遺伝性筋疾患に関する序論

執筆者:Michael Rubin, MDCM, New York Presbyterian Hospital-Cornell Medical Center
レビュー/改訂 2020年 7月
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筋ジストロフィーとは,筋肉が正常な構造と機能を維持するのに必要な遺伝子の1つまたは複数の異常を原因とする遺伝性かつ進行性の筋疾患であり,筋生検でジストロフィー変化(例,筋線維の壊死および再生)が認められる。筋ジストロフィーの病型では顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーが最も一般的であり,デュシェンヌ型筋ジストロフィーおよびベッカー型筋ジストロフィーが2番目に一般的である。デュシェンヌ型筋ジストロフィーはより重度の病型であり,ベッカー型筋ジストロフィーは,デュシェンヌ型と密接な関係があるものの,発症時期が遅く,症状もより軽度である。

その他の病型としては,エメリー-ドレイフス型筋ジストロフィー筋強直性ジストロフィー肢帯型筋ジストロフィー,眼咽頭型筋ジストロフィー,先天性筋ジストロフィーなどがある。

筋ジストロフィーは,筋力低下の選択的分布および関与する遺伝子異常の特異的性質によって区別される。

他の遺伝性筋疾患としては,先天性ミオパチー先天性ミオトニー家族性周期性四肢麻痺などがある。

ミトコンドリア酸化的リン酸化障害糖原病などの,筋肉を侵す遺伝性代謝疾患は,本マニュアルの別の箇所で考察されている。筋肉に対する影響が全てまたはほとんどである疾患のみを本章で考察する。

先天性筋ジストロフィー

先天性筋ジストロフィーとは,出生時またはその直後から症状が明らかに現れるまれな疾患群を指す。本疾患群は遺伝学的に劣性で,筋緊張低下を呈し,ときに「floppy baby」と呼ばれる。診断は,臨床像,筋生検,ならびに筋タンパク質および遺伝子異常を評価する血液検査に基づく。根治可能な治療法はなく,治療の焦点は機能の維持と最適化に置かれる。

先天性筋ジストロフィーは,単一の疾患ではなく,出生時または乳児期から顕在する筋ジストロフィーを指し,いくつかある筋ジストロフィーのまれな病型のいずれかから発生する。そのようなジストロフィーは全て遺伝学的に劣性であり,骨格筋線維の基底膜または細胞外基質の構造タンパク質をコードする遺伝子など,様々な遺伝子の変異により発生する。

先天性筋ジストロフィーの診断は筋緊張低下を有する全ての新生児で疑われるが,筋生検で先天性ミオパチーと鑑別する必要がある。正確な診断に到達するために,典型的には,筋タンパク質を評価する血液検査,筋肉の超音波検査およびMRI,ならびに可能であれば遺伝子検査を行う。

先天性筋ジストロフィーに特異的な治療法はない。必要に応じて整形外科的,循環器科的,呼吸器科的,栄養学的,および社会的側面の問題に適切な専門家が対応することができ,理学療法を含めた支持療法が機能の維持に役立つ。

より詳細な情報

以下の英語の資料が有用であろう。ただし,本マニュアルはこれらの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

  1. Muscular Dystrophy Association: Information on research, treatment, technology, and support for patients living with a muscular dystrophy

  2. Muscular Dystrophy News Today: A news and information web site about muscular dystrophy

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