成人封入体結膜炎はChlamydia trachomatis血清型D~Kにより引き起こされる。ほとんどの場合,成人封入体結膜炎は性器感染者との性的接触により起こる。通常,患者は発症前2カ月以内に新しいセックスパートナーができている。まれに,成人封入体結膜炎は,塩素消毒が不十分で汚染された水泳プールの水から感染する。
(結膜炎の概要 結膜炎の概要 結膜の炎症は典型的には,感染,アレルギー,または刺激により起こる。症状は,結膜充血および眼脂,ならびに病因によっては不快感およびそう痒である。診断は臨床的に行う;ときに培養が適応となる。治療は病因に基づき,抗菌薬,抗ヒスタミン薬,肥満細胞安定化薬,およびコルチコステロイドの局所投与などがありうる。 感染性結膜炎は ウイルス性結膜炎または 細菌性結膜炎が最も多く,伝染性である。まれに,病原体が混合性または同定不能な場合がある。多数のアレル... さらに読む および トラコーマ トラコーマ トラコーマはChlamydia trachomatisによって生じる慢性結膜炎で,進行性の増悪および寛解が繰り返す特徴がある。予防可能な失明原因の世界第1位である。初期症状は,結膜充血,眼瞼浮腫,羞明,および流涙である。後に,角膜血管新生,ならびに結膜,角膜,および眼瞼の瘢痕化を生じる。診断は通常臨床的に行う。治療は抗菌薬の外用または全身投与による。 トラコーマは,北アフリカ,中東,インド亜大陸,オーストラリア,および東南... さらに読む も参照のこと。)
成人封入体結膜炎の症状と徴候
成人封入体結膜炎の潜伏期は2~19日である。ほとんど患者は片眼の粘液膿性眼脂を有する。眼瞼結膜では,しばしば眼球結膜よりも充血が多くみられる。特徴として,顕著な結膜濾胞の反応を認める。ときに上方角膜混濁および新生血管が生じる。患側の耳前リンパ節が腫脹することがある。しばしば,症状が数週間から数カ月もの間持続し,抗菌薬の局所投与に反応しないことがある。
成人封入体結膜炎の診断
臨床的評価
臨床検査
慢性化(症状持続期間が3週間を超える),粘液膿性眼脂,顕著な結膜濾胞の反応,および抗菌薬局所投与に反応しないことにより,成人封入体結膜炎をその他の 細菌性結膜 急性細菌性結膜炎 急性結膜炎は多数の細菌が原因となりうる。症状は,充血,流涙,刺激症状,および眼脂である。診断は臨床的に行う。治療は抗菌薬の局所投与とし,より重篤例では抗菌薬の全身投与で補強する。 ほとんどの細菌性結膜炎は急性である;慢性の細菌性結膜炎はChlamydiaおよびまれにMoraxellaによることもある。クラミジア結膜炎には, トラコーマ および 成人封入体結膜炎または新生児封入体結膜炎などがある。... さらに読む 炎と鑑別する。塗抹標本,細菌培養,およびクラミジアの検査を行うべきである。蛍光抗体染色法,核酸増幅検査(NAAT),および特別な培養法を用いてC. trachomatisを検出する。塗抹および結膜擦過検体を鏡検し,グラム染色による細菌の同定,およびギムザ染色によるクラミジア結膜炎の特徴的な上皮細胞の好塩基性細胞質内封入体の同定を行うべきである。
成人封入体結膜炎の治療
経口アジスロマイシンまたはドキシサイクリン
アジスロマイシン1g経口にて1回のみ,またはドキシサイクリン100mg経口にて1日2回もしくはエリスロマイシン500mg経口にて1日4回1週間の投与により,結膜炎および併発する性器感染症を治療する。セックスパートナーも治療を要する。
成人封入体結膜炎の要点
成人封入体結膜炎はChlamydia trachomatisによって引き起こされ,通常は性感染する;まれに,汚染されたプールでの水泳によって感染することがある。
通常,眼瞼結膜は眼球結膜よりも充血が多くみられる;顕著な結膜濾胞の反応がみられる。
患者だけでなくセックスパートナーもアジスロマイシンの内服で治療する。