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アルコール性肝疾患

執筆者:

Nicholas T. Orfanidis

, MD, Thomas Jefferson University Hospital

最終査読/改訂年月 2019年 7月
本ページのリソース

欧米諸国の大半ではアルコール摂取量が高くなっている。精神疾患の診断・統計マニュアル DSM-5(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition)によると,米国では任意の12カ月という期間で8.5%の成人がアルコール使用障害を有していると推定されている(アルコール使用障害とリハビリテーションを参照)。男女比はおよそ2:1である。アルコール乱用者でみられる疾患には次のものがあり,下記の順に進行する場合が多い:

(2018 年のAmerican College of Gastroenterologyのアルコール性肝疾患の診療ガイドラインも参照のこと。)

肝硬変患者では肝細胞癌も発生することがあり,特に鉄の蓄積がみられる場合にその傾向が強い。

危険因子

アルコール性肝疾患の主な危険因子を以下に示す:

  • 飲酒量と飲酒期間(通常は8年以上)

  • 性別

  • 遺伝形質および代謝特性

  • 肥満

アルコール摂取量

感受性の高い人では,一般にアルコール摂取量および摂取期間と肝疾患の発生との間に直線的な相関が認められる。

アルコール摂取量は,摂取した飲料の体積(mL)とアルコール度数の積によって推定できる。例えば,80プルーフ(アルコール度数40%)の飲料約45mLには,体積で18mLのアルコールが含まれている。1mL当たりに含まれるアルコールは約0.79gである。値は様々であるが,アルコール度数はほとんどのビールで約2~7%,ほとんどのワインで10~15%である。したがって,グラス1杯(約360mL)のビールには約5~20g,グラス1杯(約150mL)のワインには12~18g,1ショット(約45mL)の蒸留酒には約14gのアルコールが含まれていることになる。

男性における肝疾患のリスクは,1日のアルコール摂取量が10年以上にわたり40gを超えると著明に増大し,特に80g(例,ビール2~8缶,蒸留酒3~6ショット,またはワイン3~6グラス)を超えると大幅に増大する。肝硬変の発生に至るには,通常,10年以上にわたって1日当たり 80gを超えるアルコールを摂取しなければならない。20年間にわたり1日230gを超えるアルコール摂取を続けた場合,肝硬変のリスクは約50%となる。しかし,慢性的なアルコール乱用者でも,肝疾患を発症するのは一部のみである。したがって,飲酒量の違いのみで肝疾患に対する感受性の差を説明することはできず,その他の因子も関与している可能性が示唆される。

性別

女性では,体格を考慮した場合でも,男性よりもアルコール性肝疾患に対する感受性が高い。女性の場合,20~40gのアルコール(すなわち男性の半量)でもリスクが高まる。女性のリスクが高いのは,胃粘膜に存在するアルコール脱水素酵素が少ないために,より多くのアルコールが分解されないまま肝臓に到達するためと考えられる。

遺伝因子

アルコール性肝疾患は,しばしば家族内で集積することから,遺伝因子(例,アルコールを除去する細胞質酵素の欠乏)の存在が示唆される。

栄養状態

不飽和脂肪を多く含む食事は,肥満と同様に感受性を高める。

その他の因子

その他の危険因子には,肝臓への鉄の蓄積(鉄摂取量とは必ずしも相関しない),C型肝炎の併発などがある。

病態生理

アルコールの吸収および代謝

アルコール(エタノール)は,胃からも容易に吸収されるが,大部分は小腸から吸収される。アルコールが蓄積することはない。吸収されたアルコールの少量は,胃粘膜を通過する間に分解されるが,大部分は肝臓で代謝され,主にアルコール脱水素酵素(ADH)によるが,チトクロムP450 2E1(CYP2E1)およびミクロソームエタノール酸化系(MEOS)によっても分解される。

ADHを介した代謝の流れを以下に示す:

