風疹

(ドイツばしか、3日ばしか)

執筆者:Brenda L. Tesini, MD, University of Rochester School of Medicine and Dentistry
レビュー/改訂 2021年 7月
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風疹は、典型的には関節痛や発疹などの軽い症状を引き起こす感染力の強いウイルス感染症ですが、妊娠中の母親が風疹に感染すると、新生児に重い先天異常が起きます。

  • 風疹の原因はウイルスです。

  • 典型的な症状としては、リンパ節の腫れ、口蓋(こうがい)に出るバラ色の斑点、特徴的な発疹などがあります。

  • 診断は症状に基づいて下されます。

  • 定期予防接種で予防できます。

  • 風疹の治療の目標は症状を軽くすることです。

新生児の風疹も参照のこと。)

風疹は小児期にかかる一般的な軽い感染症ですが、生まれる前に感染した乳児の場合、深刻な結果に至ることがあります。妊娠最初の16週間(特に初めの8~10週間)に妊婦が感染すると、しばしば胎児にも感染し、流産、死産、乳児における複数の重い先天異常(先天性風疹症候群と呼ばれます)などの原因となります。

風疹は麻疹に似た発疹を引き起こします。しかし、原因は麻疹とは別のウイルスです。

以前は春によくみられ、6~9年毎に大流行して数百万人の感染者が出ていましたが、今日では予防接種の普及により米国ではまれにしかみられません。しかし、風疹にかかったことも、予防接種を受けたこともない若い成人女性が妊娠の初期に風疹ウイルスに感染すると、重篤な先天異常のある小児が生まれるリスクがあります。2004年以降の米国で起きた風疹は、いずれも旅行者や移民がもち込んだもので、ほかの人に伝染することはまれです。

主として、感染した人のせきで飛び散った飛沫を吸い込んだり、感染した人と濃厚な接触をもつことでウイルスが広がります。最も感染力が強いのは、発疹が現れる数日前から現れて1週間後までで、感染の拡大は通常、発疹が現れている間に起こります。生まれる前に感染した乳児の場合、生後何カ月もの間、他者に感染することがあります。 一度かかれば免疫ができて、通常は二度とかかりません。

知っていますか?

  • 定期予防接種で風疹や多くのウイルス感染症を予防できます。

風疹の症状

風疹の症状は小児と成人とで多少異なります。

風疹は感染の約14~21日後に症状が現れ始めます。成人および一部の小児では、軽い体調不良が数日間続き、微熱および眼の刺激感が伴います。しかしながら、大半の小児では最初の徴候は特徴的な発疹です。

風疹の発疹は、麻疹による発疹に似ていますが、麻疹のものほど広範囲ではなく、融合して大きな赤い領域を形成することもありません。発疹は顔と首から始まり、すぐに体幹、腕、脚に広がります。発疹が現れると、皮膚が少し発赤(紅潮)し、この現象は特に顔によくみられます。痛みを伴わない斑点が口の天井部分にあたる口蓋(こうがい)に現れます。この斑点はやがてつながりあって、のどの奥まで赤く広がっていきます。発疹は約3~5日間続いた後に消えます。

風疹の発疹
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風疹で現れた発疹の写真です。風疹の発疹は、麻疹(はしか)で起こる発疹と似ていますが、赤みがそれほど強くなく、融合して大きな赤い領域を作ることもありません。
Image courtesy of the Public Health Image Library of the Centers for Disease Control and Prevention.

風疹に感染した人は、通常、ひどい体調不良に至ることはありませんが、関節痛が出る場合があります。成人では、発熱、頭痛、関節のこわばりと腫れ(関節炎)が起こることがあります。成人および一部の小児では、首と後頭部のリンパ節が腫れることがあります。また、まれに、中耳の感染症(中耳炎)や血小板数の低下(血小板減少症)が起こります。 脳の感染症(脳炎)は非常にまれですが、ときに死に至ることのある合併症です。

風疹の診断

  • 医師による評価

  • リスクの高い人では、抗体の値を測定する検査

後頭部のリンパ節が腫れていて、特徴的な発疹がある場合、風疹が疑われます。 妊婦、脳炎患者、新生児では、風疹の確定診断が必要です。 風疹の診断は、風疹ウイルスに対する抗体の血液中の濃度を測定するか、のど、鼻、尿のサンプルを検査して確定することができます。

出生前の胎児の診断は、羊水か胎児の血液を検査して下すことができます。妊婦の場合は、妊娠早期に血液検査で定期的にスクリーニングを行い、風疹に対して免疫があることを確認します。

風疹の予防

  • 風疹ワクチン

風疹ワクチン小児期の定期予防接種の1つで、初回接種を生後12カ月から15カ月の間に行います。米国では、2回目の接種を、4歳から6歳の間に行います【訳注:日本では1回目を1歳~2歳までの間、2回目を5歳以上7歳未満で小学校就学前1年間に行います[2021年8月現在、https://www.niid.go.jp/niid/ja/schedule.html]】。このワクチンにより、95%以上の人で15年以上の免疫が得られます。使用されるワクチンは、混合型ワクチンです。混合型ワクチンには、麻疹、ムンプス、風疹(MMR)に対するワクチンが含まれており、ときには水痘(水ぼうそう)ワクチンも含まれます。風疹のみを対象とした個別のワクチンはもう使われていません。

特定の青年および成人がワクチン接種を2回とも受けたかどうか確定できない場合、ワクチン接種を1回行うか、または血液検査を行って風疹に対する抗体を検出します(免疫の証明)。医師が確認しなければならないのは以下の人です。

  • 妊婦

  • 風疹に感染することで、別の人の胎児に危険を及ぼす可能性がある人

  • 多数の人に感染させる可能性がある人

例としては、妊娠可能年齢のすべての女性、医療従事者、大学生、軍隊の新兵などが挙げられます。血液検査で免疫の証明が示されない場合は、妊娠している場合を除き、ワクチンを1回接種されます。風疹ワクチンは、生きたウイルス(ただし弱毒化されています)を含んでおり、胎児に感染する可能性があるため、妊婦は風疹ワクチンを受けてはいけません。弱毒化されたウイルスは先天性風疹症候群を引き起こすとは考えられませんが、まれに胎児に害を及ぼす場合があります。免疫のない妊婦は、ワクチンを接種する代わりに、風疹にかかっている人をすべて避けるようにし、出産したらすぐにワクチン接種を受けることで、将来の妊娠中には免疫をもつことができます。風疹ワクチンを接種された女性は、胎児に感染するリスクがあることから、ワクチン接種から少なくとも28日間は妊娠しないよう確実に避妊する必要があります。

風疹の治療

  • 症状を緩和するため、解熱と鎮痛に対してアセトアミノフェンやイブプロフェン

風疹を治療する方法はありません。また、風疹にかかった人の多くは治療をしなくても完全に治ります。発熱と痛みを和らげるためにアセトアミノフェンや、イブプロフェンなどの非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)を投与します。脳炎には治療法がないため、支持療法を行いながら経過をみるしかありません。

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