染色体 染色体 遺伝子とは、DNA(デオキシリボ核酸)のうち、細胞の種類に応じて機能する特定のタンパク質の設計情報が記録された領域のことです。染色体は、細胞の中にあって複数の遺伝子が記録されている構造体です。 遺伝子は染色体内にあり、染色体は細胞の核にあります。 1本の染色体には数百から数千の遺伝子が含まれています。... さらに読む は、細胞の中にあって DNA DNA 遺伝子とは、DNA(デオキシリボ核酸)のうち、細胞の種類に応じて機能する特定のタンパク質の設計情報が記録された領域のことです。染色体は、細胞の中にあって複数の遺伝子が記録されている構造体です。 遺伝子は染色体内にあり、染色体は細胞の核にあります。 1本の染色体には数百から数千の遺伝子が含まれています。... さらに読む や多くの遺伝子が格納されている構造体です。遺伝子とは、細胞の種類に応じて機能する特定のタンパク質の設計情報が記録された領域で、物質としてはDNA(デオキシリボ核酸)で構成されています(遺伝学についての考察は 遺伝子と染色体 遺伝子と染色体 遺伝子とは、DNA(デオキシリボ核酸)のうち、細胞の種類に応じて機能する特定のタンパク質の設計情報が記録された領域のことです。染色体は、細胞の中にあって複数の遺伝子が記録されている構造体です。 遺伝子は染色体内にあり、染色体は細胞の核にあります。 1本の染色体には数百から数千の遺伝子が含まれています。... さらに読む )。遺伝子には、体がどのような外観や機能をするかを定めた詳細な指示が記録されています。
脆弱X症候群はほとんどの場合、 知的障害 知的能力障害 知的能力障害(一般に知的障害とも呼ばれます)とは、出生時や乳児期の初期から知能の働きが明らかに標準を下回り、正常な日常生活動作を行う能力が限られている状態です。 知的能力障害は、遺伝的な場合もあれば、脳の発達に影響を与える病気の結果として起こる場合もあります。 知的能力障害がある小児のほとんどでは、就学前まで目立った症状が現れません。 診断は正式な検査の結果に基づいて下されます。... さらに読む を引き起こす遺伝性の原因として診断され、女児よりも男児で多くみられます。脆弱X症候群は、男児の知的障害の原因として、 ダウン症候群 ダウン症候群(21トリソミー) ダウン症候群は、余分な21番染色体によって引き起こされる染色体異常症の一種で、知的障害と様々な身体的異常がみられます。 ダウン症候群は、21番染色体が余分にあることで発生します。 ダウン症候群の小児では、発育の遅れ、精神発達の遅れ、特異的な頭部と顔貌、しばしば低身長がみられます。 出生前の段階では、ダウン症候群は超音波検査や母親の血液検査の結果から疑われ、 絨毛採取や 羊水穿刺という検査で確定されます。... さらに読む に次いで2番目に多く診断されています。しかし、脆弱X症候群と異なり、ダウン症候群の大多数は遺伝により生じたものではありません。詳細については、全米脆弱X症候群財団(National Fragile X Foundation)を参照してください。
脆弱X症候群の症状は、X染色体上にある特定の遺伝子の異常によって生じます(遺伝子異常 遺伝子異常 染色体は、細胞の中にあって複数の遺伝子が記録されている構造体です。 遺伝子とは、細胞の種類に応じて機能する特定のタンパク質の設計情報が記録された領域で、物質としては DNA(デオキシリボ核酸)で構成されています(遺伝学についての考察は 遺伝子と染色体)。 人間の正常な細胞は、精子と卵子を除いて、いずれも23対、計46本の染色体をもっていま... さらに読む )。脆弱X症候群の人では、DNAの小さな断片のコピーが過剰にみられます(200以上)。過剰なコピーの数が55~200個の人は、たとえ本人がこの病気を発症していなくても、子孫が発症するリスクが高いことから、前変異をもっているとみなされます。
脆弱X症候群の症状
