リウマチ熱

執筆者:Geoffrey A. Weinberg, MD, Golisano Children’s Hospital
レビュー/改訂 2020年 3月
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リウマチ熱は,A群レンサ球菌咽頭感染症の合併症として発生する急性の非化膿性炎症であり,関節炎,心炎,皮下結節,輪状紅斑,舞踏運動などを引き起こす。診断は,病歴,診察,および臨床検査から得た情報に対する,改変Jones診断基準の適用に基づく。治療には,アスピリンまたはその他の非ステロイド系抗炎症薬の投与,重症心炎発生時のコルチコステロイド投与,残存するレンサ球菌の根絶と再感染防止のための抗菌薬投与が含まれる。

急性リウマチ熱(ARF)の最初のエピソードはいずれの年齢でも起こりうるが,5歳から15歳の間が最も多く,この年齢はレンサ球菌咽頭炎の発症のピークである。ARFは3歳未満と21歳以降ではまれである。しかしながら,先行する症候性の咽頭炎がみられるのはARF患者の約3分の2に過ぎない。

全世界での発生率は19/100,000(範囲,5~51/100,000)であり,北米および西欧で最も低く(< 10/100,000),東欧,中東,アジア,アフリカ,オーストラリア,およびニュージーランドで最も高い(> 10/100,000)。発病率(無治療のA群レンサ球菌咽頭炎の患者のうちARFを発症する患者の割合)は,1.0%未満から3.0%とばらつきがある。レンサ球菌のMタンパク質の血清型が特定のものである場合,および宿主の免疫反応が強い場合に発病率がより高い(まだ特定されていない遺伝子の性格によると考えられる)。

ARFの既往がある患者では,無治療のA群レンサ球菌咽頭炎におけるARFの再発率が50%近くに達しており,レンサ球菌に対する長期の感染予防が重要であることが分かる。発生率はほとんどの先進国で減少しているが,世界の発展途上地域では依然として高く,特にアラスカ先住民,カナダのイヌイット,アメリカ先住民,オーストラリアのアボリジニ,ニュージーランドのマオリなどの先住民族では50~250/100,000という高率である。しかし,米国でARFの局地的なアウトブレイクが持続していることから,よりリウマチ原性(rheumatogenic)の高いレンサ球菌の菌株が米国になお存在することが示唆される。

慢性リウマチ性心疾患については,診断基準が標準化されておらず,剖検もルーチンに行われていないため,その有病率は不明であるが,推定によると世界で3300万人以上のリウマチ性心疾患の患者がおり,年間約30万人が死亡しているとされている(1)。

パール&ピットフォール

  • リウマチ熱の既往がある患者は,A群レンサ球菌咽頭炎に再度かかり無治療で放置した場合,約50%の確率でリウマチ熱が再発する。

総論の参考文献

  1. 1.Watkins DA, Johnson CO, Colquhoun SM, et al: Global, regional, and national burden of rheumatic heart disease, 1990–2015.N Engl J Med 377:713–722, 2017.doi: 10.1056/NEJMoa1603693.

病態生理

A群レンサ球菌(GAS)咽頭炎が急性リウマチ熱の先行する病因であるが,宿主側の因子および環境因子も重要である。GASのMタンパク質は滑膜,心筋,心臓弁にみられるタンパク質と共通のエピトープ(抗体に認識される抗原決定基となる部分)を有し,このことはリウマチ原性(rheumatogenic)の高い株のGAS抗原による分子擬態(molecular mimicry)が関節炎,心炎,および弁損傷に寄与していることを示唆している。宿主の遺伝的危険因子には,D8/17 B細胞抗原と特定の組織適合性抗原クラスIIなどがある。低栄養,過密環境,社会経済的地位の低さが,レンサ球菌感染とその後のリウマチ熱発症の素因となる。

注目すべきは,GASによる咽頭感染症もその他の部位(皮膚や軟部組織,骨や関節,肺,および血流)の感染症も溶連菌感染後糸球体腎炎を引き起こすことがあるにもかかわらず,咽頭炎以外のGAS感染症からARFに至ることはない,ということである。同じ病原体による感染症から生じた合併症であるにもかかわらず,このような明らかな違いがある理由はよくわかっていない。

