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急性膵炎

執筆者:

Raghav Bansal

, MBBS, Ichan School of Medicine at Mount Sinai, NY

最終査読/改訂年月 2017年 2月
本ページのリソース

急性膵炎は,膵臓(および,ときに隣接組織)の急性炎症である。最も頻度が高い誘因は,胆石および長期にわたる大量の飲酒である。急性膵炎の重症度は,局所合併症および一過性または持続性の臓器不全の有無に基づいて,軽症,中等症,重症に区分される。診断は,臨床像と,血清アミラーゼおよびリパーゼ値に基づく。治療は支持療法により,輸液,鎮痛薬,栄養サポートを行う。急性膵炎の全死亡率は低いが,重症例における罹患率および死亡率はかなり高い。

膵炎の概要も参照のこと。)

急性膵炎は頻度の高い疾患であり,健康管理上の大きな問題である。

病因

急性膵炎症例の70%以上で原因は胆石およびアルコール依存症である。残りの症例は多数の原因に由来する( 急性膵炎の原因)。

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急性膵炎の原因

原因

薬物

ACE阻害薬,アスパラギナーゼ,アザチオプリン,2',3'-ジデオキシイノシン,フロセミド,6-メルカプトプリン,ペンタミジン,サルファ剤バルプロ酸

感染性

遺伝性

嚢胞性線維症患者のごく一部など,多数の既知の遺伝子変異

機械的/器質的

胆石,ERCP,外傷,膵癌または膨大部領域癌,総胆管嚢腫,Oddi括約筋狭窄,分割膵

代謝性

高トリグリセリド血症高カルシウム血症(副甲状腺機能亢進症を含む),脂質濃度高値と関連する エストロゲン使用

毒素

アルコール,メタノール

その他

喫煙,妊娠,腎移植後,低血圧またはアテローム塞栓症に起因する虚血,熱帯性膵炎

胆石

胆石は急性膵炎症例の約40%の原因となる。胆石性膵炎の正確な機序は不明であるが ,胆石あるいは胆石の追加によって生じる浮腫による膨大部の閉塞によって生じる膵管内圧の上昇が関与している可能性が高い。膵管内圧の上昇は,腺房細胞から出る消化酵素の異常活性化をもたらす。胆汁酸自体が腺房細胞に与える毒性作用も機序の1つと考えられている。妊娠中の胆石性膵炎がまれにみられ,これは第3トリメスターにおいて生じる頻度が最も高い。

アルコール

アルコールは急性膵炎の約30%の原因となる。アルコール性膵炎は長年の飲酒を経て初めて発生する。飲酒量の増加(男性は1日4~7単位,女性は1日3単位以上)に伴い膵炎発症のリスクは高まる(訳注:1単位はエタノール量14g)。軽度または中等度の飲酒は,急性膵炎から慢性膵炎への進行に関連する。明らかな発症をみるのが飲酒者のごく一部のみということは,膵炎の発症にはさらなる誘因ないし補助因子が必要であることを示唆している。

膵腺房細胞は酸化を伴う経路と酸化を伴わない経路の両方を介してアルコールを毒性代謝物に代謝するが,この代謝物の作用により,代謝した細胞は自己融解を起こしやすくなり,膵臓は壊死,炎症,および細胞死を起こしやすくなる。これらの作用には,酵素含有量の増加,ライソゾーム顆粒およびチモーゲン顆粒の不安定化,過剰なカルシウムの継続的増加,膵星細胞の活性化などがある。別の説によると,アルコールは,結石を形成するタンパクの濃度を変え膵分泌物の粘稠度を高めることにより,膵管内におけるタンパク栓形成の傾向を高め,それにより閉塞,ひいては腺房萎縮症を引き起こすということである。

その他の原因

膵炎の素因である遺伝子変異がいくつか同定されている。カチオン性トリプシノーゲン遺伝子の常染色体優性変異は,保持者の80%において膵炎を引き起こし,この場合明らかな家族性のパターンが認められる。他の突然変異は浸透度がより低く,遺伝子検査を行わない限り,臨床的には簡単にわからない。嚢胞性線維症遺伝子は,慢性膵炎に加え,再発性急性膵炎のリスクを増加させる。

