(American College of Gastroenterologyの成人クローン病患者における憩室性疾患の診断および管理に関する診療ガイドラインも参照のこと。)
憩室は大腸のいずれの部位にも発生し,通常はS状結腸に生じるが,まれに直腸の腹膜反転部より下方に発生する。直径は3mmから3cmを超えるものまで様々である。憩室を呈する患者は通常,複数の憩室を有する。憩室症は40歳未満の人ではまれであるが,その後は急速に頻度が上昇し,基本的に90歳の人はいずれも多数の憩室を有する。巨大憩室は直径3~15cmで,発生はまれであり,単発性のことがある。
病態生理
症状と徴候
診断
無症候性の憩室は通常,大腸内視鏡検査,下部消化管造影,さらには腹部CTの際に偶発的に発見される。無痛性の下血がみられる場合,特に高齢患者では,憩室症が疑われる。下血の評価として典型的には大腸内視鏡検査を行い,有意な持続性出血がみられない限り,ルーチンの前処置後に待機的に施行できる。大量の持続性出血がみられる場合は,迅速な前処置(ポリエチレングリコール溶液5~10Lを経鼻胃管により3~4時間かけて投与)で,しばしば十分な観察が可能である。大腸内視鏡検査で出血源を観察できず,持続性出血の速度が十分に速い場合(0.5~1mL/min超),血管造影で出血源が同定されることがある。血管造影を施行する際に,検査の的を絞るために,核医学検査を最初に行うこともある。
治療
憩室症の治療は,分節性痙攣の軽減を目標とする。高繊維食が助けとなり,オオバコ種子の製剤またはブランで補ってもよい。低繊維食は禁忌である。憩室に詰まる可能性がある種子類または他の食物を避けるという直感的な指示については,確立された医学的根拠はない。鎮痙薬(例,ベラドンナ)は有益でなく,有害作用を引き起こすことがある。合併症がない場合には手術は不要である。しかしながら,巨大憩室には手術が必要となることがある。
憩室出血は75%の患者で自然に止まる。治療は診断手技と同時に行われる場合が多い。診断のために血管造影を施行した場合は,バソプレシンの動注により,70~90%の患者で持続性出血をコントールできる。出血が2~3日中に再発し,手術を要する症例もある。血管造影による塞栓術は効果的な止血法であるが,最大20%の患者で腸梗塞が起こるため,推奨されない。大腸内視鏡の使用により,血管の熱凝固もしくはレーザー凝固またはアドレナリンの注射を行うことができる。これらの方法により止血できない場合は,区域切除術または結腸亜全摘術の適応となる。