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脱水

執筆者:

James L. Lewis III

, MD, Brookwood Baptist Health and Saint Vincent’s Ascension Health, Birmingham

レビュー/改訂 2022年 4月
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やさしくわかる病気事典
本ページのリソース

脱水は体内の水分が不足している状態です。

  • 嘔吐、下痢、大量発汗、熱傷(やけど)、腎不全、利尿薬の使用により、脱水になる場合があります。

  • 脱水が進むとのどの渇きを感じ、発汗や排尿も少なくなります。

  • 脱水がひどくなると、錯乱やめまいを感じるようになります。

  • 水を飲むか、場合によっては水分を静脈内投与して、失われた水分と血液中に溶けているナトリウムやカリウムなどの無機塩(電解質)を補給する治療が行われます。

脱水は、摂取する水分よりも失う水分が多い場合に起こります。 嘔吐 成人の吐き気と嘔吐 吐き気とは、嘔吐をしそうになる不快な感覚のことです。めまい、腹部の漠然とした不快感、食欲不振を感じることもあります。 嘔吐とは、胃の強い収縮によって、胃の内容物が食道に押し上げられて口から出ることです。( 乳児と小児の嘔吐も参照のこと。)嘔吐すると胃が空になり、少なくとも一時的には吐き気がかなり治まることがよくあります。嘔吐は極めて不快で、激しいことがあります。激しい嘔吐では、胃の内容物を1メートル以上飛ばすこともあります(噴出性嘔吐)... さらに読む 下痢 成人の下痢 下痢は、便の量や水分、排便回数が増加することです。( 小児の下痢も参照のこと。) 排便回数が多いだけでは、下痢を決定づける特徴とはいえません。正常な状態で1日に3~5回排便する人もいます。野菜に含まれる食物繊維をたくさん食べる人は、1日に約500グラム以上の便を排泄することがありますが、この場合の便はよく固まっていて、水様便ではありません。下痢になると腸内ガス、差し込むような腹痛、便意の切迫を伴うことが多く、下痢が感染性微生物や有害物質... さらに読む 、尿の排泄量を増加させる薬(利尿薬)の使用、多量の発汗(例えば、非常に暑い中で長時間激しい運動をしたとき)、水分摂取の減少は、脱水を招きます。

脱水は特に高齢者によくみられます。口渇中枢が、若い人のように正常に機能しないからです。そのため、高齢者は自分が脱水状態であることに気づかない場合があります。 糖尿病 糖尿病 糖尿病は、体がインスリンを十分に生産しないかインスリンに正常に反応しないため、血中の糖分の濃度(血糖値)が異常に高くなる病気です。 排尿が増加し、のどが渇くほか、減量しようとしていなくても体重が減少することがあります。 糖尿病は神経の損傷をもたらし、触覚の問題を引き起こします。... さらに読む 尿崩症(にょうほうしょう) 中枢性尿崩症 中枢性尿崩症(にょうほうしょう)は、バソプレシン(抗利尿ホルモン)の欠乏のために非常に薄い尿が過剰につくられる病気です(多尿症)。 中枢性尿崩症には、脳腫瘍、脳の損傷や脳の手術、結核、他のいくつかの病気など、複数の原因があります。 主な症状は、強いのどの渇きと多尿です。 診断は、尿検査、血液検査、水制限試験に基づいて下されます。 中枢性尿崩症の患者には、通常、バソプレシンやデスモプレシンという薬が投与されます。 さらに読む アジソン病 副腎皮質機能低下症 副腎皮質機能低下症では、副腎で副腎ホルモンが十分につくられなくなります。 副腎皮質機能低下症は、副腎や下垂体の病気が原因である場合や、特定の薬により引き起こされることがあります。 副腎皮質機能低下症の原因には、自己免疫反応、がん、感染症、その他の病気などがあります。 副腎皮質機能低下症の人は、脱力感や疲労感が生じ、座ったり横になったりした姿勢から立ち上がるとめまいを起こすほか、皮膚の黒ずみがみられる場合もあります。... さらに読む 副腎皮質機能低下症 は、尿の排泄量を増加させ、脱水を引き起こします。

