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ターナー症候群

(Xモノソミー、XO症候群)

執筆者:

Nina N. Powell-Hamilton

, MD, Sidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University

レビュー/改訂 2021年 12月
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本ページのリソース
  • ターナー症候群は、2本のX染色体のうち1本の一部または全体の欠失によって引き起こされます。

  • この症候群の女児は、典型的には身長が低く、首の後ろに皮膚のたるみがあり、学習障害がみられ、思春期が始まりません。

  • 診断は染色体の分析によって確定されます。

  • ホルモン剤を用いた治療により、成長を刺激するとともに、思春期を発来させることができます。

染色体 染色体 遺伝子とは、DNA(デオキシリボ核酸)のうち、細胞の種類に応じて機能する特定のタンパク質の設計情報が記録された領域のことです。染色体は、細胞の中にあって複数の遺伝子が記録されている構造体です。 遺伝子は染色体内にあり、染色体は細胞の核にあります。 1本の染色体には数百から数千の遺伝子が含まれています。... さらに読む 染色体 は、細胞の中にあって DNA DNA 遺伝子とは、DNA(デオキシリボ核酸)のうち、細胞の種類に応じて機能する特定のタンパク質の設計情報が記録された領域のことです。染色体は、細胞の中にあって複数の遺伝子が記録されている構造体です。 遺伝子は染色体内にあり、染色体は細胞の核にあります。 1本の染色体には数百から数千の遺伝子が含まれています。... さらに読む DNA や多くの遺伝子が格納されている構造体です。遺伝子とは、細胞の種類に応じて機能する特定のタンパク質の設計情報が記録された領域で、物質としてはDNA(デオキシリボ核酸)で構成されています(遺伝学についての考察は 遺伝子と染色体 遺伝子と染色体 遺伝子とは、DNA(デオキシリボ核酸)のうち、細胞の種類に応じて機能する特定のタンパク質の設計情報が記録された領域のことです。染色体は、細胞の中にあって複数の遺伝子が記録されている構造体です。 遺伝子は染色体内にあり、染色体は細胞の核にあります。 1本の染色体には数百から数千の遺伝子が含まれています。... さらに読む 遺伝子と染色体 )。遺伝子には、体がどのような外観や機能をするかを定めた詳細な指示が記録されています。

ターナー症候群は、米国では女児の出生2500例当たり約1例の頻度で発生しています。しかし、この染色体異常は受胎の時点では、はるかに高い頻度で発生していて、そのような妊娠の99%が自然流産になります。