関節,心臓,皮膚,中枢神経系が最も多く侵される。病理は部位により異なる。

関節

関節病変は,非特異的な滑膜の炎症像として現れ,これを生検すると,ときにAschoff小体に似た小病巣(白血球,筋細胞,および間質コラーゲンの肉芽腫性集積)がみられる。しかしながら,心臓の所見とは異なり,関節の異常は慢性化せず,瘢痕や後遺症を残さない(「ARF licks the joints but bites the heart(ARFは関節を舐め,心臓に噛みつく)」と表現される)。

心臓

心臓病変は心炎として現れ,典型的には内側から外側へ拡がる(すなわち,弁および心内膜の後に心筋,最後に心膜へ拡がる)。ときに,数年から数十年後に慢性リウマチ性心疾患が発生し,主として弁狭窄の症候が現れるが,ときに逆流,不整脈,心室機能障害の症候が現れる場合もある。

急性リウマチ熱では,Aschoff小体が心筋や心臓のその他の部位にしばしば発現する。非特異的な線維性心膜炎が,ときとして心嚢液滲出を伴い,心内膜炎の患者のみでみられ,通常は永続的な障害を残すことなく沈静化する。潜在的危険性をはらむ特徴的な弁の変化が生じる場合がある。急性の間質性弁膜炎により弁の浮腫が生じる場合がある。

慢性リウマチ性心疾患では,弁の肥厚,癒合,弁尖の退縮やその他の破壊が起こり,狭窄や閉鎖不全が生じる。同様に,腱索の短縮,肥厚,癒合が生じ,損傷した弁で逆流が悪化したり,損傷のない弁で新たに逆流が発生したりすることがある。弁輪の拡大が逆流の原因になることもある。

リウマチ性弁膜症は僧帽弁と大動脈弁に好発する。三尖弁および肺動脈弁は仮に侵されることがあるとしても,単独で侵されることはまれである。

急性リウマチ熱で最もよくみられる心臓の病態は以下のものである:

  • 僧帽弁逆流症

  • 心膜炎

  • ときに大動脈弁逆流症

慢性リウマチ性心疾患で最もよくみられる心臓の病態は以下のものである:

  • 僧帽弁狭窄症

  • 大動脈弁逆流症(しばしばある程度の狭窄を伴う)

  • おそらく三尖弁逆流症(しばしば僧帽弁狭窄症を伴う)

皮膚

皮下結節は,若年性特発性関節炎(JIA)のものと鑑別不能にみえるが,生検ではAschoff小体に類似した特徴を示す。輪状紅斑は,例えば全身型JIAの発疹,IgA血管炎(かつてのヘノッホ-シェーンライン紫斑病),慢性遊走性紅斑,多形紅斑など,肉眼的な外観が類似する他の皮膚病変とは組織学的に異なる。真皮の血管周囲に好中球および単核細胞浸潤が起こる。

中枢神経系

小舞踏病は,ARFに併発して舞踏運動がみられる病態であるが,中枢神経系では基底核における過灌流および代謝増加として現れる。また抗神経抗体レベルの上昇も示されている。

症状と徴候

リウマチ熱の最初のエピソードは,典型的にはレンサ球菌感染後2~3週間頃に発生する。臨床像として典型的には,関節,心臓,皮膚,および中枢神経系がいくらか組み合わさって侵される(1)。

関節

移動性の多関節炎は急性リウマチ熱の臨床像として最もよくみられ,患児の約35~66%に起こり,しばしば発熱を伴う。「移動性」とは,関節炎がある部位に現れ,治癒した後に別の部位に現れるため,関節炎が関節から関節へ移動しているかのように見えることをいう。ときに,単関節炎が高リスクの先住民族(例,オーストラリア,インド,フィジーなど)の間で起こるが,米国では非常にまれである。関節の疼痛と圧痛は極めて強くなり,診察でみられる軽度の熱感と腫脹とは釣り合わない場合が多い(このことは,診察所見が症状より重度になりやすいライム病と対照的である)。

