痛みの治療

執筆者:James C. Watson, MD, Mayo Clinic College of Medicine and Science
レビュー/改訂 2022年 6月
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痛み止め(鎮痛薬)は、痛みの治療に使用される主な薬剤です。医師が痛み止めを選択する際には、痛みの種類および持続期間と、それぞれの痛み止めで予想されるベネフィットとリスクを考慮します。ほとんどの痛み止めは侵害受容性疼痛(損傷による痛み)に対しては効果がありますが、神経障害性疼痛(神経、脊髄、脳の損傷や機能障害による痛み)に対してはあまり効果がありません。多くのタイプの痛み(特に慢性疼痛)に対して、薬剤以外による治療法も重要です。

基礎疾患を治療することで、痛みを解消したり最小限に抑えたりできるケースがあります。例えば、骨折をギプスで固定することや、感染を起こした関節に抗菌薬を投与することは、鎮痛に役立ちます。しかし、痛みの基礎疾患が治療可能な場合でも、痛みに速やかに対処するために痛み止めが必要になる場合もあります。

痛みの概要も参照のこと。)

知っていますか?

  • 痛みは、多くの場合、薬物療法と非薬物療法を組み合わせて治療します。

痛みの緩和に使用される薬剤は以下の3つに分類されます。

  • 非オピオイド

  • オピオイド(麻薬性)

  • 鎮痛補助薬(通常はけいれん発作やうつ病など別の症状の治療に用いられるが、痛みを緩和する作用もある薬剤)

非オピオイド鎮痛薬

非オピオイド鎮痛薬には様々なものがあります。軽度から中等度の痛みにしばしば有効で、ときに重度の痛みにも有効です。非オピオイド鎮痛薬は、しばしば痛みの治療に好んで使用されます。非オピオイド鎮痛薬は、身体依存や、鎮痛作用への耐性を生じません。

アスピリンとアセトアミノフェンは、処方せんがなくても市販薬(OTC薬)として入手できます。これ以外にもOTC薬として利用できる非オピオイド鎮痛薬(イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセンなど)がいくつかありますが、比較的高用量のものは処方せんが必要になることがあります。

OTC薬の痛み止めは、短期間であればかなり安全に使用できます。最大用量、使用頻度、使用期間については、ラベルに書かれている指示に従う必要があります。症状が悪化または持続する場合は、医師の診察を受ける必要があります。

非ステロイド系抗炎症薬

最も頻繁に使用される非オピオイド鎮痛薬の多くは非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)に分類されます。アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセンなどがその例です。これらの薬は通常、軽度から中等度の痛みの治療に用いられます。NSAIDは痛みを緩和するだけでなく、炎症も軽減します。炎症は、しばしば痛みに伴い、痛みを悪化させます。

NSAIDは多くの場合、経口で使用します。一部のNSAID(ケトロラク、ジクロフェナク、イブプロフェン)は、静脈内注射や筋肉内注射による投与も可能です。インドメタシンは坐薬として使用できます。ジクロフェナクはクリームとしても利用できます。

NSAIDは広く使用されていますが、副作用が起こることもあり、ときとして重篤な場合もあります。

  • 消化管で生じる問題:NSAIDはいずれも胃の粘膜を刺激する傾向があり、消化器の不調(胸やけ、消化不良、吐き気、腹部膨満、下痢、腹痛など)、消化性潰瘍消化管出血を引き起こす可能性があります。NSAIDの一種であるCOX-2阻害薬(コキシブ系薬剤)は、他のNSAIDと比べると胃への刺激や出血があまりみられません。NSAIDを食後に服用することや、制酸薬を併用することは、胃の不快感を予防するのに役立ちます。ミソプロストールという薬剤は胃の不快感や潰瘍の予防に役立ちますが、下痢などの他の問題を起こすことがあります。消化性潰瘍の治療に使用されるプロトンポンプ阻害薬(オメプラゾールなど)やヒスタミンH2受容体拮抗薬(ファモチジンなど)は、NSAIDによる胃への副作用を防ぐ目的でも使用されます。

  • 出血:NSAIDはいずれも血小板(血管が傷ついたときに出血を止めるのを助ける、細胞に似た血液中の粒子)の血液凝固作用を阻害します。結果として、NSAIDは出血のリスクを高め、特に胃の粘膜を刺激した場合に消化管出血のリスクを大きく高めます。COX-2阻害薬(コキシブ系薬剤)は、他のNSAIDと比べると出血を引き起こす可能性が低くなっています。

