加齢に伴い、 泌尿生殖器 尿路の概要 人体には通常、2つの 腎臓があります。尿路の残りの部分は以下の要素で構成されています。 2本の 尿管(それぞれ左右の腎臓を膀胱につなぐ管) 膀胱(拡張して尿を貯めておくことのできる筋肉でできた袋状の臓器) 尿道(膀胱から出て体外に開口する管) 尿は2つの腎臓で絶えず作られていて、尿管を通って緩やかに膀胱に流れ込みます。そして膀胱から尿道を... さらに読む 全体にいくつかの変化がみられるようになります。
加齢に伴い腎臓にみられる変化
年齢を重ねるにつれて、 腎臓 腎臓 腎臓は 尿路の中でもとりわけ特徴的な臓器で、ソラマメのような形をしています。左右とも長さは約12センチメートル、重さは約150グラムです。脊柱(背骨)の左右両側にあり、消化器系の臓器が納まっている空間(腹腔)より背中側に位置しています。 それぞれの腎臓には、大動脈から枝分かれした腎動脈と呼ばれる血管を通じて血液が流れ込みます。血液は腎動脈から徐々に細い動脈を通過していきますが、最も細くなった部分は細動脈と呼ばれます。細動脈を通過した血液... さらに読む の重量はゆっくりながら着実に減っていきます。30~40歳を過ぎると、約3分の2の人では(腎臓に病気がない人でも)腎臓での血液のろ過量が次第に低下していきますが、残り3分の1の人では、ろ過の量に変化はみられません。このことから、年齢以外の要因が腎機能に影響を及ぼしている可能性があります。
年齢を重ねるにつれて、腎臓に血液を送り込む動脈が狭くなっていきます。狭くなった動脈では正常な大きさの腎臓に十分な血液を供給できなくなるため、腎臓のサイズも小さくなります。さらに、 糸球体 尿細管疾患に関する序 腎臓では、血液のろ過と浄化が行われます。腎臓はさらに、血液中に含まれる水分、 電解質(ナトリウム、カリウム、重炭酸塩、塩化物など)、栄養素のバランスを維持するという役割も果たしています。 腎臓のこうした機能は、血液が腎臓の糸球体(小さな穴が多数あいた血管でできた微細な球状の組織)を通過する際に、その一部がろ過されることから始まります。この... さらに読む につながる細い動脈の壁が厚くなるため、残っている糸球体の機能も低下していきます。こうした機能の低下に伴って、老廃物や多くの薬物を排泄するネフロンの能力が低下し、尿の濃縮・希釈や水素イオンの分泌ができなくなります。
しかし、以上のような加齢に伴う変化が生じたとしても、体の要求を満たせるだけの腎機能は維持されます。年齢とともに生じる変化は、それ自体が直接病気を引き起こすものではありませんが、そうした変化によって腎臓の予備的な機能が確実に低下していきます。これはつまり、正常な腎臓の機能をすべて果たすためには、左右両方の腎臓がそれぞれの能力の限界近くまで働かなければならなくなるということです。そのため、片方または両方の腎臓に小さな障害が生じるだけで、十分な腎機能を維持できなくなってしまうようになります。
加齢に伴い尿管にみられる変化
尿管 尿管 尿管は長さ約40センチメートルの筋肉でできた管で、その上端は 腎臓、下端は 膀胱につながっています。( 尿路の概要も参照のこと。) 腎臓で作られた尿はこの尿管を通って膀胱に流れ込みますが、その尿の流れは重力だけによるものではなく、尿管の緩やかなぜん動運動(波打つような動き)によって、少量ずつ膀胱に送られていきます。左右それぞれの尿管は膀胱壁の開口部へと通じていますが、尿が尿管に逆流するのを防ぐため、この開口部は膀胱の収縮時に自然に閉じる... さらに読む には加齢による大きな変化はみられませんが、膀胱と尿道にはいくらかの変化がみられるようになります。まず、膀胱に尿を貯めておける限界の量が少なくなります。尿意を感じてから排尿を我慢する能力も低下します。また、膀胱から尿道への尿の流れが遅くなります。
