早発閉経

(早発卵巣不全、原発性卵巣機能不全)

執筆者:JoAnn V. Pinkerton, MD, University of Virginia Health System
レビュー/改訂 2021年 2月
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早発閉経とは、40歳前に月経の永久的な停止が起こることです。卵巣が卵子を定期的に放出(排卵)しなくなり、ホルモンを分泌する能力が衰えるために起こります。

  • 妊娠できないこと以外に症状がない女性もいれば、自然に起こる閉経と同じ症状(ホットフラッシュや寝汗など)がみられる女性もいます。

  • 血液検査で診断が確定でき、原因を特定するため他の検査を行います。

  • エストロゲン(一般に閉経が生じる平均年齢である51歳頃まで使用)を含む様々な対策によって、症状を和らげたり減らすことができます。

  • 早発閉経の女性が妊娠するためには、別の女性の卵子を子宮に移植することができます。

ホルモンの面から見れば、早発閉経は自然に起こる閉経と似ています。卵巣から分泌されるエストロゲンが非常に少なくなります。排卵は基本的に停止します。ただし、ときに卵巣が短い間機能し始めて排卵が起こり、妊娠が可能になる場合があります。卵巣にはまだ数千の卵子が存在しています。

早発閉経の原因

早発閉経の原因は以下のように様々です。

  • 遺伝子異常:性染色体などの染色体異常の場合があります。性染色体の異常には、ターナー症候群やY染色体の関与する疾患(Y染色体は通常は男性にしかみられない)、および脆弱X症候群などがあります。

  • 自己免疫疾患:卵巣を含む体内の組織を攻撃する異常な抗体が作られます。例えば、甲状腺炎白斑重症筋無力症が挙げられます。

  • 代謝性疾患:アジソン病糖尿病などがあります。

  • ウイルス感染症:おたふくかぜ(流行性耳下腺炎、ムンプス)などがあります。

  • がんに対する化学療法

  • 放射線療法

  • 卵巣の外科的切除:両側の卵巣を摘出する手術(両側卵巣摘出)を行うと月経はなくなり、閉経が起こります。

  • 子宮の外科的切除:子宮を摘出する手術(子宮摘出術)を行うと月経はなくなりますが、卵巣が機能している限りほとんどの閉経の他の症状は生じません。

  • 有害物質:タバコも含まれます。

早発閉経の症状

一部の女性では、妊娠できないこと以外に何の症状もみられません。ホットフラッシュ、寝汗、気分の変動といった正常な閉経(51歳頃に起こる)に関連するものと同じ症状がみられる女性もいます。月経が軽くなったり、不規則になったりし、止まることがあります。

エストロゲンの不足により骨密度が減少したり(骨粗しょう症)、腟粘膜が薄くなり乾燥したりする(腟萎縮)ことがあります。早発閉経の女性が平均閉経年齢(約51歳)になるまでエストロゲン療法を受けなければ、気分障害パーキンソン病認知症、および冠動脈疾患のリスクが上昇します。

Y染色体の関与する疾患が原因であれば、卵巣がんのリスクが高くなります。

早発閉経の原因になっている病気の症状がみられることもあります。例えば、ターナー症候群が原因の場合には、低身長や翼状頸、学習障害がみられることがあります。

早発閉経の診断

  • 妊娠検査

  • ホルモンの測定

  • 原因を特定するためのさらなる検査

  • ときに遺伝子検査と染色体分析

40歳未満の女性に更年期症状がみられるか妊娠できない場合は、早発閉経が疑われます。

妊娠検査を行い、エストロゲンおよび卵胞刺激ホルモン(卵巣を刺激してエストロゲンおよびプロゲステロンの分泌を促すホルモン)を数回にわたり毎週測定して早発閉経の診断を確定します。

さらなる検査を実施して早発閉経の原因の特定に役立て、女性の健康上のリスクを評価して推奨される早発閉経の治療方法を選びます。抗ミュラー管ホルモン(卵巣で生産される)を調べる血液検査を行って、卵巣がどの程度良好に機能しているかを評価し、女性が妊娠できる可能性を推測することが可能です。

35歳未満の女性では染色体検査を行うことがあります。染色体異常が発見された場合は、追加の処置や治療が必要になるでしょう。

骨粗しょう症がないか調べるために骨密度を測定することもあります。

早発閉経の治療

  • 経口避妊薬またはホルモン療法

  • 妊娠を望む場合、体外受精

早発閉経の女性が妊娠を希望していない場合、以下のいずれかを投与します。

  • エストロゲンとプロゲスチンを含有する経口避妊薬(混合型経口避妊薬)を21~24日間にわたり服用し、ホルモンを含まない錠剤(プラセボ)を通常は毎月4~7日間にわたり服用します

  • より高用量のエストロゲンを毎日投与し、プロゲスチンまたはプロゲステロンを毎月12~14日間投与するホルモン療法(周期的ホルモン療法)

こういった治療は、51歳頃(平均閉経年齢)まで一般的に行われます。その後は、個々の女性の状況に基づいて治療を継続するかどうか判断します。

エストロゲンは、閉経の症状を和らげ、他の影響(腟の乾燥、気分変動など)の予防を助けます。ホルモン療法における高用量のエストロゲンは、骨密度の維持に役立ちます。エストロゲンを単独で投与すると子宮内膜がんのリスクが高くなるため、多くの女性ではエストロゲンと併用してプロゲスチンまたはプロゲステロンも投与し、このがんの予防に役立てます。子宮を摘出している女性では、エストロゲン単独療法を行うことができます。

早発閉経の女性が妊娠を希望する場合、体外受精が勧められます。別の女性の卵子(ドナー卵子)を研究室で受精させた後、早発閉経の女性の子宮に移植します。また、エストロゲンおよびプロゲスチンまたはプロゲステロンを投与し、子宮が妊娠を維持できるようにします。この方法で妊娠する確率は、最大50%です。そうでなければ、妊娠する確率は10%未満です。卵子を提供する女性の年齢が、卵子を受け取る女性の年齢よりも重要です。体外受精を行わなくても、原発性卵巣機能不全の女性の一部は妊娠します。

Y染色体をもつ女性では、卵巣がんの発生リスクを低くするため、卵巣を摘出する必要があります。卵巣は、腹腔鏡検査(へそのすぐ上または下を小さく切開し、そこから観察用の細い管状の機器を挿入して行う検査)か、腹部をそれより大きく切開する開腹手術により摘出できます。通常このような女性においても、エストロゲン欠乏の影響を予防するため、閉経の平均年齢に達するまで、またはそれより長くホルモン療法が勧められます。

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