非常に強い甘味のある天然の甘草は,灌木(甘草[Glycyrrhiza glabra])の根から抽出され,カプセル,錠剤,液剤として薬用に使用される。米国製のリコリスキャンディ(甘草飴)は人工的に味付けをされたものがほとんどで,天然の甘草は含まれていない。天然の甘草の有効成分はグリチルリチンである。グリチルリチンの作用にとりわけ感受性が高い場合には,グリチルリチンの含有量をかなり減らした特別な甘草製品(約10分の1)を入手できる。こうした製品は脱グリチルリチン甘草と呼ばれている。
(栄養補助食品の概要も参照のこと。)
効能
甘草は多くの場合,咳嗽を抑制したり,咽頭痛や胃の不調を緩和したりすることを目的として使用される。外用すると,皮膚の炎症(例,湿疹)を鎮めると言われている。甘草は,C型肝炎やその他の肝疾患に起因する合併症および胃潰瘍の治療を補助するとも言われている(1)。
エビデンス
有害作用
低用量または正常の摂取量であれば,顕著な有害反応はほとんどない。しかし,高用量の天然甘草(1日1オンス[28.35g]超)およびグリチルリチンは,腎臓のナトリウム・水貯留を引き起こすため高血圧に至ることがあり,またカリウムを排泄させるためカリウム濃度の低下(偽性アルドステロン症)を生じさせることがある。カリウム排泄量の増加は,特に心疾患がある場合やジゴキシンやカリウム排泄量を増やす利尿薬を服用している場合に問題となりうる。こうした場合や高血圧がある場合には,甘草の摂取を避けるべきである。
甘草は早産のリスクを高めることがあるため,妊婦は甘草を避けるべきである。
薬物相互作用
甘草はワルファリンと相互作用を起こし,その有効性を低減し,血栓のリスクを高めることがある。前述の通り,甘草はカリウム濃度に影響を及ぼしてジゴキシンと相互作用を起こすことがある。
甘草に関する参考文献
Li X, Sun R, Liu R: Natural products in licorice for the therapy of liver diseases: progress and future opportunities.Pharmacol Res 144:210-226, 2019.doi: 10.1016/j.phrs.2019.04.025.
Ottillinger B, Storr M, Malfertheiner P, et al: STW 5 (Iberogast®)—a safe and effective standard in the treatment of functional gastrointestinal disorders.Wien Med Wochenschr 163(3-4): 65-72, 2013.doi: 10.1007/s10354-012-0169-x.
Kuriyama A, Maeda H: Topical application of licorice for prevention of postoperative sore throats in adults: a systematic review and meta-analysis.J Clin Anesth 54:25-32, 2019.doi: 10.1016/j.jclinane.2018.10.025.
より詳細な情報
以下の英語の資料が有用であろう。ただし,本マニュアルはこの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。
National Institutes of Health (NIH), National Center for Complementary and Integrative Health: General information on the use of licorice root as a dietary supplement