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腹腔内膿瘍

執筆者:

Parswa Ansari

, MD, Hofstra Northwell-Lenox Hill Hospital, New York

最終査読/改訂年月 2017年 1月
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膿瘍は腹腔および後腹膜のいずれの部位でも生じる可能性がある。主に手術後,外傷後,または腹腔内の感染および炎症が関与する病態に続いて発生し,特に腹膜炎または穿孔が起きた場合に生じやすい。症状は倦怠感,発熱,および腹痛である。診断はCTによる。治療は外科的ドレナージまたは経皮的ドレナージのいずれかである。抗菌薬は補助的に使用する。

急性腹痛も参照のこと。)

病因

腹腔内膿瘍(intra-abdominal abscess)は,腹膜腔内膿瘍(intraperitoneal abscess),後腹膜膿瘍,内臓膿瘍に分類される ( 腹腔内膿瘍)。多くの腹腔内膿瘍は中空臓器の穿孔または結腸癌に続いて発生する。他の膿瘍は,虫垂炎憩室炎クローン病膵炎骨盤内炎症性疾患などの病態による感染または炎症の周囲への波及によって発生するか,あるいは汎発性腹膜炎を引き起こすあらゆる病態に起因する。腹部手術,特に消化管または胆道の手術は,もう1つの有意な危険因子であり,吻合部縫合不全などの事象により術中または術後に腹膜が汚染されることがある。外傷性腹部損傷,特に肝臓,膵臓,脾臓,腸管の裂傷および血腫により,外科的治療の有無にかかわらず,膿瘍が発生することがある。

起炎菌は典型的には正常な腸内常在菌叢を反映し,嫌気性および好気性細菌が複雑に混在している。最も分離頻度の高い起炎菌は,好気性グラム陰性桿菌(例,大腸菌[Escherichia coli]およびKlebsiella属)と嫌気性菌(特にBacteroides fragilis)である。

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腹腔内膿瘍

部位

病因

起炎菌

腹膜腔内

横隔膜下

右または左下腹部

係蹄間

傍結腸

骨盤

術後;消化管の穿孔,虫垂炎憩室炎,腫瘍;クローン病骨盤内炎症性疾患;何らかの病因による汎発性腹膜炎

腸内菌叢,しばしば複数菌

後腹膜

膵臓

外傷,膵炎

腸内菌叢,しばしば複数菌

腎周囲

腎実質膿瘍(腎盂腎炎の合併症,またはまれに遠隔部位から血行性)の拡散

好気性グラム陰性桿菌

内臓

肝臓

外傷,上行性胆管炎,門脈菌血症

胆汁由来の場合は好気性グラム陰性桿菌,門脈菌血症の場合は腸内菌叢の複数菌,場合によってはアメーバ感染( アメーバ症

脾臓

外傷,血行性,梗塞(鎌状赤血球症およびマラリアなどの場合)

ブドウ球菌,レンサ球菌,嫌気性菌,好気性グラム陰性桿菌(Salmonella属など),易感染性患者におけるCandida属真菌

症状と徴候

膿瘍は穿孔または有意な腹膜炎から1週間以内に形成されうるが,術後膿瘍は手術から2~3週間後まで,またまれに数カ月後まで形成されないことがある。症状は様々であるが,大部分の膿瘍は発熱および軽微から重度の腹部不快感(通常は膿瘍付近)を引き起こす。汎発性または限局性の麻痺性イレウスが発生することがある。悪心,食欲不振,体重減少がよくみられる。

直腸S状結腸移行部に隣接するダグラス窩膿瘍は下痢を引き起こすことがある。膀胱に隣接している場合は尿意切迫および頻尿が起こることがあり,また憩室炎が原因の場合は,結腸膀胱瘻を形成することがある。

横隔膜下膿瘍は,乾性咳嗽,胸痛,呼吸困難,肩関節痛などの胸部症状を引き起こすことがある。ラ音,類鼾音,摩擦音が聞こえることがある。肺底部の無気肺,肺炎,胸水が起こると,打診での濁音および呼吸音減弱が典型的に認められる。

一般に,膿瘍部に圧痛がある。大型の膿瘍は腫瘤として触知できることがある。

合併症

排膿されていない膿瘍は,隣接構造にまで及び,隣接血管を侵食し(出血または血栓症を引き起こす),腹腔内または腸管内に破裂して流入し,皮膚瘻または泌尿生殖器瘻を形成することがある。横隔膜下膿瘍は,胸腔に及び,膿胸,肺膿瘍肺炎を引き起こすことがある。下腹部の膿瘍は,大腿部または傍直腸窩に及ぶことがある。脾膿瘍は,心内膜炎が適切な抗菌薬療法にもかかわらず持続する場合の持続性菌血症のまれな原因である。

診断

  • 腹部CT

  • まれに核医学検査

膿瘍が疑われる場合の望ましい診断法は,経口造影剤を使用する腹部および骨盤CTである。他の画像検査を行った場合,異常が認められることがあり,腹部単純X線で膿瘍内の腸管外ガス,隣接臓器の偏位,膿瘍を示す軟部組織密度,腰筋陰影消失を認めることがある。横隔膜付近の膿瘍は,胸部X線上で同側胸水,片側横隔膜の挙上または不動,下葉浸潤,無気肺などの異常所見として認められることがある。

血算および血液培養を行うべきである。大部分の患者で白血球増多がみられ,貧血も一般的である。

ときに,インジウム111標識白血球を用いた核医学検査が腹腔内膿瘍の同定に有用なことがある。

予後

腹腔内膿瘍による死亡率は10~40%である。転帰は,膿瘍の特異的な性質および位置よりも,むしろ患者の基礎疾患または損傷および全体的な医学的状態によって主に決まる。

治療

  • 抗菌薬の静注

  • ドレナージ:経皮的または外科的

ほぼ全ての腹腔内膿瘍は,経皮的カテーテル法または外科手術による排膿が必要であるが,例外として,小さな(2cm未満)結腸周囲膿瘍,虫垂周囲膿瘍,または皮膚や腸管内に自然に排膿している膿瘍が挙げられる。カテーテルドレナージ(CTまたは超音波ガイド下で留置)は,次のような場合に適切であると考えられる:膿瘍腔がほとんどない場合;排膿路が腸管や汚染されていない臓器,胸膜,腹膜を横切らない場合;汚染源がコントロールされている場合;膿がカテーテルを通過するに十分な流動性を有する場合。

抗菌薬では治癒は得られないが,血行性の播種を抑えると考えられ,介入の前後に投与すべきである。治療には腸内菌叢に活性を示す薬剤が必要で,これにはアミノグリコシド系薬剤(例,ゲンタマイシン1.5mg/kg,8時間毎)とメトロニダゾール500mg,8時間毎の併用などがある。セフォテタン2g,12時間毎の単剤療法も妥当である。抗菌薬がそれまで使用されていた患者または院内感染患者には,耐性好気性グラム陰性桿菌(例,Pseudomonas属)および嫌気性菌に活性を示す薬剤を投与すべきである。

栄養サポートは重要であり,経腸栄養法が望ましい。経腸的に投与できない場合には,静脈栄養を早期に開始すべきである。

要点

  • 原因となる事象(例,腹部外傷,腹部手術)または疾患(例,クローン病,憩室炎,膵炎)の既往がある患者で腹痛と発熱がみられる場合は,腹腔内膿瘍を疑う。

  • 膿瘍は癌の初発症状のことがある。

  • 診断は腹部CTによる。

  • 治療は経皮的または外科的ドレナージにより,抗菌薬は必要であるが,単独では治療として不十分である。

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