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急性腸間膜虚血症

執筆者:

Parswa Ansari

, MD,

最終査読/改訂年月 2017年 1月
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急性腸間膜虚血症は,塞栓症,血栓症,または循環血流量減少により腸管血流が途絶した状態である。これによりメディエータの放出から炎症が惹起され,最終的には梗塞がもたらされる。腹痛は身体所見と釣り合いが取れていない。早期診断は困難であるが,血管造影および試験開腹が最も感度が高く,他の画像検査法はしばしば疾患が進行して初めて陽性化する。治療は,塞栓除去術,壊死に陥っていない腸管の血行再建術,または切除により,ときに血管拡張療法が成功する。死亡率は高い。

急性腹痛も参照のこと。)

病態生理

腸管粘膜は代謝率が高く,そのため多くの血流を必要とすることから(正常では,心拍出量の20~25%の供給を受ける),血流低下の影響に非常に敏感である。虚血によって粘膜バリアが障害されることで細菌,毒素,血管作動性メディエータが放出され,その結果,心筋抑制,全身性炎症反応症候群( 敗血症および敗血症性ショック),多臓器不全,死亡に至る。メディエータの放出は完全梗塞に至る前でも起こりうる。壊死は症状出現から早くも10~12時間後に発生する可能性がある。

病因

腹部臓器には以下の3つの主要血管から血液が供給されている:

  • 腹腔動脈:食道,胃,近位十二指腸,肝臓,胆嚢,膵臓,および脾臓に血液を供給する

  • 上腸間膜動脈(SMA):遠位十二指腸,空腸,回腸,および脾弯曲部までの結腸に血液を供給する

  • 下腸間膜動脈(IMA):下行結腸,S状結腸,および直腸に血液を供給する

胃,十二指腸,直腸には側副血管が豊富に存在するため,これらの部位で虚血が起こることはまれである。脾弯曲部はSMAとIMAの間の分水界で,特に虚血のリスクがある。ここで留意すべき点は,急性腸間膜虚血症は虚血性大腸炎とは異なっていることで,後者は小型血管のみが関与し,主に粘膜壊死および出血を引き起こす。

腸間膜血流は静脈側または動脈側のいずれも阻害される可能性がある。一般に,50歳以上の患者が最もリスクが高く,表「急性腸間膜虚血症の原因」に示した閉塞の種類と危険因子がみられる。ただし,多くの患者では危険因子を同定できない。

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急性腸間膜虚血症の原因

閉塞の種類

危険因子

動脈塞栓症(>40%)

冠動脈疾患心不全心臓弁膜症心房細動,動脈塞栓の既往

動脈血栓症(30%)

全身性動脈硬化

静脈血栓症(15%)

凝固亢進状態,炎症性疾患(例,膵炎憩室炎),外傷,心不全,腎不全,門脈圧亢進症減圧症

非閉塞性虚血(15%)

低灌流状態(例,心不全ショック,人工心肺),内臓血管収縮(例,昇圧薬,コカイン)

症状と徴候

腸間膜虚血の早期の特徴は,重度の疼痛であるが,身体所見に乏しい。腹部は依然として軟らかく,圧痛はほとんどないか,全くない。軽度の頻脈を認めることがある。その後,壊死の発生に従って,著明な腹部圧痛,筋性防御,筋硬直,および腸音消失とともに腹膜炎徴候が出現する。便は潜血陽性を呈することがある(虚血の進行とともに可能性が高まる)。ショックの通常の徴候が出現し,その後に死亡に至ることが多い。

突然の疼痛の出現は,動脈塞栓症を示唆するが,診断に有用ではなく,一方,徐々に出現する疼痛は静脈血栓症に典型的である。食後腹部不快感(abdominal anginaを示唆する)の既往を有する患者は,動脈血栓症を有することがある。

診断

  • 臨床診断は診断検査よりも重要

  • 診断が不明瞭な場合,腸間膜動脈造影またはCT血管造影

腸梗塞が起きると死亡率が大きく高まるため,腸間膜虚血の早期診断は特に重要である。既知の危険因子または素因となる疾患を有する50歳以上の患者が重度の腹痛を突然発症した場合は,腸間膜虚血を考慮しなければならない。

明らかな腹膜刺激徴候を認める患者は,診断および治療のため直ちに手術室に搬送すべきである。それ以外の患者については,選択的腸間膜動脈造影またはCT血管造影が第1選択の診断手技である。他の画像検査および血清マーカーは異常を示しうるが,診断が最も重要である疾患早期には感度および特異度に欠けている。腹部単純X線は主に疼痛の他の原因(例,内臓穿孔)を除外する上で有用であるが,門脈内ガスまたは腸管気腫症が疾患の後期に認められることがある。これらの所見はCTでも認められ,血管閉塞が直接描出されることもある(静脈側の閉塞がより正確に描出される)。ドプラ超音波検査は,ときに動脈閉塞を同定できるが,感度は低い。MRIは近位血管閉塞を極めて正確に描出するが,遠位血管閉塞では正確度が低下する。血清マーカー(例,クレアチンキナーゼ,乳酸)は壊死とともに上昇するが,後期でみられる非特異的な所見である。

予後

腸梗塞の発生前に診断および治療がなされた場合,死亡率は低いが,腸梗塞の発生後では死亡率は70~90%に達する。このため腸間膜虚血では,治療の遅延につながる可能性のある診断検査よりも臨床診断を優先させるべきである。

治療

  • 外科的:塞栓除去術,血行再建術,各単独または腸管切除術との併用

  • 血管造影下:血管拡張薬または血栓溶解療法

  • 長期の抗凝固療法または抗血小板療法

試験開腹時に診断が下された場合,治療選択肢は外科的塞栓除去術,血行再建術,切除である。腸管の疑わしい部位の生存可能性を再評価するため,「セカンドルック」の開腹が必要になることがある。血管造影で診断が下された場合は,血管造影用カテーテルを通して血管拡張薬パパベリンを注入することによって,閉塞性および非閉塞性虚血のいずれも生存率が改善することがある。パパベリンは外科的介入が予定されている場合でも有用であり,ときに外科的介入の実施中や終了後にも投与されることがある。さらに,動脈閉塞症に対して,血栓溶解療法または外科的塞栓除去術を施行することがある。腹膜刺激徴候の出現は,評価期間のいかなる時点でも即時に手術が必要であることを示唆する。腹膜炎の徴候が認められない腸間膜静脈血栓症は,パパベリンによる治療後に,ヘパリンおよびその後のワルファリンによる抗凝固療法で治療できる。

動脈塞栓症または静脈血栓症患者には,ワルファリンによる長期抗凝固療法が必要である。非閉塞性虚血患者は抗血小板療法で治療してもよい。

要点

  • 腸梗塞が発生すると死亡率が有意に上昇するため,早期診断が重要である。

  • 初期には疼痛は重度であるが,身体所見はほとんどない。

  • 明らかな腹膜所見がある患者では,試験開腹がしばしば最良の診断法である。

  • 他の患者では,腸間膜動脈造影またはCT血管造影を行う。

  • 治療選択肢としては,塞栓除去術,血行再建術,切除などがある。

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