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ウイルス性結膜炎

執筆者:

Melvin I. Roat

, MD, FACS, Sidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University

レビュー/改訂 2019年 10月
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ウイルス性結膜炎は感染力が強い急性の結膜感染症で,通常アデノウイルスにより起こる。症状としては,刺激感,羞明,水様性眼脂などがある。診断は臨床的に行う;ときにウイルス培養または免疫学的診断検査が適応となる。感染症は自然に軽快するが,重症例ではときにコルチコステロイドの局所投与が必要となる。

ウイルス性結膜炎の病因

結膜炎は一般的な感冒およびその他の全身性ウイルス感染症(特に 麻疹 麻疹 麻疹は,小児で最も多くみられる感染性の高いウイルス感染症である。発熱,咳嗽,鼻感冒,結膜炎,口腔粘膜の粘膜疹(コプリック斑),および頭尾方向に拡大する斑状丘疹状皮疹を特徴とする。診断は通常,臨床的に行う。治療は支持療法による。予防接種が非常に効果的である。 ヒトに感染するウイルスの大半は成人と小児の両方に感染するが,それらについては本マニュアルの別の箇所で考察されている。新生児に特異的な影響を及ぼすウイルスについては,... さらに読む 麻疹 であるが, 水痘 水痘 水痘は,通常は小児期にみられる急性の全身感染症であり,水痘帯状疱疹ウイルス(ヒトヘルペスウイルス3型)によって引き起こされる。通常は軽度の全身症状から始まり,その後すぐに斑状疹,丘疹,小水疱,および痂皮を特徴とする皮膚病変が群発して現れる。重度の神経系またはその他の全身性合併症(例,肺炎)のリスクのある患者は,成人,新生児,および易感染性患者,または特定の基礎疾患を有する患者などである。診断は臨床的に行う。重症合併症のリスクのある患者は... さらに読む 水痘 風疹 風疹 ( Professional.See also page 先天性風疹。) 風疹は,リンパ節腫脹と発疹のほか,ときに全身症状(通常は軽度かつ短期間)を引き起こす,感染性の強いウイルス感染症である。妊娠早期に感染すると,自然流産,死産,または先天性感染症につながる可能性がある。診断は通常臨床的に行う。症例は公衆衛生当局に報告する。通常,治療は不要である。ワクチン接種が予防に効果的である。... さらに読む 風疹 流行性耳下腺炎 ムンプス ムンプスは,通常は唾液腺(最も多くは耳下腺)の有痛性腫脹を引き起こす,感染性の強い全身性の急性ウイルス性疾患である。合併症として,精巣炎,髄膜脳炎,膵炎などが起こりうる。診断は通常臨床的に行い,症例は全て速やかに公衆衛生当局に報告する。治療は支持療法による。ワクチン接種が予防に効果的である。 ヒトに感染するウイルスの大半は成人と小児の両方に感染するが,それらについては本マニュアルの別の箇所で考察されている。新生児に特異的な影響を及ぼすウ... さらに読む ムンプス の場合もある)に合併することがある。全身症状を伴わない限局性ウイルス性結膜炎の原因は,通常 アデノウイルス アデノウイルス感染症 数多くあるアデノウイルスのいずれかに感染した場合,無症状に経過することもあれば,軽度の 呼吸器感染症,角結膜炎,胃腸炎,膀胱炎,原発性肺炎などの特異的な症候群を来すこともある。診断は臨床的に行う。治療は対症療法である。 アデノウイルスは,3つの主要なカプシド抗原(ヘキソン,ペントン,およびファイバー)によって分類されるDNAウイルスである。ヒトアデノウイルスには,7つの種(A~G)と57の血清型がある。血清型によって異なる病態がみられる... さらに読む およびときに エンテロウイルス エンテロウイルス感染症の概要 エンテロウイルスは,ライノウイルス( 感冒を参照)およびヒトパレコウイルスとともに,ピコルナウイルス科(小さな[pico]RNAウイルス)に属する。ヒトパレコウイルス1型および2型は,かつてはエコーウイルス22型および23型と呼ばれていたが,現在ではパレコウイルスに再分類されている。全てのエンテロウイルスは不均一な抗原性を有... さらに読む または 単純ヘルペスウイルス 単純ヘルペスウイルス(HSV)感染症 単純ヘルペスウイルス(ヒトヘルペスウイルス1型および2型)は一般的に,皮膚,口腔,口唇,眼,および性器を侵す反復性感染症を引き起こす。頻度の高い重症感染症としては,脳炎,髄膜炎,新生児ヘルペスなどがあり,易感染性患者では播種性感染症もある。皮膚粘膜感染症では,紅斑上に集簇する有痛性の小水疱が生じる。診断は臨床的に行う;培養,ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査,直接蛍光抗体法,または血清学的検査により確定診断が可能である。治療は対症療法で... さらに読む 単純ヘルペスウイルス(HSV)感染症 である。

