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発育不良

執筆者:

Christopher P. Raab

, MD, Sidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University

レビュー/改訂 2021年 8月
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やさしくわかる病気事典

発育不良とは、体重増加と体の成長の遅れのことをいい、発達や成熟の遅れにつながります。

  • 病気や適切な栄養をとれないことが原因で発育不良が起こります。

  • 小児の成長曲線、身体診察、健康歴、家庭環境に基づいて診断を下します。

  • 生後1年間の栄養が不足すると、小児に発達の遅れが生じることがあります。

  • 治療法としては、栄養のある食事や病気の治療などがあります。

生後最初の1年間は、乳児の体重と身長を健診のたびに測定し、安定した速さで成長しているかどうかを確認します(乳児と小児の身体的成長 体長と身長 身体的成長とは、体の大きさ(体長または身長と体重)と臓器の大きさが増すことです。出生から1~2歳頃まで、小児は急速に成長します。この乳児期と幼児期早期の急速な成長が終わると、 青年期の成長スパートが始まるまで、成長は減速します。成長の速度が遅くなると、必要なカロリーも少なくなり、小児の食欲が減っていることに気づく親もいます。2歳になると、... さらに読む を参照)。パーセンタイルとは、同月齢の同性の乳児と比較する方法の1つです。例えば、体重が10パーセンタイルであるとは、同月齢の同性の乳児100人のうち、90人がその子より重く、10人がその子より軽いということになります。乳児の体格は様々ですが、一般的に個々の乳児は、おおむね同じパーセンタイルを維持しながら成長していきます。

発育不良とは、一貫して低体重の状態にある小児に対して考慮される診断名で、典型的には同年齢の同性の小児と比較して3~5パーセンタイル未満の小児がこれに該当します。また実際には低体重ではなくても、体重のパーセンタイルが顕著に落ちた場合も、発育不良とみなされます。例えば、乳児の体重が短期間のうちに90パーセンタイルから50パーセンタイル(平均体重)に落ちた場合、懸念の対象となります。発育不良には多くの原因があります。

原因

発育不良の原因としては以下のものが関わります。

  • 環境的要因と社会的要因

  • 病気

環境的要因や社会的要因は、小児が必要な栄養をとれない理由として最も多いものです。これらの理由による発育不良は、カロリーを十分に摂取しないことによって起こります。

親による ネグレクトまたは虐待 小児に対するネグレクトと虐待の概要 小児虐待には、小児に対して危害が及ぶか危害が及ぶ可能性がある、あるいは危害を示唆する脅しがある状況など、親、養育者、またはそれ以外の後見人(例、聖職者、コーチ、教師)による18歳未満の小児に対するあらゆる種類の虐待およびネグレクトが含まれます。小児に対するネグレクトとは、小児の身体的、情緒的な基本的ニーズを満たそうとしないことをいいます。... さらに読む 小児に対するネグレクトと虐待の概要 、親の精神障害(抑うつ うつ病 遷延性悲嘆症についての短い考察。 うつ病とは、悲しみを感じたり、活動に対する興味や喜びが減少したりする症状がその人の社会生活を困難にするほど強くなり、病気になった状態です。喪失体験などの悲しい出来事の直後に生じることがありますが、悲しみの程度がその出来事とは不釣り合いに強く、妥当と考えられる期間より長く持続します。 遺伝、薬の副作用、つらい出来事、ホルモンなど体内の物質の量の変化、その他の要因がうつ病の一因になる可能性があります。... さらに読む など)、貧困、家庭環境の混乱はいずれも、常に栄養のある食事が十分に与えられないリスクを高めます。そのようなストレスの多い状況または刺激がないか不十分な環境では、小児の食欲が減退し、あまり食べなくなる可能性もあります。ときに、親が栄養価の低い食事ばかり与えることにより、摂取不足や体重増加不良になることもあります。親が乳児の授乳方法をよく理解していない場合や、人工乳の作り方が適切でない場合、または、子への授乳が難しく、親がその困難に対処できない場合があります。まれに母親が十分な母乳を産生できていない場合や、さらにまれですが、生産する母乳中のカロリーが低い場合もあります。親の授乳技術が乏しく、哺乳が困難な乳児であると、発育不良が起こることがあります。

