Msd マニュアル

Please confirm that you are a health care professional

読み込んでいます

炎症性腸疾患に対する薬剤

執筆者:

Aaron E. Walfish

, MD,

  • Mount Sinai Medical Center
;


Rafael Antonio Ching Companioni

, MD, Digestive Diseases Center

最終査読/改訂年月 2016年 1月

炎症性腸疾患には,いくつかのクラスの薬剤が役立つ。これらの選択および使用の詳細については,各疾患の項目で述べる(クローン病の治療および潰瘍性大腸炎の治療を参照のこと)。

メサラジン(5-ASA,アミノサリチル酸)

5-ASAはプロスタグランジンおよびロイコトリエンの産生を阻害するほか,炎症カスケードに対して有益な効果をもたらす。5-ASAは腸管内でのみ活性を示し,上部小腸で急速に吸収されるため,経口剤は吸収が遅延するように製剤化する必要がある。

このクラスの最初の薬剤であるサラゾスルファピリジンは,サルファ成分のスルファピリジンを5-ASAに結合させることで,吸収を遅延させている。この化合物は,下部回腸および結腸の腸内細菌叢によって分解され,5-ASAを放出する。しかしながら,サルファ成分は数多くの有害作用(例,悪心,消化不良,頭痛)を引き起こし,葉酸(葉酸塩)の吸収に干渉し,また,ときに重篤な有害反応(例,溶血性貧血または無顆粒球症,まれに肝炎,肺炎,または心筋炎)をもたらす。男性の最大80%で,精子数および精子運動性に可逆的な低下が生じる。サラゾスルファピリジンを使用する場合は,食事とともに投与し,最初は低用量(例,0.5g,経口,1日2回)で投与し,数日かけて1~1.5g,1日4回まで徐々に用量と投与回数を増やすべきである。葉酸サプリメント(1mg,経口)を連日投与し,血算および肝機能検査を6~12カ月毎に行うべきである。メサラジン投与に続発する急性間質性腎炎がまれに起こるが,早期に認識されればほとんどの症例が可逆的であるため,腎機能の定期的なモニタリングが望ましい。

5-ASAと他の基剤を結合させた薬剤は,有効性はほぼ同等とみられるが,有害作用がより少なくなっている。olsalazine(5-ASAの二量体)およびbalsalazide(5-ASAを不活性化合物に抱合)は,細菌のアゾ還元酵素によって分解される(サラゾスルファピリジンと同様)。これらの薬剤は主に結腸内で活性化され,近位小腸の病変に対する有効性は低い。olsalazineの用量は1000mg,経口,1日2回,balsalazideの用量は2.25g,経口,1日3回である。olsalazineは,ときに下痢を引き起こし,特に全大腸炎の患者で認められる。この問題は用量の漸増および食事との同時投与によって最小限に抑えられる。

他の剤形の5-ASAには,腸溶コーティングや徐放性コーティングが用いられている。Asacol HD®(典型的な用量は1600mg,経口,1日3回)およびDelzicol®(800mg,1日3回)は,5-ASAをアクリルポリマーでコーティングした腸溶製剤であり,アクリルポリマーのpHに依存した溶解度により遠位回腸や結腸に入るまで5-ASAの放出が遅延する。Pentasa®(1g,経口,1日4回)は,エチルセルロースの微小顆粒に封入した5-ASAの徐放製剤であり,小腸内で5-ASAの35%を放出する。Lialda® (2400~4800mg,経口,1日1回)およびApriso® (1500mg,経口,1日1回)は,腸溶製剤と徐放製剤を組み合わせたものであり,1日1回の投与が可能で,投与回数が少ないためアドヒアランスが向上する可能性がある。これらの剤形の5-ASAはいずれも,治療効果は概ね同等である。

直腸炎型および左側大腸炎型には,5-ASAは坐薬(500mgまたは1000mg,就寝時または1日2回)または浣腸(4g,就寝時または1日2回)でも利用できる。これらの直腸内投与製剤は,直腸炎型および左側大腸炎型に対する急性治療および長期間の維持療法の両方で効果的であり,経口5-ASAとの併用により効果が増加する。直腸の刺激感のために浣腸に耐えられない患者には,5-ASAのフォーム製剤を投与すべきである。

