この病気は食物アレルギーが原因である場合があります。
小児の場合は、食事を拒んで体重が減少することがあり、成人の場合は、食道に食べものがとどまったり、嚥下困難が生じたりすることがあります。
診断は内視鏡検査と生検のほか、ときにX線検査の結果に基づいて下されます。
治療としては、プロトンポンプ阻害薬やコルチコステロイドの投与、食習慣の変更、ときに食道の拡張などを行います。
食道 のどと食道 のど(咽頭[いんとう])は口の下後方に位置しています。口から飲み込まれた飲食物はのどを通過します。飲食物を飲み込む運動(嚥下[えんげ])は、特に意識しなくても始まり自動的に継続します。嚥下時には、小さな筋皮弁(喉頭蓋[こうとうがい])が閉じて、飲食物が肺に向かう気管に入らないように防いでいます。口の天井の後方部分(軟口蓋[なんこうがい])は上にもち上がって、飲食物が鼻に入らないように防いでいます。口蓋垂(こうがいすい)は、軟口蓋について... さらに読む は、のど(咽頭)と胃をつないでいる管状の臓器管です。(食道の概要 食道の概要 食道は、のど(咽頭)と胃をつないでいる管状の臓器管です。食べものは単純に食道を落ちて胃に入るわけではありません。食道の壁は、波のように進む筋肉のリズミカルな収縮(ぜん動)によって、食べものを胃まで進めます。 のどと食道の境界のすぐ下には、上部食道括約筋と呼ばれるリング状の筋肉があります。食道と胃の境界の少し上にも、下部食道括約筋と呼ばれる... さらに読む も参照のこと。)
好酸球性食道炎は、乳児期から若年成人期までのあらゆる時期から現れる可能性があります。ときには高齢者に発生することもあり、男性に多くみられます。
好酸球 白血球 血液の主な成分 血漿(けっしょう) 赤血球 白血球 血小板 さらに読む は白血球の一種で、アレルギー反応、喘息(ぜんそく)、寄生虫感染に対する身体応答で重要な役割を果たしています。好酸球性食道炎は、遺伝的な危険因子をもつ人において、特定の食べものに対するアレルギー反応によって引き起こされる場合があります。アレルギー反応により炎症が起きて食道が刺激されます。治療しなければ、炎症によって最終的には食道が慢性的に狭くなる(狭窄[きょうさく])ことがあります。
好酸球性食道炎の症状
乳児や小児では、哺乳や食事を拒んだり、嘔吐、体重減少、腹痛、胸痛などがみられたりすることがあります。
狭窄がある成人(通常は食道炎が長期にわたり続いている人)では、しばしば 嚥下困難 嚥下困難 飲み込みに障害が生じること(嚥下[えんげ]困難)があります。嚥下困難では、食べものや飲みものがのど(咽頭)から胃へと正常に移動しません。のどと胃をつなぐ管(食道)の途中で食べものや飲みものが動かなくなったように感じます。嚥下困難を咽喉頭異常感(いんこうとういじょうかん)( 球感覚)と混同してはならず、球感覚ではのどにしこりがある感じがしますが、飲み込みに支障はありません。 嚥下困難によって、口腔分泌物や飲食物を肺に吸い込む誤嚥(ごえん)... さらに読む がみられ、食道に食べものがとどまることがあります(食道での食物のつかえ)。 胃食道逆流症 胃食道逆流症(GERD) 胃食道逆流症では、胃酸や胆汁を含む胃の内容物が胃から食道に逆流し、食道の炎症と胸部の下部の痛みが生じます。 逆流は、正常な場合に胃の内容物が食道に逆流しないように防いでいる輪状の筋肉(下部食道括約筋)が正しく機能していないと起こります。 最も典型的な症状は胸やけ(胸骨の裏側の焼けつくような痛み)です。 診断は症状のほか、ときに食道pH検査の結果に基づいて下されます。 引き金になる物質(アルコールや脂肪分の多い食物など)を避け、胃酸を減ら... さらに読む (GERD)と同様の症状、特に胸やけ(胸骨の裏側の焼けつくような痛み)がみられることがあります。
喘息 喘息 喘息は、気道が何らかの刺激に反応して狭くなる(通常は可逆性)病態です。 症状としては、特定の誘因に反応して生じる、せき、喘鳴(ぜんめい)、息切れなどが最もよくみられます。 医師は、呼吸の検査(肺機能検査)を行って喘息の診断を確定します。 喘息発作を防ぐためには、誘因となる物質を吸い込まないようにするとともに、気道の開口を保つ薬を服用する必... さらに読む や 湿疹 アトピー性皮膚炎(湿疹) アトピー性皮膚炎(一般には湿疹と呼ばれます)とは、皮膚の上層に生じる、かゆみを伴う慢性的な炎症です。花粉症や喘息のある人、また家族にそのような病気の人がいる人にみられることの多い病気です。 アトピー性皮膚炎は非常によくみられるもので、特に高所得国やアレルギーを起こしやすい人で多くみられます。 乳児では、じくじくしてかさぶたを伴う赤い発疹が、顔面、頭皮、手、腕、足、脚にできる傾向があります。... さらに読む など、別のアレルギー疾患が併存していることがよくあります。