ターナー症候群の症状

ターナー症候群の症状の一部は出生時から明らかです。一方、学齢期以上の年齢になるまで明らかにならない症状もあります。

乳児期

ターナー症候群の新生児の多くでは、症状は軽度ですが、手の甲と足の甲に腫れ(リンパ浮腫 リンパ浮腫 リンパ浮腫とは、リンパ液が組織の中にたまった結果、むくみが生じたものです。 リンパ管が損傷または閉塞すると、リンパ液は流れることができずに組織内に貯留するため、腫れがもたらされます。 圧迫包帯や空気弾性ストッキングを使用して、むくみを軽減することができます。 ( リンパ系の概要も参照のこと。) リンパ節は、豆のような形をした非常に小さな器官で、リンパ液をろ過しています。リンパ節は全身に分布していますが、特に首すじ、わきの下、鼠径部の皮膚... さらに読む リンパ浮腫 )がみられます。首の後ろに腫れや皮膚のたるみが認められることもよくあります。心臓の異常として、大動脈の一部が狭くなった状態(大動脈縮窄症 大動脈縮窄症 大動脈縮窄症は、心臓から全身に酸素を豊富に含んだ血液を送り出す動脈である大動脈の一部が狭くなった状態です。 大動脈が狭くなると、下半身に十分な血流を送るのに狭くなった部分を越えて血液を押し出す必要があるため、心臓にかかる負荷が増大します。 重度の縮窄のある乳児は、生後数日目に突然状態が悪化し、心不全と下半身への血流低下の徴候を示します。縮窄があっても比較的年長の小児には何の症状も現れません。... さらに読む 大動脈縮窄症 )などがみられます。そのほかにも、翼状頸(首と肩の間に広い皮膚がついている)、胸の幅が広く、乳首と乳首が広く離れていて、乳首は陥没しているなどの異常が後から現れます。乳児期には、 発育性股関節形成不全 発育性股関節形成不全 発育性股関節形成不全は、股関節の骨が正しく発育しない先天異常です。 先天異常あるいは先天奇形とは、出生前の段階で生じた身体的な異常のことです。「先天」とは、「生まれたときから存在する」という意味です。( 顔面、骨、関節、および筋肉の先天異常に関する序も参照のこと。) 発育性股関節形成不全(以前は先天性股関節脱臼と呼ばれていました)は、股関節を形成する新生児の股関節窩(こかんせつか)と大腿骨の一番上(大腿骨頭)が離れる状態をいいます。多く... さらに読む 発育性股関節形成不全 と呼ばれる股関節の病気のリスクが高くなっています。比較的まれな症状として、上まぶたの垂れ下がっている(眼瞼下垂)、首の後ろの髪の生え際が低い位置にある(毛髪線低位)、 ほくろ ほくろ ほくろは、皮膚にできる小さな増殖物で、通常は濃い色をしており、皮膚の色素を作る細胞(メラノサイト)から生じます。 ほくろはほとんどの人にみられますが、異型母斑のできやすさは遺伝による場合があります。 大きく変化するほくろや異型母斑は生検を行い、黒色腫かどうかを調べる必要があります。 がんではない(良性の)ほくろの大半は治療が不要ですが、不快なほくろや美容上の問題となるほくろはメスと局所麻酔により切除することができます。... さらに読む ほくろ (母斑)、爪の発育が悪いなどがあります。

小児期後期と青年期

ターナー症候群の女児は一般に、成長しても月経(生理)がみられず(無月経 無月経 月経がないことを無月経といいます。 以下の状況では、無月経は正常です。 思春期以前 妊娠中 授乳中 さらに読む )、思春期に生じるはずの乳房、腟、子宮、陰唇の変化がみられません(思春期の遅れ 思春期の遅れ 思春期の遅れとは、性的成熟が予想される時期に始まらないことをいいます。 最も一般的には、同年齢の小児と比較して単に発達の開始が遅れているだけで、最終的には正常に発達します。 思春期の遅れは、慢性的な医学的問題、内分泌系の病気、放射線療法や化学療法、摂食障害や過度の運動、遺伝性の病気、腫瘍、ある種の感染症などによって起こることもあります。 典型的な症状としては、男児では精巣が大きくならない、女児では乳房が膨らまない、生理がないなどがありま... さらに読む )。青年期には約10%の患者で 脊柱側弯症 脊柱側弯症 脊柱側弯症とは脊柱が異常に曲がった状態です。 脊柱側弯症は生まれつきみられることも、青年期に発生することもあります。 軽症であれば軽度の不快感しか起こらないこともありますが、重症では慢性的な痛みをおぼえたり、内臓に影響したりする場合があります。 診断は診察とX線検査の結果に基づいて下されます。 すべての脊柱側弯症が悪化するわけではありませんが、悪化がみられる場合は、重度の変形を防ぐためにできるだけ早く治療しなくてはなりません。 さらに読む 脊柱側弯症 がみられます。女児の90%では、卵巣が結合組織に置き換わり、卵子の発育がみられず(性腺形成不全)、結果として不妊症になります。ターナー症候群の女児や女性は、しばしば家族と比べて身長が低く、肥満がよくみられます。

