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網膜芽細胞腫

執筆者:

Renee Gresh

, DO, Nemours A.I. duPont Hospital for Children

レビュー/改訂 2019年 7月
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網膜芽細胞腫は,未熟な網膜から発生するがんである。症状および徴候には,白色瞳孔(瞳孔の白色反射)や斜視のほか,頻度は下がるが炎症や視覚障害などもある。診断は検眼鏡検査,および超音波検査,CTまたはMRIに基づく。小さながんまたは両眼性の場合の治療には,光凝固術,凍結療法,放射線療法がある。進行がんおよび一部の比較的大きいがんでは眼球摘出術を行う。がんの体積を減少させるため,また眼球外に進展したがんの治療のために,ときに化学療法が用いられる。

網膜芽細胞腫は出生15,000~30,000人当たり1例の頻度で発生し, 小児がん 小児がんの概要 全体として,小児がんは比較的まれであり,0~14歳の小児における年間発生例数は13,500例未満,年間死亡例数は約1500例である。それに比べて成人では,年間発生例数は140万例,年間死亡例数は575,000例である。しかし,小児ではがんは外傷に次ぐ2番目の死因である。 小児期のがんには成人に発生するものも多く含まれる。... さらに読む の約3%を占める。通常は2歳未満の小児で診断され,5歳以上の小児で診断される症例は全体の5%未満である。このがんは遺伝性の場合があり,遺伝形式は主に 常染色体優性 常染色体優性 単一の遺伝子によって規定される遺伝性疾患(メンデル遺伝病)は,最も解析が容易で,最も詳細に解明されている。形質の発現に1コピーの遺伝子(1つのアレル)のみを必要とする場合,その形質は優性とみなされる。形質の発現に2コピーの遺伝子(2つのアレル)を必要とする場合,その形質は劣性とみなされる。例外の1つはX連鎖疾患である。男性では通常,X染色体のほとんどのアレルに対して影響を相殺する対のアレルが存在しないため,X染色体のアレルは形質が劣性で... さらに読む であるが,不完全浸透がみられる(疾患の原因変異がある個人でも常に臨床症状が認められるわけではない)。約25%の患者は両眼性であり,この場合は例外なく遺伝性である。15%は遺伝性かつ片眼性であり,残り60%は非遺伝性で片眼性である。

遺伝の機序には,染色体13q14に位置する網膜芽細胞腫抑制遺伝子(RB1)の両アレルでの変異による不活化が関与しているものと考えられる。遺伝性の型では,まず生殖細胞系列変異により全細胞の一方のアレルが変化しており,その後の体細胞変異により児の網膜細胞のもう一方のアレルに変化が生じる(2-ヒットモデルにおけるセカンドヒット)ことにより,結果としてがんが発生する。非遺伝性の型では,おそらく1つの網膜細胞内の両アレルの体細胞変異が関与する。

症状と徴候

まれではあるが,視神経もしくは脈絡膜経由または血行性にすでにがんが広がっている場合には,眼窩もしくは軟部組織の腫瘤,局所骨痛,頭痛,食欲不振,または嘔吐を来す。

本症が疑われる場合,十分に散瞳させ,全身麻酔下で倒像眼底検査による両眼底の精密検査を行う必要がある。がんは網膜内の単一または複数の灰色から白色の隆起として観察され,硝子体内にがんの播種が確認されることもある。

診断

  • 眼窩の超音波検査,CT,またはMRI

  • ときに骨シンチグラフィー,骨髄穿刺と骨髄生検,および腰椎穿刺

網膜芽細胞腫の診断は通常,眼窩の超音波検査,MRIまたはCTにより確定される。ほぼ全てのがんにおいて,CTにより石灰化が検出される。ただし,眼底検査の際に視神経に異常がみられる場合は,視神経または脈絡膜へのがんの進展を発見するためMRIを施行した方がよい。

視神経への進展が疑われる場合,または広範な脈絡膜浸潤が認められる場合は,転移の評価のために腰椎穿刺および脳MRIを施行すべきである。遠隔転移はまれなため,骨髄評価および骨シンチグラフィーは骨症状のある患児のみに行うことができる。

親または同胞が網膜芽細胞腫の病歴を有する場合には,出生直後およびその後4歳まで4カ月毎に眼科医による評価を行うべきである。網膜芽細胞腫の患児には分子遺伝学的検査が必要であり,生殖細胞系列変異が同定された場合には,親にも同じ変異の存在を調べる検査を行うべきである。その後に生まれた児に生殖細胞系列変異が認められた場合は,同じ遺伝学的検査と定期的な眼科診察が必要である。組換え型DNAプローブが,無症候性保因者の検出に有用な場合がある。

予後

がんが眼内に限局しているうちに治療を行えば,90%以上の患者が治癒可能である。転移例の予後は不良である。

遺伝性網膜芽細胞腫の患児は,二次がんの発生率が高く,約50%は放射線の照射部位に発生する。そのようながんには,肉腫および悪性黒色腫などがある。二次がんが発生する患者のうち約70%では,そのがんは最初の網膜芽細胞腫から30年以内に生じる。

治療

  • 片眼性の場合,眼球摘出

  • 両眼性の場合,光凝固術,動注化学療法,または片眼の摘出および対眼への光凝固術,凍結療法,放射線照射

  • 全身化学療法

網膜芽細胞腫の治療目標は治癒に設定すべきであるが,可能な限り視力を温存する試みが適切となる。治療チームには網膜芽細胞腫の専門知識を持つ小児眼科医,小児腫瘍医,放射線腫瘍医を含めるべきである。

片眼性の進行網膜芽細胞腫では,可能な限り多くの視神経を除去しながら摘出する治療が施行される。

両眼性の患者では通常,視力温存が可能である。選択肢として,両眼の光凝固術,動注化学療法,または片眼の摘出および対眼への光凝固術,凍結療法,放射線照射がある。放射線療法は,外照射によるか,または極めて小さながんには密封小線源治療(がん近傍の眼球壁上に放射性プラークを装着する)による。

カルボプラチン,エトポシド,ビンクリスチン,シクロホスファミド + ビンクリスチンなどの全身化学療法は,他の追加治療(例,凍結療法,レーザー温熱療法)が行えるようになるまで腫瘍を縮小させるとき,両眼性の腫瘍を治療するとき,または眼球外に播種したがんを治療するときに,役立つ可能性がある。しかしながら,本疾患が化学療法単独で治癒することはほとんどない。

両眼の眼科的再検査および再治療がもし必要であれば,2~4カ月間隔で行う必要がある。

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