通常は足関節,膝関節,肘関節,および手関節が侵される。肩関節,股関節,および手足の小関節に発生することもあるが,決して単独では生じない。脊椎関節が侵された場合は,他疾患を疑うべきである。

関節痛様症状は関節周囲における非特異的な筋肉痛あるいは腱痛によるものであり,筋付着部で腱鞘滑膜炎が発生することもある。関節痛と発熱は通常2週間以内に消失し,1カ月以上続くことはまれである。

心臓

心炎が単独で,または心膜摩擦音や心雑音,心拡大,心不全などを伴って発生する。急性リウマチ熱の初発時に,約50~70%で心炎が発生する。患児には高熱,胸痛,またはその両方がみられることがある;頻脈は一般的で,特に睡眠中にみられる。約50%の症例では,心障害(すなわち,持続性の弁機能障害)はかなり後になってから発生する。

ARFの心炎は汎心炎(心内膜,心筋,心膜に及ぶ)であると考えられてはいるものの,ARFで最もよくみられる特徴は弁膜炎であり,これがないのであれば診断を再検討すべきである。従来より,弁膜炎の診断は雑音の聴診で行われてきたが,無症候性の症例(すなわち,弁機能障害は雑音として現れず,心エコーおよびドプラ心エコー検査で確認される)がARFの最大18%にみられると考えられている。

心雑音が一般的であり,通常は早期より明らかであるが,初診では聴取されないこともある;そのような症例では,診察と心エコー検査を繰り返して心炎の有無を確認することが推奨される。僧帽弁逆流:腋窩に向かって放散する心尖部の吹鳴様(blowing)汎収縮期雑音を特徴とする。大動脈弁逆流による胸骨左縁の弱い拡張期灌水様雑音と僧帽弁狭窄の前収縮期雑音は,聴取が難しいことがある。心雑音はしばしばいつまでも続く。その後の2~3週間に病状が増悪しなければ,心炎による新たな徴候が生じることは少ない。ARFの典型例では,心炎が慢性でくすぶり型となることはない。弁の急性損傷による瘢痕が収縮および変化を起こし,急性炎症の持続がない場合でも心筋で二次性の血行動態障害が発生することがある。

心膜炎は胸痛および心膜摩擦音として現れることがある。

心炎と弁機能障害の組合せにより生じる心不全では,ラ音を伴わない呼吸困難,悪心および嘔吐,右上腹部または心窩部痛,短く強い乾性咳嗽などが発生する。著明な嗜眠および疲労が心不全の初期症状のこともある。

皮膚

皮膚および皮下組織の病像はまれであり,まず単独で起こることはなく,通常はすでに心炎,関節炎,または舞踏運動が発生している患児に現れる。

皮下結節は,大関節(例,膝関節,肘関節,手関節)の伸側に最もよくみられ,通常は関節炎および心炎が併発している。急性リウマチ熱の患児の10%未満に皮下結節がみられる。通常,皮下結節は無痛性かつ一過性で,関節炎や心炎の治療への反応がみられる。

輪状紅斑は,蛇行状で平坦またはわずかに隆起した瘢痕のない無痛性発疹である。患児の6%未満にこの発疹がみられる。この発疹は通常,体幹と四肢近位部に現れるが,顔面には現れない。ときに1日もたたないうちに消失する。紅斑はしばしばその原因となるレンサ球菌感染に遅れて出現し,他のリウマチ性炎症の発現に伴うかまたは遅れて出現することがある。

中枢神経系

小舞踏病は患児の約10~30%に発生する。他の症状とともに発生することもあるが,他の症状の消失後に生じることも多く(しばしば,急性レンサ球菌感染の数カ月後),そのため急性リウマチ熱の指標としては見落とされることがある。舞踏運動の発症は,典型的には潜行性で,不適切な状況で笑ったり泣いたりする行為が先行することがある。舞踏運動は,手から始まる速く不規則な痙動で構成されるが,しばしば全身化して足や顔面にまで及ぶこともある。

