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新生児遷延性肺高血圧症

執筆者:

Arcangela Lattari Balest

, MD, University of Pittsburgh, School of Medicine

レビュー/改訂 2021年 7月
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新生児遷延性肺高血圧症とは、肺につながる動脈が出生後も狭い(収縮した)状態が続くことが原因で、肺に十分な量の血流が行きわたらず、結果的に血流中の酸素量が不足する重篤な病気です。

  • この病気は、正期産児または過期産児に重度の呼吸困難(呼吸窮迫)を引き起こします。

  • 呼吸は速く、皮膚や唇は青みがかった色(または灰色がかった蒼白)になります。

  • 診断は心エコー検査で確定します。

  • 高濃度の酸素投与によって肺につながる動脈を開く(拡張する)治療を行いますが、多くは新生児の呼吸を人工呼吸器で補助しながら行います。

  • 肺の動脈の拡張を助けるため、新生児が吸う酸素の中に一酸化窒素ガスを微量加えることもあります。

  • 最重症例では体外式膜型人工肺(ECMO)を使用する場合もあります。

正常な場合、出生前の胎児の肺につながる血管はきつく収縮しています。生まれる前は、胎児の肺ではなく母親の胎盤が二酸化炭素を排出して酸素を胎児に運ぶ役割をしているため、胎児の肺は大量の血流を必要としません。しかし、出生後すぐに、臍帯(さいたい)が切断されると新生児の肺は血液に酸素を送り込んで二酸化炭素を除去する役目を引き継がなくてはなりません。そのためには、肺にある小さな空気の袋(肺胞)を満たしている液体が空気に置き換わり、肺に血液を送り込む肺動脈が拡張する必要があります。そうすると、肺に十分な血液が流れ込んで酸素化されるようになります。

原因

血管が拡張しない理由には以下のように様々なものがあります。

症状

ときには遷延性肺高血圧症を出生時から発症していることがあります。また、出生後1~2日の間に発症することもあります。

呼吸はたいてい速くなり、新生児に肺の基礎疾患(呼吸窮迫症候群など)がある場合は重い呼吸窮迫もみられます。血液中の酸素レベルが低いために皮膚や唇が青みがかった色になる(チアノーゼ チアノーゼ チアノーゼは、血液中の酸素の不足が原因で、皮膚が青っぽく変色することです。 酸素が枯渇した血液(脱酸素化血液)は、赤色というより青みがかっており、これが皮膚を循環している場合にチアノーゼがみられます。肺または心臓の重い病気の多くは、血液中の酸素レベルを低下させるため、チアノーゼの原因となります。また、血管や心臓にある種の奇形があると、血液が空気中から酸素を取り込む場所である肺胞(肺にある小さな空気の袋)を通らず、直接心臓に流れるために、... さらに読む )こともあります。遷延性肺高血圧症の新生児は、血圧が低い(低血圧 低血圧 低血圧とは、めまいや失神などの症状が出現するほど、血圧が低下した状態のことです。血圧が極度に低下すると、臓器に損傷が起きる可能性があり、そのような病態を ショックと呼んでいます。 体内の血圧を維持する仕組みは、様々な薬や病気によって影響を受けます。 血圧が下がりすぎた場合、脳の機能不全や失神を起こすことがあります。... さらに読む )ために脈拍が弱くなり、皮膚が青白く、灰色がかった色になることもあります。

診断

  • 新生児に酸素を投与しているにもかかわらず続くチアノーゼ

  • 心エコー検査

  • 胸部X線検査

妊娠中に母親が高用量のアスピリンまたはインドメタシンを服用した場合や、ストレスの多い分娩であった場合、医師は遷延性肺高血圧症を疑います。新生児に重度の呼吸窮迫、高濃度の酸素を投与しても消えないチアノーゼ、予想外に低い血液中の酸素レベルがみられる場合も、遷延性肺高血圧症が疑われます。胎便吸引症候群の新生児、感染症の可能性がある新生児、または予想以上に酸素や呼吸の補助が必要な新生児でも、遷延性肺高血圧症が疑われることがあります。

胸部X線検査は、肺の基礎疾患がなければ完全に正常な場合もありますが、基礎疾患(横隔膜ヘルニアや胎便吸引症候群など)に起因する変化を示す場合もあります。

特定の種類の細菌を見つけるために、血液の培養検査が行われることがあります。

予後(経過の見通し)

原因によって異なりますが、遷延性肺高血圧症の新生児の約10~60%が死亡します。

生存者の約25%には、発達の遅れ、聴覚障害、機能障害(身体活動を行う能力の低下)、またはこれらのうち複数のものが残ります。

治療

  • 酸素吸入

  • ときに人工呼吸器

  • ときに一酸化窒素

  • ときに体外式膜型人工肺

新生児が吸う酸素の中にごく微量の一酸化窒素を加えることがあります。吸い込まれた一酸化窒素が、新生児の肺の動脈を開いて肺高血圧症を軽減します。この治療には数日を要することがあります。

まれですが、いずれの治療法でも効果が得られない場合、体外式膜型人工肺(ECMO)を使うことがあります。この機械には、血液に酸素を加えて二酸化炭素を除去する働きがあり、新生児の血液をこの機械を通して循環させ、その後新生児に戻します。この機械は、新生児の人工肺として働きます。新生児の体内に酸素を取り込む働きを機械がしてくれるため、その間に新生児の肺は休息することができ、血管がゆっくりと開きます。ECMOを使うことで、他の治療法が無効であった一部の新生児を、遷延性肺高血圧症が治るまで延命させ、その生命を救うことができます。

必要に応じて、輸液やその他の治療(感染症に対する抗菌薬など)が行われます。

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