  • 細胞質酵素であるADHにより,アルコールがアセトアルデヒドに酸化される。ADHの遺伝子多型により,同量の飲酒後の血中アルコール濃度にみられる個人差を一部説明できるが,アルコール性肝疾患の感受性の差を説明することはできない。

  • 次に,ミトコンドリア酵素であるアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)により,アセトアルデヒドが酢酸に酸化される。慢性の飲酒は酢酸の生成を促進する。アジア人はALDHの発現量が低く,アセトアルデヒドの毒性作用(例,紅潮)により高い感受性を示すが,このような影響は,ALDHを阻害するジスルフィラムの作用と同様である。

  • この酸化反応では水素が産生されるが,これがニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)を還元型(NADH)に変換し,肝臓における酸化還元電位(NADH/NAD)を上昇させる。

  • 酸化還元電位の上昇は,脂肪酸酸化と糖新生を阻害し,肝臓への脂肪の蓄積を促進する。

慢性アルコール中毒は,MEOS(主に小胞体内)を誘導し,その活性を増強させる。関係する主な酵素はCYP2E1である。誘導された場合,MEOS経路はアルコール代謝全体の20%を占めることもある。この経路は有害な活性酸素種の産生につながり,酸化ストレスや酸素フリーラジカルの形成を増加させる。

肝臓への脂肪の蓄積

以下に示す理由のために脂肪(トリグリセリド)が肝細胞全体に蓄積する:

  • 肝臓での脂肪酸酸化およびリポタンパク質産生の減少により,肝外への脂肪の供給が減少する。

  • 肝外への脂肪供給が減少すると,末梢での脂肪分解とトリグリセリド合成が増加する結果,高脂血症を来すため,肝臓への脂肪の流入が増加する。

肝臓に脂肪が蓄積すると,酸化損傷に対する感受性が高まる可能性がある。

腸管内の内毒素

アルコールは腸壁の透過性を変化させることで,腸内細菌が放出する内毒素の吸収を促進する。内毒素(障害された肝臓ではもはや解毒できない)に対する反応として,肝マクロファージ(クッパー細胞)がフリーラジカルを放出し,酸化傷害を増強する。

酸化傷害

酸化ストレスは以下によって増強される:

  • アルコール摂取により引き起こされる肝臓での代謝亢進

  • フリーラジカルにより誘導される脂質過酸化反応

  • アルコールに関連する低栄養により引き起こされる防御的な抗酸化物質(例,グルタチオン,ビタミンAおよびE)の減少

  • 肝臓の細胞タンパク質へのアルコール酸化産物(アセトアルデヒドなど)の結合による新抗原(neoantigen)の形成と,それに続発する炎症

  • 脂質過酸化傷害および新抗原に引き寄せられる好中球および他の白血球の蓄積

  • 白血球より分泌されるサイトカイン

肝臓に鉄の蓄積があると,酸化傷害を悪化させる。アルコール性肝疾患では,鉄分が添加されたワインの摂取によって鉄が蓄積しうるが,ほとんどの場合,鉄の蓄積は軽度である。この状態は,遺伝性ヘモクロマトーシスと鑑別する必要がある。

結果として起こる炎症,細胞死,および線維化

炎症を悪化させる悪循環が成立する:すなわち,細胞の壊死およびアポトーシスから肝細胞の喪失を来し,それに続く再生反応の結果として線維化が起こる。肝臓の血行路(類洞)を裏打ちする星状(伊東)細胞が増殖して筋線維芽細胞となり,I型コラーゲンや細胞外基質を過剰に産生する。その結果,類洞が狭小化し,血流が制限される。線維化により中心静脈が狭小化し,肝灌流が障害され,門脈圧亢進につながる。広範な線維化は再生反応を伴い,結果として肝結節が形成される。このプロセスにより肝硬変に至る。

