(消化器系の先天異常の概要 消化器系の先天異常の概要 大半の先天性消化管異常は,何らかの腸閉塞を引き起こし,出生時または生後1~2日までに哺乳困難,腹部膨隆,および嘔吐で発症することが多い。 回転異常など転帰が非常に良好な先天性消化管奇形もある一方,死亡率が10~30%と比較的高い先天性 横隔膜ヘルニアなど,転帰が不良な消化管奇形もある。... さらに読む も参照のこと。)
臍帯ヘルニアでは脱出した内臓は薄い膜で覆われ,その嚢は小さい場合(腸係蹄数個のみ)もあれば,腹部内臓のほとんど(腸管,胃,肝臓)を含んでいる場合もある。差し迫った危険として,内臓の乾燥,露出した内臓からの水分蒸発による低体温と脱水,腹膜表面からの感染がある。推定発生率は出生3000~5000人当たり1例である。臍帯ヘルニアの乳児では他の先天奇形の発生率が非常に高く(最高70%),具体的には以下が挙げられる:
腸閉鎖
染色体異常症 染色体異常症の概要 染色体異常は様々な疾患の原因となる。性染色体(XおよびY染色体)の異常よりも常染色体(男女とも22対ある相同な染色体)の異常の方が多くみられる。 染色体異常はいくつかのカテゴリーに分けられるが,大きく数的異常と構造異常に分けて考えることができる。 数的異常としては以下のものがある:... さらに読む (例, ダウン症候群 ダウン症候群(21トリソミー) ダウン症候群は21番染色体の異常であり, 知的障害,小頭症,低身長,および特徴的顔貌を引き起こす。診断は身体奇形と発達異常から示唆され,細胞遺伝学的検査によって確定される。管理方針は具体的な臨床像および奇形に応じて異なる。 ( 染色体異常症の概要も参照のこと。) 出生児における全体の発生率は約1/700であり,母体年齢が上がるにつれてリスクが徐々に増大する。母体年齢別の出生児におけるリスクは,20歳で1/2000,35歳で1/365,4... さらに読む )
心奇形 心血管系の先天異常の概要 先天性心疾患は,最も頻度の高い先天奇形であり,出生児の1%近くに発生する( 1)。先天異常のうち,先天性心疾患は乳児期死亡の主要な原因である。 乳児期に診断される最も頻度の高い先天性心疾患は,筋性部および膜性部 心室中隔欠損症であり,それに二次孔型 心房中隔欠損症が続き,これらを合わせた有病率は出生10... さらに読む および 腎奇形 泌尿生殖器系の先天異常の概要 泌尿生殖器における解剖学的先天異常は,臓器系先天異常のなかで最も頻度の高いものである。 尿路奇形は, 尿路感染症や 閉塞,尿うっ滞, 結石形成,腎機能障害など多くの合併症の素因となる。ここでは次のような先天性の尿路奇形を考察する: 膀胱異常 プルーンベリー症候群 腎奇形 さらに読む
臍帯ヘルニアはルーチンの出生前超音波検査で検出可能であり,本症を有する胎児の分娩は,本疾患および他の合併奇形の対処に精通した医師が三次医療施設で行うべきである。
分娩時には,湿潤した無菌の非固着性ドレッシング材(例,医療用ワセリンガーゼ,その上をプラスチックのラップで覆ってもよい)で露出した内臓を直ちに覆い,無菌状態の保持と水分蒸発の防止を図る。続いて輸液と広域抗菌薬(例,アンピシリン,ゲンタマイシン)を投与すべきであり,経鼻胃管を留置すべきである。露出した内臓から体液が過剰に喪失されるため,典型的には正常かつ健康な新生児に必要とされる量より有意に多い輸液量(1.5~2倍)が必要になる。
臍帯ヘルニアの外科的修復に進む前に合併奇形の評価を行う。可能であれば一次閉鎖を行う。大きな臍帯ヘルニアでは,腹腔に内臓を収容するだけの容積が不足する場合がある。その場合は,臓器をシリコンポリマー製のシートで袋状またはサイロ状に包み,腹腔容積が徐々に増大するのに合わせて数日かけて段階的に小さくしていき,最終的には全ての内臓を腹腔内に収納する。