死産

(胎児の死亡)

執筆者:Antonette T. Dulay, MD, Main Line Health System
レビュー/改訂 2020年 10月
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死産とは,在胎20週を超える死亡胎児の娩出である。原因を特定するために母体および胎児の検査を行う。管理は生児分娩後のルーチンケアと同様である。

その定義から,死産には胎児の死亡を伴い,死産は以降の妊娠における胎児死亡のリスクを高める(ハイリスク妊娠を参照)。

病因

妊娠後期の胎児死亡は,母体,胎盤,または胎児に解剖学的または遺伝学的な原因がある可能性がある(死産の一般的な原因の表を参照)。

表&コラム

合併症

胎児が妊娠後期または満期近くに死亡したが何週間も子宮にとどまっている場合,消費性凝固障害が起こることがあり,播種性血管内凝固症候群(DIC)が起こることさえある。

診断

  • 臨床的評価

  • 原因を同定するための検査

死産の診断は臨床的に行う。

死産の原因を同定するための検査としては以下のものがある:

  • 死産児の一般的な診察(例,身体的外見,体重,身長,頭囲[1])

  • 胎児の核型

  • 貧血または白血球増多の所見がないか確認するための母体に対する血算

  • Kleihauer-Betke試験

  • 抗リン脂質抗体(ループスアンチコアグラント,抗カルジオリピン[IgGおよびIgM],抗β2糖タンパク質I[IgGおよびIgM])の検査を含む,後天性血栓性疾患に対するスクリーニング

  • TORCH検査(トキソプラズマ症[IgGおよびIgMによる],他の病原体[例,ヒトパルボウイルスB19,水痘帯状疱疹ウイルス],風疹,サイトメガロウイルス,単純ヘルペス)

  • 迅速血漿レアギン試験(RPR)

  • 甲状腺刺激ホルモン(TSH),および値が異常の場合は,遊離T4(サイロキシン)

  • 糖尿病検査(HbA1C)

  • 胎盤の検査

  • 薬物検査

遺伝性血栓性素因の検査については議論があり,ルーチンには推奨されない。死産と遺伝性血栓性素因との関連は明らかではないが,おそらく第V因子Leiden変異を除いて,強くないようである。検査(例,第V因子Leiden変異の検査)は,胎盤に重度の異常が検出された場合,子宮内胎児発育不全がみられた場合,または妊婦に血栓塞栓性疾患の既往歴もしくは家族歴がある場合に考慮することができる(1)。

原因を特定できないことも多い。

診断に関する参考文献

  1. 1. American College of Obstetricians and Gynecologists, Society for Maternal-Fetal Medicine: Management of stillbirth.Obstetric Care Consensus No. 10, 2020.

治療

  • 必要であれば子宮内容除去術

  • ルーチンの分娩後のケア

  • 心理的支援

子宮内容物は自然に排出されていることがある。そうでなければ,在胎期間に応じて,薬物(例,オキシトシン)または外科的手技(例,頸管拡張・内容除去[D&E],事前に頸管の準備を整えるために浸透性拡張器を使用,ミソプロストールを併用または非併用)を用いて子宮内容を除去すべきである。

受胎産物が排出された後,残存する胎盤片があれば取り除くために子宮内容除去術が必要になることがある。死産が妊娠ごく初期に起こった場合に胎盤片が残存する可能性が高い。

DICが発生した場合は,必要に応じて血液または血液製剤を投与し,凝固障害を迅速かつ積極的に管理すべきである。

分娩後の管理は生児出生の場合と同様である。

典型的には,両親は深い悲しみの中にあり,心理的支援のほか,ときに正式なカウンセリングが必要となる。推定される原因に関連する,将来の妊娠に伴うリスクを患者と話し合うべきである。

要点

  • 死産には多くの原因がある(母体,胎児,あるいは胎盤)。

  • 播種性血管内凝固症候群が続発的に発生することがある。

  • 原因を確認するための検査を行う;しかしながら原因はしばしば同定できない。

  • 薬物またはD&Eを用いて子宮内容を除去し,両親に心理的支援を提供する。

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