突発性難聴

執筆者:Mickie Hamiter, MD, Tampa Bay Hearing and Balance Center
Reviewed ByLawrence R. Lustig, MD, Columbia University Medical Center and New York Presbyterian Hospital
レビュー/改訂 修正済み 2024年 6月
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突発性難聴は,急激に(発症から72時間以内に)進行するか,起床時に気づかれた,中等度から高度の感音難聴である。米国では毎年10万人当たり約27人に発生している。発生率は年齢とともに上昇し,18歳未満での10万人当たり11例から,65歳以上での10万人当たり77例までの幅がある(1)。初期の難聴は通常片側性であり(薬剤性のものは除く),重症度は軽度から重度まで幅がある。多くの患者には耳鳴もみられ,一部の患者には浮動性めまい,回転性めまい,またはこれらの両方がみられる。

突発性難聴には慢性難聴と異なる原因があり,直ちに対処しなければならない(2)。

難聴も参照のこと。)

総論の参考文献

  1. 1.Alexander TH, Harris JP.Incidence of sudden sensorineural hearing loss. Otol Neurotol 34(9):1586–1589, 2013.doi:10.1097/MAO.0000000000000222

  2. 2.Chandrasekhar SS, Tsai Do BS, Schwartz SR, et al: Clinical practice guideline: Sudden hearing loss (update).Otolaryngol Head Neck Surg 161(1 Suppl):S1-S45, 2019.doi: 10.1177/0194599819859885

突発性難聴の病因

突発性難聴の一般的な特徴を以下に示す:

  • 大半の症例は特発性である(の表を参照)。

  • 一部の症例は明らかに原因といえるイベントの経過中に発生する。

  • 少数の症例は,当初は潜在的であるが同定可能な別の疾患の初発症状として生じる。

特発性

一定のエビデンス(ただし相反しており,不完全である)がある仮説が数多く提唱されている。最も有望な仮説としては,ウイルス感染(特に単純ヘルペスが関与するもの),自己免疫による機序,急性の微小血管閉塞などがある。

明らかなイベント

突発性難聴の原因の中には容易に明らかになるものがある。

側頭骨骨折または蝸牛に影響する重度の振盪を伴う鈍的頭部外傷は,突発性難聴を引き起こす可能性がある。

周囲の大きな圧変化(例,ダイビングにより引き起こされるもの)または激しい運動(例,重量挙げ)が内耳と中耳との間に外リンパ瘻を誘発し,突発性に重度の症状を引き起こす可能性がある。外リンパ瘻は先天性の場合もある;外リンパ瘻によって自然発生的に突発性難聴が生じるか,または外傷もしくは大きな気圧の変化に続いて難聴が起こる場合もある。

聴器毒性のある薬剤は,特に毒性用量(全身投与や熱傷などの広範な創傷部に使用した場合)による薬剤毒性によって,ときに1日以内に難聴を生じることがある。アミノグリコシド系薬剤の聴器毒性に対する感受性を増大させる,ミトコンドリアを介するまれな遺伝性疾患が存在する。

一部の感染により,急性疾患の最中またはその直後に突発性難聴が生じる。一般的な原因は,細菌性髄膜炎ライム病,および蝸牛(およびときに前庭器官)を障害する多数のウイルス感染などである。医療などの資源が豊富な地域で最も一般的なウイルス性の原因は,流行性耳下腺炎単純ヘルペスである。麻疹は,人口の大半が予防接種を受けているため,原因として非常にまれである。

他の疾患

突発性難聴はまれに,通常は他の症状で発症する疾患において単独の初発症状としてみられることがある。例えば,突発性難聴はまれに,前庭神経鞘腫多発性硬化症メニエール病,または小脳の小さな血管障害の初発症状である場合がある。HIV感染患者での梅毒の再活性化が,まれに突発性難聴を引き起こす場合がある。

コーガン症候群は,角膜および内耳に共通の未知の自己抗原に対するまれな自己免疫反応である;患者の50%超に前庭および聴覚の症状がみられる。約10~30%の患者では重度の全身性血管炎もみられ,その中には生命を脅かす大動脈炎も含まれる場合がある。

