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【◇】慢性腹痛および反復性腹痛

執筆者:

Jonathan Gotfried

, MD,

  • Lewis Katz School of Medicine at Temple University
  • Penn State University

最終査読/改訂年月 2020年 3月
本ページのリソース

慢性腹痛とは,3カ月以上にわたり連続的または間欠的に持続する腹痛のことである。間欠的な腹痛は,反復性腹痛と呼ばれることもある。急性腹痛については,本マニュアルの別の箇所で考察されている。慢性腹痛は5歳以降のいずれの年齢でも起こりうる。最大10%の小児患者で反復性腹痛の評価が必要になる。慢性腹痛は成人の約2%にみられ,その多くは女性である(機能性ディスペプシアや様々な腸管機能障害など,何らかの慢性消化管症状を有する成人では,頻度がはるかに高くなる)。

機能性腸疾患は慢性腹痛の一般的な原因である。過敏性腸症候群(IBS)は,繰り返す腹痛や排便習慣の変化を引き起こす機能性腸疾患である。機能性腹痛は,同様の疾患であるが,頻度がより低く,排便習慣の変化を引き起こさない。

ほぼ全ての慢性腹痛患者が,病歴聴取,身体診察,および基本的検査を受けても診断がつかないという経験をする。

病態生理

慢性腹痛の器質的原因(慢性腹痛の器質的原因の表を参照)は,内臓受容器(機械的,化学的,またはその両方)の刺激に起因する。疼痛は神経支配と障害される臓器に応じて,限局痛の場合もあれば,関連痛の場合もある。

過敏性腸症候群と機能性腹痛は,器質的疾患の所見を認めない状態で6カ月以上持続する疼痛を引き起こす。これらの機能障害の病態生理は複雑であり,腸管運動の変化,内臓侵害受容の亢進,および心理的因子が関与していると考えられている。内臓痛覚過敏とは,正常量の管腔内膨張に対する過敏性や正常量の腸内ガスの存在下での痛覚過敏を指し,脳腸相関における神経経路のリモデリングの結果として生じる可能性がある。

病因

おそらく,10%の患者には未検出の器質的疾患( 慢性腹痛の器質的原因)が存在すると考えられ,残りの患者は機能性の病態を有する。ただし,特定の異常(例,癒着,卵巣嚢胞子宮内膜症)が慢性腹痛の原因であるのか,偶発的な所見でしかないのかは,判断が難しい場合がある。

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慢性腹痛の器質的原因

原因

示唆する所見*

診断アプローチ

泌尿器疾患

再発性尿路感染症

経静脈的尿路造影

超音波検査

月経前または月経時の不快感

腹腔鏡検査

漠然とした下腹部不快感,腹部膨満

ときに触知可能な骨盤腫瘤

骨盤内超音波検査

婦人科のコンサルテーション

発熱,側腹部痛,暗色尿または血尿

尿培養

静脈性尿路造影

CT

急性■PIDの続発症

骨盤不快感

急性PIDの既往

内診

ときに腹腔鏡検査

消化管疾患

小児では,発育不良

腹部膨満,下痢,しばしば脂肪便

グルテンを含む食品を摂取したときに悪化する症状

血清マーカー/HLA-DQ2/HLA-DQ8ハプロタイプ検査

小腸生検

独立した複数回にわたる右下腹部痛の既往

腹部CT

超音波検査

再発性の右上腹部仙痛

超音波検査

上腹部不快感,倦怠感,食欲不振

まれに黄疸

約3分の1の患者では急性肝炎の既往

肝臓の検査,国際標準化比,アルブミン,および血小板数

肝炎のウイルス性,自己免疫性,または代謝性の原因に対する検査

繰り返す重度の心窩部痛

ときに吸収不良(例,下痢,脂肪便)

通常,急性膵炎の既往

血清リパーゼ値(しばしば上昇しない)

CT,MRCP

便検査(便中エラスターゼまたは便中脂肪)