コルチコステロイド

コルチコステロイドは,ほとんどの型のIBDの急性増悪(flare-up)に対し,5-ASA化合物が不十分である場合に有用である。しかしながら,コルチコステロイドは維持療法としては不適切である。

重症患者には,ヒドロコルチゾン300mg/日を静注するか,メチルプレドニゾロン60~80mg/日を持続静注または分割投与(例,30~40mg,経口,1日2回)し,中等症の患者には,経口プレドニゾンまたはプレドニゾロンを40~60mg,1日1回で投与してもよい。治療は症状が寛解するまで継続し(通常7~28日),その後,20mg,1日1回まで1週間に5~10mgずつ漸減する。その後はさらに,臨床効果に応じて用量を1週間に2.5~5mgずつ漸減するとともに,5-ASAまたは免疫調節薬による維持療法を開始する。短期間のコルチコステロイド大量投与の有害作用としては,高血糖,高血圧,不眠症,多動,急性の精神病エピソードなどがある。

直腸炎型および左側大腸炎型にはヒドロコルチゾンの浣腸またはフォーム製剤を使用することができ,浣腸の場合は100mgを等張液60mLに溶解して1日1回または1日2回投与する。浣腸はできるだけ長時間腸内に留めるべきであり,患者に左側臥位をとらせ,股関節部を挙上した状態で,夜間に滴下注入することにより,保留時間が延長して分布が拡大する可能性がある。治療が効果的ならば,約2~4週間は毎日,その後1~2週間は隔日で継続し,それから徐々に1~2週間かけて中止すべきである。

ブデソニドは肝初回通過効果が大きい(90%超)コルチコステロイドであることから,経口投与により消化管疾患に有意な作用をもたらしうる一方,副腎抑制は最小限に抑えられる。経口ブデソニドはプレドニゾロンと比較して有害作用が少ないが,効果はそれほど迅速でなく,典型的には重症度の低い疾患に用いられる。ブデソニドは寛解を3~6カ月間維持する上で効果的となることがあるが,長期維持に効果的であるとはまだ証明されていない。ブデソニドは小腸クローン病に対して承認されているほか,潰瘍性大腸炎用としては腸溶剤が入手できる。用量は9mg,1日1回である。また,米国以外では浣腸として利用可能である。

コルチコステロイド(ブデソニドなど)を開始した患者には,全例でビタミンD(400~800単位/1日)とカルシウム(1200mg/1日)を経口投与するべきである。

免疫調節薬

代謝拮抗薬のアザチオプリン,6-メルカプトプリン,およびメトトレキサートも,生物製剤との併用療法に用いられる。

アザチオプリンおよび6-メルカプトプリン

アザチオプリンとその代謝物である6-メルカプトプリンは,T細胞の機能を阻害するほか,T細胞のアポトーシスを誘導する可能性がある。これらは長期にわたり効果を示すため,コルチコステロイドの必要性を減少させ,寛解を多年にわたり維持する可能性がある。これらの薬剤は,しばしば臨床的な効果を示すまでに1~3カ月を要するため,コルチコステロイドは少なくとも2カ月目まで完全に中止はできない。アザチオプリンの用量は通常,2.5~3.0mg/kg,経口,1日1回であり,6-メルカプトプリンの用量は1~1.5mg/kg,経口,1日1回であるが,個々人の代謝により異なる。

最も頻度の高い有害作用は,悪心,嘔吐,および倦怠感である。定期的に白血球数を測定して骨髄抑制の徴候をモニタリングしなければならない(1カ月間は隔週,その後は1~2カ月毎)。約3~5%の患者で膵炎または高熱が起こり,いずれの場合も再投与は絶対的禁忌である。肝毒性はよりまれで,6~12カ月毎の血液検査でスクリーニングが可能である。これらの薬剤は,リンパ腫および非黒色腫皮膚癌のリスク増加と関連している。