病理

脂肪肝,アルコール性肝炎,および肝硬変は,アルコール性肝疾患の異なる進行性の病像として考えられることが多い。しかしながら,その特徴にはしばしば重複がみられる。

脂肪肝(肝脂肪変性)は,過度の飲酒で最初にみられる最も頻度が高い病態である。脂肪肝は可逆的な場合もある。大滴性脂肪がトリグリセリドの大きな液滴として蓄積し,肝細胞の核を圧排するが,これは細静脈周辺の肝細胞で最も顕著にみられる。肝臓は腫大する。

アルコール性肝炎(脂肪肝炎)は,脂肪肝,びまん性の肝炎症,および肝壊死(しばしば巣状)が複合的に発生する病態で,いずれも様々な重症度を呈する。傷害された肝細胞は,顆粒性細胞質を伴って腫大するか(バルーン変性),細胞質に線維性タンパク質(マロリー小体またはアルコール性のヒアリン小体)がみられる。重度に傷害された肝細胞は壊死に至る。類洞および中心静脈は狭小化する。肝硬変が併存することもある。

アルコール性肝硬変は,正常な肝構築を崩壊させる広範な線維化を特徴とする,進行した肝疾患である。脂肪の存在量は様々である。アルコール性肝炎が併存することもある。肝再生時に弱い代償反応が生じることで,比較的小さな結節が生じる(小結節性肝硬変)。その結果,通常は肝臓が萎縮する。やがては,たとえ禁酒したとしても,線維化が幅の広い帯状になり,肝組織を複数の大きな結節に分割する(大結節性肝硬変—肝硬変:病態生理を参照)。

症状と徴候

通常は30代または40代から症状がみられるようになり,重度の症状はそれから約10年後に出現する。

脂肪肝は無症状のことが多い。3分の1の患者では,肝臓が腫大し,表面が滑らかになるが,圧痛は通常みられない。

アルコール性肝炎は,軽度で可逆的なものから,生命を脅かすものまで幅がある。中等症では,大半の患者が低栄養で,疲労,発熱,黄疸,右上腹部痛,圧痛を伴う肝腫大を呈し,ときに肝臓の血管雑音(hepatic bruit)が聴取される。約40%では入院後すぐに悪化し,軽度(例,黄疸の増強)から重度(例,腹水,門脈大循環性脳症,静脈瘤出血,低血糖を伴う肝不全,凝固障害)の病態を続発する。肝硬変のその他の病像を呈することもある。

肝硬変でも,代償性であれば,無症状のことがある。肝臓は通常小さく,腫大している場合は脂肪肝または肝細胞癌を疑うべきである。症状は,アルコール性肝炎のものから,門脈圧亢進症(しばしば食道静脈瘤,上部消化管出血,脾腫,腹水,門脈大循環性脳症などを伴う)などの肝疾患末期の合併症まで様々である。門脈圧亢進は低酸素血症(肝肺症候群)を伴う肺内動静脈シャントにつながることがあり,その場合はチアノーゼや時計皿爪(nail clubbing)がみられる。進行性の腎血流量の減少に続発して,急性腎不全(肝腎症候群)が発生することもある。アルコール性肝硬変患者の10~15%に肝細胞癌が発生する。

慢性アルコール中毒は,肝疾患よりもむしろ,手掌筋膜のデュピュイトラン拘縮,くも状血管腫,ミオパチー,末梢神経障害などを引き起こす。男性の慢性アルコール中毒では,性腺機能低下症および女性化の徴候(例,滑らかな肌,男性型脱毛症の欠如,女性化乳房,精巣萎縮,陰毛の変化)がみられる。低栄養から,ビタミン欠乏症(例,葉酸やチアミンの欠乏),耳下腺腫大,および白色爪を起こすこともある。アルコール依存車では,主にチアミン欠乏症からウェルニッケ脳症やコルサコフ精神病が生じる。膵炎がよくみられる。C型肝炎はアルコール依存症患者の25%以上に発生し,これらの併発は肝疾患の進行を著しく悪化させる。

