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月経困難症

執筆者:

JoAnn V. Pinkerton

, MD, University of Virginia Health System

レビュー/改訂 2020年 12月
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月経困難症とは月経中に子宮に痛みが生じる状態である。痛みは月経時または月経の1~3日前に起こることがある。痛みは月経開始後24時間で最大となり,2~3日後に軽減する傾向がある。通常は鋭い痛みであるが,痙攣性,拍動性,または鈍い継続的な痛みの場合もある;下肢に放散することもある。

頭痛,悪心,便秘または下痢,腰痛,および頻尿がよくみられ,ときに嘔吐が起こる。

月経前症候群の症状は,毎回の月経で,あるいはときに現れる。

ときに子宮内膜の凝血塊や組織片が排泄される。

病因

月経困難症には以下の可能性がある:

  • 機能性(より一般的)

  • 器質性(骨盤内の異常による)

機能性月経困難症

機能性月経困難症の症状は器質的な婦人科疾患では説明できない。痛みは子宮収縮と虚血から生じると考えられており,分泌期の子宮内膜で産生されるプロスタグランジン(例,プロスタグランジンF2α,強力な筋層刺激物質であり血管収縮物質)および他の炎症メディエーターにおそらく仲介され,また,子宮収縮の延長と筋層への血流の減少とも関連していると考えられる。

寄与因子として以下のものが考えられる:

  • 月経により脱落した組織の子宮頸部内の通過

  • 月経血中のプロスタグランジンF2α濃度が高い

  • 狭い子宮口

  • 子宮の位置異常

  • 運動不足

  • 月経に関する不安

機能性月経困難症は初経から1年以内に始まり,排卵周期にほぼ必ず起こる。痛みは通常月経開始時(または直前)に始まり,初めの1~2日間持続する;この痛みは痙攣性の痛みと表現され,持続的な下腹部痛に重なって,腰や大腿に放散することもある。倦怠感,疲労,悪心,嘔吐,下痢,腰痛,または頭痛が起こることもある。

重度の症状の危険因子としては以下のものがある:

  • 早い初経年齢

  • 長いまたは重い月経

  • 喫煙

  • 月経困難症の家族歴

症状は加齢とともに,また妊娠後に軽減する傾向がある。

機能性月経困難症の約5~15%の女性では,痙攣痛は日常活動の妨げになるほど重度であり,学校や仕事を休むこともある。

器質性月経困難症

器質性月経困難症の症状は骨盤内の異常により生じる。骨盤内臓器に影響を与える可能性のあるほとんどの異常や過程が月経困難症を起こしうる。

器質性月経困難症の一般的な原因としては以下のものがある:

比較的まれな原因には,先天奇形(例,双角子宮,不全中隔子宮,腟横中隔),卵巣嚢胞および腫瘍, 骨盤内炎症性疾患 骨盤内炎症性疾患 (PID) 骨盤内炎症性疾患(PID)は,上部女性生殖器(子宮頸部,子宮,卵管,および卵巣)の複数菌感染症である;膿瘍が生じることがある。骨盤内炎症性疾患は性行為により感染することがある。一般的な症状および徴候として,下腹部痛,頸管分泌物,および不正性器出血がある。長期合併症には,不妊,慢性骨盤痛,および異所性妊娠がある。診断には,淋菌(Neisseria gonorrhoeae)とクラミジアに関する子宮頸部検体のポリメラーゼ連鎖反応... さらに読む ,骨盤内うっ血症候群,子宮腔癒着,心因性疼痛,および 子宮内避妊器具 子宮内避妊器具 (IUD) 米国では避妊法を用いる女性の12%が子宮内避妊器具(IUD)を使用しており,IUDは経口避妊薬と比べて以下の利点があることから,より普及してきている: IUDは効果が非常に高い。 IUDは全身作用が最小限である。 避妊の決断が3年,5年,または10年に1回のみでよい。 米国では,現在5種類のIUDが入手可能である。4種類のレボノルゲストレル放出IUDがある: さらに読む (IUD)(特に銅またはレボノルゲストレル放出IUD)などがある。レボノルゲストレル放出IUDは銅放出IUDよりも痙攣痛を起こしにくい。

少数の女性においては,極端に狭い子宮口(円錐切除術,LEEP法,冷凍焼灼や熱焼灼に続発)を通じて,子宮が組織を排出しようとするときに痛みが生じることがある。痛みはときに,有茎性の粘膜下筋腫や子宮内膜ポリープが子宮頸部から突出することにより生じることがある。

重度の器質性月経困難症の危険因子は機能性のものと同様である。

器質性月経困難症は先天奇形が原因でなければ通常成人期に始まる。

評価

月経困難症は症状に基づいて同定できる。その後,月経困難症が機能性か器質性かを判断する。

病歴

現病歴の聴取では,月経開始年齢,出血の期間と量,月経と月経の間の期間,周期の変動,および月経と症状の関係など,完全な月経歴を対象に含めるべきである。

医師は以下についても尋ねるべきである:

  • 症状が始まった年齢

  • 性質と重症度

  • 軽快因子および増悪因子(避妊薬の影響も含む)