脱水の症状

脱水状態になると、まず脳の口渇中枢が刺激され、水分の摂取を強く促すのどの渇きが生じます。水分の摂取量が失われる量に追いつけないと、脱水状態がさらに激しくなります。発汗量が減り、尿の排出量も少なくなります。必要な量の血液と血圧を維持するために、水分が細胞内から血流へ移動します(体内の水分について 体内の水分について 水分は体重の約半分から3分の2を占めます。脂肪組織は筋組織より水分の割合が少なく、女性は脂肪が多い傾向があるため、平均的な女性で水分が体重に占める割合は男性より低くなります(男性が60%に対して女性は52~55%)。高齢者や肥満の人も水分が体重に占める割合が低く、反対に出生時や乳幼児期では水分が体重に占める割合が高く(70%)なります。... さらに読む を参照)。脱水が続くと、体の組織が乾き始め、細胞はしぼんで機能しなくなります。

軽度から中等度の脱水の症状としては以下のものがあります。

  • のどの渇き

  • 発汗の減少

  • 皮膚の弾力性の低下

  • 尿の生産量の減少

  • 口腔乾燥

重度の脱水になると、のどの渇きが逆に減少することがあり、血圧が下がって、ふらつきや失神が特に立ち上がるときによく起こります(起立性低血圧 立ちくらみ 一部の人、特に高齢者では、上体を起こしたり、立ち上がったりすると、血圧が極度に低下することがあります(起立性低血圧や体位性低血圧と呼ばれます)。立ち上がると(特にベッドで寝ていた後や長時間にわたって座っていた後に)数秒間から数分間にわたって気が遠くなる、ふらつき、めまい、混乱、かすみ目などの症状が起こり、横になるとそれらの症状は速やかに消失します。しかし、なかには転倒や失神、また極めてまれですが短時間のけいれんが起こる場合もあります。こ... さらに読む と呼ばれる状態)。脱水状態が続くと、 ショック ショック ショックとは、臓器に向かう血流が減少することで、酸素の供給量が低下し、それにより臓器不全やときに死にもつながる、生命を脅かす状態です。通常、血圧は低下しています。 ( 低血圧も参照のこと。) ショックの原因には血液量の減少、心臓のポンプ機能の障害、血管の過度の拡張などがあります。 血液量の減少または心臓のポンプ機能の障害によってショックが起きると、脱力感、眠気、錯乱が生じ、皮膚が冷たく湿っぽくなり、皮膚の色が青白くなります。... さらに読む (重度の血圧低下)に陥り、腎臓、肝臓、脳などの臓器に重度の損傷が生じます。脱水がさらに重度になると、特に脳細胞が影響を受けやすくなります。したがって、錯乱は激しい脱水状態であることを示す指標の1つだといえます。極めて激しい脱水は、昏睡(こんすい)や死亡につながる可能性があります。

加齢に関連する注意点:水分バランス

脱水

高齢者は特に脱水になりやすいです。高齢者における脱水の一般的な原因には以下のものがあります。

高齢者は体脂肪の割合が高くなります。脂肪組織は筋組織よりも水分の割合が少ないため、体内の総水分量は年齢とともに減少する傾向があります。

水分過剰

脱水の診断

  • 医師による評価

  • ときに血液検査

脱水は、しばしば症状や医師の診察の結果から診断できます。しかし、容態が極めて悪く見える人や特定の薬を使用している人、または特定の病気を患っている人については、血液検査を行う場合もあります。救急外来や集中治療室でさらにモニタリングや検査を行う必要がある場合は、医師は超音波検査や特殊なカテーテルを用いて脱水の重症度を測定することがあります。

