プロゲスチン注射による避妊法

執筆者:Frances E. Casey, MD, MPH, Virginia Commonwealth University Medical Center
レビュー/改訂 2020年 5月
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    メドロキシプロゲステロン酢酸エステルのデポ剤(DMPA)は,メドロキシプロゲステロン酢酸エステルの結晶懸濁液として調製された長時間作用型の注射製剤である。世界の他の国では,他の避妊用の注射剤が使用可能である。

    DMPAの場合の1年目の妊娠率は,正確な使用では0.2%,普通の使用(すなわち,注射が遅れることがある)では約6%である。

    DMPAは3カ月毎に筋注(150mg)または皮下注射(104mg)で投与可能である。吸収速度を早めることがあるため,注射部位のマッサージはすべきではない。効果的な避妊をもたらす血清中ホルモン濃度は通常,注射後24時間より得られ,少なくとも14週間は持続するが,16週まで効果的な値に保たれうる。注射の間隔が16週を超える場合は,次の注射を行う前に妊娠検査を行い妊娠を除外すべきである。DMPAは,月経周期の初めの5~7日以内に投与される場合,直ちに開始することができる(quick- start protocol)。この時期の間に開始されない場合,7日間は他の避妊法を同時に用いるべきである。DMPAは自然流産または中絶後直ちに,または授乳の状況にかかわらず分娩後すぐに開始することもできる。

    注射を中止すると,約半数の女性で月経周期が6カ月以内に再開し,約4分の3の女性で1年以内に再開する。注射を中止してから最長18カ月間,妊孕性が回復しない可能性がある。

    有害作用

    DMPAの最も頻度の高い有害作用は不正性器出血である。DMPAの初回注射後3カ月以内に,約30%の女性が無月経となる。さらに30%に,月に11日間を超える少量の性器出血や不正出血(通常は軽度)がみられる。これらの出血異常にもかかわらず,貧血は通常起こらない。連続して使用すると,出血は減少する傾向にある。2年後,DMPA使用者の約70%で無月経となる。DMPAは作用持続時間が長いため,最後の注射から最長で18カ月間,排卵が遅れることがある。排卵が起これば,妊孕性は通常急速に回復する。

    典型的には,DMPAの使用開始後最初の1年間に女性の体重が1.5~4kg増え,その後も体重は増え続ける。代謝よりも食欲の変化が原因と考えられているため,DMPA使用を望む女性はカロリー摂取を制限しエネルギー消費を増やすよう通常助言される。

    頭痛はDMPAを中止する一般的な理由であるが,重症度は時間とともに低くなる傾向にある。DMPAを使用する大部分の女性では頭痛が起こらず,既存の緊張型頭痛および片頭痛は通常悪化しない。

    耐糖能および脂質プロファイルに軽度で可逆的な悪化が起こりうる。

    エストロゲン値が低い場合に骨密度が低下する可能性があるが,骨折リスク上昇のエビデンスはなく,DMPAを使用する女性に対する骨シンチグラフィーは推奨されない。DMPAを使用する青年および若年の女性は,使用しない場合と同様に,1日にカルシウム1500mgとビタミンD400単位を摂取すべきである;必要であれば,サプリメントを摂取すべきである。骨密度は通常,注射中止後にベースラインの水準に戻る。

    有益性

    混合型経口避妊薬とは異なり,DMPAは高血圧のリスクを上昇させない。プロゲスチンが血栓塞栓症のリスクを上昇させると考えられてはいないが,DMPA使用により血栓塞栓症のリスクが2倍になる可能性を示唆するエビデンスもある。しかしながら,この関連性は十分確立されておらず,現在DMPAはエストロゲン使用が禁忌の女性にとって安全と考えられている。

    DMPAにより,乳癌,卵巣がん,浸潤子宮頸癌のリスクが増加することはないようである。

    DMPAにより以下のリスクが低下する:

    DMPAが鎌状赤血球症の女性で疼痛発作の発生率を減少させることを示唆したエビデンスもある。

    DMPAは痙攣性疾患を有する女性において,適切な避妊の選択肢である場合がある。

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