食道 のどと食道 のど(咽頭[いんとう])は口の下後方に位置しています。口から飲み込まれた飲食物はのどを通過します。飲食物を飲み込む運動(嚥下[えんげ])は、特に意識しなくても始まり自動的に継続します。嚥下時には、小さな筋皮弁(喉頭蓋[こうとうがい])が閉じて、飲食物が肺に向かう気管に入らないように防いでいます。口の天井の後方部分(軟口蓋[なんこうがい])は上にもち上がって、飲食物が鼻に入らないように防いでいます。口蓋垂(こうがいすい)は、軟口蓋について... さらに読む (のどと胃をつないでいる管状の臓器)に良性の腫瘍(がんではない腫瘍)ができることはまれです。多くの腫瘍は嚥下(えんげ)に問題を起こし、まれに潰瘍(かいよう)や出血、またはその両方が生じます。通常、害があるというよりも、できると厄介なものです。
これらの腫瘍を診断するには、医師は上部消化管内視鏡検査か食道造影検査を行います。上部消化管内視鏡検査では、医師が内視鏡を使って食道の内部を観察します。食道造影検査では、通常は患者にバリウム溶液(X線画像で確認できる)を飲んでもらい、その間にX線検査の撮影を行います。腫瘍が認められたら、上部消化管内視鏡検査を行って組織のサンプルを採取するほか、さらに超音波内視鏡検査を行うこともあります。一部の人にはCT検査を行うこともあります。
通常は、症状が出現するまで治療は推奨されません。
良性腫瘍で一番多い種類は、平滑筋の腫瘍である平滑筋腫です。30~60歳の人に最も多くみられます。大半の平滑筋腫は小さく、治療の必要はありません。しかし、一部の平滑筋腫は食道が部分的に閉塞するほど大きくなり、閉塞のためにものを飲み込みにくくなり(嚥下困難 嚥下困難 飲み込みに障害が生じること(嚥下[えんげ]困難)があります。嚥下困難では、食べものや飲みものがのど(咽頭)から胃へと正常に移動しません。のどと胃をつなぐ管(食道)の途中で食べものや飲みものが動かなくなったように感じます。嚥下困難を咽喉頭異常感(いんこうとういじょうかん)( 球感覚)と混同してはならず、球感覚ではのどにしこりがある感じがしますが、飲み込みに支障はありません。 嚥下困難によって、口腔分泌物や飲食物を肺に吸い込む誤嚥(ごえん)... さらに読む )、痛みや不快感が生じることがあります。鎮痛薬(痛み止め)で症状が一時的に軽減することがありますが、完治のためには摘出手術が必要になります。
その他の種類の良性腫瘍には、結合組織でできた腫瘍(線維血管ポリープ)や神経に関連する組織でできた腫瘍(神経鞘腫[しょうしゅ])などがあり、いずれもまれです。その他のまれな良性腫瘍はがんになる(悪性化する)可能性があるため、一般的には切除します。