呼気性喘鳴は、気道が部分的に閉塞しているときに息をすると聞こえる、笛のような高い音です。(乳幼児の呼気性喘鳴 乳幼児の呼気性喘鳴 呼気性喘鳴とは、気道が部分的に閉塞していたり狭くなっているときに息をすると聞こえる、比較的高い笛のような音です。 呼気性喘鳴は気道の狭窄によって起こります。 他の症状としては、せき、発熱、鼻水などがあり、どのような症状がみられるかは原因によって異なります。 原因の診断は、胸部X線検査のほか、ときにその他の検査に基づいて下されます。 治療には気管支拡張薬や吸入コルチコステロイドなどが用いられます。 さらに読む も参照のこと。)
呼気性喘鳴の原因
呼気性喘鳴(wheezing、以降単に「喘鳴」といいます)は、気道内部のどこかが狭くなっているまたは部分的に閉塞しているために生じます。喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、一部の重度のアレルギー反応などにより、気道が広範囲にわたって狭くなっていることもあれば、腫瘍または気道に詰まった異物などにより、気道の一部のみが狭くなっていることもあります。
一般的な原因
全体として最も一般的な原因は以下の通りです。
あまり一般的でない原因
喘鳴は、細い気道に影響を及ぼす他の病気、例えば 心不全 心不全 心不全とは、心臓が体の需要を満たせなくなった状態のことで、血流量の減少や静脈または肺での血液の滞留(うっ血)、心臓の機能をさらに弱めたり心臓を硬化させたりする他の変化などを引き起こします。 心不全は心臓の収縮や弛緩が不十分になることで発生しますが、これらの変化は一般的に、心筋が弱ったり硬くなったりすることが原因で起こります。... さらに読む 、重度のアレルギー反応(アナフィラキシー アナフィラキシー反応 アナフィラキシー反応は急に発症して広い範囲にわたり、生命を脅かすほど重症化することがあるアレルギー反応です。 アナフィラキシー反応の初期症状には不安感が多く、次いでピリピリした感じと、めまいが起こります。 症状がみるみる悪化して、全身にかゆみやじんま疹、腫れが出たり、喘鳴や呼吸困難が起きたり、失神したりします。これ以外のアレルギー症状が出ることもあります。 これらの症状は生命を脅かす状態まで急速に悪化する可能性があります。... さらに読む )、 有害物質の吸入 ガスや化学物質への曝露 吸い込んだガスや化学物質の種類に加えて、どれほど深く吸い込んだか、どれくらい長い間吸い込んだかによって、症状は様々です。 症状としては、目や鼻の刺激感、せき、血の混じったたん、息切れなどがあります。 胸部X線検査、CT検査、呼吸の検査などを行って、肺損傷の程度を判定します。 酸素や、気道を広げる薬、炎症を鎮める薬が投与されます。 ( 環境性肺疾患の概要も参照のこと。) さらに読む などによって起こることもあります。心不全によって起こる喘鳴は、心臓喘息と呼ばれます。
ときに健康な人でも、 急性気管支炎 急性気管支炎 急性気管支炎とは、気管と気管から枝分かれする気道(気管支)が感染症によって炎症を起こすことです。 通常、急性気管支炎は、ウイルス性上気道感染によって発生します。 症状としては、せきがみられ、粘液(たん)を伴うこともあれば伴わないこともあります。 診断は、主として症状に基づいて下されます。... さらに読む の発作が起きれば喘鳴が生じることがあります。小児では、 細気管支炎 細気管支炎 細気管支炎とは、乳児と生後24カ月未満の幼児の下気道を侵すウイルス感染症です。 原因は、たいていウイルスです。 症状として、鼻水、発熱、せき、呼気性喘鳴、呼吸困難などがみられます。 診断は症状と身体診察の結果に基づいて下されます。 自宅で順調に、数日で回復するのが普通ですが、入院が必要になることもあります。 さらに読む (下気道の感染症)または異物の吸入(誤嚥)によって喘鳴が起こることがあります(表「 呼気性喘鳴(wheezing)の主な原因と特徴 呼気性喘鳴(wheezing)の主な原因と特徴 」を参照)。
呼気性喘鳴の評価
重度の呼吸障害(呼吸窮迫)がある人では、評価と治療を同時に行います。
以下では、どのようなときに医師の診察を受ける必要があるかと、診察を受けた場合に何が行われるかについて説明しています。
警戒すべき徴候
喘鳴のある人に以下のような症状がみられる場合は、特に注意が必要です。
努力性呼吸、呼吸努力の減弱、または意識レベルの低下
顔面や舌の腫れ
受診のタイミング
警戒すべき徴候または息切れのある人は、直ちに救急医療機関を受診すべきであり、状況に応じて救急車を呼ぶ必要があります。喘鳴が出たり止まったりする人で、息切れがない場合、通常1~2日待っても問題はありません。
医師が行うこと
医師はまず、症状と病歴について質問し、次に身体診察を行います。病歴聴取と身体診察で得られた情報から、多くの場合、原因と必要になる検査を推測することができます(表「 呼気性喘鳴(wheezing)の主な原因と特徴 呼気性喘鳴(wheezing)の主な原因と特徴 」を参照)。
医師は、喘鳴が初めて起こったのか、過去にも起こったことがあるのかを確認します。喘鳴を過去にも経験している患者の場合、現在の症状が以前のものと性質や重症度の点で異なっているかを判断します。
診断に重要な手がかりとなる点を以下に挙げます。
喘鳴が突然始まったか、徐々に始まったか
喘鳴が出たり止まったりするか