特徴的所見として,握力の変動(milkmaid’s grip),舌の線維束性収縮または舌の出し入れ(挺舌時に必ず素早い出し入れが伴う),しかめ面,舌打ちを伴うまたは伴わない爆発性言語などがある。合併する運動症状として,微細運動制御の喪失,筋力低下および筋緊張低下(麻痺と間違われるほど重度のことがある)などがある。

多くの患者で,以前は診断されていなかった強迫行動が顕在化する可能性がある。

その他

発熱(≥ 38.5℃)および他の全身症状(食欲不振や倦怠感など)が顕著になりうるが,特異的ではない。同定可能な徴候が発生するまで,ARFはときに不明熱とされることがある。心不全に伴う肝障害のために,あるいは腸間膜リンパ節炎の併発のために腹痛および食欲不振が起こることがあり,まれに急性虫垂炎に似た状況になることがある。

再発

ARFの再発時のエピソードは,初発時のエピソードに似ることが多い;心炎は,過去に中等度から重度の心炎があった患者に再発する傾向があり,心炎を伴わない舞踏運動は,初発児に心炎を伴わない舞踏運動がみられた患者に再発する。

症状と徴候に関する参考文献

  1. 1.Gewitz MH, Baltimore RS, Tani LY, et al: Revision of Jones criteria for the diagnosis of acute rheumatic fever in the era of Doppler echocardiography: A scientific statement from the American Heart Association.Circulation 131:1806–1818, 2015.doi: 10.1161/CIR.0000000000000205.

診断

  • 改変Jones診断基準(初発時の診断)

  • GAS検査(培養,レンサ球菌迅速検査,または抗ストレプトリジンO抗体価および抗DNase-B抗体価)

  • 心電図

  • ドプラ心エコー検査

  • 赤血球沈降速度(赤沈)およびC反応性タンパク(CRP)値

急性リウマチ熱(ARF)の初発時の診断は,改変Jones診断基準に基づいて行う(1 see table 急性リウマチ熱(ARF)初発時の改変Jones診断基準*);先行するA群レンサ球菌(GAS)感染の証拠とともに,主症状2つ,または主症状1つと副症状2つが必要である。小舞踏病単独(すなわち,副症状なし)は,運動障害の他の原因が除外された場合,診断基準を満たす。

改変Jones診断基準は,再発時の評価ではなく急性リウマチ熱の評価用に作られている。とはいえ,急性リウマチ熱またはリウマチ性心疾患の既往が確実であり,加えてA群レンサ球菌感染の証拠があれば,この基準を再発の確認に使用してもよい。

先行するレンサ球菌感染症は,最近の咽頭炎の病歴により示唆され,以下のうち1つ以上によって確定される:

  • 咽頭培養陽性

  • 抗ストレプトリジンO抗体価の高値または上昇(後者の方が望ましい)

  • レンサ球菌咽頭炎を示唆する症候のある小児において,GASの迅速抗原検査陽性

最近の猩紅熱の病歴は診断を強く示唆する。咽頭培養およびレンサ球菌の迅速抗原検査は,ARFが発現するまで陰性であることが多いが,抗ストレプトリジンO抗体価や抗DNase-B抗体価は,GAS咽頭炎の3~6週間後にピークに達するのが典型的である。ARFの患児の約80%で抗ストレプトリジンO抗体価が上昇している;抗DNase-B抗体価も測定すれば,GAS感染症を確定できる確率は高まり,特に急性期と回復期のペア血清を検査すると効果的である。

関節炎の他の原因(例,感染)を除外するために,関節穿刺が必要になる場合がある。関節液は通常,混濁かつ黄色を呈し,好中球優位の白血球数増加がみられるが,培養は陰性である。補体値は通常,その他の炎症性関節炎においては低値を示すのに対し,正常またはわずかに低下する。

心電図は初期評価の際に行う。血清心筋マーカー値を測定する;心筋トロポニンI値が正常の場合,顕著な心筋損傷を否定できる。PR延長などの心電図異常は,その他の心炎の証拠と相関するものではない。ARF患児のうち,PR間隔の延長が認められるのはわずか35%にとどまる;高度心ブロックが起こることもあるが,まれである。その他の心電図異常は心膜炎,心室もしくは心房の拡大,または不整脈によるものである。

