18トリソミー

(エドワーズ症候群;Eトリソミー)

執筆者:Nina N. Powell-Hamilton, MD, Sidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University
レビュー/改訂 2020年 6月
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18トリソミーは,過剰な18番染色体によって引き起こされる病態で,通常は知的障害と出生時低身長のほか,重度の小頭症,心奇形,後頭部突出,変形を伴う耳介低位,やつれたような特徴的顔貌などの様々な先天奇形で構成される。出生前診断は細胞遺伝学的検査による;出生後診断は末梢血検査による。治療は対症療法である。

染色体異常症の概要も参照のこと。)

18トリソミーは出生6000人当たり1例の頻度で発生するが,自然流産となることが多い。95%以上の患児が完全な18トリソミーである。過剰染色体はほぼ全例で母親由来であり,母体年齢が高くなるにつれてリスクが増大する。男女比は1:3である。

症状と徴候

出生前の病歴として胎動微弱,羊水過多,胎盤矮小,および単一臍動脈が認められる。出生前および出生時の体格が在胎期間に対して著明に小さく,筋緊張低下と骨格筋および皮下脂肪組織の著明な低形成を伴う。啼泣が微弱で,音に対する反応も弱い。眼窩上隆起が低形成で,眼瞼裂が短く,口と顎が小さく,これらの特徴が相まって,やつれたような顔貌を呈する。小頭症,後頭部突出,変形を伴う耳介低位,狭骨盤,および胸骨短小がよくみられる。

示指の第3指および第4指への重なりを伴う手の握りがしばしば認められる。しばしば第5指遠位屈曲線の欠如がみられる。余剰な皮膚の襞がよくみられる(特に頸部背面)。爪は低形成で,第1趾が短縮して,しばしば背屈している。内反足と揺り椅子状足底がよくみられる。また重度の先天性心疾患,特に動脈管開存症心室中隔欠損症がよくみられる。肺,横隔膜,消化管,腹壁,腎臓,および尿管でも奇形の発生率が高い。男児では停留精巣がみられることがある。頻度の高い筋の異常として,腹直筋ヘルニア,腹直筋離開,その両方などがある。

18トリソミーの身体的特徴
揺り椅子状足底(先天性垂直距骨)
揺り椅子状足底(先天性垂直距骨)
突出した踵骨および弯曲した足底の画像。

© Springer Science+Business Media

揺り椅子状足底
揺り椅子状足底
この写真には,18トリソミーの乳児の足が写っている。突出した踵骨を伴う揺り椅子状足底に注目すること。

Image courtesy of Nina Powell-Hamilton, MD, FAAP, FACMG.

多指症を伴う手の握り
多指症を伴う手の握り
この写真には,18トリソミー患児の手が写っている。手の握りと軸後性多指症に注目すること。

Image courtesy of Nina Powell-Hamilton, MD, FAAP, FACMG.

18トリソミーの耳介低位および手の握り
18トリソミーの耳介低位および手の握り

Image courtesy of the Centers for Disease Control and Prevention Public Health Image Library.

18トリソミーの揺り椅子状足底
18トリソミーの揺り椅子状足底

Image courtesy of the Centers for Disease Control and Prevention Public Health Image Library.

18トリソミーの手の握り
18トリソミーの手の握り

Image courtesy of the Centers for Disease Control and Prevention Public Health Image Library.

診断

  • 出生前の絨毛採取および/または羊水穿刺で採取した検体を用いた核型分析,蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH),および/または染色体マイクロアレイ解析(CMA)による細胞遺伝学的検査

次世代シークエンシング技術も参照のこと。)

出生後は外観から,出生前は超音波検査(例,四肢の異常および胎児発育不全),または母体血液検体による複数のマーカースクリーニングもしくはセルフリー胎児DNAの配列決定による非侵襲的出生前スクリーニング(NIPS)から診断として18トリソミーが疑われることがある。18トリソミーに対する非侵襲的出生前スクリーニングの感度および特異度は,21トリソミーに比べて低い。

確定診断は,出生前に羊水穿刺または絨毛採取で採取した検体の細胞遺伝学的検査(核型分析,FISH解析,および/または染色体マイクロアレイ解析)によって行うか,妊娠中に追加検査を希望しなかった女性では出生後に末梢血検査によって行う。絨毛採取によって18トリソミーが検出された場合,異数性が胎盤にはあるが胎児には検出できない,胎盤限局性モザイクをトリソミーが示している可能性があるため,羊水穿刺または出生後検査のいずれかによる精査が必要なことがある。

非侵襲的出生前スクリーニング(NIPS)に基づく疑い例,特にその結果が不確定ないし不明瞭な症例,非侵襲的出生前スクリーニングの陽性適中率が低い若年女性には確定診断検査を行い,また他の胎児染色体異常を診断することを目的として確定診断検査を行う。妊娠中絶などの管理に関する決定は,非侵襲的出生前スクリーニングの結果のみに基づいて行うべきではない。セルフリー胎児DNA検査に関しては,American College of Obstetricians and Gynecologists Committee on Genetics and the Society for Maternal–Fetal Medicine practice bulletinも参照のこと。

治療

  • 支持療法

18トリソミーの特異的な治療法はない。患児の半数以上は生後1週間以内に死亡し,生後最初の1年を生き延びられるのは5~10%に過ぎない。生存した場合も著明な発達遅滞と機能障害がみられる。家族に対する支援が極めて重要である。

最近では18トリソミー患児の生存期間が延長しており,これにより実質臓器腫瘍(例,肝芽腫ウィルムス腫瘍)のリスク上昇が認識されるようになった。腫瘍のサーベイランスが推奨される。詳細については議論があるものの,以下のプロトコルが提唱されている(1):

  • ベースライン時点および4歳まで3カ月毎にα-フェトプロテイン(AFP)値(肝芽腫に対して)

  • 4歳まで3カ月毎に腹部超音波検査(肝芽腫およびウィルムス腫瘍に対して)

  • 4歳から少なくとも7歳まで3カ月毎に腎超音波検査(ウィルムス腫瘍に対して)

治療に関する参考文献

  1. 1.Farmakis SG, Barnes AM, Carey JC, Braddock SR: Solid tumor screening recommendations in trisomy 18.Am J Med Genet A 179(3):455–466, 2019.doi: 10.1002/ajmg.a.61029.

より詳細な情報

以下の英語の資料が有用であろう。ただし,本マニュアルはこの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

  1. American College of Obstetricians and Gynecologists Committee on Genetics and the Society for Maternal-Fetal Medicine Publications Committee: Practice bulletin on screening for fetal aneuploidy

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