適切なトレーニングと教育を受けた健康な人たちにとっては、ダイビングは比較的安全なレクリエーション活動です。全国のダイビング団体によるダイビング安全講座が、幅広く利用でき、 ダイビング関連の障害 潜水による障害の概要 深い海に潜るダイビングやスキューバダイビングには、いくつかの障害のリスクが伴い、そのほとんどは圧力の変化によって引き起こされます。同様の障害は、海底トンネルの工事や、ケーソン(防水の箱型の構造物で、建設現場などで使用します)内で作業する人にも起こります。水の浸入を防ぐために、海底トンネルやケーソンでは気圧を高くしているからです。... さらに読む を予防したり、そのリスクを低下させたりするのに役立ちます。
安全予防措置
ダイバーは 圧外傷 圧外傷 圧外傷は圧力の変化によって、体の様々な部位に存在する気体が圧縮されたり、膨張したりすることで起こる組織の障害です。 肺、消化管、潜水用フェイスマスクで覆われた顔の一部、眼、耳、副鼻腔が侵される可能性があります。 症状は様々で、呼吸に関連するもの、胸痛( 肺の圧外傷)、眼の充血( マスクの圧外傷)、回転性めまい、耳の痛み( 耳の圧外傷)、顔面痛や鼻血( 副鼻腔の圧外傷)などがあります。... さらに読む と 減圧症 減圧症 減圧症は、高圧環境下で血液や組織中に溶けていた窒素が、減圧に伴い気泡をつくる状態です。 症状には疲労感、筋肉や関節の痛みがあります。 重症の場合、症状は脳卒中の症状に似ており、しびれ、ピリピリ感、腕や脚の筋力低下、ふらつき、回転性めまい(目が回る)、呼吸困難、胸痛などがみられます。 酸素と 再圧(高気圧酸素)療法で治療します。 ダイビング深度、ダイビング時間、浮上速度を制限することが予防に役立ちます。 さらに読む のリスクを最小限にする予防措置を取る必要があります。リスクを減らすために行うべきことは以下の通りです。
いろいろな空隙の圧を均衡させる(例えば、フェイスマスク[鼻からマスクに空気を送り込む]や中耳[あくびをする、唾を飲み込むなど]の圧の均衡)。
浮上中は息止めを避けていつも通り呼吸を行い、浮上速度は毎秒15センチメートル以下に抑える。この速度であれば、過剰な窒素を徐々に排出し、気体が充満した空隙(肺や副鼻腔など)を空にできる。
ダイブテーブルまたはダイブコンピュータで定められている潜水深度と時間に従って、必要なすべての停止を行う。
水深約4.6メートル地点で、3~5分間の安全停止を行う。
潜水後15~24時間は飛行機に乗らない。
その他のダイビングのリスクを減らすには、特定のダイビング条件を把握して避ける必要があります。
視界不良
過剰な努力を要する潮流
低温
単独でのダイビング
レクリエーショナルドラッグや鎮静薬の使用後や飲酒の後
低温は特に危険で、低体温症が急激に発現すると判断力および手先の器用さが損なわれます。低温の影響を受けやすい人の場合、低体温症によって致死的な心不整脈が起きる場合もあります。単独でのダイビングは勧められません。
レクリエーショナルドラッグや鎮静薬およびアルコールは、水深の深い所では予測できない不意の作用を生じる場合があるため、量の多少を問わず、決して摂取すべきではありません。鎮静作用のない処方薬がレジャーダイビングの妨げとなることはほとんどありません。
ダイビングの妨げとなる状況
ダイビングは激しい運動となりうるため、平均以上の有酸素能力(激しい運動を行う能力)が必要とされ、心臓や肺に病気がある場合はダイビングを行わないようにします。意識、敏捷性、または判断力を損ないうる疾患、例えば、 けいれん発作 けいれん性疾患 けいれん性疾患では、脳の電気的活動に周期的な異常が生じることで、一時的に脳の機能障害が引き起こされます。 多くの人では、けいれん発作が始まる直前に感覚の異常がみられます。 コントロールできないふるえや意識消失が起こる場合もありますが、単に動きが止まったり、何が起こっているか分からなくなったりするだけにとどまる場合もあります。... さらに読む やインスリン治療中の 糖尿病 糖尿病と糖代謝異常 (低血糖 低血糖 低血糖とは、血液中のブドウ糖の値(血糖値)が異常に低くなっている状態です。 低血糖は、糖尿病を管理するために服用する薬によるものが最も多くみられます。低血糖のまれな原因としては、他の種類の薬、深刻な病態や臓器不全、炭水化物に対する反応(感受性の高い人において)、膵臓のインスリン産生腫瘍、一部の肥満外科手術(減量のための手術)などがあります。 血糖値が下がると、空腹、発汗、ふるえ、疲労、脱力感、思考力の低下といった症状が生じますが、重度の... さらに読む を生じうるため)などは、一般にダイビングの妨げとなります。糖尿病のダイバーのための特別プロラムが確立されています。何か疑問があれば、医師に相談すべきです。自然 気胸 気胸 気胸とは、2層の胸膜(肺の外側と胸壁の内側を覆っている薄くて透明な膜)の間に空気が入り込むことによって、肺が部分的または完全につぶれてしまう病気です。 症状には、呼吸困難や胸痛などがあります。 診断は胸部X線検査によって下されます。 治療は通常、ドレーンやときに合成樹脂製のカテーテルを胸部に挿入して空気を抜くことです。 ( 胸膜疾患の概要も参照のこと。) さらに読む になったことがある人はダイビングをしてはいけません。
従来のガイドラインでは、10歳未満でのダイビングは推奨されませんが、8歳でダイビングを教え始めるプログラムがあり、うまく運用されています。大半のダイビングインストラクターは子どもにダイビングを教えるガイドラインに精通しています。ダイビングをはじめようとする人は、自身の体力や、ダイビング中の事故やけがのリスクを高める要因について、ダイビングに精通した医師の評価を受けるとよいでしょう。
職業ダイバーは、骨のX線検査や心肺機能、運動負荷試験、聴力検査、視力検査といった医学的な検査を追加で受けるようにします。さらに十分な潜水訓練を積むことが必須です。
さらなる情報
以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。
ダイバーズアラートネットワーク(Divers Alert Network):24時間緊急ホットライン、+1-919-684-9111
デューク潜水医学(Duke Dive Medicine):医師による24時間救急相談、+1-919-684-8111