サソリ刺傷

執筆者:Robert A. Barish, MD, MBA, University of Illinois at Chicago;
Thomas Arnold, MD, Department of Emergency Medicine, LSU Health Sciences Center Shreveport
レビュー/改訂 2020年 4月
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北米に生息するサソリは全てヒトを刺すが,その大半は比較的無害である。サソリによる刺傷は通常,わずかな腫脹を伴う局所の痛みや,所属リンパ節腫脹を伴うある程度のリンパ管炎,および創傷周辺皮膚の温度上昇や圧痛を引き起こすだけである。

北米における特筆すべき例外はバークスコーピオン(Centruroides sculpturatusC. exilicaudaとしても知られる)であり,アリゾナ州,ニューメキシコ州,コロラド川のカリフォルニア側に生息する。この種は有毒であり,より重篤な損傷や疾患を引き起こす可能性がある。

初期症状は直ちに生じる疼痛であり,患部のしびれまたはピリピリ感が生じることもある。通常は腫脹はなく,皮膚変化はほとんどない。重篤な症状は小児に好発し,以下のものがある:

  • 不穏

  • 筋攣縮

  • 頭部,頸部,および眼球の異常で不規則な動き

  • 不安および興奮

  • 流涎および発汗

成人では,頻脈,高血圧,呼吸促迫,筋力低下,筋攣縮,および線維束性収縮が顕著となることがある。呼吸困難は両方の年齢群でまれである。

6歳未満の小児および過敏症の受傷者で,C. sculpturatusの咬傷による死亡例がある。

診断

  • 臨床的評価

サソリ刺傷の診断は病歴から明らかである。サソリの種の特定は通常行わない。米国において珍しい外来種のペット(exotic pet)として飼育されているサソリのうちの一部(イエローデスストーカーやブラックデススコーピオンといった,毒性があると誤認させる名前で知られる)は,危険な毒をもつ外国種と外見が似ている。しかし,サソリ刺傷の患者はペットのサソリの実際の種をほとんど知らず,知っていたとしても信頼できないことがある。サソリによる刺傷は,徴候の有無から危険でないと示唆されるまでは,危険の恐れがあるとして治療すべきである。

治療

  • 支持療法

  • 北米における重症例に対する抗毒素

有毒でないサソリ刺傷の治療は症状に基づく。創部にアイスパックを当て,非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)を経口投与することで,疼痛が軽減する。有毒なCentruroidesによる刺傷に対する治療は,床上安静に加えて,筋攣縮をベンゾジアゼピン系薬剤で治療するとともに,必要に応じて高血圧,興奮,疼痛をコントロールするために静注薬を使用する。患者には受傷後8~12時間にわたり絶食させるべきである。本来北米に生息しないサソリ類による重篤な刺傷に対しては,プラゾシンが急激な高血圧による肺水腫の予防に役立ち,オピオイドが疼痛コントロールのために適応となることがある。

北米ではCentruroidesに対する抗毒素が利用可能であり,重度の症状の患者全て,および支持療法に対して不応であった患者,特に小児に対して投与すべきである。地域のpoison center(1-800-222-1222)に問い合わせれば,抗毒素の入手および投与に関する情報が得られる可能性がある。

破傷風予防を行うべきである(ルーチンの創傷管理における破傷風予防の表を参照)。

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