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多因子(複合)遺伝

執筆者:

David N. Finegold

, MD, University of Pittsburgh

レビュー/改訂 2019年 9月
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多くの形質の発現には,複数の遺伝子が関与している可能性がある。このような形質の多く(例,身長)は,ベル型の曲線分布(正規分布)を示す。正常では,個々の遺伝子はそれぞれ独立して,特定の形質に正または負の影響を及ぼす。同じ方向に作用する複数の因子を同時に受け継ぐ可能性は低いため,分布の両端ほど少数となり,分布の中央ほど多数となる。環境因子も最終的な結果に正または負の影響を及ぼす。

比較的頻度の高い先天異常および家族性疾患の多くは,多因子遺伝によるものである。罹患者では,その疾患は遺伝的影響と環境的影響の総和を反映する。このような形質が発現するリスクは,感受性遺伝子をごく少数しか受け継いでいない可能性の高い遠縁の近親者よりも,第1度近親者(罹患者と平均50%の遺伝子を共有する同胞,親,子)ではるかに高い。

多因子遺伝を示す一般的な疾患としては, 高血圧症 高血圧 高血圧とは,安静時の収縮期血圧(130mmHg以上),拡張期血圧(80mmHg以上),またはその両方が高値で維持されている状態である。原因不明の高血圧(本態性高血圧)が最も多くを占める。原因が判明する高血圧(二次性高血圧)は通常,睡眠時無呼吸症候群,慢性腎臓病,原発性アルドステロン症,糖尿病,または肥満に起因する。高血圧は重症となるか長期... さらに読む 高血圧 冠動脈疾患 冠動脈疾患の概要 冠動脈疾患では,冠動脈の血流が障害され,そのほとんどがアテロームに起因する。臨床像としては,無症候性心筋虚血, 狭心症, 急性冠症候群( 不安定狭心症, 心筋梗塞), 心臓突然死などがある。診断は症状,心電図検査,負荷試験,ときに冠動脈造影による。予防法は可逆的な危険因子(例,高コレステロール血症,高血圧,運動不足,肥満,糖尿病,喫煙)の... さらに読む 冠動脈疾患の概要 2型糖尿病 糖尿病(DM) 糖尿病はインスリン分泌障害および様々な程度の末梢インスリン抵抗性であり,高血糖をもたらす。初期症状は高血糖に関連し,多飲,過食,多尿,および霧視などがある。晩期合併症には,血管疾患,末梢神経障害,腎症,および易感染性などがある。診断は血漿血糖測定による。治療は食事療法,運動,および血糖値を低下させる薬剤により,薬剤にはインスリン,経口血糖... さらに読む ,がん, 口蓋裂 口唇裂および口蓋裂 口唇裂,口唇口蓋裂,および単独の口蓋裂を総称して,口腔裂と呼ぶ。口腔裂は最も頻度の高い頭頸部先天奇形であり,全体での有病率は出生1000人当たり2.1例である。環境因子と遺伝因子の両方が原因として推定されている。出生前の母親による喫煙および飲酒によってリスクが増大する。罹患児が1人いると,2人目の罹患リスクが高くなる。このリスクは,受胎前から第1トリメスターにかけて葉酸を摂取することで低減できる。... さらに読む 口唇裂および口蓋裂 ,関節炎などがある。変異の形質を示す個人と示さない個人に対して最も感度の高い利用可能な遺伝学的検査(次世代シークエンシング 遺伝子診断技術 )を行うことにより,これらの形質に寄与する具体的な遺伝子が数多く同定されている。家族歴やしばしば分子マーカー(例,コレステロール高値)により同定される特異的な生化学的経路など,遺伝学的に規定される素因により,予防が有益となる可能性の高い高リスクの個人をときに同定できることがある。

複数の遺伝子が関与する多因子性の形質が明確な遺伝パターンを示すことはほとんどないが,こうした形質は特定の民族および地域集団で,あるいは男女のいずれかでより高頻度に認められる傾向がある。

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