(胸部外傷の概要 胸部外傷の概要 米国において,外傷による死亡の約25%を胸部外傷が引き起こしている。多くの胸部損傷が,外傷後数分または数時間の間に死を引き起こす;高度な外科訓練を必要としない根治的処置または一時的な処置によりしばしばベッドサイドで治療できる。 胸部損傷は,鈍的外傷または穿通性外傷により起こることがある。最も重要な胸部損傷には以下のものがある:... さらに読む も参照のこと。)
血胸の通常の原因は肺,肋間動静脈,または内胸動脈の裂傷である。穿通性外傷または鈍的外傷により起こることがある。血胸はしばしば 気胸 気胸 気胸は胸腔内に空気が存在することであり,部分的または完全な肺虚脱を引き起こす。気胸は,自然に起こることもあれば,外傷または医療行為が原因で起こることもある。診断は,臨床基準および胸部X線に基づく。ほとんどの気胸は経カテーテル的吸引または胸腔ドレナージを必要とする。 原発性自然気胸は,肺の基礎疾患がなく,典型的には,背が高く痩身の10代および20代の若年男性に発生する。原発性自然気胸は,喫煙によって生じた,または患者が遺伝的にもつ,胸膜下... さらに読む を伴う(血気胸)。
出血量はごく少量から大量の場合まである。大量血胸はほとんどの場合1000mL以上の急速な血液貯留と定義される。 ショック ショック ショックとは臓器灌流が低下した状態で,その結果細胞の機能障害および細胞死を生じるものである。関係する機序は,循環血液量の減少,心拍出量の減少,および血管拡張(ときに毛細血管床をバイパスする血液のシャントを伴う)である。症状としては,精神状態の変化,頻脈,低血圧,乏尿などがある。診断は臨床的になされ,血圧測定およびときに組織灌流低下のマーカ... さらに読む がよくみられる。
大量出血した患者はしばしば呼吸困難になり,呼吸音減弱および打診での濁音が認められる(複数の外傷のある患者の初期評価で認識するのは困難なことが多い)。少量の血胸では著明な所見が認められない場合もある。
診断
胸部X線
症状および身体所見に基づき血胸を疑う。一般的には,胸部X線により診断を確定する。
治療
必要に応じて急速輸液
通常は胸腔ドレナージ
ときに開胸
循環血液量減少の徴候(例,頻脈,低血圧)のある患者に対しては,電解質輸液およびときに輸血( Professional.see page 輸液蘇生(fluid resuscitation) 輸液蘇生(fluid resuscitation) ほぼ全ての循環 ショック状態では,重度の血管内容量減少(例,下痢または熱中症による)と同様に,大量の輸液が必要となる。血管内容量の欠乏は血管収縮によって強力に代償され,それに続いて,数時間に及ぶ血管外から血管内への体液移動があり,体内総水分量を費やして循環体液量が維持される。しかしながら,大量に体液が喪失されると,この代償機構では追いつかない。 維持輸液の必要量については, 水代謝を,軽度の脱水については,... さらに読む )を行う。
血液量が胸部X線で視認できるほどである場合(通常約500mLが必要),または 気胸 気胸 気胸は胸腔内に空気が存在することであり,部分的または完全な肺虚脱を引き起こす。気胸は,自然に起こることもあれば,外傷または医療行為が原因で起こることもある。診断は,臨床基準および胸部X線に基づく。ほとんどの気胸は経カテーテル的吸引または胸腔ドレナージを必要とする。 原発性自然気胸は,肺の基礎疾患がなく,典型的には,背が高く痩身の10代および20代の若年男性に発生する。原発性自然気胸は,喫煙によって生じた,または患者が遺伝的にもつ,胸膜下... さらに読む が認められる場合,第5または第6肋間の中腋窩線上に太い径の(例,32~38Fr)胸腔ドレーンを挿入する。チューブドレナージにより換気が改善され,凝固した血胸(膿胸または線維胸に至ることがある)のリスクが減少し,進行中の失血および横隔膜の完全性の評価が容易になる。胸腔ドレナージで採取した血液は自己血輸血に用いることができ,電解質輸液および他家血の必要性が低減する。
以下のいずれかの状況では,緊急開胸が適応となる:
最初の出血量が1500mLを超える
200mL/時より多い出血が2~4時間を超えて続き,呼吸障害または血行動態障害を引き起こすか,繰り返しの輸血が必要である。