎不全,膵炎の合併がみられない患者で転帰を改善する (1) 治療に関する参考文献 欧米諸国の大半ではアルコール摂取量が高くなっている。精神疾患の診断・統計マニュアル DSM-5(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition)によると,米国では任意の12カ月という期間で8... さらに読む 治療に関する参考文献

コルチコステロイドと経腸栄養以外には,明確に確立された特異的治療法はほとんどない。抗酸化剤(例,S-アデノシル-l-メチオニン,ホスファチジルコリン,メタドキシン)が早期 肝硬変 肝硬変 肝硬変は,正常な肝構築が広範に失われた 肝線維化の後期の病像である。肝硬変は,密な線維化組織に囲まれた再生結節を特徴とする。症状は何年も現れないことがあり,しばしば非特異的である(例,食欲不振,疲労,体重減少)。後期の臨床像には, 門脈圧亢進症,腹水,代償不全に至った場合の 肝不全などがある。診断にはしばしば肝生検が必要となる。肝硬変は通... さらに読む の肝障害を改善する薬剤として有望な成績を示しているが,さらなる研究が必要である。サイトカイン,特に腫瘍壊死因子(TNF)αを標的として炎症の軽減を目指す治療法については,複数の小規模試験で様々な結果が得られている。TNF-αの合成を阻害するホスホジエステラーゼ阻害薬であるペントキシフィリンについては,重症アルコール性肝炎患者を対象とした臨床試験で相反する結果が得られている。TNF-αを阻害する生物製剤(例,インフリキシマブ,エタネルセプト)を使用する場合は,感染のリスクが有益性を上回る。線維化を軽減する薬剤(例,コルヒチン,ペニシラミン)やアルコール性肝疾患の代謝亢進を正常化する薬剤(例,プロピルチオウラシル)の有益性は証明されていない。シリマリン(マリアアザミ[ミルクシスル])やビタミンAおよびEなどの抗酸化剤は無効である。

肝移植 肝移植 肝移植は,実質臓器の移植の中で2番目に多い。( 移植の概要も参照のこと。) 肝移植の適応としては以下のものがある: 肝硬変(米国では移植全体の70%;そのうち60~70%がC型肝炎によるもの) 劇症型の肝壊死(fulminant hepatic necrosis)(約8%) 肝細胞癌(約7%) さらに読む は重症例で考慮することができる。肝移植を行った場合の5年生存率は,非アルコール性肝疾患での場合と同等であり,活動性肝疾患がみられない場合は80%,急性アルコール性肝炎では50%である。肝移植を受けた患者の半数近くが飲酒を再開するため,ほとんどのプログラムが移植前6カ月間の禁酒を肝移植の必要条件としており,最近のデータから早期の移植が生存率の向上につながると示唆されているが,現時点では早期の肝移植は標準治療となっていない。

治療に関する参考文献

  • Rambaldi A, Saconato HH, Christensen E, et al: Systematic review: Glucocorticosteroids for alcoholic hepatitis―A Cochrane Hepato-Biliary Group systematic review with meta-analyses and trial sequential analyses of randomized clinical trials.Aliment Pharmacol Ther 27(12):1167-1178, 2008.doi: 10.1111/j.1365-2036.2008.03685.x.

要点

  • 男性におけるアルコール性肝疾患のリスクは,1日のアルコール摂取量が10年以上にわたり40gを超えると著明に増大し,特に80g(例,ビール2~8缶,蒸留酒3~6ショット,またはワイン3~6グラス)を超えると大幅に増大する;女性における肝疾患のリスクは,男性の半量で著明に増大する。

  • CAGE質問票を用いて患者のスクリーニングを行い,患者が報告する飲酒量が疑わしい場合は,家族への確認を考慮する。

  • 予後を推定するため,予後不良の組織学的所見(例,好中球,細静脈周囲の線維化)と計算式(例,Maddreyの判別関数,Model for End-Stage Liver Disease[MELD]スコア)の使用を考慮する。

  • 禁酒の重要性を強調し,支持療法を行うとともに,患者を入院させ,重度の急性アルコール性肝炎患者にはコルチコステロイドを投与する。

  • 肝移植は禁酒を継続している患者で考慮する。

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