急性膵炎は,内視鏡的逆行性胆道膵管造影 (ERCP)後に発生する最も頻度の高い重篤な合併症で,その頻度はERCPを受ける患者の5~10%である。

発生機序

病因にかかわらず,急性膵炎の発生機序の最初の段階は膵酵素(トリプシン,ホスホリパーゼA2,エラスターゼなど)が腺房内で活性化し,分泌腺自体の自己分解損傷につながることである。活性化膵酵素は組織を損傷し,補体系および炎症カスケードを活性化することが可能で,その結果サイトカインが産生され,炎症と浮腫が生じる。少数の症例では,この過程で壊死が起こる。急性膵炎は,腸壁を損ない腸内腔から循環への細菌移動を誘導することで感染のリスクを高める。

腹腔内に入った活性化酵素およびサイトカインは,化学的熱傷や体液のサードスペースへの移行を引き起こし,体循環に入った場合には全身性炎症反応を惹起し,急性呼吸窮迫症候群急性腎障害をもたらす可能性がある。全身作用は主に毛細血管透過性亢進および血管緊張低下の結果であり,これらは放出されたサイトカインおよびケモカインによって引き起こされる。ホスホリパーゼA2は,肺胞膜を損傷すると考えられる。

軽症の膵炎では,炎症は膵臓に限局する。臓器不全または全身性もしくは局所の合併症は生じない。死亡率は5%未満である。

重症の膵炎では,(約48時間後に)持続性の臓器不全または多臓器不全が発現する。ほとんどの患者で1つ以上の局所合併症が起きる。死亡率は30%超である。

合併症

急性膵炎の合併症の種類は,発症からのタイミングにより異なる。

急性膵炎には以下の2つの異なる段階があるようである(1):

  • 早期(1週間以内)

  • 後期(1週間後以降)

早期は炎症カスケードの病態生理に関連している。

全身性炎症反応症候群(SIRS)の患者は多臓器不全(例,急性循環器不全および/または急性呼吸不全,急性腎障害)および急性膵炎早期におけるショックのリスクが高まっている。急性膵炎の早期における死亡例は通常,多臓器不全の結果である。

後期の発症は急性膵炎患者の20%に満たないが,全身性炎症,局所合併症,またはその両方の持続が特徴である。局所合併症としては以下のものがある:

  • 仮性嚢胞(出血,破裂,または感染のリスク)

  • 急性壊死性貯留と呼ばれる壊死性物質の急性蓄積(感染のリスク)

  • 脾静脈血栓症

  • 仮性動脈瘤形成

  • 膵管断裂により生じる腹水

  • 胸水

酵素を豊富に含む膵液の貯留が膵内および膵周囲に形成される。この貯留物のほとんどは自然消退する。他の患者では,貯留物が仮性嚢胞を形成する。仮性嚢胞は通常,膵臓の外側に生じる壊死物質を微量に含むか全く含まない液体貯留で,4~6週間続く。仮性嚢胞は内面に上皮層を認めない線維性被膜を有する。仮性嚢胞は出血,破裂,または感染を起こすことがある。仮性嚢胞患者の3分の1で自然消退が起こる。

致死性膵炎を引き起こす急性貯留には明瞭な壁がなく,液体物質および固体物質のいずれも含む可能性がある。壊死は膵実質および/または膵周囲の細胞を含む可能性がある。被包化壊死(walled-off necrosis)は5~6週間後に液状化した膵壊死である。膵壊死患者の約3分の1は腸内細菌に感染することがあり,これに感染すると罹患率および死亡率が極めて高くなる。

急性膵炎の後期における死亡は通常,多臓器不全,感染,または手術および内視鏡手技に起因する合併症などの因子が組み合わさった結果である。

合併症に関する参考文献

  • 1.Banks PA, Bollen TL, Dervenis C, et al: Classification of acute pancreatitis 2012: Revision of the Atlanta classification and definitions by international consensus. Gut 62:102–111, 2013. doi: 10.1136/gutjnl-2012-302779.

