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旅行者の下痢

(turista)

執筆者:

Thomas G. Boyce

, MD, MPH, University of North Carolina School of Medicine

最終査読/改訂年月 2014年 7月

旅行者下痢症は通常,現地の水に固有の細菌によって引き起こされる胃腸炎である。症状としては嘔吐や下痢などがある。診断は主に臨床的に行う。治療はシプロフロキサシンまたはアジスロマイシン,ロペラミド,および補液による。

(Center for Disease Control and Preventionの旅行者下痢症に関する健康情報も参照のこと。)

病因

旅行者下痢症は,いくつかの細菌,ウイルス,寄生虫(頻度は低い)のいずれによっても引き起こされる。しかしながら,腸管毒素原性大腸菌(Escherichia coli)の頻度が最も高い。大腸菌(E. coli)は,浄水設備が十分に整備されていない地域の水道でよくみられる。感染は発展途上国を訪れた旅行者でよくみられる。ノロウイルス感染症は,特に一部の大型客船で問題となっている。

食物と水の両方が感染源となる可能性がある。旅行者は現地の水の飲用を避けたとしても,不適切にすすいだ歯ブラシを使って歯磨きをする,ボトル入り飲料に現地の水で作られた氷を入れて飲む,取り扱いが不適切または現地の水で洗った食物を摂取するなどにより,依然として感染する可能性がある。胃酸を減少させる薬剤(制酸薬,H2受容体拮抗薬,およびプロトンポンプ阻害薬)を服用している患者では,重症化のリスクが高くなる。

症状と徴候

汚染された食物または水の摂取から12~72時間後に,悪心,嘔吐,腸音亢進(腹鳴),腹部痙攣,および下痢が始まる。重症度は様々である。発熱および筋肉痛がみられる場合もある。大半の症例は軽症で自然治癒するが,脱水が起こる場合があり,特に温暖な気候では可能性が高くなる。

診断

  • 臨床的評価

通常は特異的な診断検査は不要である。ただし,発熱,重度の腹痛,および血性下痢の存在は,より重篤な疾患を示唆するため,直ちに評価を行うべきである。

治療

  • 補液

  • ときに腸運動抑制薬

  • 中等度から重度の下痢に対して抗菌薬(例,シプロフロキサシン,アジスロマイシン)

治療の中心は補液と腸運動抑制薬であり,具体的にはロペラミド,初回は4mg,経口,その後の各下痢発生時に2mg,経口(最大6回/日または16mg/日)や,diphenoxylate錠剤または液剤2.5~5mg,経口,1日3回または1日4回などがある。小児にはロペラミドを使用する。小児での用量は,体重13~20kgの場合は1mg,経口,1日3回,20~30kgの場合は2mg,経口,1日2回,30kg超の場合は12歳まで2mg,経口,1日3回である。成人および12歳以上の小児には,最初の軟便後に4mgを,その後は毎回の軟便時に2mgを経口投与するが,24時間の投与量が16mgを超えないようにする。腸運動抑制薬は,発熱または血便がみられる患者と2歳未満の小児では禁忌である。ヨードクロルヒドロキシキンは,一部の発展途上国で使用可能となっているが,神経損傷を引き起こす可能性があるため,使用してはならない。

一般に,軽度の下痢には抗菌薬は必要ない。中等度から重度の下痢患者(8時間で3回以上の軟便)には抗菌薬を投与する(特に嘔吐,腹部痙攣,発熱,または血便がみられる場合)。成人では,シプロフロキサシン500mg,経口,1日2回,3日間またはレボフロキサシン500mg,経口,1日1回,3日間の投与が推奨される。アジスロマイシンを250mg,経口,1日1回,3日間で,またはリファキシミンを200mg,経口,1日3回,3日間で使用してもよい。小児には,アジスロマイシン5~10mg/kg,経口,1日1回,3日間の方が望ましい。

予防

旅行者は,安全性に定評があるレストランで食事をすべきであり,街頭で販売される飲食物の摂取は避けるべきである。また,加熱調理されて,まだ湯気が上がっている熱い食物,皮をむいて食べる果物,密封されたボトルで提供され,氷を入れていない炭酸飲料(炭酸飲料以外のボトル飲料には悪徳業者が水道水を足していることがある)を摂取すべきであり,生野菜(特にテーブルの上に放置されたサルサソースを含む)の摂取は避けるべきである。ビュッフェおよびファストフードレストランは,リスクが高くなる。

抗菌薬の予防投与は下痢の予防に効果的であるが,有害作用と耐性菌の出現が懸念されるため,その使用はおそらく易感染性患者に限定すべきである。

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