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乳児および小児における心肺蘇生(CPR)

執筆者:

Robert E. O’Connor

, MD, MPH, University of Virginia School of Medicine

レビュー/改訂 2019年 12月
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【訳注:最新の情報については,2020 American Heart Association's guidelines for CPR and emergency cardiovascular careを,感染症を考慮した対応については,American Heart Association's COVID-19 Resuscitation Algorithmsを参照のこと。】CPRを施行しても,病院外での 心停止 心停止 【訳注:最新の情報については,2020 American Heart Association's guidelines for CPR and emergency cardiovascular careを,感染症を考慮した対応については,American Heart Association's... さらに読む による乳児および小児の死亡率は約90%である。病院内での心停止による乳児および小児の死亡率は約65%である。呼吸停止のみによる死亡率は20~25%である。神経学的な転帰は,非常に不良となる場合が多い。

小児におけるCPRの転帰を報告する際には,標準化された転帰報告のガイドラインに従うべきであり,例えば,改訂ピッツバーグ転帰カテゴリースケール(Pittsburgh Outcome Categories Scale)は,脳および全般的な活動能力を反映する(小児用脳機能カテゴリースケール 小児用脳機能カテゴリースケール(Pediatric Cerebral Performance Category Scale)* 小児用脳機能カテゴリースケール(Pediatric Cerebral Performance Category Scale)* の表を参照)。

小児における包括的緊急循環管理

小児における包括的緊急循環管理

*訓練を積んだ人員が十分にいる場合は,患者の評価,CPR,救急隊の要請または院内緊急コールを同時に行うべきである。

American Heart AssociationのComprehensive Emergency Cardiac Care Algorithmに基づく。

小児と成人におけるCPRの主な相違点

心停止前

苦悶している小児の徐脈は,心停止が迫っている徴候である。新生児,乳児,および幼児では低酸素血症により徐脈となる可能性が高いが,より年長の小児では最初は頻脈となる傾向がある。心拍数が60/分未満であり,換気補助によっても循環不全の徴候が改善しない乳児または小児は,胸骨圧迫を受けるべきである(胸骨圧迫 胸骨圧迫 胸骨圧迫 の図を参照)。心ブロックに続発する徐脈はまれである。

胸骨圧迫

乳児および小児(思春期前または55kg未満)に胸骨圧迫を行う際は,胸郭が前後径の3分の1沈むまで圧迫する。具体的には約4~5cmである。青年または55kg以上の小児では,成人と同じ深さ(すなわち5~6cm)が推奨されている。

乳児および小児では,以下に記載するように胸骨圧迫の方法も異なる。乳児および小児における胸骨圧迫の速さは,成人(100~120回/分)と同様である。

乳児および小児における胸骨圧迫

A:新生児および小柄な乳児では,両手で胸囲を包み込めるので,胸骨圧迫には両母指を隣同士に並べて行うのが望ましい。非常に小さな新生児に行う場合は,母指を重ねる。

B:乳児には2本指法を用いる。圧迫の間,指は直立させたまま維持すべきである。新生児では,この手技を用いると位置が低すぎる,つまり,剣状突起またはその下になってしまう;正しい位置は乳頭線のすぐ下である。

C:小児に対する胸骨圧迫の手の位置。

(Adapted from American Heart Association: Standards and guidelines for CPR Journal of the American Medical Association 1992; 268:2251–2281. Copyright 1992, American Medical Association.)

乳児および小児における胸骨圧迫

薬物

アドレナリンを投与した後に除細動が成功しない場合は,アミオダロン5mg/kgを静脈内にボーラス投与することができる。難治性の心室細動(VF)または無脈性心室頻拍(VT)を呈した患者には,これを最大2回まで繰り返すことができる。アミオダロンが使用できない場合は,リドカイン1mg/kgを負荷投与した後,20~50μg/kg/分で点滴としてもよい。アミオダロンもリドカインも,生存退院率を改善する効果は示されていない。

血圧

血圧は適切なサイズのカフで測定すべきであるが,非常に状態の悪い小児では,侵襲的直接動脈圧モニタリングが必須である。

血圧値は年齢に応じて変動するが,収縮期血圧の正常下限(5パーセンタイル未満)を覚えるための簡単な指標は以下の通りである:

  • 1カ月未満:60mmHg

  • 1カ月から1歳未満:70mmHg

  • 1歳以上:70 + (2 × 年齢)

