小児および青年における全般不安症

執筆者:Josephine Elia, MD, Sidney Kimmel Medical College of Thomas Jefferson University
レビュー/改訂 2019年 5月
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全般不安症は,過剰な心配,恐怖,または脅威を特徴とする高度な不安および憂慮が長く持続する状態である。身体症状として,振戦,発汗,複数の身体的愁訴,疲弊などが生じうる。診断は病歴に基づいて行う。治療はしばしばリラクゼーション療法により,ときに薬物療法が併用される。

小児および青年における不安症の概要ならびに成人における全般不安症も参照のこと。)

症状と徴候

全般不安症の小児には複数かつ広範な心配がみられ,心配はストレスにより増悪する。このような小児は,しばしば注意を払うことに困難があり,多動で落ち着きがないことがある。睡眠の問題,過度の発汗,疲労感,身体的な不快感(例,胃痛,筋肉痛,頭痛)もみられることがある。

診断

  • 臨床基準

全般不安症は,社交不安症パニック症などの特異的障害の診断基準を満たすほどには症状が集中していないものの,機能障害を来す著明な不安症状がみられる小児および青年において診断される。また,分離不安などの特異的な不安症が存在し,さらにその特異的な不安症の範囲を越えた有意な不安症状を有する小児においても,全般不安症が適切な診断となる。

具体的な基準としては,患者が制御することが難しい過度の不安および心配が6カ月以上にわたり半分以上の日数で認められることが挙げられる。この症状によって,社会的にまたは学校で有意な苦悩または機能障害が引き起こされ,以下のうち1つ以上を伴っていることが必要である:

  • 不穏,緊張感,または感情の高ぶり

  • 易疲労性

  • 集中困難

  • 易怒性

  • 筋肉の緊張

  • 睡眠障害

全般不安症は注意困難を引き起こし,精神運動焦燥(すなわち多動性)を来しうることから,ときに注意欠如・多動症(ADHD)と混同される。しかしADHDでは,不安を感じていない状況でも集中が困難で,落ち着きがない。ADHDと不安症の両方がみられる小児もいる。

治療

  • リラクゼーション療法

  • ときに抗不安薬,通常は選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)

症状が定まらないという性質から,行動療法による全般不安症の治療は特に困難となる。しばしばリラクゼーション訓練が適切となる。

重度の全般不安症患児または精神療法による介入に反応しない患児には,抗不安薬が必要になることがある。他の不安症と同様に,典型例ではSSRI(不安症および関連症群の長期治療に使用される薬剤の表を参照)が第1選択の薬剤である。SSRIに耐えられない小児には,ときにブスピロンが使用されるが,その効果は大幅に劣る。ブスピロンの開始量は5mg,経口,1日2回であり,患者が耐えられれば30mg,1日2回(または20mg,1日3回)まで徐々に増量してもよい。消化管の不快感または頭痛が用量漸増の制約因子となることがある。

要点

  • 全般不安症の小児には,単一の限局的不安ではなく,複数の広範な不安がみられる。

  • 症状が小児に重大な苦痛を引き起こしているか,社会的機能または学業成績を損なう原因となっており,かつ小児に1つ以上の特定の症状(例,落ち着きのなさ,緊張感,または感情の高ぶり)がみられる場合に全般不安症の診断が下される。

  • リラクゼーション療法が有用な場合がある;不安が重度であるか,または精神療法による介入に反応しない患児には,抗不安薬(SSRIが好ましい)を考慮する。

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