症状と徴候

急性発作は,持続性の上腹部穿刺痛を引き起こし,疼痛は典型的には大量のオピオイドの非経腸(parenteral)投与を必要とするほど重度である。疼痛は約50%の患者で背部に放散する。胆石性膵炎では,疼痛は通常突然に発生するが,アルコール性膵炎では数日間かけて徐々に現れる。疼痛は通常,数日間持続する。疼痛は座位および前傾姿勢で軽減しうるが,咳嗽,活発な動作,深呼吸で強まることがある。悪心および嘔吐がよくみられる。

病状は急速に悪化し,発汗がみられる。脈拍数は通常,100~140拍/分である。呼吸は浅く速い。血圧は一過性の上昇または低下を認め,有意な起立性低血圧を伴う。体温は,最初正常で,場合によっては正常以下であることもあるが,数時間以内に37.7~38.3℃(100~101°F)まで上昇しうる。意識は半昏睡まで鈍化することがある。膵頭部の胆石または炎症および腫脹による胆管閉塞のため,ときに強膜の黄疸が現れる。肺は,横隔膜運動制限および無気肺の所見を認めることがある。

患者はイレウスを生じ,腸音減弱および腹部膨隆に至ることがある。著明な腹部圧痛がみられ,その大半は上腹部に生じる。まれに,重度の腹膜刺激の結果として,腹部は板状硬を呈する。膵管断裂によって腹水(膵性腹水)が生じることがある。グレイ・ターナー徴候(側腹部の斑状出血)およびカレン徴候(臍領域の斑状出血)は,出血性滲出液の血管外遊出を示唆するが,これは1%未満の症例で発生し,予後不良の兆しとなる。

発熱および白血球数増加を伴い全身に重症感(toxic appearance)を認める場合,または最初の安定期の後に悪化した場合には,膵内または隣接液体貯留部での感染を疑うべきである。重症患者は多臓器不全(心血管,腎臓,および呼吸器)を発現することがあり得る。

診断

  • 血清マーカー(アミラーゼ,リパーゼ)

  • 画像検査

重度の腹痛が起こった場合,特に過度の飲酒者または胆石患者では,常に膵炎が疑われる。

急性膵炎の診断は,臨床的に疑うことから始まり,臨床検査および/または画像検査での所見により裏付けられる。膵炎が考慮される場合は常に,アミラーゼおよびリパーゼを検査する。

急性膵炎の診断は,以下のうち少なくとも2つがある場合に確定されることが最も多い:

  • 疾患と一致する腹痛

  • 正常上限の3倍を上回る血清アミラーゼおよび/またはリパーゼ

  • 腹部画像の特徴的所見

急性膵炎の症状の鑑別診断としては以下のものがある:

腹痛の他の原因を除外し急性膵炎の代謝性合併症を診断するために,初期評価において通常幅広い検査を行う。それには臨床検査および画像検査が含まれる。

臨床検査

血清アミラーゼおよびリパーゼ値は,急性膵炎の初日に上昇して3~7日で正常に戻る。リパーゼの方が膵炎に対して特異的であるが,両酵素とも腎不全および様々な腹部疾患(例,穿孔性潰瘍,腸間膜血管閉塞,腸閉塞)において上昇することがある。血清アミラーゼ上昇の他の原因として,唾液腺機能不全,マクロアミラーゼ血症,およびアミラーゼ産生腫瘍がある。血清総アミラーゼを膵型(p型)イソアミラーゼと唾液腺型(s型)イソアミラーゼに分画することにより,血清アミラーゼの精度が上昇する。腺房組織が過去の発作時に破壊されているため十分な量の酵素を分泌できない場合,アミラーゼとリパーゼはいずれも正常値を維持することがある。高トリグリセリド血症を有する患者の血清には,循環している阻害物質が含まれている可能性があり,血清アミラーゼ濃度の上昇を検出できるようにするには,先にこれを希釈しなければならない。

マクロアミラーゼ血症では,血清アミラーゼ濃度が慢性的に上昇することがあるが,これはアミラーゼが血清免疫グロブリンに結合し,この複合体が腎臓で血液から濾過されるのに時間がかかるためである。アミラーゼ:クレアチニンクリアランス比は,膵炎を診断する上で十分な感度または特異度を有していない。同比は一般に膵炎が存在しない状況でマクロアミラーゼ血症を診断するために用いられる。

