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炎症性腸疾患の概要

執筆者:

Aaron E. Walfish

, MD,

  • Mount Sinai Medical Center
;


Rafael Antonio Ching Companioni

, MD, Digestive Diseases Center

最終査読/改訂年月 2016年 1月
本ページのリソース

炎症性腸疾患(IBD)は,消化管の様々な部位で再燃と寛解を繰り返す慢性炎症を特徴とする病態であり,下痢および腹痛を引き起こし,クローン病潰瘍性大腸炎(UC)が含まれる。

炎症は,消化管粘膜における細胞性免疫応答により生じる。正確な病因は不明であるが,多因子性の遺伝的素因を有する患者において,腸内常在菌叢が異常な免疫反応を引き起こすことがエビデンスから示唆される(おそらく,異常な上皮性関門および粘膜の免疫防御が関与)。環境性,食事性,または感染性の特異的な原因は同定されていない。免疫反応には,サイトカイン,インターロイキン,腫瘍壊死因子(TNF)などの炎症メディエータの放出が関与している。

クローン病とUCは類似した疾患であるが,ほとんどの症例で鑑別可能である( クローン病と潰瘍性大腸炎の鑑別)。大腸炎症例の約10%は当初,鑑別が困難で,分類不能型(unclassified)と呼ばれ,さらに外科的病理標本でも分類できない場合は,indeterminate colitisとされる。大腸炎という用語は,大腸の炎症性疾患に対してのみ適用される(例,潰瘍性,肉芽腫性,虚血性,放射線性,感染性)。痙攣性(粘液性)大腸炎という用語は,機能性疾患である過敏性腸症候群に対してときに用いられる誤った名称である。

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クローン病と潰瘍性大腸炎の鑑別

クローン病

潰瘍性大腸炎

80%の症例で小腸が侵される。

大腸に限局する。

直腸S状結腸は侵されないことが多く,結腸の罹患範囲は通常,右側である。

直腸S状結腸が必ず侵され,結腸の罹患範囲は通常,左側である。

肉眼的な下血はまれであるが,大腸クローン病症例の75~85%は例外である。

肉眼的な下血が常に認められる。

瘻孔,腫瘤,および膿瘍がよくみられる。

瘻孔は生じない。

25~35%の症例では肛門周囲病変が有意となる。

有意な肛門周囲病変は決して生じない。

X線上では,腸壁に非対称性かつ区域性に複数の病変がみられ,病変部の間には正常な領域(skip area)がある。

直腸から口側に向けて対称的かつ連続的に腸壁が侵されていく。

内視鏡像は斑状で,非連続的な潰瘍が正常に見える粘膜の区間によって分離されている。

炎症は均一でびまん性である。

顕微鏡的な炎症および裂溝が粘膜層を越えて広がり,病変の分布はしばしば非常に局所的である。

重症例を除いて,炎症は粘膜に限局する。

25~50%の症例で,腸壁またはリンパ節に類上皮(サルコイド様)肉芽腫が検出される(本症特有の所見)。

典型的な類上皮肉芽腫は生じない。

疫学

炎症性腸疾患はあらゆる年齢の人に発生するが,通常は30歳未満で始まり,発生率のピークは14~24歳である。より小さな2回目のピークが50~70歳にあると考えられるが,この後半のピークには虚血性大腸炎の一部症例が含まれている可能性がある。

IBDは北欧人とアングロサクソン系の人々で最も多くみられ,同じ地域の非ユダヤ系白人と比較するとアシュケナージ系ユダヤ人で2~4倍多くみられる。発生率は中欧および南欧でより低く,南米,アジア,アフリカではさらに低い。しかしながら,北米に居住する黒人およびラテンアメリカ人では発生率が増加している。罹患率に男女差はみられない。IBD患者の第1度近親者は,リスクが4~20倍高く,絶対リスクは7%にも達する場合がある。家族性の傾向は,UCと比較してクローン病の方がはるかに高い。クローン病のリスクを増大させるいくつかの遺伝子変異(およびUCに関連する可能性のあるいくつかの遺伝子変異)が同定されている。

