腹壁破裂

執筆者:William J. Cochran, MD, Geisinger Clinic
レビュー/改訂 2019年 8月
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    腹壁破裂は,腹壁全層の欠損部から腹部内臓が脱出した状態であり,通常は臍帯付着部の右側に発生する。

    消化器系の先天異常の概要も参照のこと。)

    推定発生率は出生2500人当たり1例である(臍基部の正中部欠損孔から腹部内臓が脱出する臍帯ヘルニアより多い)。腹壁破裂では,臍帯ヘルニアとは異なり腸管が膜で覆われておらず,腸管は著明な浮腫および発赤を呈し,しばしばフィブリンのマットに包まれる。これらの所見は,腸管が羊水に直接曝露していたために長期にわたり炎症が起こっていたこと(すなわち化学性腹膜炎)を示すものである。腹壁破裂のある乳児では,腸回転異常症を除いて他の先天奇形の合併頻度は低い(10%)。

    腹壁破裂は,出生前にルーチンの血液検査でα-フェトプロテインの異常高値から疑い,出生前超音波検査で検出することが可能であり,確認された場合は三次医療施設で分娩を行うべきである。

    分娩時には,湿潤した無菌の非固着性ドレッシング材(例,医療用ワセリンガーゼ,その上をプラスチックのラップで覆ってもよい)で露出した内臓を直ちに覆い,無菌状態の保持と水分蒸発の防止を図る。続いて輸液と広域抗菌薬(例,アンピシリン,ゲンタマイシン)を投与すべきであり,経鼻胃管を留置すべきである。露出した内臓から体液が過剰に喪失されるため,典型的には正常かつ健康な新生児に必要とされる量より有意に多い輸液量(1.5~2倍)が必要になる。

    外科的修復に進む前に合併奇形の評価を行う。可能であれば一次閉鎖を行う。露出した腸管の量が多い場合は,腹腔に内臓を収容するだけの容積が不足する場合がある。その場合は,臓器をシリコンポリマー製のシートで袋状またはサイロ状に包み,腹腔容積が徐々に増大するのに合わせて数日かけて段階的に小さくしていき,最終的には全ての内臓を腹腔内に収納する。

    数週間で消化管機能が回復して経口摂取が可能になることが多いが,ときに腸管運動の異常による問題が長期的に残ることもある。

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