トリプシノーゲン-2の尿試験紙検査は,急性膵炎に対する感度および特異度が90%を超える

白血球数は通常,1万2000~2万/μLに増加する。サードスペースへの体液移行によってヘマトクリットが50~55%にまで上昇しBUNを高めることがあり,これは重度の炎症を示唆する。大量輸液を行ってもBUNの上昇が続く場合は,多臓器不全の疑いが高まる。高血糖および低カルシウム血症が起こることもある。胆管内の遺残結石あるいは膵浮腫による胆管圧迫により,血清ビリルビン高値など異常な肝機能検査結果が出ることがある。ショック状態の患者は,アニオンギャップ増大を伴う代謝性アシドーシスやその他の電解質異常を来すこともある。低カルシウム血症の原因である低マグネシウム血症を除外するために,マグネシウムの値を測定する。

画像検査

CT(静注造影剤を使用)を早期に行うべきであるが,急性膵炎の診断が不確実な場合または患者の症状に対する他の原因を除外する場合に限る。また,膵炎と診断された時点で,壊死,液体貯留または仮性嚢胞などの急性膵炎の合併症を同定するために,通常はCTを施行する。膵臓の壊死組織は静注造影剤の投与後も増強されず,急性膵炎の発症から48~72時間後まではCTに映らないことがある。総胆管結石症の検出にはCTよりも造影剤を用いないMRIの方がよい。

胆石性膵炎が疑われる場合(かつ別の明らかな病因がない場合)には,胆石または総胆管の拡張(胆道閉塞を示唆する)を検出するために,腹部超音波検査を施行すべきである。膵臓の浮腫は視認できることもあるが,上を覆うガスで膵臓は不明瞭なことが多い。

腹部単純X線では,膵管内石灰化(過去の炎症,すなわち慢性膵炎の所見),石灰化した胆石,左上腹部または腹部中央の小腸部分に限局したイレウス(「センチネルループ」),またはより重度の疾患ではcolon cutoff sign(左結腸曲または下行結腸におけるガスの途絶)が認められることがある。しかしながら,腹部X線をルーチンに行うことの価値については議論がある。

胸部X線を行うべきであり,無気肺または重症疾患の徴候である胸水(通常は左胸水または両側胸水であるが,まれに右胸腔に限局する)が明らかになることがある。

急性膵炎では超音波内視鏡検査の役割は限定的である。超音波内視鏡検査は総胆管結石の検出については磁気共鳴胆道膵管造影(MRCP)よりも感度が高いが,MRCPには非侵襲的であるという利点がある。

血清ビリルビン値の上昇と敗血症の徴候がみられる胆石性膵炎の患者では,胆管閉塞を軽減するための内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)を迅速に行うべきである。

予後

急性膵炎の重症度は,臓器不全の存在,局所合併症および全身性合併症,またはそれらの組合せで決まる。患者関連の危険因子を検討して疾患経過の早い段階で重症度を評価することが,臓器不全やその他の合併症の発生リスクが高い患者を同定するのに役立つ。そうすることで,それらの患者では発症時から最大限の支持療法を行うことができ,予後が改善し,合併症の発生率と死亡率を低減することが可能になる。最初のリスク評価として,重度の経過を予測する患者関連の危険因子としては以下のものがある:

  • 年齢60歳以上

  • 併存する健康問題

  • BMI(body mass index)が30を上回る肥満

  • 長期の大量飲酒

  • 全身性炎症反応症候群(SIRS)の存在

  • 循環血液量減少を示す検査マーカー(例,BUN高値,ヘマトクリット高値)

  • 入院時胸部X線での胸水および/または浸潤影の所見

  • 精神状態の変化

重症度スコアリングシステムの使用には複数回の評価が必要であり,それにより適切な管理が遅れることがある。入院時に施行でき患者のトリアージに役立つ検査もあれば,初診後48~72時間まで正確性を欠く検査もある。

