早産児として生まれた新生児には、深刻な健康上の問題が生じる可能性があります。
切迫早産の診断は通常明らかです。
安静にしたり、ときには薬剤を用いて、分娩を遅らせます。
抗菌薬やコルチコステロイドも必要な場合があります。
切迫早産が起こる原因はまだよく分かっていません。しかし、切迫早産が起こりやすくなる状況がいくつかあるようです。
これまでに早産を経験したことがある場合
腎臓の感染症 腎臓の感染症 腎盂腎炎とは、片方または両方の腎臓に生じた細菌感染症です。 尿路の感染が腎臓に波及する場合と、まれに血流中の細菌が腎臓に感染する場合があります。 症状としては、悪寒、発熱、背部痛、吐き気、嘔吐などがみられます。 腎盂腎炎が疑われる場合は、尿検査、ときに血液検査および画像検査を行います。 感染に対する治療としては抗菌薬が投与されます。 さらに読む または胎児を包む膜の感染症(羊膜内感染 羊膜内感染 羊膜内感染は、胎児の周囲を満たしている液体(羊水)、胎盤、胎児を包んでいる膜など(またはこれら複数の場合もある)、胎児の周りにある組織の感染です。 羊膜内感染により母体と胎児に問題が生じるリスクが高まります。 妊婦には通常、発熱がみられ、しばしば骨盤痛やおりものがみられます。 通常は身体診察により感染を診断できますが、羊水の検査が必要になることもあります。 抗菌薬と体温を下げるための薬を投与し、できるだけ早く分娩を予定します。 さらに読む )
胎盤や子宮、胎児の異常
妊娠中の健康的な生活習慣が切迫早産のリスクを抑えるのに役立ち、医師や助産師の健診を定期的に受けていれば、潜在的な問題を早期に見つけることができます。
早産児 早産児 早産児とは、在胎37週未満で生まれた新生児のことです。生まれた時期によっては、早産児の臓器は発達が不十分で、子宮外で機能する準備がまだできていないことがあります。 早産の既往、多胎妊娠、妊娠中の栄養不良、出生前ケアの遅れ、感染症、生殖補助医療(体外受精など)、高血圧などがある場合、早産のリスクが高くなります。 多くの臓器の発達が不十分であるため、早産児では呼吸したり哺乳したりすることが難しく、脳内出血、感染症や他の異常が起こりやすくなり... さらに読む として生まれた新生児には、脳内出血などの深刻な健康上の問題 が生じる可能性があります。脳内出血が起こると脳が正常に発達せず、 脳性麻痺 脳性麻痺 脳性麻痺とは、運動困難と筋肉のこわばり(けい縮)を特徴とする症候群です。原因は、出生前の脳の発育過程で生じた脳の奇形か、出生前、分娩中、または出生直後に起きた脳損傷です。 脳性麻痺の原因としては、酸素欠乏や感染によって生じる脳の損傷や、脳の奇形などがあります。 症状の程度は様々で、ぎこちなさがかろうじて分かる程度のこともあれば、脚や腕の動... さらに読む などの問題の原因になることがあります。そのため、妊娠34週以前に陣痛が始まらないよう医師は予防に努め、始まりそうになった場合には遅らせようとします。切迫早産を止めるのは困難です。
切迫早産の診断
医師による評価
切迫早産の診断は、陣痛開始の徴候と妊娠期間に基づき、通常明らかです。
子宮頸部、腟、肛門からサンプルを採取して培養検査を行うことがあります。このような検査で、切迫早産の原因となる具体的な感染症が示されることがあります。
尿サンプルを分析および培養(微生物の増殖を促す環境に置くこと)し、腎臓および膀胱の感染がないか確認する場合があります。
切迫早産の治療
ときに、分娩をそのまま継続させる
感染の可能性が否定されるまで抗菌薬
分娩を遅らせる必要がある場合、安静、水分の補給、分娩を遅らせる薬剤、抗菌薬、およびときにコルチコステロイド
性器出血や破水があった場合は、そのまま分娩を続けることがしばしば最善の処置となります。
性器出血や羊水(子宮内の胎児の周囲を満たしている液体)の漏出がない場合は、できるだけ安静にして活動を制限し、できれば座ったままでいるようにします。水分補給のほか、分娩を遅らせる薬剤が投与されることもあります。多くの場合、こうした方法でわずかな時間ですが分娩を遅らせることができます。
分娩を遅らせる薬剤には以下のものがあります。
硫酸マグネシウム:切迫早産を止めるため、しばしば静脈内投与されます(特に妊娠32週未満の場合)。硫酸マグネシウムはまた、新生児の脳内出血とその結果生じる脳の発達面の問題(脳性麻痺など)のリスクを大幅に減少させるようです。しかし投与量が多すぎると、妊婦の心拍数や呼吸数に影響が出ることがあります。
カルシウム拮抗薬:この薬剤は通常、高血圧の治療に用いられます。カルシウム拮抗薬によって、妊婦に頭痛や低血圧が生じることがあります。
プロスタグランジン阻害薬:この種類の薬剤は一時的に羊水の量を減らすことがあります。プロスタグランジン阻害薬は胎児の心臓に問題を引き起こすおそれがあるため、妊娠32週以降は用いません。
培養検査の結果が出るまで、妊婦に抗菌薬の投与を続けます。培養検査結果が陰性であれば、抗菌薬の投与を中止します。
子宮口(子宮頸部)が5センチメートル以上開いていれば(開大)、通常は生まれるまでそのまま分娩を進行させます。
妊娠24週~34週の間に破水が生じた場合は、分娩が間もないと予想されない限り、胎児の肺の成熟を促すためにコルチコステロイドを投与します。破水した場合、以下の時期にもコルチコステロイドの投与を検討します。
妊娠34週~37週の間(早産のリスクがあり、妊娠中の早期の段階でコルチコステロイドを投与されていない妊婦)
妊娠23週から投与開始する(妊婦に7日以内の早産のリスクがある場合)
コルチコステロイドは、胎児の肺およびその他の器官が早く成熟するのを助けます。また、出生後に早産に関連する呼吸困難(新生児呼吸窮迫症候群 新生児呼吸窮迫症候群 呼吸窮迫症候群は早産児にみられる呼吸疾患で、サーファクタントという肺胞を覆う物質が生産されないか不足しているために、肺胞が拡張した状態を保てないことで起こります。 早産児や妊娠中に母親が糖尿病にかかった新生児は、呼吸窮迫症候群を発症するリスクが高くなります。 呼吸窮迫症候群の新生児には重い呼吸困難がみられ、血液中の酸素が不足しているため皮膚が青っぽくなります。 診断は、呼吸困難の有無、血液中の酸素レベル、および胸部X線検査の結果に基づい... さらに読む )やその他の問題(脳内出血など)が起きるリスクを低下させます。
早産の既往がある女性では、将来の妊娠時にプロゲスチンが投与されることがあります。この薬剤は、早産が再発するリスクを減らす可能性があります。プロゲスチンは第2トリメスター【訳注:日本でいう妊娠中期にほぼ相当】に開始し、分娩の直前まで続けます。