ストレスの多い家庭環境にあるか、または養育者との関係がうまくいっていない乳児および小児は、ストレスを感じることで、成長ホルモンの作用を低下させるホルモンが分泌される可能性があるため、発育不良となることがあります。このようなストレスに関連した成長ホルモンの減少は、発育不良につながる可能性があります。

ときに、病気が発育不良の原因になります。咀嚼(そしゃく)困難または嚥下(えんげ)困難(口唇裂 口唇裂と口蓋裂 裂とは、妊娠中に組織が完全にくっつかない場合に、唇(口唇裂)、口の中の天井部分(口蓋裂)、またはその両方にできることがある開いた部分のことです。口唇裂と口蓋裂は先天異常です。 先天異常あるいは先天奇形とは、出生前の段階で生じた身体的な異常のことです。「先天」とは、「生まれたときから存在する」という意味です。( 顔面、骨、関節、および筋肉の先天異常に関する序も参照のこと。) 口唇裂とは通常、鼻のすぐ下で上唇が分離している状態です。... さらに読む 口唇裂と口蓋裂 または 口蓋裂 口唇裂と口蓋裂 裂とは、妊娠中に組織が完全にくっつかない場合に、唇(口唇裂)、口の中の天井部分(口蓋裂)、またはその両方にできることがある開いた部分のことです。口唇裂と口蓋裂は先天異常です。 先天異常あるいは先天奇形とは、出生前の段階で生じた身体的な異常のことです。「先天」とは、「生まれたときから存在する」という意味です。( 顔面、骨、関節、および筋肉の先天異常に関する序も参照のこと。) 口唇裂とは通常、鼻のすぐ下で上唇が分離している状態です。... さらに読む 口唇裂と口蓋裂 の場合など)、 胃食道逆流 小児の胃食道逆流 胃食道逆流とは、食べものと胃酸が胃から食道に、ときには口の中にまで戻ってくることです。 逆流の原因として考えられるのは、授乳中の乳児の姿勢、授乳量が多すぎた場合、カフェイン、ニコチン、タバコの煙にさらされた場合、食物不耐症や食物アレルギー、消化管の異常などがあります。 乳児では、嘔吐、過度の吐き出し、摂食障害や呼吸障害がみられたり、不機嫌なように見えることもあります。 この病気の診断に際して行われる検査には、バリウム検査、食道pHモニタ... さらに読む 、食道狭窄、または腸管の 吸収不良 吸収不良の概要 吸収不良症候群とは、食べたものに含まれる栄養素が様々な理由により小腸で適切に吸収されない状態のことをいいます。 ある種の病気、感染症、手術でも吸収不良が起こることがあります。 吸収不良によって、下痢、体重減少、極度の悪臭がする大量の便がみられます。 診断は、典型的な症状と、便検査の結果、ときに小腸粘膜の生検結果に基づいて下されます。... さらに読む といった病気は、食べる能力や、食べものを体内にとどめて消化吸収する能力に影響を与えます。発育不良のその他の原因としては、感染症、腫瘍、ホルモン異常または代謝性疾患(糖尿病 小児と青年における糖尿病 糖尿病は、体が必要とするインスリンが十分に産生されない、または産生されたインスリンに体が正常に反応しないため、血糖(ブドウ糖)値が異常に高くなる病気です。 糖尿病とは、インスリンの生産量低下、またはインスリンの効果低下、あるいはその両方が原因で、血糖値が上昇(高血糖)し、それに伴って生じる一連の病態のことをいいます。... さらに読む 小児と青年における糖尿病 嚢胞[のうほう]性線維症 嚢胞性線維症(CF) 嚢胞性線維症(のうほうせいせんいしょう)は、特定の分泌腺が異常に粘り気の強い分泌物を生産し、それによって組織や器官、特に肺や消化管が損傷を受ける遺伝性疾患です。 嚢胞性線維症は、遺伝子変異を親から引き継ぐことで発生し、粘り気の強い濃厚な分泌物が肺やその他の臓器の働きを妨げます。... さらに読む など)、心疾患、腎疾患、肝疾患、遺伝性疾患(ダウン症候群 ダウン症候群(21トリソミー) ダウン症候群は、余分な21番染色体によって引き起こされる染色体異常症の一種で、知的障害と様々な身体的異常がみられます。 ダウン症候群は、21番染色体が余分にあることで発生します。 ダウン症候群の小児では、発育の遅れ、精神発達の遅れ、特異的な頭部と顔貌、しばしば低身長がみられます。 出生前の段階では、ダウン症候群は超音波検査や母親の血液検査の結果から疑われ、 絨毛採取や 羊水穿刺という検査で確定されます。... さらに読む ダウン症候群(21トリソミー) 遺伝性代謝疾患 遺伝性代謝疾患の概要 遺伝性代謝疾患とは、代謝の問題を引き起こす遺伝性の病気です。 遺伝とは、ある世代から次の世代へ 遺伝子が受け継がれることを意味します。子どもは親の遺伝子を受け継ぎます。子どもが、代謝制御に関わる欠陥のある遺伝子を受け継ぐと、遺伝性代謝疾患を発症します。 遺伝性疾患には様々な種類があります。ほとんどの遺伝性代謝疾患では、患児の両親がともに異... さらに読む など)、 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症 小児におけるヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症とは、ある種の白血球を次第に破壊し、後天性免疫不全症候群(エイズ)を引き起こすウイルス感染症です。 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症はHIV-1ウイルスとHIV-2ウイルスが原因で、幼児の場合一般的には分娩の際に母親から感染します。 感染の徴候としては、成長の遅れ、体の数カ所でのリンパ節の腫れ、発達... さらに読む などがあります。