不快感はまれであるが,左側結腸が部分的に閉塞すれば仙痛性の不快感が生じる可能性あり

しばしば便潜血または肉眼的血便

大腸内視鏡検査

発熱を伴う発作的な重度の疼痛,食欲不振,体重減少,下痢

腸管以外の症状(関節,眼,口,皮膚)

CT小腸造影または上部消化管造影と小腸造影

大腸内視鏡検査および上部消化管内視鏡検査と同時に生検

消化不良または軽度の疼痛

しばしば便潜血

上部消化管内視鏡検査

肉芽腫性腸炎

家族歴

他の部位の繰り返す感染症(例,肺,リンパ節)

赤沈

大腸内視鏡検査

CT小腸造影

胃食道逆流を伴う食道裂孔ヘルニア

胸やけ

ときに咳嗽および/または嗄声

制酸薬の服用にて軽減する症状

ときに胃内容の口腔内への逆流

食道造影

内視鏡検査

慢性非特異的疼痛

ときに触知可能な右下腹部腫瘤

発熱,下痢,体重減少

ツベルクリン検査

生検のための内視鏡検査

経口造影剤によるCT

胸部X線

乳製品摂取後の腹部膨満および痙攣痛

水素呼気試験

乳糖含有食品の除去試験

重度の上腹部痛で:

  • しばしば背部に放散する

  • 疾患の末期にみられ,体重減少がしばしば認められる

閉塞性黄疸を引き起こすことがある

CT

MRCPまたはERCP

超音波内視鏡検査

寄生虫感染(特にジアルジア症

旅行または曝露の既往

痙攣痛,鼓腸,下痢

寄生虫の虫卵または虫体に対する便検査

便の酵素免疫測定法(ランブル鞭毛虫[Giardia]に対して)

食物や制酸薬で軽減する上腹部痛

夜間に眼が覚めることがある

Helicobacter pyloriに対する内視鏡検査および生検

H. pylori呼気試験または便抗原検査

非ステロイド系抗炎症薬,飲酒,およびタバコ使用の評価

便潜血検査

術後癒着性索状物

以前の腹部手術

仙痛性の不快感で,悪心のほか,ときに嘔吐を伴う

上部消化管造影,経口小腸造影,またはCT小腸造影

腹部CT

血性下痢を伴う痙攣性の疼痛

S状結腸鏡検査

直腸生検

大腸内視鏡検査

全身性疾患

腹部てんかん

極めてまれ

発作性の疼痛

他の消化管症状はない

脳波検査

反復性の重度の腹痛,嘔吐

腹部診察で異常なし

ときに神経症状(例,筋力低下,痙攣発作,精神症状)

一部の病型では,皮膚病変

尿中ポルフォビリノーゲンおよびδアミノレブリン酸スクリーニング

赤血球中の脱アミノ酵素測定

家族歴

連日の発熱および腹膜炎に加えて,しばしば疼痛発作がみられる

小児または青年期に始まる

遺伝子検査

特定の食物(例,シーフード)の摂取後にのみ出現する症状

アレルゲン除去食

IgA血管炎(かつてのヘノッホ-シェーンライン紫斑病)

触知可能な紫斑性発疹

関節痛

便潜血

皮膚病変の生検

家族歴

疼痛に加えて,しばしば末梢血管性浮腫と発熱がみられる

発作時の血清補体価(C4)

認知/行動異常

血中鉛濃度

心窩部痛と嘔吐を伴うまれな変異型

主に小児

通常は片頭痛の家族歴あり

臨床的評価

家族歴

1日中持続する重度の腹痛エピソード

腹部以外の部位の反復性疼痛

鎌状赤血球試験

ヘモグロビン電気泳動

* 所見は常にみられるわけではなく,他の疾患でも認められることがある。

EEG = 脳波検査;ERCP = 内視鏡的逆行性胆道膵管造影;ESR = 赤血球沈降速度;GI = 消化管;IVU = 排泄性尿路造影;MRCP = 磁気共鳴胆道膵管造影;PID = 骨盤内炎症性疾患;RBC = 赤血球;RLQ = 右下腹部;RUQ = 右上腹部;SBFT = 小腸造影;UTI = 尿路感染症。

Modified from Barbero GJ: Recurrent abdominal pain in childhood.Pediatr Rev 4(1):29–34, 1982, doi: 10.1542/pir.4-1-29, and from Greenberger NJ: Sorting through nonsurgical causes of acute abdominal pain.J Crit Illn 7:1602–1609, 1992.