  • Ransonスコア:このスコアリングシステムは煩雑であり,算出に48時間かかるが,陰性適中率が良好である。

  • APACHE IIスコア:このシステムは用いるには複雑かつ煩雑であるが,陰性適中率は良好である。

  • 全身性炎症反応症候群スコア:このシステムは安価で容易に利用可能であり,ベッドサイドで実施できる。

  • BISAP(Bedside Index of Severity in Acute Pancreatitis) スコア:このスコアは単純で,最初の24時間で算出される。

  • HAPS(Harmless Acute Pancreatitis Score):このスコアは単純で,入院から30分以内に算出される。

  • 臓器不全に基づくスコア:このスコアは急性膵炎の重症度を直接判定するものではない。

  • CT重症度指数(Balthazarスコア):このスコアはCTにおける壊死の程度,炎症の程度,および液体貯留の有無に基づいている。

急性膵炎後の長期的リスクには,再発および慢性膵炎に進行するリスクがある。危険因子には,急性膵炎発症当初における膵壊死の重症度および規模や病因も含まれる。長期の大量飲酒と喫煙は慢性膵炎の発生リスクを高める。

治療

  • 支持療法

  • 重症急性膵炎および合併症に対しては,必要に応じて抗菌薬および治療的介入を用いる。

急性膵炎の治療は典型的には,支持治療である。合併症を発症した患者には個別の追加治療が必要となることがある。(American College of Gastroenterologyの急性膵炎の管理に関するガイドラインも参照のこと。)

急性膵炎の基本的な治療法としては,以下のものがある:

  • 初期大量輸液

  • 鎮痛

  • 栄養サポート

初期の積極的な大量輸液は膵灌流を改善し,膵壊死などの重篤な合併症の予防に役立つ。2013年版American College of Gastroenterology (ACG)のガイドラインでは,心血管,腎臓,または他の併存因子による禁忌がない限り全患者に対して,最初の12~24時間に等張液(理想的には乳酸リンゲル液)250~500mL/hと定義される積極的な初期輸液が推奨されている。補液が十分であるか否かは,最初の24時間でヘマトクリットおよびBUNがどれだけ低下するかによって評価でき,特に発症時にこれらの値が高かった場合には有用な指標となる。他のパラメータとしては,バイタルサインの改善や十分な尿量の維持などがある。ACGのガイドラインでは,入院当初6時間およびその後24~48時間は頻繁な間隔で輸液の必要量を再評価することも推奨している。大量輸液を行っている患者に対しては,継続的にパルスオキシメトリーを実施し,必要に応じて酸素投与を行い,水分の摂取量および排出量を厳密にモニタリングするべきである。

適切な疼痛緩和には,ヒドロモルフォンまたはフェンタニルのような非経腸(parenteral)オピオイドが必要であり,十分な量を投与すべきである。悪心や嘔吐を軽減するために制吐薬を投与するべきである。

急性膵炎患者に対して経腸栄養または静脈栄養を行うことで,補助栄養を与えない場合よりも死亡のリスクが低くなる研究結果が示されている。しかし,感染性合併症を引き起こす可能性があるため,完全静脈栄養は避けるべきである。中等症の膵炎患者は,疼痛が減少し状態が全体的に改善すると同時に経口食を再開できる。低残渣,低脂肪で柔らかい食事の摂取を開始することができる。低残渣食は,食物繊維と腸管の活動性を高める食品を最小限に抑えて排便の量と頻度が少なくなるように考案されている。早期の摂食再開は,入院日数の短縮につながると思われる。

重症急性膵炎および合併症

重症急性膵炎および合併症の治療法としては,以下のものがある:

  • 通常はICUでの治療

  • ときに人工的な栄養サポート

  • 膵臓外感染症と感染性壊死に対する抗菌薬

  • 感染性壊死に対するネクロセクトミー(壊死組織の除去)

  • 急性膵炎および併発した急性胆管炎に対するERCP

  • 仮性嚢胞のドレナージ

重症急性膵炎およびその合併症の患者管理は,内視鏡治療専門医,IVR専門医(interventional radiologist),および外科医を含む集学的アプローチを用いて個別に行うべきである。重症急性膵炎の患者は最初の24~48時間はICUで注意深くモニタリングするべきである。状態の悪化または介入を要する広範な局所合併症のある患者は,(利用可能であれば)膵疾患に特化した卓越した拠点に移送するべきである。