一部の血管炎疾患は難聴を引き起こす可能性があり,中には急性のものもある。マクログロブリン血症鎌状赤血球症,および白血病の一部の病型などの血液疾患が,まれに突発性難聴を引き起こす場合がある。

表&コラム
表&コラム

突発性難聴の評価

評価は,難聴の検出および定量,ならびに病因の特定(特に可逆的な原因)から成る。

病歴

現病歴の聴取では,難聴が突発性であり,慢性ではないことを確認すべきである。病歴の聴取では,難聴が片側性か両側性かと急性イベント(例,頭部損傷,圧外傷[特にダイビングによる損傷],感染症)の有無にも注意すべきである。重要な随伴症状としては,その他の耳科的症状(例,耳鳴,耳漏),前庭症状(例,暗闇での位置感覚の消失,回転性めまい),その他の神経症状(例,頭痛,顔面の筋力低下または非対称性,味覚異常)などがある。

システムレビュー(review of systems)では,可能性のある原因の症状(一過性かつ移動性の神経脱落症状[多発性硬化症]ならびに眼の刺激感および充血[コーガン症候群]を含む)を探求すべきである。

既往歴の聴取では,判明しているHIVまたは梅毒の感染歴,およびそれらの危険因子(例,複数のセックスパートナー,無防備な性交)について尋ねるべきである。家族歴の聴取では,難聴のある近親者(先天性の瘻孔を示唆する)に注意すべきである。薬歴の聴取では,聴器毒性のある薬剤の使用歴と腎機能不全ないし腎不全の有無について,具体的に問診すべきである。

身体診察

診察は耳および聴力と神経学的診察に重点を置く。

鼓膜を視診して,穿孔,分泌物漏出,またはその他の病変を確認する。神経学的診察では,脳神経(特に,第5,第7,第8)ならびに前庭機能および小脳機能に注意すべきである(これらの領域での異常は,しばしば脳幹および小脳橋角部の腫瘍に伴って生じるため)。

ウェーバー試験とリンネ試験では,伝音難聴と感音難聴を鑑別するために音叉を使用する。

さらに,眼を診察して,充血および羞明(コーガン症候群の可能性)を確認し,皮膚を診察して発疹(例,ウイルス感染症,梅毒)を確認する。

警戒すべき事項(Red Flag)

特に注意が必要な所見は以下の通りである:

  • 脳神経の異常(難聴以外)

  • 両耳間における発話理解の著明な左右非対称性

  • 他の神経症状および徴候(例,筋力低下,失語,ホルネル症候群,感覚または温度覚の異常)

所見の解釈

外傷性,聴器毒性,および一部の感染性の原因は,通常,臨床的に明らかである。外リンパ瘻の患者は,瘻孔が生じたとき,患耳で破裂音を聞く場合があり,突発性の回転性めまい,眼振,耳鳴もみられる場合がある。

局所性の神経学的異常には,特に注意が必要である。第5脳神経,第7脳神経,またはその両方は,しばしば第8脳神経を侵す腫瘍による影響を受けるため,顔面の感覚消失および噛み締める力の低下(第5脳神経)ならびに片側顔面の筋力低下および味覚異常(第7脳神経)は当該領域での病変を示す。

耳閉感,耳鳴,および回転性めまいを伴い変動する片側難聴は,メニエール症候群も示唆する。炎症(例,発熱,発疹,関節痛,粘膜病変)を示唆する全身症状がみられる場合は,不顕性感染または全身性リウマチ性疾患を疑うべきである。

検査

聴力検査を行うべきであり,急性感染または薬剤毒性の診断が明白でない限り,たとえ難聴が改善しても,不明瞭な原因を診断するためにガドリニウムによる造影MRIが施行されることが多い(特に片側難聴の場合)。急性かつ外傷性の原因がみられる患者にもMRIを施行すべきである。外リンパ瘻は一般に誘発事象(例,過度のいきみ,圧外傷)から疑われ,陽圧を用いて眼球運動(眼振)を誘発する検査を行うことがある。

内耳の骨の特徴を調べるため,通常は側頭骨のCTが行われ,これは先天異常(例,前庭水管拡大症),外傷による側頭骨骨折,または融解性の病変(例,真珠腫)を明らかにする上で役に立つ。