脂肪肝または肝硬変の患者は,まれにZieve症候群(高脂血症,溶血性貧血,および黄疸)を発症することがある。

診断

  • 飲酒歴の確認

  • 肝機能検査および血算

  • ときに肝生検

慢性的に過度の飲酒を続けている患者,特に1日当たりのアルコール摂取量が80gを超える患者では,肝疾患の原因としてアルコールが疑われる。患者が報告する飲酒量が疑わしい場合は,家族から飲酒歴を確認すべきである。アルコール依存症のスクリーニングとして,CAGE質問票(need to Cut down[飲酒量を減らす必要がある],Annoyed by criticism[飲酒を非難されることにイライラする],Guilty about drinking[飲酒することに罪悪感を覚える],need for a morningEye-opener[迎え酒を必要とする])を用いることができる。アルコール性肝疾患に特異的な検査はないが,この病態が疑われる場合は,肝障害や貧血の徴候を検出するために,肝機能検査(PT,血清ビリルビン,アミノトランスフェラーゼ,およびアルブミン)と血算を施行する。

アミノトランスフェラーゼ値が中等度に上昇(300IU/L未満)するが,肝傷害の程度を反映するわけではない。アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)に対するアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の比は2以上である。ALT値が低下する理由は,ALTが機能するために必要なピリドキサルリン酸(ビタミンB6)の摂取不足である。ASTへの影響はさほど顕著ではない。血清γ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)値の上昇については,胆汁うっ滞,肝障害,または他の薬剤の使用よりも,むしろエタノールによる酵素誘導が大きな要因となる。血清アルブミンは低値を示すことがあり,これは通常低栄養を反映したものであるが,それ以外に,アルブミン合成障害を伴う明らかな肝不全を反映している場合もある。平均赤血球容積が100fLを超える大赤血球症は,低栄養状態のアルコール依存症患者で一般にみられる葉酸欠乏症による大球性貧血のほか,骨髄に対するアルコールの直接的影響を反映している場合もある。肝疾患の重症度の指標を以下に示す:

  • 血清ビリルビン値(分泌機能を反映する)

  • プロトロンビン時間または国際標準化比(合成能を反映する)

血小板減少は,アルコールが骨髄に直接及ぼす毒性,または門脈圧亢進症に伴う脾腫により発生する。併存する感染症(特に肺炎や特発性細菌性腹膜炎など)も疑うべきであるが,アルコール性肝炎の結果として好中球優位の白血球増多が発生することもある。

診断のために肝臓の画像検査をルーチンに施行する必要性はない。他の理由で腹部超音波検査またはCTが施行された場合には,脂肪肝が示唆されたり,脾腫,門脈圧亢進所見,または腹水が検出されたりすることがある。超音波エラストグラフィーでは,肝硬度を測定でき,進行した線維化を検出できる。この有益な補助検査により,肝硬変の確認や予後予測のための肝生検を回避することができる。厳密な有用性については,まだ研究段階にある。

アルコール性肝疾患を示唆する異常を認めた場合は,治療可能な他の肝疾患(特にウイルス性肝炎)のスクリーニング検査を行うべきである。

脂肪肝,アルコール性肝炎,および肝硬変は特徴に重複がみられるため,患者をいずれかのカテゴリーに分類(これは肝生検でしか決定できない)するよりも,所見を精密に記載することの方が有用である。

肝生検の適応については,全ての専門医の間で合意が形成されているわけではない。提唱されている適応としては以下のものがある:

  • 臨床診断が不明確な場合(例,判断の難しい臨床所見および臨床検査所見,原因不明かつ持続性のアミノトランスフェラーゼ高値)

  • 臨床的に疑われる肝疾患の原因が複数ある場合(例,アルコール性肝炎とウイルス性肝炎が疑われる場合)