好酸球性食道炎の診断
内視鏡検査と生検
ときに食道造影検査
年齢にかかわらず別のアレルギー疾患や固形物の嚥下困難がある人では、好酸球性食道炎が疑われます。また、典型的な治療法で回復しない胃食道逆流症の症状がある人でも、この病気が疑われます。
診断を下すには、内視鏡を用いて食道を観察します(内視鏡検査 内視鏡検査 内視鏡検査とは、柔軟な管状の機器(内視鏡)を用いて体内の構造物を観察する検査です。チューブを介して器具を通すことができるため、内視鏡は多くの病気の治療にも使うことができます。 口から挿入する内視鏡検査では、食道(食道鏡検査)、胃(胃鏡検査)、小腸の一部(上部消化管内視鏡検査)が観察できます。 肛門から挿入する内視鏡検査では、直腸(肛門鏡検査)、大腸下部と直腸と肛門(S状結腸内視鏡検査)、大腸全体と直腸と肛門(大腸内視鏡検査)が観察できま... さらに読む )。内視鏡検査中に、医師は顕微鏡で調べるために組織サンプルを採取します(生検と呼ばれます)。
ときに 食道造影 消化管のX線検査 消化器系の問題の評価にはX線検査がよく使われます。標準的なX線検査(単純X線検査)では、特別な準備は何も必要ありません( 単純X線検査)。消化管に閉塞や麻痺がある場合や、腹腔内のガスの分布が異常な場合は、通常は標準的なX線検査で明らかになります。また、肝臓、腎臓、脾臓の腫大も標準的なX線検査で明らかになります。 バリウムを用いたX線検査では、多くの場合、標準のX線検査より多くの情報が得られます。味つけした液体バリウムまたはバリウムでコー... さらに読む も行うことがあります。この検査では、バリウムという液体状の造影剤を飲んでもらってから、X線撮影を行います。バリウムによって食道の輪郭が描き出され、異常が見やすくなります。
好酸球性食道炎の治療
プロトンポンプ阻害薬
コルチコステロイド
食習慣の変更
ときに食道の拡張
成人では、胃酸の分泌を減らし、症状を軽減できる薬のプロトンポンプ阻害薬(PPI)が投与されます。小児では多くの場合、食習慣の変更更が効果的ですが、それで効果がない場合は、一般的にプロトンポンプ阻害薬が使用されます。
プロトンポンプ阻害薬で効果がない場合は、食道を保護するために飲み込んで使用する局所用のコルチコステロイド(フルチカゾンやブデソニドなど)が投与され、炎症を抑えるのに役立つ可能性があります。フルチカゾンは吸入器で使用でき、この薬を口の中に噴霧することで、吸い込まずに飲み込むことができます。こうすることで、薬は食道の表面を覆い、肺には入りません。液体のブデソニドを、砂糖代用品やとろみ剤(コーンスターチなど)と混ぜて飲み込むこともできます。後で口をゆすいで、 鵞口瘡 カンジダ症(真菌感染症) カンジダ症は、カンジダ属の真菌によって引き起こされる感染症です。 カンジダ症は湿潤部位の皮膚で発生しやすい傾向があります。 カンジダ症では、発疹、鱗屑(りんせつ)、かゆみ、腫れなどがみられます。 診断では、患部を診察するとともに、皮膚のサンプルを顕微鏡で調べたり、培養して観察したりします。 通常は、抗真菌薬のクリームや経口薬による治療で治癒します。 さらに読む (がこうそう)という口腔内の真菌感染症の予防に役立てることもできます。
医師が食習慣を変えるよう指示することもあります。具体的には小麦、乳製品、魚介類、ピーナッツ/ナッツ類、卵、大豆を排除した食事にすることができます(除去食 診断 を参照)。この食事は、好酸球性食道炎に対して推奨されることが最も多いもので、皮膚や血液で行うアレルギー検査の結果に基づいて特定の食べものを排除する食事よりも、効果が高く、より簡単です。この食事は、2~4種類の食べものだけを排除するものですので、様々なバリエーションを試すことができます。通常はアミノ酸、脂肪、糖分、ビタミン、ミネラルからなる液剤で栄養の大部分をとる成分栄養剤は、成人でも小児でも効果が得られますが、成人ではしばしば実用的ではありません。
食道が狭くなっている場合は、内視鏡検査の際に食道内でバルーンを膨らませて、食道を拡張します。多くの場合、食道が裂けないように、用いるバルーンを徐々に大きなものにしていき何度か拡張を行います。
好酸球性食道炎に対しては、好酸球が関係する体内の仕組みを標的とする注射や点滴による治療法が研究されています。