脆弱X症候群の小児および成人には、身体面、知能面、行動面に異常がみられることがあります。特徴としては、軽微であることが多いものの、発達の遅れ、突き出た大きな耳、突き出たあごと額、男児では大きな精巣(思春期以降特に顕著になる)などがみられます。関節が異常に柔軟であったり、心臓病(僧帽弁逸脱症 僧帽弁逸脱症(MVP) 僧帽弁逸脱症とは、左心室が収縮するときに僧帽弁の弁尖が左心房内に突き出る病気で、心房内への血液の逆流が起きることもあります。 僧帽弁逸脱症は、ときに弁組織が弱くなることで起こります。 ほとんどの場合に症状はありませんが、胸痛、頻脈、動悸、片頭痛、疲労、めまいなどがみられることもあります。 診断は心臓から特徴的なクリック音が聴診器で聞こえる場合に下され、心エコー検査で診断が確定されます。... さらに読む )が発生したりすることがあります。
小児では、軽度から中等度の知的障害がみられることがあります。同じ言葉や行動を繰り返す、アイコンタクトができない、社交不安がみられるなど、 自閉症 自閉スペクトラム症 自閉スペクトラム症(自閉症スペクトラム障害とも呼ばれます)は、正常な社会的関係を構築することができず、言葉の使い方に異常がみられるか、まったく言葉を使おうとせず、限定的な行動または反復行動がみられる病気です。 自閉スペクトラム症の患者は、他者とコミュニケーションをとったり関係をもったりすることが苦手です。 自閉スペクトラム症の患者は、行動、関心や動作のパターンが限定的で、多くの場合、決まった行為に従って毎日を過ごします。... さらに読む の特徴がみられることもあります。
前変異をもつ女性では、通常よりはるかに低い年齢で 閉経 閉経 閉経とは、月経が永久に停止し、妊よう性がなくなることです。 閉経前後の数年間は、エストロゲン濃度が大きく変動して月経が不規則になり、ホットフラッシュ(ほてり)などの症状が起こります。 閉経後は骨密度が低下します。 女性に1年間月経がなければ閉経と診断されますが、確認するため血液検査を行うこともあります。... さらに読む がみられることがあり、特に30代でみられることが多いです。
前変異をもつ人は、 脆弱X関連振戦/失調症候群 脆弱X関連振戦/失調症候群 脆弱X関連振戦/失調症候群は、主に男性に発生する遺伝性疾患で、振戦(ふるえ)、協調運動障害、精神機能の悪化などの症状がみられます。 脆弱X関連振戦/失調症候群の原因は遺伝子の突然変異です。 一般に、まず手に振戦が起こり、次に協調運動障害、動作の緩慢化、表情の減少が生じ、最終的に認知症が生じます。 遺伝子検査で診断を確定できます。 プリミドン、プロプラノロール、またはパーキンソン病の治療薬によって、しばしば振戦を緩和できます。 さらに読む (FXTAS)のリスクが高く、この病気を発症すると振戦(ふるえ)、協調運動障害、精神機能の悪化などがみられます。
脆弱X症候群の診断
DNA検査
脆弱X症候群は、出生後に行われるDNA検査で発見されることがあります。(次世代シークエンシング技術 次世代シークエンシング技術 遺伝子診断技術とは、生物の遺伝子について理解したり評価したりするために用いられる科学的な方法のことです。 ( 遺伝子と染色体も参照のこと。) 遺伝子とは、DNA(デオキシリボ核酸)のうち、細胞の種類に応じて機能する特定のタンパク質の設計情報が記録された領域のことです。 遺伝子診断技術は急速に進歩しています。遺伝子の一部をコピーしたり、遺伝子の変化を探索したりするために、様々な方法が用いられます。... さらに読む も参照のこと。)
脆弱X症候群の診断は、典型的には学齢期や青年期に下されます。自閉症と知的障害がみられる男児には、脆弱X症候群の検査を受けさせることが推奨されていて、特に母親の近親者に同様の問題がみられる場合には、その重要性が高くなります。
脆弱X症候群の治療
言語療法と作業療法
ときに薬剤
言語療法や作業療法などの早期介入により、脆弱X症候群の小児の能力を最大限に高めることができます。
中枢刺激薬、抗うつ薬、抗不安薬などの薬剤が効果のある小児もいます。
さらなる情報
役立つ可能性がある英語の資料を以下に示します。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。
全米脆弱X症候群財団(National Fragile X Foundation):擁護、教育、支援、一般人および専門家の意識向上のためのプログラムやサービスを掲載