  • 正確な予後予測が望まれる場合

肝生検では,肝疾患の診断を確定でき,可能性の高い原因として過度の飲酒を同定する際の参考となり,肝障害の進行度を判定することができる。鉄の蓄積がみられる場合は,鉄含有量の測定と遺伝子検査によって,原因の候補から遺伝性ヘモクロマトーシスを除外することができる。

安定した肝硬変患者に対し,American Association for the Study of Liver Diseases(AASLD)は,肝細胞癌のスクリーニングを目的とし,場合によってはα-フェトプロテイン(AFP)値の測定を併用する肝臓超音波検査を6カ月毎に施行することを推奨している。またChild分類Cの肝硬変患者では,予想される生存期間が短いため,移植待機リストに登録されていない限りサーベイランスを実施しないよう提案している(1)

診断に関する参考文献

予後

予後は肝臓の線維化および炎症の程度によって決まる。線維化を来していない脂肪肝およびアルコール性肝炎は,患者が禁酒すれば可逆的である。禁酒した場合,脂肪肝は6週間以内に完全に消失する可能性がある。線維化と肝硬変は通常は不可逆的である。

特定の生検所見(例,好中球,細静脈周囲の線維化)は予後不良の指標である。肝障害の重症度および死亡率を予測する定量的指標として,主にプロトロンビン時間,クレアチニン(肝腎症候群),ビリルビンなどの肝不全に特徴的な臨床検査値を用いる方法が提唱されている。具体的にはMaddreyの判別関数があり,以下の式で算出できる:

equation

この式では,ビリルビン値の単位としてmg/dLを用いる(µmol/L単位のビリルビン値は17で割って変換する)。値が32を超えると,短期死亡率が高くなる(例,1カ月後の時点で,脳症を伴わない場合は35%,脳症を伴う場合は45%)。他の指標としてModel for End-Stage Liver Disease(MELD)スコア,Glasgowアルコール性肝炎スコア,Lilleモデルなどがある。12歳以上の患者では,次の式を用いてMELDスコアを算出することができる:

equation

肝硬変とその合併症(例,腹水,出血)が発症してからの5年生存率は約50%であるが,この生存率は禁酒すれば高くなり,飲酒を継続すれば低くなる。

鉄蓄積またはC型慢性肝炎を伴う場合には,肝細胞癌のリスクが高くなる。

治療

  • 禁酒

  • 支持療法

  • 重度のアルコール性肝炎にはコルチコステロイドおよび経腸栄養

  • ときに移植

飲酒制限

禁酒が治療の中心であり,これによりアルコール性肝疾患によるさらなる障害を予防することで,延命につながる。コンプライアンスに問題があるため,思いやりのあるチームアプローチが必須となる。動機づけされた患者には行動面への介入と心理社会的介入が役立つ可能性があり,具体的にはリハビリテーションプログラムと支援段階(アルコール使用障害とリハビリテーション:維持療法期を参照),プライマリケア医による短期間の介入,禁酒に対する動機を探索して明確化する治療法(動機づけ強化療法)などがある。

薬剤については,使用するとしても,他の介入の補助と考えるべきである。オピオイド拮抗薬(ナルトレキソンまたはナルメフェン)とγ-アミノ酪酸受容体を調節する薬剤(バクロフェンまたはアカンプロサート)は,アルコールに対する渇望と離脱症状を軽減する効果により,短期的に有益となるようである。ジスルフィラムは,アルデヒド脱水素酵素を阻害して,アセトアルデヒドを蓄積させるが,これにより,ジスルフィラムの服用後12時間以内に飲酒すると,紅潮およびその他の不快な症状が引き起こされる。しかしながら,ジスルフィラムに禁酒を促進させる効果は示されておらず,そのため,特定の患者のみに推奨される。

支持療法

全般的な管理では支持療法に重点を置く。禁酒を始めてから数日間は,栄養価の高い食事とビタミン補給(特にビタミンB)が重要である。アルコール離脱症状には,ベンゾジアゼピン系薬剤(例,ジアゼパム)の使用が必要である。進行したアルコール性肝疾患の患者では,門脈大循環性脳症を引き起こす恐れがあるため,過鎮静は回避しなければならない。