脱水状態になると、普通は血液中のナトリウム濃度が上昇します。その理由は 多量の発汗 大量発汗 大量発汗(多汗症)がみられる人は多量の汗をかき、なかにはほぼ常に汗をかき続ける人もいます。 大量発汗には通常、明らかな原因はありませんが、ときに感染症、代謝異常、またはがんが原因で起こります。 皮膚が常に濡れていると、赤くなって炎症を起こしたり、青白くなって、しわがより、ひび割れてきたりし、悪臭がすることもあります。 診断は医師の評価、ときに検査に基づいて下されます。 治療としては、塩化アルミニウムを含む制汗剤、グリコピロニウムトシル酸... さらに読む 嘔吐 成人の吐き気と嘔吐 吐き気とは、嘔吐をしそうになる不快な感覚のことです。めまい、腹部の漠然とした不快感、食欲不振を感じることもあります。 嘔吐とは、胃の強い収縮によって、胃の内容物が食道に押し上げられて口から出ることです。( 乳児と小児の嘔吐も参照のこと。)嘔吐すると胃が空になり、少なくとも一時的には吐き気がかなり治まることがよくあります。嘔吐は極めて不快で、激しいことがあります。激しい嘔吐では、胃の内容物を1メートル以上飛ばすこともあります(噴出性嘔吐)... さらに読む 下痢 成人の下痢 下痢は、便の量や水分、排便回数が増加することです。( 小児の下痢も参照のこと。) 排便回数が多いだけでは、下痢を決定づける特徴とはいえません。正常な状態で1日に3~5回排便する人もいます。野菜に含まれる食物繊維をたくさん食べる人は、1日に約500グラム以上の便を排泄することがありますが、この場合の便はよく固まっていて、水様便ではありません。下痢になると腸内ガス、差し込むような腹痛、便意の切迫を伴うことが多く、下痢が感染性微生物や有害物質... さらに読む など、一般的な原因による脱水の際には 電解質 電解質の概要 人の体内の水分量は体重の2分の1をはるかに上回ります。体内の水分は様々な空間(体液コンパートメントと呼ばれています)に制限されて存在していると考えられています。主に次の3つのコンパートメントがあります。 細胞内の体液 細胞の周囲の体液 血液 体が正常に機能するには、これらの各領域で体液量が偏らないようにする必要があります。 さらに読む (特にナトリウムやカリウム)も失われますが、それ以上に水分が失われることで、ナトリウムが血液中でより濃縮されるためです。

脱水の予防

脱水の予防は治療より大切です。成人は1日に少なくともグラス6杯の水分をとる必要があります(果物や野菜など水気の多い食物から得られる水分も含む)。暑い日、炎天下での仕事や運動時、長時間の運動中や運動後、また可能であれば嘔吐や下痢のときも、たくさん水分をとるようにします。

運動、体温の上昇、暑い気候によって、体が必要とする水分量が増えます。スポーツドリンクは、激しい運動で失われる電解質を補うように調整されているため、脱水の予防に利用できます。激しい運動の前とその最中、ならびにその後も電解質を含む飲料を利用するようにします。心臓と腎臓に病気がある場合は、どのように水分を補充するのが安全かについて、運動の前に主治医に相談するのがよいでしょう。

高齢の家族が暑い建物や場所に一人でいるときは、十分な量の水をすぐ手に取れるところに置いておくようにします。

脱水の治療

  • 水分と電解質の補給

軽い脱水の治療法は、水をたくさん飲むだけです。中程度または重度の脱水の場合は、失われた電解質(特にナトリウムやカリウム)も補う必要があります。

適切な量の電解質を含む 経口補水液 治療 脱水は体からの水分の喪失であり、通常は嘔吐または下痢が原因です。 脱水は、著しい量の 体内の水分と、様々な程度で 電解質が失われると生じます。 症状には、のどの渇き、活動性の低下、唇や口の中の乾燥、尿量の減少などがあります。 重度の脱水は生命を脅かすことがあります。 脱水の治療には水分と電解質を口から与え、重篤な場合には静脈内投与します。 さらに読む は、処方せんがなくても購入することができます。こうした飲みものは脱水の治療に有効で、特に小児の嘔吐や下痢で発生した脱水に効果的です。スポーツドリンクは必ずしも十分な電解質を含んでいるわけではなく、経口補水液の十分な代用品にならない場合があります。

嘔吐があると、脱水を治療するのに十分な量の水分を保持できないことがあります。より重度の脱水の治療では、塩化ナトリウム(塩)を含む点滴が必要になります。点滴液は初めのうちは速く投与し、身体的な状態の改善に合わせて速度を落としていきます。

脱水を引き起こしている原因も治療の対象となります。例えば、 吐き気や嘔吐 成人の吐き気と嘔吐 吐き気とは、嘔吐をしそうになる不快な感覚のことです。めまい、腹部の漠然とした不快感、食欲不振を感じることもあります。 嘔吐とは、胃の強い収縮によって、胃の内容物が食道に押し上げられて口から出ることです。( 乳児と小児の嘔吐も参照のこと。)嘔吐すると胃が空になり、少なくとも一時的には吐き気がかなり治まることがよくあります。嘔吐は極めて不快で、激しいことがあります。激しい嘔吐では、胃の内容物を1メートル以上飛ばすこともあります(噴出性嘔吐)... さらに読む 、または 下痢 成人の下痢 下痢は、便の量や水分、排便回数が増加することです。( 小児の下痢も参照のこと。) 排便回数が多いだけでは、下痢を決定づける特徴とはいえません。正常な状態で1日に3~5回排便する人もいます。野菜に含まれる食物繊維をたくさん食べる人は、1日に約500グラム以上の便を排泄することがありますが、この場合の便はよく固まっていて、水様便ではありません。下痢になると腸内ガス、差し込むような腹痛、便意の切迫を伴うことが多く、下痢が感染性微生物や有害物質... さらに読む がある場合には、嘔吐や下痢をコントロールする薬や止める薬を使用します。