心エコー検査により,明らかな雑音のない患者でも心炎の所見を同定できるため,ARFの診断が確定したか疑われる患者全員に施行が推奨される。心エコー検査は,一見小舞踏病が単独で起こっている患者で無症候性心炎を同定したり,再発性の心炎または慢性リウマチ性心疾患の患者の状態をモニタリングしたりするのにも用いられる。しかしながら,全ての心エコー所見の異常がリウマチ性心炎を示すわけではない;単独の弁のわずかな逆流やわずかな心嚢液貯留は非特異的な所見の可能性がある。急性リウマチ性心炎に対する特異度を維持するには,心エコーおよびドプラ心エコー検査で以下の基準を満たす必要がある(1):

ドプラ心エコー検査での血流所見の基準:

  • 病的な僧帽弁逆流:2つ以上の像で認められなければならず,少なくとも1つの像でジェット長 ≥ 2cm,最大速度 > 3m/秒,および少なくとも1つのエンベロープでの汎収縮期ジェット(pansystolic jet)

  • 病的な大動脈弁逆流:2つ以上の像で認められなければならず,少なくとも1つの像でジェット長 ≥ 1cm,最大速度 > 3 m/秒,および少なくとも1つのエンベロープでの汎拡張期ジェット(pandiastolic jet)

心エコー検査での形態的所見の基準

  • 僧帽弁の病的な形態変化には,弁輪拡大,flail leafletを伴う腱索の伸長または断裂,前尖(またはまれに後尖)先端の逸脱,弁尖先端の数珠状変化または結節化などがある。

  • 大動脈弁の病的な形態変化には,弁尖の不規則な肥厚または局所的な肥厚,接合部の異常,弁尖の可動性制限,または弁尖の逸脱などがある。

胸部X線はルーチンには行われないが,ARFにおける心炎のよくみられる臨床像である心拡大を検出できる。

皮下結節の生検は,特にその他の主な臨床症状が認められない場合,早期診断の助けとなる。

赤沈と血清C反応性タンパク(CRP)は,感度は高いが特異的ではない。赤沈は一般に60mm/hを超える。CRPは一般に30mg/L(285.7nmol/L)を超え,70mg/L(666.7nmol/L)を超えることも多い;この値は赤沈より速く上昇し下降するため,急性症状沈静化の後も赤沈が長期にわたり高値となっている患者においては,CRPの正常化によって炎症の消失を確認できる。心炎がない場合,赤沈は通常3カ月以内に正常値に戻る。合併症のない心炎の場合,赤沈を含む急性炎症所見は5カ月以内に消失する。白血球数は12,000~20,000/μL (12~20 × 109/L)にまで達し,コルチコステロイド療法によりさらに増加することもある。

鑑別診断としては,JIA(特に全身型JIAおよび全身には及ばないが多関節型JIA),ライム病反応性関節炎,鎌状赤血球症の関節疾患,白血病やその他の悪性腫瘍,全身性エリテマトーデス塞栓性の細菌性心内膜炎血清病川崎病薬物反応淋菌性関節炎などがある。これらは病歴や特異的臨床検査によって鑑別されることが多い。通常,全身型JIAは,GASの先行感染を欠くこと,発熱の日内変動,一過性の発疹,および遷延する関節の炎症症状により,ARFと鑑別される。

表&コラム

診断に関する参考文献

  1. 1.Gewitz MH, Baltimore RS, Tani LY, et al: Revision of Jones criteria for the diagnosis of acute rheumatic fever in the era of Doppler echocardiography: A scientific statement from the American Heart Association.Circulation 131:1806–1818, 2015.doi: 10.1161/CIR.0000000000000205.