これらの薬剤を開始する前に,チオプリンメチルトランスフェラーゼ(TPMT)(アザチオプリンや6-メルカプトプリンをその活性代謝物である6-チオグアニン[6‐TG]や6‐メチルメルカプトプリン[6‐MMP]に変換する酵素)の活性を測定する検査を受けさせるべきである。この酵素の既知の低活性バリアントに関する遺伝子型検査も受けさせるべきである。これらの薬剤を開始した後は,安全の確保と効果的な用量の決定のために,6‐TGおよび6‐MMPの濃度を測定することが有用である。治療の効力は,赤血球8×108個当たり230~400ピコモルの範囲で6‐TG濃度に相関する。6‐TG濃度が400ピコモルを超えると,骨髄毒性が生じる可能性がある。6‐MMP濃度が赤血球8×108個当たり5000ピコモルを超えると,肝毒性が生じる可能性がある。反応が得られない患者については,治療に対する抵抗性とアドヒアランス不良を鑑別する上で,代謝物濃度の測定も有用となる。

メトトレキサート

メトトレキサート15~25mg,経口または皮下,週1回の投与は,コルチコステロイド抵抗性またはコルチコステロイド依存性のクローン病患者の多く,さらにはアザチオプリンや6-メルカプトプリンが奏効しなかった患者にも有益である。

有害作用には悪心,嘔吐,および無症候性の肝機能検査値異常がある。一部の有害作用は葉酸1mg,経口,1日1回の投与で消失することがある。メトトレキサートを服用している女性は,1種類以上の避妊法を使用すべきである。さらに,女性およびおそらく男性も,妊娠を試みる場合はその前に少なくとも3カ月間はメトトレキサートを中止すべきである。治療開始後3カ月間は,月1回の血算およびアルブミンを含む肝機能検査を行い,その後,治療期間中は8~12週毎に行う。飲酒,肥満,糖尿病,およびおそらく乾癬が肝毒性の危険因子である。できれば,これらの病態を有する患者には,メトトレキサートによる治療を行うべきではない。治療前の肝生検は推奨されず,1年間に実施した12回の検査のうち6回でAST値の上昇がみられた場合に肝生検を行う。メトトレキサート治療により,骨髄抑制,肺毒性,および腎毒性が起こることもある。

シクロスポリンおよびタクロリムス

コルチコステロイドに抵抗性を示し,結腸切除が必要な可能性がある重症UC患者には,リンパ球の活性化を阻害するシクロスポリンが有益となる可能性がある。クローン病に対する同薬剤の使用の詳細な記述は,難治性の瘻孔または膿皮症患者に関するもののみである。初回投与は2~4mg/kgを24時間かけて持続静注し,奏効例には,6~8mg/kg,経口,1日1回に切り替え,早期にアザチオプリンまたは6-メルカプトプリンを導入する。長期使用(6カ月以上)は,複数の有害作用(例,腎毒性,痙攣発作,日和見感染症,高血圧,神経障害)により禁忌である。一般に,より安全な根治療法選択肢である結腸切除術を避ける理由がなければ,シクロスポリンは投与しない。これらの薬剤を使用する場合は,血中トラフ濃度を200~400ng/mLに維持すべきであり,コルチコステロイド,シクロスポリン,および代謝拮抗薬の併用投与中にはPneumocystis jirovecii感染症の予防を考慮すべきである。

移植患者にも使用される免疫抑制薬であるタクロリムスは,シクロスポリンと同等に効果的とみられており,入院を必要としない重度または難治性のUC患者への使用を考慮してもよい。

生物製剤

TNF阻害薬

インフリキシマブ,セルトリズマブ,アダリムマブ,およびゴリムマブは,腫瘍壊死因子(TNF)に対する抗体である。インフリキシマブ,セルトリズマブ,およびアダリムマブは,クローン病に有用であり,特に術後再発の予防または遅延に対して有用性が高い。インフリキシマブ,アダリムマブ,およびゴリムマブは,難治性またはコルチコステロイド依存性のUCに対して有益である。

インフリキシマブは5mg/kgを2時間かけて単回持続静注する。続いて,2週目および6週目に注入を繰り返す。その後,8週毎に投与する。大部分ではないとしても多くの患者では,寛解を維持するために,1年あまりのうちに用量を増やすか,投与間隔を短くする必要がある。