一方、年齢とは関係なく、膀胱の壁の筋肉が尿意や排尿できる状況の有無とは無関係に自然に収縮してしまう現象が散発的にみられます。若いうちは、このような収縮の大半が脊髄や脳からの信号によって阻止されますが、年齢を重ねるにつれ、そうやって阻止されない散発的な収縮の回数が増え、ときに 尿失禁 成人の尿失禁 尿失禁とは、自分では意図せずに尿が漏れることです。 尿失禁は、男女とも年齢を問わず起きる可能性がありますが、女性と高齢者でより多くみられ、高齢女性の約30%、高齢男性の約15%が尿失禁を起こしています。尿失禁は高齢者でより多くみられるものの、加齢に伴う正常な変化の一部ではありません。尿失禁は、利尿効果のある薬を服用した場合のように突然で一時的なこともあれば、長期にわたって持続すること(慢性)もあります。慢性の尿失禁であっても、ときに軽減... さらに読む に至ることがあります。排尿後に膀胱に残る尿(残尿)の量は加齢に伴って多くなっていきます。その結果、排尿する回数が増え、尿路感染症のリスクが高まります。
加齢に伴い尿道にみられる変化
女性の場合は、 尿道 尿道 尿道は、尿が 膀胱から体外に排出される際に通過する管です。男性の場合、尿道は長さ約20センチメートルで、陰茎の先端まで続いています。女性の場合、尿道は長さ約4センチメートルで、外陰部(女性の外性器がある部分)まで続いています。 ( 尿路の概要も参照のこと。) さらに読む が短くなり、その内側を覆う粘膜が薄くなっていきます。こうした尿道の変化により、尿道括約筋をしっかりと閉じることが難しくなり、 尿失禁 成人の尿失禁 尿失禁とは、自分では意図せずに尿が漏れることです。 尿失禁は、男女とも年齢を問わず起きる可能性がありますが、女性と高齢者でより多くみられ、高齢女性の約30%、高齢男性の約15%が尿失禁を起こしています。尿失禁は高齢者でより多くみられるものの、加齢に伴う正常な変化の一部ではありません。尿失禁は、利尿効果のある薬を服用した場合のように突然で一時的なこともあれば、長期にわたって持続すること(慢性)もあります。慢性の尿失禁であっても、ときに軽減... さらに読む のリスクが上昇します。女性の尿道におけるこうした変化については、 更年期 閉経 閉経とは、月経が永久に停止し、妊よう性がなくなることです。 閉経前後の数年間は、エストロゲン濃度が大きく変動して月経が不規則になり、ホットフラッシュ(ほてり)などの症状が起こります。 閉経後は骨密度が低下します。 女性に1年間月経がなければ閉経と診断されますが、確認するため血液検査を行うこともあります。... さらに読む にエストロゲンの血中濃度が低下することが誘因になっているようです。
加齢に伴い前立腺にみられる変化
男性の場合は、加齢とともに 前立腺 男性の生殖器系の構造 が大きくなっていく結果、尿道内の尿の流れが徐々に妨げられるようになります(前立腺肥大症 前立腺肥大症 前立腺肥大症(BPH)とは、前立腺が大きくなる良性の病気で、排尿が困難になることがあります。 前立腺は年齢とともに大きくなります。 排尿が困難になることがあり、尿意がより頻繁に、より切迫して感じるようになることがあります。 通常、診断は直腸診の結果に基づいて下されますが、前立腺がんがないか確認するために血液サンプルを採取することもあります... さらに読む を参照)。治療しないでいると、尿の流れがほぼ遮断されるか完全に遮断され、それにより尿閉という尿が排出されなくなる状態に陥り、ときに腎障害に至る場合もあります。