一部の小児では、発育不良は環境的要因、社会的要因、病気が組み合わさることで起こります。例えば、病気がある小児が、ストレスの多い家庭環境に置かれていたり、養育者との関係がうまくいっていなかったりすることがあります。同様に、環境的要因と社会的要因により発育不良が生じている小児が病気になることもあります。

診断

  • 身長と体重のモニタリング

  • 食事および病歴、社会歴、家族歴に関する質問

  • 必要があれば臨床検査

小児の体重や体重増加が、以前の測定値から予想される値または標準身長体重曲線を大きく下回っている場合、発育不良の診断を考慮します(乳児の体長・体重チャート(2歳まで) 乳児の体長・体重表(2歳まで) 乳児の体長・体重表(2歳まで) )。発育不良のために乳児の体重が大きく減少した場合、身長や頭囲(脳)の成長速度にも影響が現れます。

医師は発育不良の原因を特定する上で、以下について親に具体的に質問をします。

  • 食事

  • 排便習慣

  • 家族の社会的、情緒的、経済的な状況(小児の栄養状態に影響しうる要因)

  • 小児の病歴や家族歴

次に診察を行い、体重増加不良を説明できる健康状態の徴候がないかを調べます。医師はその評価を基に、血液、便、尿の検査、X線検査を行うかどうかを決めます。基礎疾患の存在が疑われる場合は、さらに詳しい検査を行います。

予後(経過の見通し)

生後1年間は脳の発達に大切な時期なので、この時期に栄養不良だった小児は、その後たとえ身体的な成長は改善されたとしても、同年代の子に常に後れをとる可能性があります。このような小児の約半数では精神発達(特に言語能力および数学的能力)が正常より低くなります。しばしば行動面、社交面、および情緒面での問題もみられます。

治療

  • 授乳または食事による十分な栄養

  • 病気に対する具体的な治療

発育不良の治療法はその原因により異なります。病気が見つかった場合は、その病気に合わせた具体的な治療を行います。原因にかかわらず、すべての発育不良の小児には成長と体重増加を促進するために十分なカロリーを含む、栄養に富んだ食事を与えます。

軽度から中等度の発育不良の場合は、授乳や食事は栄養に富んだ高カロリーのものとし、規則正しく与えます。小児に影響を与えている家庭事情や経済的および社会的支援についてのカウンセリングを親が受ける場合もあります。

重度の発育不良の場合は、入院させ、ソーシャルワーカー、栄養士、食事に関する専門家、精神科医などが協力して治療にあたります。こういった専門家らが、最も可能性の高い原因を判定し、摂食状態を改善するために最善のアプローチをとります。

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