重症急性膵炎の患者には人工的な栄養サポートが必要なことがあるが,栄養補給の最適な開始時期および期間は依然として不明である。2013年版ACGガイドラインでは,経腸栄養の使用を推奨しており,経腸経路が確保できない場合,耐えられない場合,あるいはカロリー必要量に満たない場合にのみ静脈栄養を行うよう推奨している。経腸経路は以下の理由で望ましい:

  • 腸粘膜バリアの維持を助ける

  • 長期間の腸管安静で生じ得る腸萎縮を予防し,さらに膵壊死組織を播種する可能性のある細菌の移行を促す。

  • 中心静脈カテーテルの感染リスクを回避する

  • より安価である

トライツ靱帯の先まで経鼻空腸栄養管を設置すれば,胃における消化プロセスの刺激を避ける助けとなりうるが,設置にはX線透視下または内視鏡下の誘導が必要である。経鼻空腸栄養管の設置が不可能な場合は,経鼻胃栄養を開始するべきである。どちらの場合も,誤嚥のリスクを下げるため,患者には起座位をとらせるべきである。ACGのガイドラインでは,効力および安全性において経鼻胃栄養と経鼻空腸栄養は同等とされている。

2013年版ACGガイドラインによると,急性膵炎の患者に対しては,疾患の種類や重症度に関係なく,抗菌薬の予防的投与は推奨されていない。しかしながら,患者が膵臓外感染(例,胆管炎,肺炎,血流感染症,UTI)または膵壊死を発症した場合には,抗菌薬投与を開始するべきである。

悪化の徴候(例,発熱,白血球数増加)がみられる患者と7~10日間の入院後も改善がみられない患者については,感染症(膵臓または膵臓以外)を疑うべきである。膵壊死での感染のほとんどは腸からの単一菌種の細菌を原因としている。最も一般的な原因菌はグラム陰性細菌であり,グラム陽性細菌と真菌はまれである。感染壊死の患者では,カルバペネム系薬剤,フルオロキノロン系薬剤,メトロニダゾールのように膵壊死部に浸透することで知られる抗菌薬が推奨される。

ネクロセクトミー(壊死組織の除去)については,外科手術アプローチよりも低侵襲アプローチが望ましく,最初に試みるべきである。2013年のACGガイドラインでは, 感染性壊死のドレナージ(X線透視下,内視鏡下,または外科的アプローチ)は,内容物を液状化させ壊死周囲に線維性の壁を形成させる(被包化壊死[walled-off necrosis])ために延期すべき(安定した患者では4週間以上が望ましい)であると推奨している。

胆石性膵炎患者の80%以上は結石が自然に通過するためERCPを必要としない。急性膵炎および急性胆管炎を併発している患者は早期ERCPを実施すべきである。自然に回復する中等症の胆石性膵炎患者は,再発を予防するため退院前に胆嚢摘出術を実施すべきである。

仮性嚢胞に急速な増大,感染,または出血を認めるか,破裂の可能性が高い場合にはドレナージが必要である。ドレナージを経皮的,外科的,または超音波ガイド下の内視鏡的嚢胞胃吻合術のいずれの方法で行うかは,仮性嚢胞の部位と医療機関の熟練度に依存する。

要点

  • 急性膵炎には多くの原因があるが,最も頻度が高いのは,胆石と長期にわたる大量飲酒である。

  • 炎症は軽症例では膵臓に限局しているが,重症度が高まるにつれて重度の全身性炎症反応が出現し臓器不全または多臓器不全に至ることがある。

  • 膵炎の診断がついた段階で,患者をより集中的な治療や積極的治療に適切にトリアージし,予後の推定に役立てるために,臨床基準やときにスコアリングシステムを用いてリスクを評価する。

  • 治療は急速輸液,疼痛コントロール,および栄養サポートによる。

  • 仮性嚢胞および感染性膵壊死などの合併症は,同定し適切に治療(例,仮性嚢胞のドレナージ,ネクロセクトミー)する必要がある。

より詳細な情報

  • Guidelines for the management of acute pancreatitis from the American College of Gastroenterology

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