喫煙はクローン病の発生または増悪に寄与していると考えられるが,UCのリスクを低下させる。虫垂炎治療のための虫垂切除術もUCのリスクを低下させるようである。非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)はIBDを増悪させる可能性がある。経口避妊薬はクローン病のリスクを増大させる可能性がある。周産期の疾患および小児期における抗菌薬の使用は,IBDのリスク増大と関連している可能性を示唆するデータもある。

理由は明らかでないが,社会経済的地位が高い人々はクローン病のリスクが高い可能性がある。

パール&ピットフォール

  • 喫煙は潰瘍性大腸炎のリスクを低下させる

腸管外合併症

クローン病およびUCはいずれも腸管以外の器官も侵す。大半の腸管外合併症は,小腸限局性のクローン病と比較して,UCおよび大腸クローン病でより多くみられる。炎症性腸疾患の腸管外合併症は次の3つに分類される:

1.通常はIBDの急性増悪(flare-up)に平行して発生する(すなわち,憎悪と寛解が同期する)疾患:このような疾患としては,末梢関節炎,上強膜炎アフタ性口内炎結節性紅斑壊疽性膿皮症などがある。関節炎は大関節に生じやすく,移動性かつ一過性となる傾向がある。IBDで入院する患者の3分の1以上で,これら平行して発生する合併症が少なくとも1つ発生する。

2.明らかにIBDと関連しているが,IBDの活動性とは独立しているように見える疾患:このような疾患としては,強直性脊椎炎,仙腸関節炎,ぶどう膜炎原発性硬化性胆管炎などがある。強直性脊椎炎は,HLA-B27抗原を有するIBD患者でより多くみられる。脊椎または仙腸骨病変のある患者の大半では,ぶどう膜炎の所見がみられ,その逆も真である。原発性硬化性胆管炎は胆道癌の危険因子であり,UCまたは大腸クローン病と強い関連がみられる。胆管炎は腸疾患の発症前または腸疾患と同時に発生することがあり,さらに結腸切除から20年後に発生する場合もある。3~5%の患者で肝疾患(例,脂肪肝,自己免疫性肝炎,胆管周囲炎,肝硬変)が起こるが,肝機能検査値の軽度異常はより多くみられる。これらの病態の一部(例,原発性硬化性胆管炎)はIBDの発生に多年にわたって先行することがあるため,これらが診断された場合にはIBDの評価を行うべきである。

3.腸管機能の障害に起因する疾患:このような疾患は主に重症の小腸クローン病で発生する。吸収不良は回腸の広範切除によって生じることがあり,脂溶性ビタミン,ビタミンB12,またはミネラルの欠乏を引き起こし,貧血,低カルシウム血症,低マグネシウム血症,凝固障害,および骨の脱ミネラル化をもたらす。小児では,吸収不良は発育および発達を遅滞させる。その他の疾患としては,食事性シュウ酸の過剰吸収に起因する腎結石,腸管の炎症過程による尿管圧迫から生じる水尿管症および水腎症,胆汁酸塩の回腸での再吸収障害による胆石,長期の炎症性および化膿性疾患に続発するアミロイドーシスなどがある。

3つのいずれのカテゴリーでも複数の因子により血栓塞栓症が起こることがある。

治療

IBDには,いくつかのクラスの薬剤が役立つ。これらの選択および使用の詳細については,各疾患の項目で述べる。

支持療法

ほとんどの患者とその家族は食事とストレス管理に関心をもっている。厳格な炭水化物制限を伴うものも含めて,特定の食事により臨床的改善が得られたとする症例報告はあるものの,比較試験で一貫した有益性が示されたことはない。ストレス管理が助けになることがある。

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