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インスリノーマ

執筆者:

Elliot M. Livstone

, MD, Sarasota Memorial Hospital, Sarasota, FL

最終査読/改訂年月 2017年 1月

膵内分泌腫瘍の概要も参照のこと。)

インスリノーマは,インスリンを過剰分泌する膵β細胞由来のまれな腫瘍である。主な症状は空腹時低血糖である。診断は,48時間または72時間絶食のグルコースおよびインスリン濃度の測定と,その後の超音波内視鏡検査による。治療は可能であれば手術である。手術が奏効しない患者には,インスリン分泌を抑制する薬剤(例,ジアゾキシド,オクトレオチド,カルシウム拮抗薬,β遮断薬,フェニトイン)を使用する。

インスリノーマは,膵島細胞から発生する膵内分泌腫瘍の一種である。全てのインスリノーマのうち,80%は単発性で,特定された場合は根治切除が可能である。インスリノーマのうち10%のみが悪性である。インスリノーマは1/250,000の頻度で発生し,発症年齢の中央値は50歳であるが,例外として多発性内分泌腫瘍症(MEN)1型(インスリノーマの約10%)は20歳代で発症する。MEN1型に関連するインスリノーマは多発性である可能性が高い。

外因性 インスリンの不正な投与は,インスリノーマに似た低血糖エピソードを引き起こしうる。

症状と徴候

インスリノーマに続発する低血糖は空腹時に発生する。インスリノーマによる低血糖の症状は潜行性であり,様々な精神障害や神経疾患に類似することがある。中枢神経系障害には,頭痛,錯乱,視覚障害,筋力低下,麻痺,運動失調,著明な人格変化などがあり,意識消失,痙攣発作,および昏睡に進行する可能性もある。

交感神経刺激症状(失神,脱力,振戦,動悸,発汗,空腹感,および神経過敏)がしばしば認められる。

診断

  • インスリン

  • ときにCペプチドまたはプロインスリン値

  • 超音波内視鏡検査

血漿血糖値を症状出現時に測定すべきである。低血糖を認める場合は(グルコース濃度40mg/dL[2.78mmol/L]未満),同時に採取した検体で インスリン濃度を測定すべきである。6μU/mL(42pmol/L)を上回る高インスリン血症は インスリンを介した原因を示唆し,血清 インスリン濃度と血漿血糖値の比が0.3(μU/mL)/(mg/dL)を超える場合も同様である。

インスリンは,α鎖とβ鎖がCペプチドによって連結されたプロインスリンとして分泌される。 インスリン製剤はβ鎖のみで構成されるため, インスリンの不正な投与はCペプチドおよびプロインスリン濃度の測定により検出できる。インスリノーマ患者では,Cペプチドは0.2nmol/L以上,プロインスリンは5pmol/L以上である。これらの濃度は, インスリンの不正な投与を行った患者では正常または低値である。

多くの患者は,評価時に症状がみられない(したがって低血糖もない)ため,インスリノーマの診断には48時間または72時間絶食試験のための入院を必要とする。ほぼ全てのインスリノーマ患者(98%)で,絶食開始から48時間以内に症状が出現し,70~80%では24時間以内に出現する。症状の原因が低血糖であることは次のWhipple三徴によって確定する:

  • 症状は空腹時に起こる。

  • 症状は低血糖時に起こる。

  • 症状は炭水化物の摂取によって軽減する。

症状出現時に,上述のようにホルモン濃度を測定する。

長時間の絶食後にWhipple三徴が認められず,1晩絶食後の血漿血糖値が50mg/dL(2.78mmol/L)を超えている場合は,Cペプチド抑制試験を行ってもよい。インスリノーマ患者は, インスリン注入(0.1U/kg/時)時にCペプチド濃度を正常値(1.2ng/mL以下[0.40nmol/L以下])に抑制できない。

超音波内視鏡検査は感度が90%を上回り,腫瘍の局在診断に役立つ。PETも行うことがある。CTの有用性は確認されておらず,動脈造影または選択的門脈および脾静脈カテーテル法は一般に不要である。

治療

  • 外科的切除

  • 低血糖に対してジアゾキシドまたはときにオクトレオチド

  • 化学療法

手術による全体の治癒率はほぼ90%である。膵臓の表面または表面近くにある小型で単発性のインスリノーマは,通常外科的に核出できる。単発性の大きなまたは深在性の腺腫が膵体部あるいは尾部にある場合,体部もしくは尾部(もしくは両方)に多発性病変がある場合,またはインスリノーマが見つからない場合(異常な状況),膵尾側の膵亜全摘術を施行する。1%未満の症例では,インスリノーマが膵周囲の十二指腸壁や十二指腸周囲に異所性に発生し,手術中に熱心に検索しなければ発見できない。膵頭十二指腸切除術(Whipple手術)は切除可能な膵頭部の悪性インスリノーマに行う。以前の膵亜全摘術の効果が不十分である場合は,膵全摘術を行う。

低血糖が続く場合は,ナトリウム利尿薬との併用でジアゾキシドを開始用量1.5mg/kg,経口,1日2回で使用することができる。用量は4mg/kgまで増量できる。ソマトスタチンアナログであるオクトレオチド(100~500μg,皮下,1日2回~1日3回)は効果が一定ではないが,ジアゾキシド抵抗性の低血糖が持続する患者には投与を考慮すべきである。反応を示した患者では,長時間作用型オクトレオチド製剤を20~30mg,月1回の筋肉内投与に切り替えてもよい。オクトレオチドは膵酵素の分泌を抑制するため,オクトレオチドを使用する患者には膵酵素剤の服用も必要になることがある。 インスリン分泌に対する効果が中等度で一定しない他の薬剤として,ベラパミル,ジルチアゼム,フェニトインなどがある。

症状をコントロールできない場合,化学療法を試してもよいが,反応は限られている。ストレプトゾトシンの奏効率は30~40%であり,フルオロウラシルと併用した場合は,奏効率は60%で,効果は最長2年間持続する。その他の薬剤としては,ドキソルビシン,クロロゾトシン,インターフェロンなどがある。インスリノーマを対象に検討されている新規の化学療法として,テモゾロミドをベースとするレジメン,エベロリムス,スニチニブなどがある。

要点

  • インスリノーマの10%のみが悪性であるが,いずれも空腹時低血糖を引き起こす。

  • 症状出現時(自然発生または入院中に絶食にて誘因)にグルコース値および インスリン値を測定する。

  • 超音波内視鏡検査は腫瘍の位置同定に対する感度が90%を超え,PETも行われることがあるが,CTは有用ではない。

  • インスリノーマの約90%は外科的に切除可能である。

  • 低血糖の症状をジアゾキシドまたはときにオクトレオチドによりコントロールする。

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