評価

病歴

現病歴の聴取では,疼痛の部位,質,持続時間,再発のタイミングと頻度,疼痛を悪化または軽減させる因子(特に食事または排便)について聞き出すべきである。乳糖不耐症は頻度が高く,特に黒人,ヒスパニック,アジア系(特に東アジア諸国),およびアメリカンインディアンでは加齢とともに頻度が高まるため,牛乳や乳製品が腹部の痙攣,膨満,または膨隆を引き起こすかどうかを具体的に尋ねる必要がある。

系統的症状把握(review of systems)では,胃食道逆流,食欲不振,腹部膨満またはガス,悪心,嘔吐,黄疸,黒色便,血尿,吐血,体重減少,粘液便,血便などの併発する消化管症状がないか検討する。下痢や便秘,便の硬さ,色,排便パターンの変化などの腸管症状が特に重要である。

【◇】食事歴が重要である。【◇】例えば,コーラ飲料,フルーツジュース(かなりの量の果糖とソルビトールを含むことがある),またはガスを発生させる食物(例,豆類,タマネギ,キャベツ,カリフラワー)の大量摂取で不可解な腹痛を説明できることがある。

既往歴には,全ての腹部手術の種類と時期,以前受けた検査および試みられた治療の結果を含めるべきである。薬歴には,処方薬および違法薬物使用に加えて飲酒に関する詳細を含めるべきである。

家族歴では,反復性腹痛,発熱,またはその両方の確認に加え,鎌状赤血球形質または鎌状赤血球症,家族性地中海熱,およびポルフィリン症の既知の診断も確認すべきである。

身体診察

バイタルサインの評価では,発熱または頻脈の有無に特に注意すべきである。

全身状態の観察では,黄疸,皮疹,末梢浮腫がないか検討すべきである。

腹部診察では,圧痛部位,腹膜所見(例,筋性防御,硬直,反跳痛)の有無,何らかの腫瘤または臓器腫大に注意すべきである。圧痛および腫瘤を検索するための直腸診および内診(女性の場合)と,鮮血を検出するための便検査が必須である。

警戒すべき事項(Red Flag)

以下の所見は特に注意が必要である:

  • 発熱

  • 食欲不振,体重減少

  • 覚醒に至るほどの疼痛

  • 血便または血尿

  • 黄疸

  • 浮腫

  • 腹部腫瘤または臓器腫大

所見の解釈

診察だけで確定診断が得られることはまれである。

慢性腹痛が器質的なものか機能的なものかの確認は困難な場合がある。レッドフラグサインの存在は,器質的な原因がある可能性が高いことを示唆するが,レッドフラグサインがないことで器質的原因が除外されるわけではない。その他の手がかりとしては,器質的原因による疼痛は通常極めて限局的で,特に臍周囲以外の部位に限局する。睡眠中の覚醒に至るほどの疼痛は,通常は器質的な原因によるものである。特定の疾患を示唆する所見の一部を表「慢性腹痛の器質的原因」に提示している。

機能性の慢性腹痛では,器質的原因によるものに類似した疼痛が起こることがある。しかしながら,関連するレッドフラグサインは認められず,心理社会的特徴がしばしば顕著となる。身体的または性的虐待の既往歴や,未解決の喪失(例,離婚,流産,家族の死)が手がかりになる場合もある。

【◇】過敏性腸症候群のRome IV診断基準では,過去3カ月間に腹痛が1週間当たり1日以上存在していたことに加え,以下のうち少なくとも2つの条件を満たす必要がある:

  • 【◇】疼痛に排便との関連がみられる。

  • 疼痛が排便回数の変化を伴っている。

  • 【◇】疼痛に伴って便の硬さの変化がみられる(1)。

評価に関する参考文献

  • 【〒】1.Drossman DA: Functional gastrointestinal disorders: History, pathophysiology, clinical features, and Rome IV. Gastroenterology 150:1262–1279, 2016.doi: 10.1053/j.gastro.2016.02.032.

