吃逆(しゃっくり)は,横隔膜が不随意の攣縮を繰り返した後に声門が突然閉塞し,それにより空気の流入が阻止されて特徴的な音が発生する現象である。一過性の症状出現は極めて一般的である。持続性(2日間を超える)および難治性(1カ月間を超える)の吃逆はまれであるが,かなりの苦痛を伴う。
病因
評価
病歴
身体診察
警戒すべき事項(Red Flag)
所見の解釈
特異的な所見は少ない。飲酒後または手術後の吃逆は,これらのイベントと十分に関連している可能性がある。可能性のある他の原因( 難治性吃逆の主な原因)は多数あるとともに,吃逆の原因であることはまれである。
検査
治療
同定された障害に対して治療を行う(例,胃食道逆流症に対してプロトンポンプ阻害薬,食道狭窄に対して拡張療法)。
症状緩和のために,多くの単純な方法を試みることができるが,いずれもわずかに効果的という程度である:深く息を吸い込んで止めたり,紙袋を口にあてて深呼吸することによって,PaCO2が増加し,横隔膜の活動が抑制される可能性がある。(注意:ビニール袋は鼻孔に固着する可能性があるため,使わないこと。)咽頭の刺激(例,乾燥したパン,グラニュー糖,または砕いた氷の嚥下;舌の牽引;空嘔吐の誘発)による迷走神経の刺激が奏効することもある。他にも多数の民間療法がある。
持続性吃逆はしばしば治療抵抗性である。症例報告で多くの薬剤が使用されている。γ-アミノ酪酸作動薬のバクロフェン(5mg,経口,6時間毎,20mg/回まで増量)が効果的となる場合がある。その他の経口薬としては,クロルプロマジン10~50mg,1日3回,用時,メトクロプラミド10mg,1日2~4回,様々な抗てんかん薬(例,ガバペンチン)などある。さらに,プロトンポンプ阻害薬による経験的治療を試験的に行ってもよい。重度の症状に対しては,クロルプロマジン25~50mgの筋肉内または静脈内投与が可能である。
難治例については,横隔神経を少量の0.5%プロカイン溶液で遮断することがあり,呼吸抑制および気胸を起こさないよう注意が必要である。両側の横隔神経切断術を行っても,全ての患者が治癒するわけではない。