  • 体液の貯留または腎臓の問題:NSAIDはときに体液の貯留とむくみを引き起こします。また、NSAIDを習慣的に服用すると腎疾患の発生リスクが上昇し、ときには腎不全(鎮痛薬腎症と呼ばれます)を引き起こすこともあります。

  • 心臓と血管の病気のリスクの上昇:アスピリン以外のNSAIDを使用すると心臓発作、脳卒中、下肢の血栓症のリスクが高まることが研究結果から示唆されています。このリスクは、薬剤の使用量が多いほど、また使用期間が長いほど高くなると考えられています。また、NSAIDの中でも、このリスクが高いものと低いものがあります。こうした問題は、この種の薬剤が血液凝固に及ぼす直接的な作用に起因する可能性もあれば、わずかながら持続的に血圧を上昇させるという間接的な作用に起因する可能性もあります。

長期間NSAIDを使用している人は、こうした問題がみられる可能性がより高くなります。そのような人は、高血圧、腎不全、消化管潰瘍、消化管出血の有無を確認し、心臓病や脳卒中のリスクを評価するために、定期的に医療機関を受診する必要があります。NSAIDの短期間使用しても、深刻な問題が生じる可能性は低いですが、

以下のような集団では、副作用のリスクが高まります。

  • 高齢者

  • 習慣的に飲酒している人

  • 冠動脈疾患など、心臓や血管(心血管系)の病気がある人、あるいはこれらの病気の危険因子をもつ人

高齢者や、心不全、高血圧、腎臓または肝臓の病気がある人がNSAIDを服用する場合は、医師による監督指導が必要です。心臓の病気や血圧に対する処方薬の中には、NSAIDと併用すると効果が下がるものもあります。

知っていますか?

  • NSAIDは、処方せんなしで購入できる薬剤も含めて、長期間服用すると重篤な副作用を起こす可能性があります。

NSAIDの鎮痛作用が現れる速さや持続時間は、薬剤によって異なります。NSAIDの効果はどれも同程度ですが、反応には個人差があります。人によって、特定の薬剤が他の薬剤より有効であったり、副作用が少なかったりすることもあります。

アスピリン

アスピリン(アセチルサリチル酸)は、およそ100年前から使用されています。アスピリンは経口薬で、4~6時間にわたって中程度の鎮痛作用を示します。

アスピリンは胃を刺激することがあるため、制酸薬(緩衝剤と呼ばれます)と併用するか、胃を速やかに通過して小腸に到達してから溶解するようコーティングを施した薬剤(腸溶錠と呼ばれます)を使用することがあります。これらの製品は胃への刺激を減らすことを目的としています。しかし、緩衝剤が配合されたアスピリン製剤や腸溶錠であっても、胃を刺激する可能性は依然としてあり、それはアスピリンが胃の粘膜を保護する物質の分泌も減少させるからです。これらの物質のことをプロスタグランジンといいます。

アスピリンは血小板の働きを阻害するため、全身で出血リスクが高まります。血小板は、血液の凝固を助ける血液中の細胞断片です。出血傾向(血友病などの出血性疾患)のある人やコントロール不良の高血圧がある人は、医師の監督指導がある場合を除いて、アスピリンを使用すべきではありません。アスピリンと抗凝固薬(ワルファリンなどの血液を凝固しにくくする薬)を併用している人では、生命を脅かす出血を予防するために、綿密なモニタリングが必要になります。通常、手術予定日の前の1週間は、アスピリンを使用すべきではありません。

アスピリンは喘息を悪化させることがあります。鼻茸(はなたけ)のある人がアスピリンを使用すると、高い確率で喘鳴が生じます。少数ですが、アスピリンに対する過敏症(アレルギー)がある人は、激しいアレルギー反応(アナフィラキシー)を起こすことがあり、発疹、かゆみ、重度の呼吸障害、ショックなどに至ることがあります。こうした反応が起こった場合は緊急の医学的処置が必要です。

アスピリンを非常に大量に使用すると、呼吸異常、発熱、錯乱などの重篤な副作用が起こる可能性があります。過量投与の初期徴候の1つは耳鳴りです。

小児および20歳未満の若年者は、インフルエンザまたは水痘(水ぼうそう)にかかっているか、これらの感染症から回復した直後の場合、ライ症候群を発症する可能性があるため、アスピリンを服用すべきではありません。まれですが、ライ症候群は死亡を含む重篤な結果をもたらすことがあります。

