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ライ症候群

(ライ症候群)

執筆者:

Christopher P. Raab

, MD, Sidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University

レビュー/改訂 2019年 5月
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ライ症候群は,ある種の急性ウイルス感染に続発する傾向のある(特にサリチル酸系薬剤が使用された場合に多い),急性脳症と肝臓の脂肪浸潤のまれな病型である。診断は臨床的に行う。治療は支持療法による。

ライ症候群の原因は不明であるが,症例の多くは A型もしくはB型インフルエンザ インフルエンザ インフルエンザは,発熱,鼻感冒,咳嗽,頭痛,および倦怠感を引き起こす ウイルス性呼吸器感染症である。季節的な流行の際には特に高リスク患者(例,施設入所者,低年齢児と高齢者,心肺機能不全患者,または妊娠後期の妊婦)の間で死亡も起こりうる;パンデミックの間は,健康な若年患者でさえ死に至る可能性がある。診断は通常,臨床的に,また地域の疫学的パターンに基づいて行う。インフルエンザワクチンは禁忌のない6カ月以上の全ての人に毎年接種すべきである。抗... さらに読む または 水痘 水痘 水痘は,通常は小児期にみられる急性の全身感染症であり,水痘帯状疱疹ウイルス(ヒトヘルペスウイルス3型)によって引き起こされる。通常は軽度の全身症状から始まり,その後すぐに斑状疹,丘疹,小水疱,および痂皮を特徴とする皮膚病変が群発して現れる。重度の神経系またはその他の全身性合併症(例,肺炎)のリスクのある患者は,成人,新生児,および易感染性患者,または特定の基礎疾患を有する患者などである。診断は臨床的に行う。重症合併症のリスクのある患者は... さらに読む 水痘 の感染に続発するようである。これらの疾病治療中にサリチル酸系薬剤(一般的にアスピリン)を使用した場合,発生リスクが35倍に上昇する。この知見により,米国では1980年代中頃以来,サリチル酸系薬剤の使用が著しく減少しており(川崎病 川崎病 川崎病は 血管炎の1つであり,乳児および1~8歳の小児に発生しやすく,ときに冠動脈を侵す。遷延する発熱,発疹,結膜炎,粘膜炎症,リンパ節腫脹を特徴とする。冠動脈瘤が発生し,破裂する,あるいは心筋梗塞を引き起こす可能性がある。診断は臨床基準により行われ,本疾患と診断されれば,心エコー検査が行われる。治療はアスピリンと免疫グロブリン静注療法である。冠動脈血栓には,線溶療法または経皮的インターベンションが必要となることがある。... さらに読む 川崎病 においてなど,特に適応の場合を除く),これに対応してライ症候群の発生率も,年間数百例あった症例が約2例にまで減少している。本症候群は,ほぼ例外なく18歳未満の小児に発生する。米国では,ほとんどの症例が晩秋および冬季に発生している。

ライ症候群の概要
動画

症状と徴候

この疾患の重症度には大きな幅があるが,特徴的な二相性を示す。初期のウイルス性の症状(上気道感染またはときに水痘)に続き,5~7日で制御不能な悪心および嘔吐,そして精神状態の突然の変化が生じる。精神状態の変化は軽度の健忘,脱力,視覚と聴覚の変化,嗜眠から見当識障害および興奮の間欠的発現まで多様であり,以下のような形で現れる深い昏睡へと急速に進展しうる:

  • 進行性の無反応

  • 除皮質硬直および除脳硬直

  • 痙攣発作

  • 筋弛緩

  • 瞳孔の散大固定

  • 呼吸停止

神経学的な巣症状は通常は現れない。肝腫大は症例の約40%にみられるが,黄疸はみられない。

ライ症候群の合併症

合併症としては以下のものがある:

診断

  • 臨床検査と関連のみられる臨床所見

  • 肝生検

脳症が急性に発症し(既知の重金属や毒物曝露を除外する)肝機能障害に関連する制御不能な嘔吐を呈する小児では,ライ症候群を疑うべきである。肝生検により確定診断が可能であり(小滴性脂肪変性を認めることによる),特に散発例や2歳未満の小児において有用である。典型的な臨床所見や病歴が次のような検査所見と関連する場合にも診断が下される:肝臓のトランスアミナーゼ上昇(AST,ALTが正常値の3倍を超える),ビリルビン正常,血中アンモニア濃度上昇,プロトロンビン時間延長などである。

頭部CTまたはMRIを脳症の患児全例で行う。頭部CTまたはMRIが正常の場合, 腰椎穿刺 腰椎穿刺 腰椎穿刺は以下を目的として行われる: 頭蓋内圧と髄液組成を評価する( 様々な疾患における髄液異常の表を参照)。 治療として頭蓋内圧を低下させる(例, 特発性頭蓋内圧亢進症) 髄腔内に薬剤または 脊髄造影用の造影剤を投与する 相対的禁忌として以下のものがある: さらに読む を行うことができる。髄液所見は一般に圧の上昇を示し,白血球8~10/μL未満,タンパク質値正常である;髄液グルタミン値が上昇することがある。症例の15%,特に4歳未満の小児では低血糖および髄液の糖濃度低下が起こるが,その場合は代謝性疾患のスクリーニング検査を実施すべきである。状態は重症度に応じてI~V度に分けられる。

代謝障害の徴候には,血清アミノ酸値の上昇,酸塩基平衡障害(通常は呼吸性アルカローシスと代謝性アシドーシスの混合した過換気),浸透圧変化,高ナトリウム血症,低カリウム血症,低リン血症などがある。

鑑別診断

昏睡および肝機能障害の鑑別診断として,以下のものが挙げられる:

急性妊娠性脂肪肝やテトラサイクリンによる肝毒性などの疾病は,光学顕微鏡上,類似の所見を示すことがある。

予後

転帰は脳機能障害の期間,昏睡の重症度と進行の速さ,頭蓋内圧亢進の重症度,血中アンモニア濃度上昇の程度に関連する。血中アンモニアの初期濃度が100μg/dL(60μmol/L)を超え,プロトロンビン時間が対照と比較して3秒以上延長する場合に,I度からより重症の段階への進展が起こる可能性が高い。死亡例では入院から死亡まで平均4日である。致死率の平均は21%であるが,I度の患児においては2%未満であり,IV度またはV度の患児では80%を超える。

生存者の予後は通常良好であり,再発はまれである。しかしながら,神経学的後遺症(例,知的障害,痙攣性疾患,脳神経麻痺,運動機能障害)の発生率は,罹病期間中,痙攣や除脳硬直を起こした生存患児では30%と高い。

治療

  • 支持療法

ライ症候群の治療は支持療法であり,グリコーゲンの減少が一般的であることから,特に頭蓋内圧のコントロールと血糖値に注意を払う。

頭蓋内圧亢進の治療には,挿管,過換気,1500mL/m2/日の水分制限,ベッドの頭側の挙上,浸透圧利尿薬,頭蓋内圧直接モニタリング,開頭減圧術がある。正常血糖を維持するには,10~15%ブドウ糖の注入が一般的である。凝固障害には新鮮凍結血漿またはビタミンKが必要になる。他の治療法(例,交換輸血,血液透析,バルビツール酸系薬剤を用いた深昏睡への導入)は,効果的との証明はなされていないが,ときに使用される。

要点

  • ライ症候群とは急性脳症および肝機能障害が典型的にはウイルス感染後(特にサリチル酸併用時)に起こるものであるが,小児でのルーチンのアスピリン使用が減少しているためまれとなっている。

  • 診断は,同様の発現を示す感染症,中毒,および代謝性疾患の除外により行う;肝生検が診断確定に役立つ。

  • 治療は,特に亢進した頭蓋内圧を低下させる方法を用い支持的に行う。

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