その他の異常が起きることもあり、大動脈縮窄症がみられない女児も含めて、しばしば年齢とともに 高血圧 高血圧 高血圧とは、動脈内の圧力が恒常的に高くなっている状態のことです。 高血圧の原因は不明のことも多いですが、腎臓の基礎疾患や内分泌疾患によって起こる場合もあります。 肥満、体を動かさない生活習慣、ストレス、喫煙、過度の飲酒、食事での過剰な塩分摂取などはすべて、遺伝的に高血圧になりやすい人の高血圧の発症に何らかの形で関与しています。... さらに読む 高血圧 が生じます。腎臓の異常、 糖尿病 小児と青年における糖尿病 糖尿病は、体が必要とするインスリンが十分に産生されない、または産生されたインスリンに体が正常に反応しないため、血糖(ブドウ糖)値が異常に高くなる病気です。 糖尿病とは、インスリンの生産量低下、またはインスリンの効果低下、あるいはその両方が原因で、血糖値が上昇(高血糖)し、それに伴って生じる一連の病態のことをいいます。... さらに読む 小児と青年における糖尿病 、甲状腺疾患もよくみられます。ときに腸の異常な血管から出血が起きることもあります。 難聴 小児の聴覚障害 聴覚障害とは、軽度から重度までの様々な程度の難聴を指し、内耳、中耳、外耳、または聴覚に必要な神経など、耳の一部に問題がある場合に起こる可能性があります。 新生児の聴覚障害は、サイトメガロウイルス感染症または遺伝子異常が原因であることが最も多く、年長児の場合は耳の感染症や耳あかが原因です。 小児が音に反応しなかったり、言葉をうまく話せなかったり、話し始めるのが遅かったりする場合は、聴覚障害が原因である可能性があります。... さらに読む 小児の聴覚障害 が起こることもあり、また 斜視 斜視 斜視(眼位のずれ)は、片側の眼の向きがときに(間欠性)、または常にずれているために(恒常性)、その眼の視線が、もう片方の眼が見ている物体の方向を向いていない状態です。斜視を治療しなければ、 弱視(視力の低下)や恒久的な視力障害に至ることがあります。 斜視の治療では、屈折異常の矯正、アイパッチまたは点眼薬による弱視の治療のほか、場合によっては手術が行われます。 斜視は、左右の眼の向きがずれている状態です。... さらに読む 斜視 や遠視がよくみられます。ターナー症候群の女児では、一般集団と比べて セリアック病 セリアック病 セリアック病は、小麦や大麦、ライ麦に含まれるタンパク質のグルテンに対する遺伝性の不耐症であり、小腸の粘膜に特徴的な変化を起こし、 吸収不良が生じます。 タンパク質のグルテンの摂取後に、腸の粘膜に炎症が生じます。 症状としては、成人では下痢、低栄養、体重減少などがあります。 小児でみられる症状としては、腹部膨満、非常に強い悪臭がする大量の便、成長不良などがあります。 診断は、典型的な症状と小腸の粘膜から採取した組織サンプルの検査結果に基づ... さらに読む セリアック病 、甲状腺炎、糖尿病の発生頻度が高いです。大動脈に異常が生じるリスクが高くなっているため、定期的に心エコー検査を行っていく必要があります。特定の種類の染色体異常を原因とするターナー症候群の女児では、卵巣に性腺芽腫と呼ばれる腫瘍が発生するリスクが高く、これは悪性の場合があります。

ターナー症候群の女児の多くでは、 注意欠如・多動症 注意欠如・多動症(ADHD) 注意欠如・多動症(注意欠陥/多動性障害とも呼ばれます)(ADHD)は、注意力が乏しいか注意の持続時間が短い状態、年齢不相応の過剰な活動性や衝動性のため機能や発達が妨げられている状態、あるいはこれら両方に該当する状態です。 ADHDは脳の病気で、生まれたときからみられる場合もあれば、出生直後に発症する場合もあります。 主に注意を持続したり、集中したり、課題をやり遂げたりすることが困難な場合もあれば、過剰に活動的で衝動的な場合もあり、その両... さらに読む (注意欠陥/多動性障害とも呼ばれます)と 学習障害 学習障害 学習障害がある小児は、注意力、記憶力、論理的思考力が欠けているため、特定の技能や情報を習得したり、記憶したり、幅広く使ったりすることができず、学業成績にも影響が出ます。 学習障害の小児は、色の名前や文字を覚えたり、数を数えたり、読み書きを習得したりすることが遅れる場合があります。 学習障害の小児は、学習の専門家のもとで一連の学力検査や知能検査を受け、医師が確立された基準を適用して診断を下します。... さらに読む がみられ、視覚情報と空間の関係を把握することが困難で、計画性と注意力に問題がみられます。たとえ言語の知能検査では平均以上の成績をとっても、特定の能力検査や数学では成績が低くなる傾向があります。知的障害はまれです。