検査

一般に,単純な検査(尿検査,血算,肝臓の検査,血中尿素窒素,血糖値,リパーゼなど)を行うべきである。これらの検査での異常,レッドフラグサイン,または特異的な臨床所見が認められる場合は,たとえ過去の評価が陰性であっても,さらなる検査を行う必要がある。具体的な検査内容は所見( 慢性腹痛の器質的原因)によって異なるが,典型的には,50歳以上の女性に対する卵巣癌の超音波検査,腹部および骨盤の造影CT,上部消化管内視鏡検査(特に60歳以上の患者の場合)または大腸内視鏡検査のほか,ときに小腸画像検査や便検査などが含まれる。

レッドフラグサインが認められない患者に対する検査の有益性は不明である。50歳以上または結腸癌の危険因子(例,家族歴)がある患者はおそらく大腸内視鏡検査を受けるべきであり,50歳以下の患者は経過観察とするか,画像検査が望ましい場合には腹部および骨盤の造影CTを行うことができる。磁気共鳴胆道膵管造影(MRCP),内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)および腹腔鏡検査は,特異的な適応がない限り,有用であることはまれである。

初期評価とフォローアップ来院の間,患者(患者が小児の場合は家族)は,あらゆる疼痛について,その性質,強度,持続時間,誘発因子などを記録すべきである。食事,排便パターン,試みた全ての治療(およびその結果)についても記録すべきである。この記録によって,不適切な行動パターンおよび疼痛に対する過剰反応が判明するか,そうでない場合には診断が示唆される可能性がある。

治療

器質的病態を治療する。

機能性の慢性腹痛と診断された場合は,頻回の診察や検査は避けるべきであり,これは,そうすることで身体的な愁訴に注目が集まり過大評価される可能性や,医師が診断に自信がない印象を与える可能性があるためである。

機能性の慢性腹痛を根治できる治療法はないが,助けになる対策が数多くある。それらの方法は,医師,患者,家族の間の共感的な信頼関係の上に成立するものである。危険な状態ではないと説明して患者を安心させるべきであり,具体的な問題がないか検討し,あれば対処すべきである。医師は臨床検査所見とみられる問題の性質を説明し,痛みが起きる仕組みと患者の感じ方(すなわち,ストレスがあると疼痛を感じやすくなる傾向がある場合があること)について説明すべきである。慢性疼痛が心理社会的に及ぼす悪影響(例,長期不登校または欠勤,社会活動からの引きこもり)の長期化を回避し,独立,社会参加,および自立を促進することが重要である。このような方法は,患者が日常活動に全面的に参加しながら,症状をコントロールまたは我慢する上で有用である。

アスピリン,鎮痙薬や三環系抗うつ薬などの薬剤が効果的な場合がある。【◇】オピオイドについては,依存の可能性が懸念され,またnarcotic bowel syndromeの可能性もあるため,使用を控えるべきである。機能性腹痛に対するプロバイオティクスの使用を支持するエビデンスは現在のところ限られている。

認知療法(例,弛緩訓練,バイオフィードバック,催眠)は,患者の健康および疾患コントロールの自覚に寄与することで有用な場合がある。定期的なフォローアップ来院を,患者の必要に応じて毎週,毎月,または隔月に予定し,問題の解決から十分な期間が経過するまで継続すべきである。症状が持続する場合,特に患者が抑うつ状態である場合と家庭内に有意な精神的ストレス因子がある場合には,精神科医への紹介が必要になることがある。

要点

  • 多くの症例は機能的病変を有する。

  • レッドフラグサインは,器質的原因の存在とさらなる評価の必要性を示唆する。

  • 検査は臨床的特徴を参考にして行う。

  • 器質的原因が除外された後も繰り返し検査を行うことは,通常は逆効果となる。

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