アダリムマブは,負荷量として160mgを皮下投与した後,2週目に80mgを皮下投与する。その投与後,2週毎に40mgを皮下投与する。インフリキシマブに耐えられない患者と最初にみられた効果がなくなった患者は,アダリムマブ治療に反応することがある。

セルトリズマブは,400mgを2週毎に3回皮下投与した後,維持療法として4週毎に投与を継続する。インフリキシマブに耐えられない患者と最初にみられた効果がなくなった患者は,セルトリズマブに反応することがある。

TNF阻害薬による単剤療法は寛解の導入および維持のいずれにも明らかに効果的であるが,TNF阻害薬をチオプリン(例,アザチオプリン)またはメトトレキサートとの併用で開始した方がより良好な結果が得られることを示唆する研究もある。しかしながら,併用療法に伴う有害作用の増加の可能性を考えると,治療の推奨は患者個々に合わせるべきである。コルチコステロイドの漸減を2週間後に開始してもよい。輸注時の有害作用(infusion reaction)として,即時型過敏反応(例,発疹,そう痒,ときにアナフィラキシー様反応),発熱,悪寒,頭痛,悪心がある。遅延型過敏反応も起きている。皮下投与するTNF阻害薬(例,アダリムマブ)はinfusion reactionを引き起こさないが,局所の紅斑,疼痛,およびそう痒(注射部位反応)を惹起する可能性はある。

TNF阻害薬の使用後に患者数名が敗血症で死亡していることから,これらの薬剤はコントロール不良の細菌感染が存在する場合は禁忌である。また,TNF阻害薬に起因するとされた結核およびB型肝炎の再活性化が報告されており,したがって,治療開始前に潜在性結核のスクリーニング(PPDおよび/またはインターフェロンγ遊離試験と胸部X線による)とB型肝炎のスクリーニングを行う必要がある。

抗TNF抗体治療では,このほかにもリンパ腫,脱髄疾患,肝毒性,および血液毒性が懸念される。

その他の生物製剤

いくつかの免疫抑制作用をもつインターロイキンと抗インターロイキン抗体も炎症反応を軽減する可能性があり,クローン病を対象として研究されている。

ベドリズマブおよびナタリズマブは,白血球接着分子に対する抗体である。ベドリズマブは中程度から重度のUCおよびクローン病を対象として承認されている。その作用は腸管に限局すると考えられているため,クローン病の最難治例を対象とする限定処方プログラムで二次治療の薬剤としてのみ使用されるナタリズマブよりも安全性が高い。

その他の抗サイトカイン抗体,抗インテグリン抗体,および成長因子製剤が現在研究段階にあり,活性化免疫細胞を枯渇させる白血球除去療法も研究されている。

抗菌薬およびプロバイオティクス

抗菌薬

抗菌薬はクローン病には役立つ場合があるが,中毒性大腸炎(toxic colitis)を除いて,UCに対する使用には制限がある。メトロニダゾール500~750mg,経口,1日3回,4~8週間の投与により,軽症のクローン病をコントロールし,瘻孔の治癒を促進できることがある。しかしながら,有害作用(特に神経毒性)のため,しばしば治療を終了できない。シプロフロキサシン500~750mg,経口,1日2回の投与はより毒性が低い可能性がある。多くの専門家がメトロニダゾールとシプロフロキサシンの併用を推奨する。非吸収性抗菌薬であるリファキシミンの200mg,経口,1日3回または800mg,経口,1日2回での投与も,活動性のクローン病の治療として有益となりうる。

プロバイオティクス

様々な非病原性微生物(例,片利共生菌である大腸菌[Escherichia coli],Lactobacillus属,Saccharomyces)の連日投与はプロバイオティクスとして機能し,回腸嚢炎の予防に効果的となりうるが,他の治療上の役割はまだ明確にはなっていない。ヘルパーT2細胞による免疫を刺激するために寄生虫の豚鞭虫(Trichuris suis)を寄生させる治療法が試みられており,UCの疾患活動性を低下させる可能性がある。

ここをクリックすると家庭版へ移動します
よく一緒に読まれているトピック

おすすめコンテンツ

ソーシャルメディア

TOP