ターナー症候群の診断

  • 出生時の外見

  • 遺伝子検査

  • 画像検査

診断を確定するには、通常は血液検査を行って染色体を分析します。

ターナー症候群の治療

  • 心臓の異常の外科的修復

  • 成長ホルモン療法

  • エストロゲン補充療法

  • その他の問題に対する定期的な評価

ターナー症候群には根治的な治療法がありません。しかし、この症候群によって生じる具体的な症状や異常の一部は、治療することができます。大動脈縮窄症は通常、外科手術で修復します。心臓の他の異常については、必要に応じてモニタリングするとともに修復します。リンパ浮腫は通常、サポート靴下とマッサージなどの他の方法でコントロールできます。

成長ホルモンによる治療で成長を促すことが可能です。満足のいく成長が得られたら、成長ホルモンによる治療を中止します。

通常は 思春期 女児の思春期 思春期とは、一連の身体的な変化が起きて成人の身体的特徴と生殖機能が備わっていく期間のことです。それらの身体的な変化は、下垂体から分泌される黄体形成ホルモンと卵胞刺激ホルモンの血中濃度によって調節されます。この2つのホルモンの血中濃度は、出生直後は高くなっていますが、生後2~3カ月で低下していき、思春期まで低い水準で維持されます。 思春期の始めには、黄体形成ホルモンと卵胞刺激ホルモンの血中濃度が上昇し、それが刺激となって性ホルモンが分泌さ... さらに読む を発来させるために女性ホルモンであるエストロゲンによる治療が必要になり、12~13歳の時点で行うのが典型的ですが、通常は満足のいく成長が得られてから開始します。思春期が発来したら、エストロゲンと別の女性ホルモンであるプロゲスチンを含む経口避妊薬を服用します。このホルモン治療は、女性の性的特徴を維持するのに役立ちます。エストロゲンによる治療は、計画性、注意力、視覚情報と空間の関係性の把握能力なども向上させる可能性があり、さらに骨の密度を高めるのにも役立ち、骨格の正常な発達を助けます。

ターナー症候群の女児で、エストロゲン補充療法を受けずに正常な思春期の発来がみられる場合もありますが、これはモザイク型の女児により多くみられます。モザイク型のターナー症候群の女児は、2種類以上の細胞を併せもっています。具体的には、X染色体を2本以上もつ細胞とX染色体を1本もつ細胞が混在しています。このような女児は妊娠できるようになる可能性がありますが、通常は 不妊治療 生殖補助医療 生殖補助医療は、精子と卵子、あるいは胚を培養室(体外)で操作して妊娠を達成することを目標とします。 ( 不妊症の概要も参照のこと。) 治療開始から4~6サイクルの月経周期が経過しても妊娠に至らない場合は、体外受精や配偶子卵管内移植(GIFT)などの生殖補助医療を検討します。これらの方法は、35歳未満の女性の方が成功率が高くなります。米国での体外受精の成功率を以下に示します。 35歳未満の女性:体外受精の約30%で出生に至る。... さらに読む 生殖補助医療 が必要になります。

ターナー症候群の女児は、この病気が原因で生じうる問題を検出するために、定期的な評価を受けるべきです。評価としては以下のものがあります。

  • 心臓の診察

  • 腎機能検査

  • 聴力検査

  • 骨の評価(股関節と脊椎の病気が対象)

  • 小児眼科医による眼の診察

  • 甲状腺機能検査

  • セリアック病のスクリーニング検査

  • 耐糖能障害の血液検査(10歳から開始する)

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