予後

急性リウマチ熱の初回エピソード後の予後は,主に心臓に影響が及んでいるかどうか,またエピソードの再発があるかどうかによって決まる。急性エピソードが重大な心拡大や代償不全を伴わない軽症心炎であった患児の約2分の1では,心雑音は最終的に消失する。しかしながら,他の多くの患者は慢性弁膜症を発症し,これは弁膜症の所見を伴わない急性エピソードから回復した患者にも発生しうる。

小舞踏病のエピソードは,通常数カ月続き,ほとんどの患児において完治するが,患児の約3分の1は再発を来す。

関節炎を治療しなかった場合,消失までに1カ月かかることがあるが,後遺症は残さない。

慢性弁膜症の症状は徐々に,典型的には数十年かけて発生および進行する。しかしながら,一旦顕著な症状が現れれば,通常は介入が必要である。発展途上国では,慢性リウマチ性心疾患が全ての心血管疾患の原因の25~45%を占める。

治療

  • 抗菌薬

  • アスピリン

  • ときにコルチコステロイド

リウマチ熱の治療の主な目標は,A群レンサ球菌感染症の根絶,急性症状の緩和,炎症の抑制,そして心疾患の再発を防ぐために以後の感染を予防することである。

一般的な管理として,関節炎,舞踏運動,または心不全の症状がある場合は,活動を制限すべきである。心炎がなければ,初発時の症状が治まった後の身体的制限は必要ない。無症状の心炎患者でも,従来,厳格な床上安静が進められてきたが,その価値は証明されていない。

慢性心臓弁膜症および心不全の管理については,本マニュアルの別の箇所で考察されている。

抗菌薬治療

ARFが検出される時点でレンサ球菌感染後の炎症はかなり進行しているが,残存する菌体を根絶し再感染を予防するため,ペニシリンまたはアモキシシリンを10日間経口投与するか,またはベンジルペニシリンベンザチンの単回注射が行われる。具体的なレジメンについてはレンサ球菌咽頭炎の治療を参照のこと。抗菌薬の予防投与については以下に記載している。

アスピリンおよびその他の抗炎症薬

アスピリンにより発熱および疼痛が管理できるため,関節炎および/または軽症の心炎のある全ての患者に投与すべきである。アスピリンは何十年間にもわたり使用されてきたにもかかわらず,最適な投与スケジュールを決めるために行われた比較試験のデータは驚くほど少ない。専門医のほとんどは小児および青年に15~25mg/kg/回,1日4回(1日最大用量は4~6g)の経口投与を2~4週間継続し,その後さらに4週間かけて漸減している。症候性のARFはアスピリンに劇的に反応する。高用量のアスピリンを24~48時間投与しても改善がみられない場合,ARFの診断を再検討すべきである。サリチル酸塩の副作用はアスピリンによる治療を制限し,耳鳴,頭痛,または過呼吸として出現する;副作用は治療開始から1週間以上経たないと現れないことがある。サリチル酸塩の濃度測定は,毒性管理のためだけに行われる。サリチル酸の腸溶剤,緩衝剤,および分子複合体に利点はない。

最小限から軽度の心炎の患者において,アスピリンにプレドニゾンを加えることで回復が加速しリウマチ性心疾患を予防できることを示唆する比較試験のデータはない。

その他の非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)は,小規模試験でその有効性が報告されている;最も研究が進んでいるのはナプロキセン(7.5~10mg/kg/回,経口,1日2回)である。しかしながら,その他のNSAIDがアスピリンに勝る利点は少なく,また治療1週目はサリチル酸中毒がまれであるため,特にその傾向がある。アセトアミノフェンは,急性リウマチ熱の症状には無効である。

中等度から重度の心炎の患者には,アスピリンの代わりにプレドニゾン1mg/kg/回,経口,1日2回(最大60mg/日)が推奨される(重症度は,臨床所見,心肥大の有無のほか,場合によっては心エコー検査所見の重度の異常も考慮して,総合的に判断する)。2日経過後も炎症が抑制されない場合,または重度の心不全がある場合は,コハク酸メチルプレドニゾロンの静注ステロイドパルス療法(30mg/kg/回,静注,1日1回,最大1g/日,連続3日間)を行う場合がある。典型的には,コルチコステロイドを2~4週間経口投与し,さらに2~3週間かけて漸減する。コルチコステロイド漸減中にアスピリンを開始し,コルチコステロイドの中止から2~4週間後まで続けるべきである。アスピリンの用量は上記と同様である。疾患の活動性および治療に対する反応をモニタリングするために赤血球沈降速度およびC反応性タンパク(CRP)などの炎症性マーカーを用いることがある。

