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頸椎症

執筆者:

Michael Rubin

, MDCM, New York Presbyterian Hospital-Cornell Medical Center

レビュー/改訂 2021年 6月
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頸椎症は、首の骨(椎骨)とその間にある椎間板の変性により、頸部の脊髄が圧迫される病気です。

  • 頸椎症の最も一般的な原因は変形性関節症です。

  • 多くの場合は、最初の症状として、歩行がぎこちなく不安定になり、首に痛みが生じて首の柔軟性が失われます。

  • 診断は、MRIまたはCT検査によって確定できます。

  • 治療としては、柔らかいコルセットによる頸部の固定や非ステロイド系抗炎症薬のほか、ときに手術などが行われます。

頸椎症は通常、中高年期に発生する病気で、60歳以上の人では脊髄の機能障害の一般的な原因となっています。

変形性関節症 変形性関節症 変形性関節症は軟骨と周囲の組織の損傷を引き起こす慢性疾患で、痛み、関節のこわばり、機能障害を特徴とします。 関節の軟骨と周囲の組織の損傷による関節炎は、加齢に伴い、非常によくみられるようになります。 痛みや腫れ、骨の過剰な増殖がよくみられ、起床時や動かずにいた後に生じて30分以内に治まるこわばり(特に関節を動かしていると治まりやすい)も一般的です。 診断は症状とX線所見に基づいて下されます。... さらに読む 変形性関節症 は加齢とともに多くみられるようになります。この病気になると、首の椎骨が変性します。変性した椎骨が自己修復を試みることで、骨が成長しすぎて異常な骨の突起(骨棘[こつきょく])が形成され、頸部の脊柱管が狭くなります。(脊柱管とは、脊柱の中心にあって内部に脊髄が収まっている細長い空間です。)椎骨と椎骨の間にある椎間板が変性し、脊柱管がさらに狭くなります。正常な場合、椎間板は衝撃を吸収して脊椎を保護しています。しかし、変性した椎間板は衝撃を吸収することができなくなります。その結果、脊髄は突然の動きによって引き起こされる損傷を受けやすくなります。例えば、転倒による首の軽い外傷でも、脊髄に深刻な損傷を与えることがあります。そのような加齢に伴う変化によって、徐々に 脊髄が圧迫 脊髄の圧迫 外傷や病気により脊髄に圧力が加わると、背部痛や頸部痛、ピリピリ感、筋力低下などの症状が起こります。 脊髄の圧迫は、骨、血液(血腫)、膿(膿瘍)、腫瘍(良性または悪性)、椎間板の破裂または椎間板ヘルニアなどが原因で起こります。 症状としては、背部痛や頸部痛、異常な感覚、筋力低下、排尿障害、排便障害などがみられ、軽度の場合もあれば重度の場合もあります。 診断は、症状と身体診察および画像検査(MRI検査など)の結果に基づいて下されます。... さらに読む されて、脊髄の機能不全に陥ることがあります。

生まれつき脊柱管が狭い人もいますが、そのような人では、頸椎症による圧迫がより重度の問題を引き起こすことがあります。

しばしば、脊髄神経根(脊髄に隣接する脊髄神経の一部―図「 脊椎の成り立ち 脊椎の成り立ち 脊椎の成り立ち 」を参照)も圧迫されます。

症状

頸椎症の症状は脊髄、脊髄神経根、またはその両方が圧迫されることで発生します。

通常、脊髄が圧迫されると、最初の徴候として歩行の変化が現れます。脚の動きがひきつるようになり(けい性)、歩行が不安定になります。首から下の感覚が低下します。首が痛み、柔軟性が低下します。脚の反射は通常亢進し、その結果筋肉が不随意に収縮(けい縮)することがあります。せき、くしゃみなどの首の動きにより、症状が悪化することがあります。ときに、脚や足より手に大きな影響が出ることがあります。

重症の場合、膀胱や腸管の機能が損なわれることがあります。軽い首の外傷によって脊髄に重度の損傷が起きた場合、すべての腕や脚が突然麻痺することもあります。

脊髄神経根が圧迫されると、通常、首に痛みが生じ、その痛みがしばしば頭、肩、または腕に広がります。片腕または両腕の筋力が低下して萎縮します。

診断

  • MRIまたはCT検査

医師は症状に基づいて頸椎症を疑います。この疾患は、特に高齢者や変形性関節症の人でよく疑われます。

MRI検査、CT検査、または 脊髄造影 脊髄造影検査 病歴聴取と 神経学的診察によって推定された診断を確定するために、検査が必要になることがあります。 脳波検査は、脳の電気的な活動を波形として計測して、紙に印刷したりコンピュータに記録したりする検査法で、痛みを伴わずに容易に行えます。脳波検査は以下の特定に役立つ可能性があります。 けいれん性疾患 睡眠障害 一部の代謝性疾患や脳の構造的異常 さらに読む 脊髄造影検査 CT検査によって、診断を確定できます。MRI検査では脊髄と脊髄神経根を描出できますが、CT検査では描出できないため、MRI検査の方がはるかに多くの情報を得られます。しかし、どちらの検査でも、脊柱管のどこが狭窄しているか、脊髄がどのように圧迫されているか、どの脊髄神経根が圧迫されているかが分かります。

治療

  • 非ステロイド系抗炎症薬

  • 柔らかいコルセット

  • ときに手術

  • 筋肉のけい縮に対し、筋弛緩薬

頸椎症による脊髄の機能障害は、治療を行わなくてもときに症状が軽減または安定することがありますが、悪化することもあります。

初期には、特に脊髄神経根だけが圧迫されている場合は、柔らかいコルセットによる頸部の固定とイブプロフェンなど非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)の使用によって、症状を緩和することができます。それでも症状が緩和しなければ、手術が必要です。

脊髄が圧迫されている場合は、通常は手術が必要になります。その場合、首の前または後ろに切開を入れます。そして、変性している椎骨の一部を取り除いて、脊髄のためのスペースを増やします(椎弓切除術)。骨棘(こつきょく)がある場合は取り除きます。椎骨同士を固定することで脊椎を安定させる場合もあります。手術を行っても、すでに起こってしまった神経の損傷が回復することはありませんが、さらなる損傷の拡大を防ぐことはできます。手術を行うのが早いほど、その後の経過は良好です。

手術後は脊椎が不安定になりますので、術後の回復期間は固いコルセットを装着して頭が動かないように固定する必要があります。

筋肉のけい縮がみられる場合は、筋弛緩薬のバクロフェンがその軽減に役立ちます。

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