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腸閉塞

執筆者:

Parswa Ansari

, MD,

  • Assistant Professor and Program Director in Surgery
  • Hofstra Northwell-Lenox Hill Hospital, New York

最終査読/改訂年月 2017年 1月
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腸閉塞は,腸の閉塞を引き起こす病態によって,腸内容の腸管内通過の有意な機械的障害または完全停止が引き起こされた状態である。症状としては痙攣痛,嘔吐,重度で持続性の便秘,放屁の消失などがある。診断は臨床的に行い,腹部X線検査で診断を確定する。治療は,急速輸液および経鼻胃管吸引により行い,完全閉塞のほとんどの症例で手術を施行する。

機械的閉塞は,小腸閉塞(十二指腸を含む)と大腸閉塞に分類される。閉塞は,部分または完全閉塞の場合がある。小腸の部分閉塞の約85%は手術以外の治療で治癒するが,小腸の完全閉塞の約85%は手術を要する。

病因

全体として機械的閉塞の最も頻度の高い原因は,癒着,ヘルニア,腫瘍である。他の一般的な原因は,憩室炎,異物(胆石を含む),腸捻転(腸間膜を軸として腸管がねじれた病態),腸重積症(腸管の一部が腸管の別の部分に嵌入した状態),宿便である。腸管の部位によって罹患の状況は異なる( 腸閉塞の原因)。

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腸閉塞の原因

部位

原因

結腸

腫瘍(通常は左側結腸),憩室炎(通常はS状結腸),S状結腸または盲腸捻転,宿便,ヒルシュスプルング病クローン病

十二指腸

  • 成人

十二指腸癌, 膵頭部癌潰瘍性疾患

  • 新生児

鎖肛,腸捻転,索状物,輪状膵

空腸および回腸

  • 成人

ヘルニア,癒着(一般的),腫瘍,異物,メッケル憩室,クローン病(一般的ではない),回虫(Ascaris)寄生,中腸軸捻転,腫瘍による腸重積症(まれ)

  • 新生児

胎便性イレウス,腸回転異常症による腸捻転,鎖肛,腸重積症

病態生理

単純な機械的閉塞では,血行障害を伴わずに閉塞が起こる。摂取した水分および食物,消化分泌液,ガスが閉塞部より上部に蓄積する。近位腸管は拡張し,遠位腸管は虚脱する。粘膜の正常な分泌および吸収機能は低下し,腸壁は浮腫およびうっ血を呈する。重度の腸管拡張は永続性かつ進行性で,蠕動障害および分泌障害を強め,脱水のリスクおよび絞扼性閉塞に進行するリスクを増加させる。

絞扼性閉塞は血流障害を伴う閉塞であり,小腸閉塞患者の25%近くに生じる。通常,ヘルニア,腸捻転,腸重積症に関連する。絞扼性閉塞は早ければ6時間で梗塞および壊疽に進行しうる。最初に静脈閉塞,続いて動脈閉塞が起こり,それにより腸壁虚血が急速にもたらされる。虚血腸管は浮腫を呈し,梗塞を起こして,壊疽および穿孔を来す。大腸閉塞では,絞扼性閉塞はまれである(腸捻転による閉塞を除く)。

穿孔は虚血部分(典型的には小腸)または著明な拡張が起こった場合に発生する可能性がある。リスクは盲腸が直径13cm以上に拡張した場合に高い。閉塞部位では,腫瘍または憩室の穿孔も起こりうる。

パール&ピットフォール

  • 絞扼性閉塞は早ければ6時間で梗塞および壊疽に進行しうる。

症状と徴候

小腸閉塞では,発生直後から臍周囲または心窩部を中心とする腹部痙攣,嘔吐,重度で持続性の便秘(完全閉塞の場合)などの症状が出現する。部分閉塞患者は下痢を発生することがある。持続性の重度の疼痛は,絞扼が発生していることを示唆する。絞扼がない場合,腹部に圧痛はない。典型的には,亢進した高ピッチの蠕動に,痙攣と同時に起こる急激な蠕動を伴う。ときに,拡張した腸係蹄を触知できる。梗塞がある場合,腹部は圧痛を呈し,聴診では腸雑音消失または蠕動微弱を認める。ショックおよび乏尿は重篤な徴候で,後期の単純性閉塞または絞扼を示唆する。

大腸閉塞では,小腸閉塞の場合より軽度の症状が徐々に出現するのが通常である。便秘が増悪して重度で持続性の便秘と腹部膨隆を来す。嘔吐が起こることがあるが(通常は他の症状の出現から数時間後),頻度は高くない。排便のない下腹部痙攣が起こる。身体診察では大きな腹鳴を伴う腹部膨隆が典型的に認められる。圧痛はなく,通常直腸は空である。閉塞性腫瘍の部位に一致して腫瘤を触知できることがある。全身症状は比較的軽度で,水分および電解質の不足はまれである。

腸捻転はしばしば突然発症する。疼痛は持続性で,ときに仙痛の波が併発する。

診断

  • 一連の腹部X線検査

仰臥位および立位腹部X線検査を行うべきであり,閉塞の診断には通常これらの検査で十分である。絞扼の確定診断は開腹下でのみ可能であるが,一連の診察を慎重に行うことで早期警告を検出できることがある。白血球の上昇およびアシドーシスは,絞扼がすでに起こっていることを示唆する可能性があるが,これらの徴候は,絞扼した腸管係蹄からの静脈流出が減少している場合には認められないこともある。