NSAIDの外用薬

痛む箇所の皮膚の上に直接塗布できるNSAIDのクリームまたはゲルもあります。例えば、ジクロフェナクゲルは変形性関節症による痛みの緩和のために関節に塗ることができ、動きの改善に役立ちます。ジクロフェナクにはパッチ剤もあり、軽いねんざ、肉離れ、挫傷による急性疼痛の緩和に用いられます。

イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン

イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセンなどのNSAIDは、実際に比較した研究は少数ではあるものの、一般にアスピリンよりも胃への刺激が少ないと考えられています。アスピリン同様、これらの薬剤も消化器の不調、潰瘍、消化管出血を起こす可能性はあります。また、喘息を悪化させ、血圧を上げる可能性もあります。これらの薬剤を使用すると、脳卒中、心臓発作、脚の動脈血栓のリスクがやや上昇すると考えられています。ナプロキセンでは、他のNSAIDよりもそのリスクが低い可能性があります。したがって、これらの病気のリスクが高い人がNSAIDを必要とする場合は、ナプロキセンがより適している可能性があります。

イブプロフェンケトプロフェンナプロキセンは、一般にアスピリンほど血液の凝固を阻害しませんが、医師による厳重な監督の下でなければ、これらの薬剤をワルファリンなどの抗凝固薬と一緒に使用すべきではありません。

アスピリンにアレルギーのある人は、イブプロフェンケトプロフェンナプロキセンに対してもアレルギーを起こすことがあります。発疹、かゆみ、呼吸障害、ショックなどが生じた場合は、直ちに医学的処置を受ける必要があります。

COX-2阻害薬(コキシブ系薬剤)

セレコキシブなどのコキシブ系薬剤(COX-2阻害薬)は、他のNSAIDとは異なる一群の薬剤です。他のNSAIDは以下の2種類の酵素を阻害します。

  • COX-1:胃の保護と血液凝固に不可欠な役割を果たすプロスタグランジンの生産に関与します。

  • COX-2:炎症を促進するプロスタグランジンの生産に関与します。

COX-2阻害薬は、主にCOX-2という酵素を阻害する傾向があります。したがってCOX-2阻害薬は、痛みと炎症の治療においては他のNSAIDと同程度の効果があります。しかし、COX-2阻害薬は胃を荒らす可能性が低いため、吐き気、腹部膨満、胸やけ、出血、消化性潰瘍を起こしにくく、他のNSAIDほど血液凝固を阻害することもありません。

こうした違いがあるため、COX-2阻害薬は、他のNSAIDの副作用に耐えられない人や、他のNSAIDで特定の合併症(消化管出血など)を起こすリスクの高い人に有用です。対象となるのは以下のような人です。

  • 高齢者

  • 抗凝固薬を使用している人

  • 潰瘍の既往がある人

  • 鎮痛薬を長期にわたり使用している人

しかし、他のNSAIDと同様、COX-2阻害薬も心臓発作、脳卒中、脚の血栓症のリスクを高めるようです。そのため、特定の条件を有する人がCOX-2阻害薬を使用する場合、そのリスクと綿密なモニタリングの必要性について説明を受けます。特定の条件とは、以下に挙げるようなものです。

  • 心血管疾患(冠動脈疾患など)

  • 脳卒中

  • これらの病気の危険因子

COX-2阻害薬は、他のNSAIDと同様、心不全のある人や心不全のリスクが高い人(心臓発作を経験したことがある人など)には、適していません。

非ステロイド系抗炎症薬の作用

非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)には次の2通りの作用があります。

  • 痛みの感覚を軽減します。

  • 高用量では炎症を軽減します(痛みは炎症を伴うことも多く、それが痛みをさらに悪化させます)。

NSAIDにこれらの効果を示すのは、プロスタグランジンという、ホルモンに似た物質の生成を減らすことによります。プロスタグランジンにはいくつか種類がありますが、痛みの信号に対する神経細胞の反応性を高めたり、血管を拡張させたりするなど、その機能は種類によって異なります。

プロスタグランジンの生成にはシクロオキシゲナーゼと呼ばれる2種類の酵素(COX-1とCOX-2)が不可欠で、ほとんどのNSAIDはこの両者を阻害することによってプロスタグランジンの生成を減少させます。NSAIDの一種であるCOX-2阻害薬(コキシブ系薬剤)は、主にCOX-2のみを阻害する傾向があります。

一方、プロスタグランジンのうち炎症を促進して痛みをもたらす作用があるものの生成に関与している酵素はCOX-2だけです。この種類のプロスタグランジンは、熱傷、骨折、ねんざ、肉離れ、微生物の侵入といった損傷に反応して放出され、それにより生体の防御反応としての炎症が起こります。すると損傷を受けた部位への血流が増加して体液と白血球が運ばれ、損傷した組織を取り囲むとともに、そこに侵入してくる微生物を排除します。