危険因子または原因を示唆する症状のある患者には,臨床的評価に基づく適切な検査(例,HIV感染または梅毒の可能性を調べる血清学的検査,血液疾患を調べる血算および凝固検査,ANCA関連血管炎を調べる赤血球沈降速度[赤沈],C反応性タンパク[CRP],および抗好中球細胞質抗体[ANCA]検査)を実施すべきである。

突発性難聴の治療

突発性難聴の治療は,判明していれば原因疾患に焦点を置く。床上安静で症状がコントロールされない場合,瘻孔を探索し,外科的に修復する。

ウイルス性および特発性の症例では,約50%の患者で聴覚が正常まで回復し,それ以外の患者では部分的に回復する。軽度,中等度,または高度の難聴(重度難聴を除く)がある患者では,発症から2週間以内にグルココルチコイドによる治療を行うことで,約75~80%の患者で回復が早まる(1)。

聴力が回復する患者では,通常10~14日以内に改善がみられる。

聴器毒性のある薬剤からの回復は,使用薬剤とその用量に大きく依存する。使用中止から24時間以内に難聴が消失する薬剤(例,アスピリン,利尿薬)もある一方で,安全な用量を超過するとしばしば恒久的な難聴を引き起こす薬剤(例,抗菌薬,化学療法薬)もある。

特発性の難聴がみられる患者に対し,医師の多くは経験的に,1コースのグルココルチコイド(典型的には,プレドニゾン60mg/kg,1日1回経口投与を7~14日間およびその後5日間かけて漸減)を投与する。グルココルチコイドは経口および/または経鼓膜注射により投与できる。直接的な経鼓膜的注射では,経口グルココルチコイドによる全身性の有害作用が回避され,重度(90デシベル超)の難聴を除けば同等に効果的であると考えられる。一部のデータ(全てではない)からは,グルココルチコイドを経口と経鼓膜の両経路から使用することで,いずれか一方での使用より成績が良好になることが示されている(2)。単純ヘルペスに効果のある抗ウイルス薬(例,バラシクロビル,ファムシクロビル)が処方されることが多いが,そのような薬剤は聴覚予後に影響を及ぼさないことがデータから示されている(3)。高気圧酸素治療が特発性の突発性難聴に対して有益である可能性を示唆したデータも限定的ながら存在する(4)。

治療に関する参考文献

  1. 1.Chandrasekhar SS, Tsai Do BS, Schwartz SR, et al: Clinical Practice Guideline: Sudden Hearing Loss (Update). Otolaryngol Head Neck Surg 161(1_suppl):S1–S45, 2019.doi:10.1177/0194599819859885

  2. 2.Gundogan O, Pinar E, Imre A, Ozturkcan S, Cokmez O, Yigiter AC: Therapeutic efficacy of the combination of intratympanic methylprednisolone and oral steroid for idiopathic sudden deafness. Otolaryngol Head Neck Surg 149(5):753–758, 2013.doi:10.1177/0194599813500754

  3. 3.Awad Z, Huins C, Pothier DD: Antivirals for idiopathic sudden sensorineural hearing loss. Cochrane Database Syst Rev (8):CD006987, 2012.Published 2012 Aug 15.doi:10.1002/14651858.CD006987.pub2

  4. 4.Joshua TG, Ayub A, Wijesinghe P, Nunez DA: Hyperbaric Oxygen Therapy for Patients With Sudden Sensorineural Hearing Loss: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA Otolaryngol Head Neck Surg 148(1):5–11, 2022.doi:10.1001/jamaoto.2021.2685

要点

  • 突発性難聴の大半の症例は特発性である。

  • 少数の症例には明らかな原因(例,重度外傷,急性感染,薬剤)が認められる。

  • ごく少数の症例では,治療可能な疾患のまれな症状として現れる。

  • 評価としては,聴力検査,CTおよびMRI,疑われる原因に対するその他の検査などがある。

  • 治療では既知の原因に焦点を置くが,特発性の突発性難聴症例では,グルココルチコイドを投与する。

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