流行性角結膜炎は通常,アデノウイルス血清型Ad5,8,11,13,19,および37により起こり,重度の結膜炎を生じる傾向にある。咽頭結膜熱は通常,血清型Ad3,4,および7により起こる。エンテロウイルス70型の感染に伴うまれな結膜炎である急性出血性結膜炎のアウトブレイクがアフリカおよびアジアで起こった。

ウイルス性結膜炎の症状と徴候

5~12日間の潜伏期の後,結膜充血,水様性眼脂,および刺激感が通常片眼に始まり,急速にもう一方の眼に拡大する。眼瞼結膜に濾胞を認めることがある。しばしば耳前リンパ節の腫脹および疼痛を認める。多くの患者には,結膜炎,最近の上気道感染症,またはその両方を有する患者との接触歴がある。

重度のアデノウイルス性結膜炎では,角膜病変により,患者に羞明および異物感が現れることがある。結膜浮腫を認めることもある。眼瞼結膜上のフィブリン偽膜および炎症細胞,限局性の角膜炎,またはその両方により,霧視が生じることがある。結膜炎の消退後も,残存する角膜上皮下混濁(多数,貨幣状,直径0.5~1.0mm)が最長2年まで細隙灯顕微鏡で観察されることがある。角膜混濁の結果,ときに視力低下ならびに著明な光輪および閃光を生じる。

ウイルス性結膜炎の診断

  • 臨床的評価

結膜炎の診断ならびに 細菌性 急性細菌性結膜炎 急性結膜炎は多数の細菌が原因となりうる。症状は,充血,流涙,刺激症状,および眼脂である。診断は臨床的に行う。治療は抗菌薬の局所投与とし,より重篤例では抗菌薬の全身投与で補強する。 ほとんどの細菌性結膜炎は急性である;慢性の細菌性結膜炎はChlamydiaおよびまれにMoraxellaによることもある。クラミジア結膜炎には, トラコーマ および 成人封入体結膜炎または新生児封入体結膜炎などがある。... さらに読む 急性細菌性結膜炎 ウイルス性 ウイルス性結膜炎 ウイルス性結膜炎は感染力が強い急性の結膜感染症で,通常アデノウイルスにより起こる。症状としては,刺激感,羞明,水様性眼脂などがある。診断は臨床的に行う;ときにウイルス培養または免疫学的診断検査が適応となる。感染症は自然に軽快するが,重症例ではときにコルチコステロイドの局所投与が必要となる。 ( 結膜炎の概要も参照のこと。) 結膜炎は一般的な感冒およびその他の全身性ウイルス感染症(特に... さらに読む ウイルス性結膜炎 ,および 非感染性結膜炎 アレルギー性結膜炎 アレルギー性結膜炎は,急性,間欠性,または慢性の結膜の炎症であり,通常,空中アレルゲンによって生じる。症状としては,そう痒,流涙,眼脂,結膜充血などがある。診断は臨床的に行う。治療は抗ヒスタミン薬および肥満細胞安定化薬の局所投与による。 ( 結膜炎の概要も参照のこと。) アレルギー性結膜炎は,特異抗原に対する I型過敏反応による。 季節性アレルギー性結膜炎(花粉症結膜炎)は空中のカビの胞子,または樹木,イネ科の草,もしくは雑草の花粉によ... さらに読む アレルギー性結膜炎 の鑑別( Professional.see table 急性結膜炎の鑑別点 急性結膜炎の鑑別点 急性結膜炎の鑑別点 )は通常臨床的に行う;ウイルス増殖に特殊な組織培養が必要であるが,適応になることはまれである。核酸増幅検査(NAAT)およびその他のすぐに外来で行える免疫学的診断検査は,特に炎症が重度でその他の診断(例, 眼窩蜂窩織炎 眼窩隔膜前蜂窩織炎および眼窩蜂窩織炎 眼窩隔膜前蜂窩織炎(眼窩周囲蜂窩織炎)とは,眼瞼,および眼瞼を取り囲み眼窩隔膜より前方にある皮膚の感染症である。眼窩蜂窩織炎とは,眼窩隔膜より後方の組織の感染症である。いずれも外部の感染巣(例,創傷),鼻腔または歯から波及した感染症,または他の部位の感染症の転移によって起こりうる。症状としては眼瞼痛,変色,腫脹などがあり,眼窩蜂窩織炎では発熱,倦怠感,眼球突出,眼球運動制限,および視覚障害も起こる。診断は病歴聴取,診察,およびCTまたは... さらに読む 眼窩隔膜前蜂窩織炎および眼窩蜂窩織炎 )を除外しなければならない場合に有用な場合がある。ウイルス性結膜炎と細菌性結膜炎との鑑別に役立つ可能性がある特徴としては,膿性眼脂,耳前リンパ節腫脹の存在,流行性角結膜炎における結膜浮腫などがある。羞明のある患者では,フルオレセイン染色を行い,細隙灯顕微鏡下に観察する。流行性角結膜炎は点状角膜染色を示すことがある。ウイルス性結膜炎に続発する細菌感染症は非常にまれである。しかしながら,細菌性結膜炎を示唆する徴候(例,膿性眼脂)があれば,培養またはその他の検査が有用なことがある。