脱水に関するよくある質問

脱水とは何ですか?

脱水とは、体内に十分な水分がなくなった状態です。

脱水の徴候にはどのようなものがありますか?

軽い脱水では、のどが渇き、口が乾きます。重度の脱水になると、立ち上がるときに頭のふらつきや錯乱、めまいが起こります。治療しなければ、最終的に昏睡や死に至ります。

脱水により発熱は起こりますか?

いいえ、脱水により発熱は起こりませんが、発熱を引き起こす多くの病気が脱水につながることもあります。

脱水の原因は何ですか?

脱水は、摂取する水分よりも体が失う水分が多い場合に起こります。すなわち、嘔吐や下痢を伴う 胃腸炎 胃腸炎の概要 胃腸炎とは、胃と腸(小腸および大腸)の粘膜に炎症が起きた状態のことです。通常は微生物が感染することで起こりますが、毒性のある化学物質や薬の摂取が原因で起こることもあります。 胃腸炎の通常の原因は感染ですが、毒性物質や薬の摂取が原因となることもあります。 典型的には下痢、吐き気、嘔吐、腹痛がみられます。... さらに読む 胃腸炎の概要 高温の気候時の大量発汗 熱中症の概要 恒温動物である人間の体温は、外気温の変動にかかわらず、口腔温では37℃前後、直腸温では38℃前後に保たれています。体が正常に機能するためには、この体温を保つ必要があります。体温が上昇しすぎたり、逆に下がりすぎると、臓器に深刻な損傷が生じたり、死に至ることがあります。 体は熱を生産したり放散したりして、体温を調整します。... さらに読む 、コントロール不良の 糖尿病 糖尿病 糖尿病は、体がインスリンを十分に生産しないかインスリンに正常に反応しないため、血中の糖分の濃度(血糖値)が異常に高くなる病気です。 排尿が増加し、のどが渇くほか、減量しようとしていなくても体重が減少することがあります。 糖尿病は神経の損傷をもたらし、触覚の問題を引き起こします。... さらに読む のような病気や問題によって引き起こされる可能性があります。脱水は、移動の途中で立ち往生した場合や高齢者の一人暮らしなど、十分な水分補給ができない場合にも起こります。

脱水により下痢は起こりますか?

いいえ、その逆です。下痢により脱水が起こることがあります。

脱水の場合、何をしたらよいですか?

軽い脱水の場合は、水を余分に飲むだけで十分です。より重度の脱水の場合は、適切な濃度のミネラル(電解質)と糖分が含まれている特別な経口補水液を飲む必要があります。ジュース、ソーダ、スポーツドリンクはそれほど効果的ではありません。重度の脱水の場合は、医師が輸液を行います。

脱水により尿路感染症(UTI)は起こりますか?

脱水の検査はどのように行いますか?

多くの場合、医師は検査なしで脱水の診断を下すことができますが、ときに、血液中のナトリウムやその他の電解質の濃度を測定し、尿の濃縮度を測定することがあります。

脱水から回復するまでどのくらいかかりますか?

脱水の原因になった問題が解決し、適切な量の水分を摂取できれば、軽度から中等度の脱水であれば1日もしないうちに解消する可能性があります。重度の脱水または長期間の脱水は、病院で医師の治療を受ける必要があり、適切な治療を受けて回復するまでに通常2~3日かかります。

脱水の予防はどのように行いますか?

脱水を予防するために、暑い環境下で仕事や運動をしているときは、水分をより多く摂取するべきです。高齢の家族が暑い建物や場所に一人でいるときは、十分な量の水をすぐ手に取れるところに置いておくようにします。激しい運動をしていない人や、暑い環境にいない人は、のどが渇いていないときに、余分な水分を無理に飲む必要はありません。

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