したがって,5歳児の低血圧は80(70 + 2 × 5)mmHg未満と定義される。非常に重要なことは,小児では強い代償機構(心拍数増加,体血管抵抗の増大)が働くため,血圧がより長く維持されるということである。一旦低血圧が起こると,続いてすぐに心肺停止が起こる可能性がある。ショックを代償している徴候(例,心拍数の増加,四肢冷感,毛細血管再充満時間 > 2秒,弱い末梢拍動)がある場合,低血圧が生じる前に治療を開始するよう,あらゆる努力を尽くすべきである。

器具および環境

器具のサイズ,薬剤の用量,およびCPRのパラメータは,患者の年齢および体重によって変わる(医療従事者のためのCPRの方法 医療従事者のためのCPRの方法 医療従事者のためのCPRの方法 乳児および小児の蘇生に用いる薬剤 乳児および小児の蘇生に用いる薬剤* 乳児および小児の蘇生に用いる薬剤* ,および 小児の蘇生のためのガイド 小児の蘇生のためのガイド―体重等に基づく 小児の蘇生のためのガイド―体重等に基づく の表を参照)。サイズが変化する器具には,除細動器のパドルまたは電極パッド,マスク,換気バッグ,エアウェイ,喉頭鏡ブレード,気管内チューブ,および吸引カテーテルなどがある。体重は推測するのではなく実際に測定すべきであるが,代替手段として,身長をもとに標準的な患者の体重を示す目盛りの付いた市販の測定テープを用いることができる。テープによっては,体重毎に推奨される薬剤用量および器具のサイズが印刷されたものもある。薬剤用量は端数を切り捨てるべきであり,例えば,2歳半の幼児には2歳児用の用量を投与する。

体温管理

乳児および小児は,体の体積に対して体表面積が大きく,皮下組織が少ないため,熱を失いやすい。CPRの施行中および蘇生後は,適度な体外温度環境を保つことが極めて重要である。深部体温が35℃未満になる低体温症があると,蘇生はより困難になる。

気道管理と換気

小児の上気道の解剖は成人と異なる。頭部が大きい一方,顔面,下顎,および外鼻孔は小さく,頸部は相対的に短い。舌は口と比較して大きく,喉頭は頸部の比較的高い位置にあり,より前方へ傾いている。喉頭蓋が長く,気管の最も細い部分が輪状軟骨部の声帯下にあるため,カフなしの気管内チューブを使用できる。比較的若年の小児では,喉頭がより前方にあって喉頭蓋はより柔らかく長いため,一般に,曲型ブレードよりも直型ブレードの喉頭鏡を用いた方が声帯をよく観察できる。

人工エアウェイを留置されていない乳児および小児に蘇生を行う際には,圧迫:換気比は救助者が1人の場合は30:2,救助者が2人以上いる場合は15:2とすることが推奨されている。これは,成人では救助者の数にかかわらず圧迫:換気比を30:2とすることと対照的である。

乳児,小児,成人で高度な気道確保器具が留置されている場合は,6秒毎(10回/分)に換気を行う。

除細動

心静止において,アトロピンおよびペーシングは用いない。

VFおよび無脈性VTは心停止の約15~20%にすぎない。バソプレシンの適応はない。除細動を行う場合のエネルギーの絶対量は成人よりも少なく,電気ショックの波形には二相性(望ましい)と単相性がある。いずれの波形を用いる場合でも,推奨されるエネルギー量は初回のショックでは2ジュール/kg,必要に応じて追加で試みる場合は4ジュール/kgまで徐々に増加させる(成人における除細動 除細動 【訳注:最新の情報については,2020 American Heart Association's guidelines for CPR and emergency cardiovascular careを,感染症を考慮した対応については,American Heart Association's COVID-19 Resuscitation Algorithmsを参照のこと。】心肺蘇生は... さらに読む を参照)。推奨されている最大エネルギーレベルは,10ジュール/kgもしくは成人での最大エネルギーレベル(二相性除細動器の場合は200ジュール,単相性除細動器の場合は360ジュール)である。

成人用ケーブル(パッド)の付いた自動体外式除細動器(AED)を1歳以上の小児に使用することもあるが,1~8歳児には小児用ケーブル(パッド)の付いたAED(最大で50ジュールの二相性ショック)を使用するのが望ましい。1歳未満の小児にAEDを使用することの是非については,いずれの主張もエビデンスが不十分である。パッドの使用については, 成人における除細動 除細動 【訳注:最新の情報については,2020 American Heart Association's guidelines for CPR and emergency cardiovascular careを,感染症を考慮した対応については,American Heart Association's COVID-19 Resuscitation Algorithmsを参照のこと。】心肺蘇生は... さらに読む を参照のこと。

治療に関する参考文献

乳児および小児における心肺蘇生についてのより詳細な情報

  • American Heart Association's guidelines for CPR and emergency cardiovascular care

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