重度の急性アルコール性肝炎では,経腸栄養(栄養欠乏症の管理の補助となりうる)を促すとともに,個々の合併症(例,感染症,食道静脈瘤出血,具体的な栄養欠乏症,ウェルニッケ脳症コルサコフ精神病,電解質異常,門脈圧亢進症腹水門脈大循環性脳症―本マニュアルの他の節を参照)を管理するために,一般的に入院(しばしば集中治療室での管理)が必要となる。

特異的治療

コルチコステロイド(例,プレドニゾロン40mg/日を4週間経口投与後,漸減する)は,重度の急性アルコール性肝炎(Maddreyの判別関数の値が32以上)で感染症,消化管出血,腎不全,膵炎の合併がみられない患者で転帰を改善する(1)

コルチコステロイドと経腸栄養以外には,明確に確立された特異的治療法はほとんどない。抗酸化剤(例,S-アデノシル-l-メチオニン,ホスファチジルコリン,メタドキシン)が早期肝硬変の肝障害を改善する薬剤として有望な成績を示しているが,さらなる研究が必要である。サイトカイン,特に腫瘍壊死因子(TNF)αを標的として炎症の軽減を目指す治療法については,複数の小規模試験で様々な結果が得られている。TNF-αの合成を阻害するホスホジエステラーゼ阻害薬であるペントキシフィリンについては,重症アルコール性肝炎患者を対象とした臨床試験で相反する結果が得られている。TNF-αを阻害する生物製剤(例,インフリキシマブ,エタネルセプト)を使用する場合は,感染のリスクが有益性を上回る。線維化を軽減する薬剤(例,コルヒチン,ペニシラミン)やアルコール性肝疾患の代謝亢進を正常化する薬剤(例,プロピルチオウラシル)の有益性は証明されていない。シリマリン(マリアアザミ[ミルクシスル])やビタミンAおよびEなどの抗酸化剤は無効である。

肝移植は重症例で考慮することができる。肝移植を行った場合の5年生存率は,非アルコール性肝疾患での場合と同等であり,活動性肝疾患がみられない場合は80%,急性アルコール性肝炎では50%である。肝移植を受けた患者の半数近くが飲酒を再開するため,ほとんどのプログラムが移植前6カ月間の禁酒を肝移植の必要条件としており,最近のデータから早期の移植が生存率の向上につながると示唆されているが,現時点では早期の肝移植は標準治療となっていない。

治療に関する参考文献

  • Rambaldi A, Saconato HH, Christensen E, et al: Systematic review: Glucocorticosteroids for alcoholic hepatitis―A Cochrane Hepato-Biliary Group systematic review with meta-analyses and trial sequential analyses of randomized clinical trials.Aliment Pharmacol Ther 27(12):1167-1178, 2008.doi: 10.1111/j.1365-2036.2008.03685.x.

要点

  • 男性におけるアルコール性肝疾患のリスクは,1日のアルコール摂取量が10年以上にわたり40gを超えると著明に増大し,特に80g(例,ビール2~8缶,蒸留酒3~6ショット,またはワイン3~6グラス)を超えると大幅に増大する;女性における肝疾患のリスクは,男性の半量で著明に増大する。

  • CAGE質問票を用いて患者のスクリーニングを行い,患者が報告する飲酒量が疑わしい場合は,家族への確認を考慮する。

  • 予後を推定するため,予後不良の組織学的所見(例,好中球,細静脈周囲の線維化)と計算式(例,Maddreyの判別関数,Model for End-Stage Liver Disease[MELD]スコア)の使用を考慮する。

  • 禁酒の重要性を強調し,支持療法を行うとともに,患者を入院させ,重度の急性アルコール性肝炎患者にはコルチコステロイドを投与する。

  • 肝移植は禁酒を継続している患者で考慮する。

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