COX-1の作用によって生成されるプロスタグランジンは、消化管を胃酸から保護するのを助けるとともに、血液凝固にも重要な役割を果たしています。NSAIDの多くはCOX-1を阻害することによってプロスタグランジンの生成を抑えるため、胃の粘膜が刺激されます。このような刺激により、消化器の不調、消化性潰瘍、消化管出血が起こる可能性があります。

一方、COX-2阻害薬は主にCOX-2のみを阻害するため、胃の不快感による問題は起こりにくくなっています。しかし、COX-2阻害薬であっても、ある程度はCOX-1を阻害するため、このような副作用が起こるリスクはわずかながら上昇する可能性があります。

アセトアミノフェン

アセトアミノフェンの鎮痛・解熱作用はおおむねアスピリンに匹敵します。

しかしNSAIDと異なり、アセトアミノフェンには以下の特徴があります。

  • 抗炎症作用は実質ない

  • 血液凝固作用に影響を与えない

  • 胃への副作用はほとんどない

アセトアミノフェンが作用する仕組みは、まだはっきり分かっていません。

アセトアミノフェンには内服薬と直腸に挿入する坐薬があり、効果は4~6時間持続するのが一般的です。

アセトアミノフェンは非常に安全な薬剤だと考えられています。ただし、大量に服用すると肝傷害につながり、その傷害は不可逆的なこともあります(アセトアミノフェン中毒を参照)。肝疾患がある人は、通常の処方量よりも少ない用量を使用すべきです。低用量を長期間使用した場合に肝臓に有害な作用が出るかどうかは明らかではありません。日頃から大量に飲酒をする人は、アセトアミノフェンを過剰使用した場合に肝傷害をきたすリスクが最も高いと考えられています。アセトアミノフェンを服用している人が、ひどいかぜやインフルエンザなどの理由で食事をとらなくなると、肝傷害を起こしやすくなる可能性があります。

オピオイド鎮痛薬

オピオイド系の痛み止め(鎮痛薬)は、ときに麻薬性鎮痛薬とも呼ばれ、様々な種類の痛みに対して効果があります。通常は、これらは最も強力な痛み止めです。

オピオイドとは、ケシから抽出される天然物質であるモルヒネと化学構造が類似する一群の化合物で、ケシ以外の植物から抽出されるオピオイドもあれば、研究室で合成されるオピオイドもあります。

オピオイドは、多くの場合、急速に軽減する可能性が高い重度の疼痛(外傷または手術後の疼痛など)の治療のため数日間処方されます。オピオイドは副作用をもたらす可能性があり、誤用または嗜癖のリスクがあるため、通常はできるだけ早く非オピオイド鎮痛薬に切り替えます。オピオイドは通常、慢性疼痛患者の治療には推奨されません。

がんまたは末期疾患による重度の痛みがある患者に対しては、特に終末期ケア(ホスピスケアを含みます)の一環として、ときにオピオイドが比較的長い期間にわたり処方されることがあります。このような状況では、副作用は通常、予防または管理可能であり、誤用や嗜癖の懸念はあまりありません。

何らかの慢性疼痛に対してオピオイドを処方する前に、医師は以下のことを検討します。

  • 通常の治療アプローチはどのようなものか

  • 他の治療法を用いることは可能かどうか

  • その患者がオピオイドの副作用を起こすリスクは高いか

  • その患者がオピオイド鎮痛薬を誤用または乱用するリスクは高いか、ほかの目的(売却目的など)で使用する可能性は高いか

医師は患者に痛みの専門家を紹介したり、物質の誤用のリスクが高い患者には、物質の誤用を専門的に扱っている精神医療従事者を紹介したりすることがあります。例えば、嗜癖の既往がある患者には通常、このような紹介が必要です。

慢性疼痛に対してオピオイドが処方される場合、医師は患者がかかっている病気の性質(判明している場合)と、ほかに考えられる治療法(非オピオイド鎮痛薬や治療をしない場合を含みます)のリスクとベネフィットについて説明します。医師は、患者の目標や期待について尋ねます。医師は通常、オピオイドの使用に伴うリスクを記載したパンフレットを渡します。この情報について医師と話し合い、理解した上で、インフォームド・コンセント文書に署名するよう求められます。