喘鳴の誘因や喘鳴を悪化させる要因(上気道感染症、アレルゲンへの曝露、特定の季節、冷たい空気、運動、または乳児での授乳など)があるか
診断の手がかりとなる症状には、 息切れ 息切れ 息切れ(医師は呼吸困難と呼びます)とは、息がしにくくなる不快な感覚のことです。息切れをどのように感じ、それをどのように表現するかは、原因によって異なります。 通常、運動をしているときや、標高が高い所では呼吸が速く深くなりますが、それで不快になることはまずありません。肺の病気であれ他の病気であれ、多くの病気では、安静時でも呼吸数が増加します。例えば、熱があると、一般に呼吸が速くなります。... さらに読む 、発熱、 せき 成人のせき せきは、突然、肺から空気が強制的に排出されることです。せきは、医療機関を受診する理由として最も多いものの1つです。せきには、気道から異物を取り除く働きがあり、人はせきをすることで、吸い込んだ粒子から肺を守っています。人は意図的(自発的)にせきをすることもあれば、せきが自然(非自発的)に出ることもあります。( 小児のせきも参照のこと。) せきには様々な種類があります。せきは単独で出ることもあれば(乾性)、血やたんを伴うこともあり(湿性)、... さらに読む 、たんなどがあります。医師は、喫煙歴や受動喫煙についても尋ねます。
身体診察では、体温、心拍数、呼吸数をチェックします。医師は呼吸窮迫の徴候がないか確認し、肺の診察では、特に空気の出入りがどれぐらいスムーズか、喘鳴が肺の全体に及んでいるのか一部に限局しているのかなどを調べます。医師は通常、患者の呼吸音を聴診器で聞くことで、喘鳴に気づきます。しかし大きな喘鳴は、ときに聴診器なしでも容易に聞きとれることがあります。かすかな喘鳴を聞きとるには、患者が強く息を吐き出す際に聴診器で聞く必要があります。喫煙者で、1カ所に持続して発生する笛音は、肺がんが原因である可能性があります。診察では、心臓、鼻、のど、四肢、手、足、皮膚なども調べます。
検査
重症度を評価し、診断を下し、合併症を見つけるため、検査が行われます。通常、以下のような検査が行われます。
パルスオキシメーター(指に取り付けるセンサー)を用いた血液中の酸素レベル測定
胸部X線検査(診断がはっきりしない場合)
ときに肺がどれぐらい機能しているかを評価する検査(肺機能検査)
喘鳴が初めて生じた場合、胸部X線検査が診断に役立つ可能性があります。喘鳴が持続したり、反復性であったり、診断がつかない場合は、気道狭窄の範囲と治療の有効性を評価するため、 肺機能検査 肺機能検査 肺機能検査では、肺にためることができる空気の量、肺から空気を出し入れする能力、肺に酸素を取り込む能力を測定します。 肺機能検査は、肺疾患の具体的な原因を突き止めるというより、一般的なタイプや重症度を調べるのに適していますが、 喘息や 慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの特定の病気を診断するために使用されることもあります。 ( 肺疾患に関する病歴聴取と身体診察および 呼吸器系も参照のこと。)... さらに読む が必要になることがあります。喘息の可能性があるにもかかわらず、肺機能検査で診断を確定できない場合、運動したり、喘鳴を誘発する薬を飲むように指示されることがあります。それで気道閉塞が起これば、喘息と確定できます。
腫瘍または気道に詰まった異物が疑われる場合は、 気管支鏡 気管支鏡検査 気管支鏡検査とは、気管支鏡(観察用の管状の機器)を用いて発声器(喉頭)や気道を直接観察することです。 気管支鏡の先端にはカメラが付いていて、これによって太い気道(気管支)から肺の内部を観察できます。医師は、気管支鏡に小さな器具を通し、肺や気道組織のサンプルを採取して、肺疾患の診断や一部の肺疾患の治療に役立てることもできます。気管支鏡には、柔軟なもの(軟性気管支鏡)と硬いもの(硬性気管支鏡)があります。気管支鏡によるほとんどの処置(特に診... さらに読む (観察用の柔軟な管状の機器)を気道に挿入して原因を特定し、異物であればそれを取り除きます。
呼気性喘鳴の治療
治療の主な目標は、基礎疾患を治すことです。
サルブタモール吸入薬などの気管支拡張薬(気道を広げる薬)により、喘鳴が軽快します。喘息または慢性閉塞性肺疾患による喘鳴は、コルチコステロイドを1、2週間服用することで、急性の症状が緩和されることがあります。
喘息により持続する喘鳴の長期的なコントロールには、コルチコステロイド吸入薬、肥満細胞安定化薬、ロイコトリエン修飾薬、免疫調節薬(免疫系の働きに影響を与える薬)などが必要になることもあります(表「 喘息の治療によく使用される薬剤 喘息の治療によく使用される薬剤 」を参照)。
重度のアレルギー反応のある人には、抗ヒスタミン薬(ジフェンヒドラミンなど)の静脈内投与、コルチコステロイド(メチルプレドニゾロンなど)、サルブタモールの吸入、アドレナリンの皮下注射が行われます。
要点
最も多い原因は喘息ですが、すべての喘鳴が喘息によって起こるわけではありません。
肺の病気がない人に突然生じる喘鳴は、異物もしくは有害物質の吸入、アレルギー反応、または心不全によるものである可能性があります。
肺機能検査により、気道の狭窄を特定し、狭窄の程度を評価することができます。
吸入気管支拡張薬は、喘鳴の緩和に役立ちますが、喘鳴の原因になっている病気も治療しなければなりません。