肛門癌

執筆者:Minhhuyen Nguyen, MD, Fox Chase Cancer Center, Temple University
レビュー/改訂 2021年 3月
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米国では,肛門癌の年間症例数は推定8,590例,年間死亡数は約1,350例である(1)。主症状は排便時の出血である。診断は内視鏡検査による。治療選択肢としては,切除,化学療法,放射線療法などがある。

肛門直腸の扁平上皮癌(非角化型または類基底細胞型癌)は遠位大腸癌の3~5%を占める。基底細胞癌ボーエン病(表皮内扁平上皮癌),乳房外パジェット病,総排泄腔癌,および悪性黒色腫は頻度が低い。他の腫瘍には,リンパ腫および様々な肉腫がある。転移は直腸のリンパ系に沿って,鼠径リンパ節で発生する。

肛門癌の危険因子としては以下のものがある:

肛門性交を受ける側の人はリスクが高い。HPV感染患者では,軽度に異常または正常な外観を呈する肛門上皮に異形成(肛門上皮内腫瘍―組織学的グレードI,II,またはIII)がみられることがある。これらの変化はHIV感染患者でみられることが多い(肛門および外陰の扁平上皮癌を参照)。悪性度がより高いものは浸潤癌へ進行することがある。早期発見と治療によって長期転帰が改善するかどうかは不明であるため,スクリーニングの推奨も不明である。

総論の参考文献

  1. 1.Siegel RL, Miller KD, Jemal A: Cancer statistics, 2020.CA Cancer J Clin 70(1):7–30, 2020. doi: 10.3322/caac.21590

肛門癌の症状と徴候

排便時の出血が最もよくみられる肛門癌の初発症状である。患者によっては疼痛,しぶり腹,または残便感を認める。直腸指診で腫瘤を触知できることがある。

肛門癌
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この写真には,肛門から生じた悪性腫瘍が写っている。
DR LARPENT/G.R.E.H.G.E.P./SCIENCE PHOTO LIBRARY

肛門癌の診断

  • S状結腸鏡検査または大腸内視鏡検査

  • ときに生検

軟性のS状結腸内視鏡検査,または硬性の肛門鏡検査もしくはS状結腸鏡検査を行い,各領域を評価する。扁平円柱上皮接合部(Z線)近傍の病変に対しては皮膚科医または外科医による皮膚生検が必要になる可能性がある。下血がみられた際には,たとえ明らかな痔核や既知の憩室性疾患がある場合でも,常にがんの併存を除外する必要がある。

CT,MRI,またはPET(陽電子放出断層撮影)による病期分類が望ましい。

肛門癌の治療

  • 多剤併用化学療法および放射線療法

  • ときに外科的切除

多剤併用化学療法および放射線療法は,大半の症例において初期治療とされ,肛門扁平上皮腫瘍および総排泄腔腫瘍に用いられた場合,高い治癒率をもたらす。

放射線療法および化学療法で腫瘍の完全な退縮が認めらない場合,または再発した場合は,腹会陰式直腸切断術の適応となる。

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