心臓の軽い炎症の再発(発熱または胸痛によって示唆される)は自然消失することがあるが,再発症状が数日以上続く場合,もしくは標準的管理(例,利尿薬,アンジオテンシン変換酵素阻害薬,β遮断薬,強心薬)によって心不全がコントロールできない場合は,アスピリンまたはコルチコステロイドの投与を再開すべきである。

抗菌薬の予防投与

再発を予防するために,最初の急性リウマチ熱エピソードの後もレンサ球菌に対する感染予防を継続すべきである( see table A群レンサ球菌感染症の再発に対して推奨される予防投与)。抗菌薬の経口投与は,注射に比べて若干効果が劣る。しかしながら,経口投与の場合,注射による痛みが回避され,受診および注射後反応の観察が不要となる。

レンサ球菌に対する感染予防の至適な継続期間は不明である。心炎のない患児は,5年間または21歳まで(いずれか長い方)予防投与を受けるべきである。米国小児科学会(American Academy of Pediatrics)は,心炎はあるが残存する心障害の所見がみられない患者に対して,10年間または21歳まで(いずれか長い方)の予防投与を推奨している。心炎があり心臓の後遺症の所見もある小児には,10年以上の予防投与を行うべきであり,多くの専門家はそのような患者に対し無期限(あるいは40歳まで)の予防投与を推奨している。幼児はGASの保菌者である可能性が高いため,幼児との濃厚な接触がある重症弁膜症の患者には,全例で生涯にわたる予防投与を行うべきである。

表&コラム

American Heart Associationは,リウマチ性弁膜症患者またはその疑いのある患者(現在予防的抗菌薬投与を受けていない患者)が歯科処置または口腔外科処置を受ける際に,細菌性心内膜炎に対する抗菌薬の短期予防投与をもはや推奨していない( see page 予防)。

要点

  • リウマチ熱は,A群レンサ球菌(GAS)咽頭感染症の合併症として発生する急性の非化膿性炎症であり,初回エピソードは5歳~15歳の間に起こることが最も多い。

  • 症状および徴候としては,移動性多関節炎,心炎,皮下結節,輪状紅斑,舞踏運動などがある。

  • 慢性リウマチ性心疾患,特に僧帽弁および/または大動脈弁に影響が及ぶものは,数十年かけて進行することがあり,発展途上国では心疾患の主な原因の1つとなっている。

  • 急性リウマチ熱(ARF)の診断には,2つの主項目または1つの主項目および2つの副項目(ARFの初回エピソードに対する改訂Jones基準)に加え,GAS感染症の所見が必要である。

  • GAS感染症の根絶のために抗菌薬を,関節炎と軽度の心炎による発熱および疼痛管理のためにアスピリンを,そして中等度から重度の心炎の患者にコルチコステロイドを投与する。

  • ARFの初回エピソードの後は,再発予防のため,レンサ球菌に対する抗菌薬の予防投与を行う。

溶連菌感染後反応性関節炎

溶連菌感染後反応性関節炎は,急性リウマチ熱の基準を満たさない患者においてA群レンサ球菌感染後に発生する関節炎である。

溶連菌感染後反応性関節炎は,急性リウマチ熱(ARF)の軽い亜型である場合もあれば,そうでない場合もある。患者にはARFでよくみられる心炎の症状または徴候がない。

ARFの関節炎と異なり,溶連菌感染後反応性関節炎では,典型的に侵される関節の数は1~2個に留まり移動性も少ないが,持続期間が長く,アスピリンへの反応もそれほど速くない。同様の症状を引き起こす非リウマチ性疾患(例,ライム病関節炎若年性特発性関節炎)を除外すべきである。

イブプロフェンおよびナプロキセンなどの他の非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)で治療可能である。

心病変に対する二次予防の方法は極めて多様であるが,レンサ球菌に対する感染予防を数カ月から1年間行った後に患者を再評価するのが妥当である。心エコー検査で心病変が検出された場合は,長期の予防投与が適応となる。

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