低髄液圧性頭痛

執筆者:Stephen D. Silberstein, MD, Sidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University
レビュー/改訂 2021年 7月
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低髄液圧性頭痛は、腰椎穿刺によって髄液が採取されたり、脊髄を覆う組織層(髄膜)の1つにできた嚢胞や裂傷から髄液が漏れたりしたときに起こります。髄液は、脳の周りを流れ、衝撃を和らげる働きがあり、これが失われると、脳周囲の圧力が下がります。

頭痛の概要も参照のこと。)

低髄液圧性頭痛は、以下の処置の後に起こるのが最も一般的です。

低髄液圧性頭痛は、腰椎穿刺を受けた人の最大3分の1の人に起こり、通常は処置の数時間から1~2日後に発生します。

腰椎穿刺とは、腰にある2つの脊椎の間に針を挿入し、脊柱管から髄液のサンプルを採取する処置です。髄液は、脳と脊髄を覆う組織層(髄膜)の間を流れる液体で、脳への衝撃を和らげ、脳を支える働きがあります。腰椎穿刺の後、針を刺した箇所にできた小さな穴から、髄液が漏れ続けることがあります。髄液の漏れが速く、髄液の新たな生産が追いつかなければ、脳の周りの液体の量が減少し、脳が下方に陥没して、周囲の血管や支持組織が引っ張られます。その結果、頭痛が生じます。

腰椎穿刺の方法

髄液は、脳と脊髄を覆っている3層の組織(髄膜)のうち、中間の層と内側の層との間にある空間(くも膜下腔)を流れています。髄液のサンプルを採取するには、脊柱の下の方にある2つの椎骨の間(通常は第3腰椎と第4腰椎の間か第4腰椎と第5腰椎の間で、脊髄の下端部より下に位置します)に中空の細い針を刺し込み、くも膜下腔(脊髄と脳を覆っている組織の層[髄膜]と層との間の空間)に挿入します。通常、患者は膝を胸の方に曲げた状態で横向きに寝ます。この姿勢をとると、椎骨と椎骨の隙間が広がるため、刺す際に針が骨に当たりにくくなります。

針から流れ出た髄液は試験管に集められて、検査のために検査室に送られます。

低髄液圧性頭痛は、以下のような他の原因によって髄液が漏れている場合にも起こります。

  • 脊髄から神経が出てくる部位の髄膜の内部またはその付近にできた嚢胞の破裂:せきやくしゃみをすると、髄液の圧力が急激に上昇するため、嚢胞が破裂することがあります。髄液は、ときに明らかな原因なく自然に漏れることがあります。

  • けがで髄膜が裂けることもあり、頭部や顔面の損傷では特に多くみられます。

低髄液圧性頭痛は、強い痛みを伴います。痛みは座っているときや立っているときに起こり、横になると軽減することがあります。通常は項部硬直、首の痛み、吐き気が生じ、嘔吐がみられる場合もあります。

低髄液圧性頭痛の診断

  • 医師による評価

  • ときに画像検査

低髄液圧性頭痛の診断は、症状と状況に基づいて下されます。

腰椎穿刺を受けた患者では、診断が明らかになる場合が多く、検査が必要になることはまれです。

腰椎穿刺を受けたことがない場合は、MRIなどの脳の画像検査を行うことがあります。画像検査の前に造影剤を(通常は腕または手の)静脈に注射します。造影剤は、より詳細な画像を得るために使用するものです。

低髄液圧性頭痛の治療

  • 痛み止め

  • 補液とカフェイン

  • 硬膜外自家血注入療法(ブラッドパッチ)

腰椎穿刺後に頭痛が起きた患者には、痛み止め(鎮痛薬)が投与されます。できるだけ横になっておくことが痛みの軽減に役立ちます。水分やカフェイン(髄液の生産を増大させます)が投与されます。水分は経口で与えられますが、脱水がひどい場合は静脈から投与されます。

このような治療を行った後も頭痛が続く場合は、患者自身の血液を腰の辺りの脊髄と髄膜との隙間に少量注入する処置を行うことがあります。この処置は硬膜外自家血注入療法(ブラッドパッチ)と呼ばれ、髄液が漏れる部位や原因に関係なく、髄液の漏れを遅くすることができます。

漏れを修復する手術が必要になることはまれです。

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