  • 日常生活を妨げる程度

  • 性行為への影響

  • 月経に関係しない骨盤痛の有無

  • アセトアミノフェンまたは非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)への反応

システムレビュー(review of systems)には,周期性の悪心,嘔吐,腹部膨満,下痢,および疲労などの合併症状を含めるべきである。

既往歴の聴取では,子宮内膜症,子宮腺筋症,および筋腫など既知の原因を同定すべきである。避妊方法,特にIUDの使用について確認するべきである。

手術歴の聴取では,子宮頸部の円錐切除術および子宮内膜アブレーションなどの月経困難症のリスクを上昇させる手技を同定すべきである。

性交歴には,以前もしくは現在の性的虐待またはその他の外傷的出来事を含めるべきである。

身体診察

内診では器質性月経困難症の原因の検出に焦点を置く。腟,外陰,および子宮頸部を視診して,病変および子宮口から突出する腫瘤がないか確認する。臓器を触診して,狭い子宮口,脱出したポリープや筋腫,子宮腫瘤,付属器腫瘤,肥厚した直腸腟中隔,ダグラス窩の硬結,および仙骨子宮靱帯の結節がないか確認する。

腹部を診察して,腹膜炎の所見がないか確認する。

警戒すべき事項(Red Flag)

以下の所見は特に注意が必要である:

  • 新規もしくは突然発症した痛み

  • 絶え間ない痛み

  • 発熱

  • 腟分泌物

  • 腹膜炎の所見

所見の解釈

レッドフラグサインは月経困難症以外の骨盤痛の原因を示唆する。

以下の場合に機能性月経困難症が疑われる。

  • 初経後まもなくまたは青年期の間に症状が現れる。

以下の場合に器質性月経困難症が疑われる。

  • 症状が青年期以降に現れる。

  • 子宮腺筋症,筋腫,狭い子宮口,子宮口から突出する腫瘤,また特に子宮内膜症などの既知の原因がある。

子宮内膜症は,付属器腫瘤,肥厚した直腸腟中隔,ダグラス窩の硬結,仙骨子宮靱帯の結節,またときに非特異的な腟,外陰,子宮頸部病変を認める場合に考慮する。

検査

検査は器質的な婦人科疾患の除外を目的として実施する。ほとんどの患者で以下を行うべきである:

  • 妊娠検査

  • 骨盤内超音波検査

妊娠検査によって子宮内および異所性妊娠が除外される。骨盤内炎症性疾患が疑われる場合には,頸管培養を行う。

骨盤内超音波検査は骨盤内腫瘤(例,卵巣嚢胞,筋腫,子宮内膜症,子宮腺筋症)に感度が高く,位置不明となったIUDや異常な位置にあるIUDを見つけることができる。

これらの検査が決定的でなく症状が持続する場合は,以下のような他の検査が行われる:

  • 子宮卵管造影もしくはソノヒステログラフィー:子宮内膜ポリープ,粘膜下筋腫,または先天異常を同定するために行う

  • MRI:先天異常を含む他の異常を明らかにするため,または,手術が予定されている場合に以前確認された異常をさらに明らかにするために行う

  • 静脈性腎盂造影:子宮奇形が月経困難症の原因や寄与因子として同定されている場合のみ行う

他の全ての検査が決定的ではない場合,子宮鏡検査や腹腔鏡検査を行うことがある。腹腔鏡検査は,全ての骨盤内および生殖器を直接検査し異常を調べることができるため,最も確定的な検査である。

治療

基礎疾患を治療する。

一般的な対策

月経困難症の対症療法は,十分な休息と睡眠および定期的な運動から始める。低脂肪食とω-3脂肪酸,亜麻仁,マグネシウム,ビタミンB1,ビタミンE,亜鉛などの栄養補助食品は,効果的である可能性が示唆されている。

機能性月経困難症の女性には,器質的な婦人科疾患がないことを伝え安心させる。

薬物

痛みが持続する場合は,一般的にNSAID(痛みを緩和しプロスタグランジンを抑制する)が試される。NSAIDは通常月経が開始する24~48時間前に始め,1~2日後まで続ける。

NSAIDが無効な場合には,低用量のエストロゲン-プロゲスチン経口避妊薬による排卵抑制が試されることがある。

ダナゾール,プロゲスチン(例,レボノルゲストレル,エトノゲストレル[etonogestrel],酢酸メドロキシプロゲステロンデポ剤),ゴナドトロピン放出ホルモンアゴニスト,またはレボノルゲストレル放出IUDなどの他のホルモン療法は,月経困難症の症状を緩和することがある。

定期的な鎮痛薬の補助的投与が必要なことがある。

その他の治療法

治療法として催眠が評価されている。鍼治療,指圧,カイロプラクティック療法,経皮的電気神経刺激などの他に提唱されている非薬物療法は,まだよく研究されていないが,一部の患者には有益である可能性がある。

原因不明の難治性疼痛には,一部の患者において腹腔鏡下仙骨前交感神経切断術または仙骨子宮靱帯切断術が12カ月間にわたり有効であった。

要点

  • 大部分の月経困難症は原発性である。

  • 基礎にある骨盤内の器質的病変を調べる。

  • 通常,他の検査を行う前に超音波検査で器質的な婦人科疾患を調べる。

  • NSAIDのみ,またはNSAIDと低用量の経口避妊薬の併用が通常は効果的である。

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