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化学兵器の概要

執筆者:

James M. Madsen

, MD, MPH, University of Florida

レビュー/改訂 2021年 2月
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化学兵器は,戦時のために政府が開発した化学的集団殺傷兵器(MCW)であり,以下が含まれる:

  • 毒性物質(重篤な損傷または死亡を引き起こすことを意図する)

  • 無能力化剤(一時的で生命を脅かさない作用のみを引き起こすことを意図する)

無能力化剤は,ときに誤って致死性はないとされるが,大量に使用すれば重篤な損傷や死につながる可能性がある。

有害工業化学物質は工業用に製造された化学物質であり,多数の被害者を生じる能力があるものである。一部の化学物質(例,塩素,ホスゲン,シアン化物)は工業用にも化学兵器にも使用され,デュアルユースの物質と呼ばれる。

化学物質が関与するインシデントについてのオンライン上のダウンロード可能で有用な情報源として,Chemical Hazards Emergency Medical Management(CHEMM)がある。

分類

毒性化学兵器は以下の4つの大きなクラスに分類される:

神経剤は酵素のアセチルコリンエステラーゼを阻害して,過剰なコリン作動性の刺激およびコリン作動性クリーゼ(例,下痢,排尿,縮瞳,気管支漏,気管支収縮,嘔吐,流涙,流涎)を引き起こす。

窒息剤は,肺実質ではなく主に上気道に作用する物質を含むため,一部の専門家はこのクラスを「気道に急性局所作用をもつ物質」と呼ぶことを好む。多数の被害者を生み出しうる有毒工業化学物質は,その大半が気道に作用することから,窒息剤の化学兵器とともに考察する。

全身窒息剤は具体的にはシアン化物と硫化水素であり,ミトコンドリアのエネルギー輸送を妨害して,細胞呼吸を遮断する。血中に分布して(したがって軍事的には血液剤と呼ばれる),ほとんどの組織に作用する。

びらん剤は,表皮真皮接合部を損傷して,疼痛および典型的には水疱形成を起こす。吸入した場合,多くは肺に作用する。

無能力化剤は以下に分けられる:

強力なフェンタニル誘導体などのオピオイドは,ロシアが2002年にチェチェンのテロリストに対して使用したとされているが,その使用の典型的な意図が重篤な損傷や死亡を引き起こすことではないという点で,これは無能力化剤とみなすことができる。しかしながら,集団殺傷兵器として使用されれば,呼吸抑制による死をあまりにも容易に引き起こしうる。(オピオイド中毒および離脱 オピオイド中毒および離脱 多幸作用を有するオピオイドは,高用量では鎮静および呼吸抑制を引き起こす。呼吸抑制は,特異的な解毒剤(例,ナロキソン)または気管挿管と機械的人工換気により管理可能である。離脱症状は,初期には不安および薬物渇望として現れ,その後に呼吸数増加,発汗,あくび,流涙,鼻漏,散瞳,および胃痙攣として現れ,後期には立毛,振戦,筋攣縮,頻脈,高血圧,発熱,悪寒,食欲不振,悪心,嘔吐,および下痢として現れる。診断は臨床的診察に加え,尿検査により行う。離脱... さらに読む を参照のこと。)多数の傷病者が発生する状況では,曝露の経路はエアロゾル化した物質の吸入である可能性が最も高く,フェンタニル誘導体に対しては,通常より高用量のナロキソンが必要になる可能性がある。

ほとんどの化学兵器には,化学的名称に加えて1~3文字から成る北大西洋条約機構(North Atlantic Treaty Organization:NATO)コードが付けられている。

本稿で述べられている見解は著者の見解であり,米国陸軍省(Department of Army),米国国防総省(Department of Defense),米国政府の公式の方針を反映したものではない。

より詳細な情報

以下の英語の資料が有用であろう。ただし,本マニュアルはこの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

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