ウイルス性結膜炎の治療

  • 支持療法

ウイルス性結膜炎は伝染性が強いため,感染予防策に従わなければならない。

感染伝播を避けるため,医師は以下のことを行うべきである:

  • 手の消毒薬を用いるか適切に手を洗う(手全体に石鹸の泡をたて,少なくとも20秒間手をもみ洗いし,十分に石鹸をすすぎ,ペーパータオルで水をふき取る)

  • 患者の診察に使った器具は消毒する

患者は以下のことを行うべきである:

  • 自身の眼または鼻からの分泌物を触った後は,手の消毒薬を用いるか手を徹底的に洗う

  • 感染した方の眼を触った後に健側の眼を触らない

  • タオルや枕を共有しない

  • プールで泳がない

眼脂はふき取り,眼帯はすべきでない。結膜炎に罹患した年少の小児は,感染拡大防止のために学校を休ませるべきである。

ウイルス性結膜炎は自然に治癒し,軽症例では1週間,重症例では最大3週間持続する。症状緩和に要するのは冷罨法のみである。しかしながら,重度の羞明または視力障害がある患者では,コルチコステロイドの局所投与(例,1%酢酸プレドニゾロン,1日4回)が有益な場合がある。コルチコステロイドが処方される場合は,通常眼科医によって処方される。 単純ヘルペス角膜炎 単純ヘルペス角膜炎 単純ヘルペス角膜炎は単純ヘルペスウイルスによる角膜感染症である。虹彩を侵すこともある。症状と徴候には,異物感,流涙,羞明,および結膜充血などがある。再発頻度は高く,角膜知覚低下,潰瘍,永久的な瘢痕化,および視力低下を起こすことがある。診断は特徴的な樹枝状角膜潰瘍のほか,ときにウイルス培養に基づく。治療は,抗ウイルス薬の外用または全身投与による。 単純ヘルペス角膜炎は通常,角膜表層を侵すが,ときに角膜実質(角膜のより深層)または角膜の内側... さらに読む 単純ヘルペス角膜炎 は,コルチコステロイドにより増悪する恐れがあるため,(フルオレセイン染色および細隙灯顕微鏡検査により)最初に除外しなければならない。

ウイルス性結膜炎の要点

  • ほとんどのウイルス性結膜炎は,アデノウイルスまたはエンテロウイルスによる非常に感染力の強い感染症である。

  • ウイルス性結膜炎と細菌性結膜炎との鑑別に役立つ可能性がある特徴としては,膿性眼脂,耳前リンパ節腫脹の存在,流行性角結膜炎における結膜浮腫などがある。

  • 診断は通常,臨床的に行う。

  • 治療は通常,冷罨法と感染拡大の予防策である。

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