医師が慢性疼痛に対してオピオイドを処方する場合、オピオイドのリスクと副作用について説明します。患者は以下の助言を受けます。

  • オピオイドの使用中は、飲酒をやめ、抗不安薬または睡眠補助薬を使用しないこと

  • 推奨された用量を推奨された回数使用し、用量を勝手に変えないこと

  • オピオイドを他の人の手の届かない安全な場所に保存しておくこと

  • 他の人とオピオイドを共用しないこと

  • 薬剤を服用して眠気をもよおしたり、他の副作用(錯乱、便秘、吐き気など)がみられた場合は、主治医に連絡すること

  • 使用しなかった錠剤は、指示通りに処理すること

  • ナロキソン(オピオイドの解毒薬)を手元に置いておき、オピオイドを過剰摂取した場合のナロキソンの使用方法を学び、家族にも教えておくこと

オピオイドを処方する場合、医師は患者の安全を確保するための基本的な対策を講じます。患者は一般に、オピオイドの処方は1人の医師からのみ受け、調剤は毎回同じ薬局でしてもらうよう指示されます。医師はフォローアップのため頻繁に患者を診察し、その薬が安全かつ効果的に使用されているかモニタリングします。例えば、医師は患者の尿を定期的に検査し、薬剤が正しく使用されているかどうか判定します。また、オピオイドを使用する際に必要な条件(必要なモニタリング方法など)を明記した合意書への署名を求められます。患者以外の人による誤用を避けるため、患者はオピオイドを安全な場所に保管し、使用しなかった薬剤は薬局に返却して廃棄してもらうべきです。

鎮痛補助薬

鎮痛補助薬とは、通常は別の病態の治療に使用されるものの、痛みを軽減する作用もある薬剤のことです。

鎮痛補助薬は、神経が痛みを処理するプロセスに変化を与えることで作用を発揮すると考えられています。

神経の損傷による痛み(神経障害性疼痛)や線維筋痛症などによる痛みの治療において、鎮痛補助薬は最初のかつ唯一の薬剤として用いられます。

痛みの治療に最もよく用いられる鎮痛補助薬は以下のものです。

  • 抗うつ薬(アミトリプチリン、ブプロピオン、デシプラミン、デュロキセチン、ノルトリプチリン、ベンラファキシンなど)

  • 抗てんかん薬(ガバペンチン、プレガバリンなど)

  • 経口や外用の局所麻酔薬

薬剤以外による痛みの治療法

薬剤のほかにも鎮痛に役立つ方法は数多くあります。

冷湿布または温湿布を痛む部位に直接貼ると痛みが和らぐことがよくあります(痛みと炎症の治療を参照)。

ニューロモジュレーションという手法では、電気刺激を用いて神経による痛みの処理に変化を加えます。具体的な手法として以下のものがあります。

  • 経皮的電気神経刺激法(TENS)

  • 脊髄刺激療法

  • 末梢神経電気刺激

理学療法または作業療法が用いられることもあり、これにより患者の慢性疼痛を緩和し、支障なく生活を送れるように手助けをします。ときに、運動をしたり、活動レベルを上げたりすることも有用です。例えば、定期的に歩く習慣をつけると、ベッドで休んでばかりの生活よりも効率的に腰痛を緩和できます。

補完・統合医療が慢性疼痛の治療に用いられることがあります。例えば、医師は以下のものを勧めることがあります。

鍼治療では、体の特定の部位に細い針を刺します。鍼治療がどのように効くのかは、ほとんど解明されておらず、専門家の中には鍼治療の有効性に疑問をもつ人もいます。しかし、人によっては、また少なくとも一時的には、鍼治療で痛みがかなり軽減します。

バイオフィードバック法その他の認知療法(リラクゼーション訓練、催眠術、注意転換法など)は、注意の向け方を変えることにより、痛みをコントロールまたは軽減したり、痛みに対処したりするのに役立つことがあります。ある注意転換法では、痛みを感じたとき、ハンモックや浜辺などの快適で静かな場所にいる自分の姿を心に思い描くよう教わります。

認知行動療法は、痛みと痛みが関連する身体障害を軽減し、患者の対処行動の助けになる可能性があります。この種の療法には、患者が痛みの影響や自身の限界にではなく、痛みへの対処に集中できるよう支援するカウンセリングが含まれます。患者と家族が協力して疼痛管理を行えるよう支援するカウンセリングが行われることもあります。

痛みのある人に対する心理的支援の重要性は過小評価されるべきではありません。家族や友人は、痛みのある人が苦しんでいること、支援を必要としていること、抑うつや不安を生じる可能性があること、そして抑うつや不安には心理カウンセリングが必要になる場合もあることを認識しておくべきです。

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