はしご様に見える一連の拡張した小腸係蹄は,小腸閉塞の典型的な単純X線所見であるが,右側結腸閉塞でもみられることがある。立位像で腸管内に鏡面像を認める。同様であるがそれほど劇的ではないX線所見および症状はイレウス(閉塞を伴わない腸麻痺)でも認められ,鑑別が困難なことがある。近位空腸の閉塞または閉鎖係蹄の絞扼による閉塞(腸捻転で起こることがある)では,拡張した係蹄および鏡面像が認められないことがある。梗塞した腸管がX線画像で腫瘤効果(mass effect)をもたらすことがある。腸壁のガス(腸管気腫症)は壊疽を示す。

大腸閉塞では,腹部X線で閉塞部より口側の大腸に拡張が認められる。盲腸捻転では,腹部中央または左上腹部に大きな気泡が認められることがある。盲腸捻転とS状結腸捻転のいずれも,閉塞部位は下部消化管造影で捻転部位での典型的な「鳥のくちばし(bird-beak)」様変形によって示され,またこの手技によってS状結腸捻転が実際に整復されることがある。下部消化管造影を施行しない場合は,大腸内視鏡下の処置によりS状結腸捻転の除圧が可能であるが,盲腸捻転で奏効することはまれである。

小腸閉塞が疑われる場合は,腹部CTを用いることが多くなる。

治療

  • 経鼻胃管吸引

  • 輸液

  • 腸管虚血が疑われる場合,抗菌薬を静脈内投与

腸閉塞の可能性がある患者は入院させるべきである。急性腸閉塞は,治療と診断を同時に進める必要がある。常に外科医が関与すべきである。

小腸閉塞と大腸閉塞で支持療法は同様であり,具体的には,経鼻胃管吸引,輸液(血管内容量の補充として生理食塩水または乳酸リンゲル液),尿道カテーテル留置による水分排出量のモニタリングを行う。電解質補給は検査結果に基づいて行うべきであるが,嘔吐を繰り返している場合は,血中のナトリウムおよびカリウムが枯渇している可能性が高い。腸管の虚血または梗塞が疑われる場合には,試験開腹手術の施行前に抗菌薬を投与すべきである(例,セフォテタン2g静脈内投与など,第3世代セファロスポリン系薬剤)。

特異的な治療法

成人の十二指腸閉塞に対しては切除を行い,病変を切除できない場合は緩和的胃空腸吻合術を行う(小児の治療については 十二指腸閉塞)。

小腸完全閉塞には早期開腹を行うことが望ましいが,極めて状態の悪い脱水患者については体液状態および尿量の改善を目的として手術を2~3時間遅らせることができる。原因病変を可能な限り切除する。胆石が閉塞の原因の場合は,腸切開にて除去し,胆嚢摘出術は必要ない。再発を予防するため,ヘルニア修復術,異物の除去,原因である癒着の剥離術などの処置を行うべきである。癒着を原因とする術後早期閉塞または再発性閉塞を呈する患者には,腹膜刺激徴候がない場合,手術ではなく長いイレウス管による単純な挿管を試みてもよい(多くの臨床医は標準的経鼻胃管も同等に効果的であるとしている)。

癌の腹膜播種による小腸閉塞は,成人の消化管癌患者の主な死因である。外科的手技または内視鏡下でのステント留置による閉塞部のバイパス手術により,一時的に症状が緩和する可能性がある。

閉塞を引き起こしている結腸癌は,ときに一期的切除と吻合,またはこれらと一時的な結腸瘻もしくは回腸瘻造設術との併用により治療できる。この術式が不可能な場合には,腫瘍を切除して,結腸瘻または回腸瘻を造設し,ストーマは後に閉鎖することが可能である。ときに,人工肛門造設術の施行後に二期的に切除を行う必要がある。

憩室炎が閉塞の原因である場合,穿孔がしばしば認められる。病変部の切除は非常に困難なことがあるが,穿孔および汎発性腹膜炎が認められる場合には適応となる。切除および人工肛門造設術の施行後に二期的に吻合を行う。

宿便は通常直腸にみられ,指および浣腸で取り除くことができる。しかしながら,硬便の単独または混入便(すなわち,バリウムまたは制酸薬混入便)が完全閉塞(通常はS状結腸)を引き起こしている場合は,開腹が必要である。

盲腸捻転の治療としては,病変部の切除および吻合を行い,フレイルな患者では盲腸吻合術を施行して盲腸を正常位置に固定する。S状結腸捻転では,内視鏡または長い直腸管でしばしば係蹄を減圧できるため,切除および吻合を数日間延期できる。切除しなければ,再発はほぼ必至である。

要点

  • 閉塞の原因で最も頻度が高いものは,癒着,ヘルニア,および腫瘍であり,手術既往またはヘルニアがない状況での小腸閉塞は,しばしば腫瘍が原因である。

  • 嘔吐および体液のサードスペースへの移行により体液量減少が引き起こされる。

  • 長期の閉塞は,腸管虚血,梗塞,および穿孔を惹起する可能性がある。

  • 外科的修復の前に経鼻胃管吸引と輸液を行う。

  • 癒着に起因する再発性の閉塞患者には,外科的手術を直ちに行うのではなく,経鼻胃管吸引の試験的な施行を考慮する。

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